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■はじめに
ウズベキスタン共和国(以下,ウズベキスタン)において5年間にわたって取り組んできたJICA「看護教育改善プロジェクト」が,2009年6月に当初の目標を達成し終了した。そこで,看護領域の国際協力の一端としての本プロジェクトを紹介させていただき,ウズベキスタンをはじめとした中央アジア諸国の看護および看護教育の,今後のさらなる改革・発展に向けての一助となればと思っている。
ウズベキスタンは,1991年に旧ソ連から独立した,中央アジアに位置する国で,面積は日本の約1.2倍であり,海に出るには2つの国を通らなければならないダブルロックカントリーである。独立後は日本との関係が深く,親日的である。12の州,1つの自治共和国および首都であるタシケント市に分かれており,人口は2780万人(2008年:国連人口基金)である。シルクロードに沿ってヒヴァ,ブハラ,サマルカンドは世界文化遺産に指定されている。気候は典型的な大陸性気候で,夏は非常に暑い。主要産業は綿繊維産業,天然資源(金,石油,天然ガス)などである。経済成長率は,プロジェクトが開始となった2004年からGDP成長率は7~9%の高水準を維持し,2008年の一人当たりのGDPは,1026.7ドル(2008年:IMF)である。タシケント市の中心部はビルが立ち並び,近年発展が目覚ましく,年々新車が目立つようになったと感じる。
本プロジェクトは,日本のODAの一環としてJICA(国際協力機構)の「技術協力」として実施されたもので,日本の多くの看護教育の専門家で構成された国内支援委員会等を中心に,ウズベキスタンの行政等と協働して取り組んできた。
本プロジェクトにより,CON(Client-Oriented Nursing)の概念に基づいて改善された看護教育のカリキュラムは,ウズベキスタンの保健省,教育省の承認を受けたうえで,2006年9月(ウズベキスタンの新学期は9月からスタート)からモデル校(タシケント第一医療専門学校)において導入されている。さらに,2009年9月からは,全国33校の医療専門学校において改善カリキュラムによる新しい看護教育が開始され,2012年までには,全国の80校すべての医療専門学校で,本プロジェクトで改善した教案プログラムに添った教育が行われる予定である。
旧ソ連から独立したウズベキスタンでは,本プロジェクトに限らず「改革が必要であると行政が判断し,取り組む」ことにより,改革は一気に実現し加速されるという現実を目の当たりにし,日本では,看護職の基礎教育に関する保健師助産師看護師法の改正に60年以上もかかったことと比較すると感慨深いものがある。
今回はJICA「看護教育改善プロジェクト」の概要を紹介し,次回以降3回にわたり,各領域の具体的な改善点等を紹介させていただく。
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