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はじめに
いま人工呼吸の世界では,気管内挿管や気管切開による従来の人工呼吸器を装着するにあたって行われる,侵襲的な治療法ではない非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)の導入により変化の波が生じはじめている。以前,本誌特集「教員だからこそできる地域貢献」でも,筆者が行ってきた人工呼吸など医療依存度の高い長期療養児者の在宅支援活動を紹介した1)。NPPVの適応は,慢性呼吸不全の症状改善や生命維持だけではなく,ICUを含む急性期,そして緩和ケアにまで広がってきているのである。NPPVはまた,非侵襲的で利用者の負担が少なく,これまでの人工呼吸法に比べてQOLの高さや,リスクの低さを兼ね備えているが,その実践においては,きめ細やかなケアが成否のカギを握るとされている2)。
一方,小児看護の領域では,1994年に子どもの権利条約が批准された後,病院における子どもの権利に関する意識が高まり始め,(1)子どもの意思の尊重,(2)子どもが潜在的に持っている対処能力を引き出す,(3)子どもが頑張ったと実感できるような関わりや子どもの自己肯定感を高め,健全な心の発達を支援する,などの効果が期待できるケアの1つとして,プレパレーションの重要性が注目されている3)。
そこで,筆者は子どもの納得と協力が,安全で効果的な乳幼児への器械による咳介助(Mechanically assisted coughing:MAC)やNPPVの導入には重要であると考え,子ども向けのプレパレーション教材として,絵本と絵カードをセットで制作した(図1)。本稿では,その制作を考えるに至った取り組みの経緯などを紹介し,教育・研究と実践との新たな協働の可能性を探りたい。
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