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●【主な論文】「研究対象者としての学生の倫理的処遇を保証すること」から
『JNE』10月号に掲載されている,標題論文では,母性看護の授業をInteractive teaching(対話方式)で行う場合と,traditional lecture(講義形式)で行う場合の学生の効果を比較した研究を例にあげて,いかに研究対象としての学生の倫理的処遇を保証できるかをさまざまな視点から論じています。研究対象者に対し倫理的配慮を行うことは必須事項ですが,その対象者が学生となる場合,特有な問題が生じてくると著者は強調しています。なぜなら,学生は教員との力関係で弱い立場にあるからです。ですから,研究のデザインを考える際には,成績を評価する教員が,調査の際には関与しないなどの配慮が必要になるのだそうです。著者は,「自由裁量権,悪意のないこと,有益であること,誠実であること,公平であることの4つの原則が,看護教育の研究には重要である」と結論しています。
それらの原則を実行するための具体的な説明の中で注目すべき点として,金銭に関する記述があります。例えば,「研究協力の謝礼金」は,金銭に悩みをもちがちな一般的な学生の自由裁量権に影響を与える可能性があるので注意を払うべきとか,公平性を守るためには十分な研究資金が重要であるとも述べています。アメリカでは,子どもの頃からしっかりと経済感覚を学ばせます。算数の計算の教材は,第一にお金のおもちゃが使われます。高校ではサマースクールの資金の一部を自分で集める指導もします。それゆえに看護教育においても,しっかりと経済に関して論じられるのはあたりまえなことなのでしょう。
はたして,日本の看護研究において,経済の問題を論じることはあるのでしょうか? 日本では,教育の場でお金のことを論じることは少ないのではないでしょうか? 看護研究の倫理を保証するために経済に関する検討が十分にされているのでしょうか? 老若男女を問わず経済の話題に敏感なアメリカらしさを,この論文に感じました。
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