medicina 46巻4号 (2009年4月)

今月の主題 苦手感染症の克服

青木 眞
  • 文献概要を表示

 「のどが痛い……」という訴えのもつ広がりが,本号「苦手感染症の克服」の意図を良く表現している.「咽頭痛」など毎日のように遭遇する訴えであるが,無考えに「風邪」と診断し,あろうことか抗菌薬まで処方する……といった診療のスタイルは本号の意図と真反対にある.

 咽頭痛の原因にはHIVの急性感染や第2期梅毒,淋菌性あるいはクラミジア性咽頭炎といった性感染症,狂犬病やマラリアといった旅行者の感染症,野兎病やエボラ熱といったバイオテロの道具になりうる感染症,新型インフルエンザ,喉頭結核,薬剤アレルギーやそれに合併する好中球減少症などが含まれ,鑑別診断のリストはさらに亜急性甲状腺炎,多くの膠原病……と続いていく.

理解のための21題―内科認定医・専門医試験対策

性感染症

Editorial 星 哲哉
  • 文献概要を表示

 本号のテーマは“苦手”感染症の克服であり,本章では性感染症を取り上げた.つまり,一部の医師を除き,ほとんどの医師が性感染症を“苦手”としているのである.苦手というと響きは軟らかいが,厳しい言い方をお許しいただければ性感染症の診断,対処法(治療法だけでなく,予防法,行政への報告方法も含む)を“知らない”という医師が多いのである.

 性感染症はまず予防が大切である.性感染症を起こさせない,蔓延させないように可能な限り努力すべきである.残念なことに現行の医療保険制度では予防医療に対する保険適用はないが,公衆衛生も医師に委ねられた義務として積極的に啓発活動にかかわらなくてはならない.これには行政の協力が不可欠であるが,日本はまだシステムが十分にでき上がっていない.日本独自のシステムと問題について,われわれ医療者は認識する必要がある.これらの点に関して,第一線で教育・啓発活動にかかわっている堀氏の論文を参考にしていただきたい.

  • 文献概要を表示

ポイント

●「全数報告」の性感染症は,医療機関に関係なく,診断した医師すべてが報告する.

●無症状・未受診・未検査の患者は,統計数字に反映されていない.

●積極的な新規症例把握のために,医師による接触者(パートナー)への検査推奨が有効である.

  • 文献概要を表示

ポイント

●性感染症は泌尿・生殖器に限局しない全身性疾患という認識をもつべきである.的確に診断するためには,原因微生物からよりも,感染部位(臨床症状のある部位)からのアプローチが有用である.

●正確な診断のためには,正確な病歴をとることが大切である.

●1つの性感染症を診断したら(あるいは疑ったら),ほかの性感染症も合併していることが多いので,併せて対処する.

陰部潰瘍性病変 小嶋 一
  • 文献概要を表示

ポイント

●陰部潰瘍性病変は,プライマリケア医でも扱えるようになるべきである.

●陰部ヘルペスが最も多く,梅毒がそれに次ぐ.両者の合併もある.

●陰部ヘルペスでは,PCR法によるウイルスの証明が最も感度が高い.

●梅毒は全身の臓器を侵し,多彩な症状を呈する.

●梅毒の診断と治療には,血清学的検査が必須である.

性教育,1次予防・2次予防 堀 成美
  • 文献概要を表示

ポイント

●ワクチン接種から患者教育まで,臨床医は幅広く予防に関与することが可能である.

●無症候・知識不足から感染リスク認知のない患者が多い.

●性感染症の早期診断・治療は,個人・社会におけるHIV感染抑制につながる.

●医師の説明不足が患者の誤解・リスク行動に影響することがある.

  • 文献概要を表示

ポイント

●患者の評価は,可及的速やかに72時間以内に施行する.

●診察前に警察に通報(本人の同意はお忘れなく!).

●詳細な身体所見,適切な証拠収集は,法の場に耐えうるものに.

●STDsに対する治療と予防処置を理解し,必要があれば避妊処置を.

●早期からの精神的ケアを!

HIV感染症

Editorial 山元 泰之
  • 文献概要を表示

 本邦におけるHIV感染者の累計患者数は2008年末に15,000人を超えた.2000年時における,2010年でのHIV感染者数の将来予測値が50,000人前後とされていたので,望ましい方向へ予測が外れたといえなくもない.しかし,社会をさほど吃驚させないレベルで着実に浸潤していく現在の状況は,この巧まざる生態をもつウイルスと人類は永くかかわっていかざるを得ないことを想起させる.予測を下回るとはいえ,現在の増加速度を維持するとすれば,5~6年で現在の2倍の30,000人前後のHIV感染者数となろう.このため,都市部の医家では,HIV医療に携わるか否かを別としても,HIV感染者となんらかの形で交叉する確率は高いと思われる.

 HIV感染症の治療分野では,1995年前後までは使用できる抗HIV薬,抗日和見感染症薬も少なく,重症化して絶命するまでなす術もないという状況であった.しかし,そのような状況は1996~1997年に先進諸国で使用可能となったプロテアーゼ阻害薬を含む多剤併用療法(highly active anti-retroviral therapy:HAART)によって一変することになる.後退しながら局面を取り繕うのみの医療から,前進する医療へ変化したのである.1996年当時は20カプセルほどの大量の薬剤を服用する必要があり,数年内のうちにHAART服用者が脂肪代謝異常や糖代謝異常を発症する事例が多発するなど,蜜月はそう長くは続かなかった.しかし,間近な死は遠ざけることが可能になったのである.

早期発見のコツ 加藤 哲朗
  • 文献概要を表示

ポイント

●HIV感染症は,早期診断・発見が重要である.

●HIV感染症では,その経過中に,高度に免疫不全が進行しなくても認められるいくつかの所見,症状,病歴が含まれていることがあり,それを見逃さないようにすることが早期発見につながる.

●HIV感染症の存在を考慮すべき状況として,AIDS指標疾患,AIDS指標疾患ではないがHIV感染症と関連のあるもの(臨床検査値異常),HIV急性感染,性感染症などがある.

  • 文献概要を表示

ポイント

●抗HIV療法(HAART)の進歩で,HIV感染症は数十年単位の長期的な療養を要する疾患となった.

●HIV感染症は,一定の免疫機能回復が得られた後は,common diseaseと同様に無床診療所,クリニックで診療継続が可能であり,就労者にはむしろ利便性が高い.ただし,身体障害者福祉法,障害者自立支援法など,医療費補助制度の理解が必要である.

●HIV感染症は,HIVに関する基礎知識を有する常勤看護師,ソーシャルワーカー,心理カウンセラーなど診療チームでの包括医療が望ましく,それを成就するためにHIV診療拠点病院と協力診療所の円滑な医療連携が肝要である.

  • 文献概要を表示

ポイント

●日本国内では,HIV感染者もエイズ患者も増加し続けている.

●節外性非Hodgkin悪性リンパ腫をみたら,HIV感染症の合併を考慮する.

●エイズ関連悪性リンパ腫は,予後が不良で,標準的な治療も定まっていない.

●エイズでは,ニューモシスチス肺炎+ほかの肺疾患もしばしばみられる.

●エイズでの下痢の原因は多岐にわたっており,原因不明の場合は内視鏡が有用である.

ニューモシスチス肺炎 柳澤 如樹
  • 文献概要を表示

ポイント

●HIV感染者が発症する日和見感染症のなかで,最も頻度が高い.

●発症初期は,胸部X線写真が正常であることも少なくない.

●合併感染,特に肺結核との合併に注意する必要がある.

●ST合剤による治療は効果が高いが,発熱や発疹などの副作用も多い.

●発症予防には,ST合剤が最も有効である.

結核

Editorial 永井 英明
  • 文献概要を表示

 2007年のわが国の結核罹患率は19.8(人口10万人対の新登録患者数)と20を下まわったが,いまだ年間25,000人以上の患者の発生がある.ほとんどの欧米先進国の結核罹患率が10以下であり,5以下の国もあることを考えれば,わが国は依然として結核の中蔓延国である.国内の結核罹患率の地域格差は大きく,大都市で高い.大阪市は人口10万対52.9,名古屋市30.6,東京都特別区29.3であり,最も低い長野県の10.3に比べると3~5倍の高さである.

 結核患者の年齢分布をみると,20歳台の新登録結核患者は1,924人であり,その内訳をみると外国人20.3%,無職臨時日雇など18.3%,医療関係者8.8%とハイリスク者が上位を占めている.80歳以上の高齢結核患者が全患者の1/4を占め,その割合は増加傾向にある.

一般医家の診療上のpitfall 永井 英明
  • 文献概要を表示

ポイント

●わが国は結核の中蔓延国であることを認識すべきである.

●肺結核を強く示唆する胸部X線所見は,散布性粒状影(tree-in-bud)である.

●胸部異常陰影のある症例については,喀痰の抗酸菌検査を必ず行うべきである.

●結核はあらゆる臓器に病変をきたすので,肺外結核も忘れてはいけない.

●結核の治療は標準治療を行う.それからはずれた単剤治療などを行ってはいけない.

  • 文献概要を表示

ポイント

●QFT-2Gは,感度・特異度ともに高い結核感染診断法である.

●BCG接種の影響を受けないので,ツベルクリン反応に代わる検査法である.

●結核患者の接触者検診,医療関係者の結核管理,結核の補助診断などに用いられる.

●結核に感染して,8~10週間後に陽転化すると考えられている.

●結核発病(活動性結核)の証拠にはならないことを十分認識しなければならない.

結核の院内感染対策 佐々木 結花
  • 文献概要を表示

ポイント

●患者トリアージ:初診時呼吸器症状を有する患者は,サージカルマスクをつけていただき,他患者と別の動線で早期診断を行う.

●飛沫核飛散防止対策:飛沫核を飛散させる可能性のある医療行為を行う部屋は,陰圧とすべきである.

●早期診断:呼吸器症状を呈する患者が受診した場合,画像所見で異常があれば,喀痰抗酸菌塗抹培養検査を3回行う.

●職員健康管理:職員健康診断は,就労時,定期健診を適切に行い,就労時は結核感染の有無を判断するためにQFT-2G検査を行う.

●接触者検診:患者発生時は速やかに保健所に届出をし,院内の接触者を把握するが,独自で検診してはならない.

免疫不全と感染症

Editorial 岸本 暢将
  • 文献概要を表示

 感染症に対する宿主の防御として,重要な役割を担う免疫機能.実際,この免疫機能が障害される免疫グロブリン異常や補体欠損症などの原発性免疫不全(先天性あるいは後天性)は非常に頻度が低いが,何らかの原因による続発性免疫不全をもつ患者は日常一般医,総合内科医がよく遭遇する.“続発性免疫不全症”といっても聞き慣れない言葉かもしれない.表1のような状態により二次的に正常な免疫機能が障害された状態をもつ患者を続発性免疫不全と呼んでいる.

 また,表1に挙げる状態以外にも,患者が解剖学的に正常な機能をもたない臓器をもつ場合には,さらに感染症のリスクが高まることに留意する.例えば,慢性閉塞性肺疾患,喘息,間質性肺炎などの基礎疾患をもつ患者では,正常な肺の機能が保たれていないため,さらに肺炎に罹患するリスクは高まる.表1に挙げる状態も合わせ,抗菌薬の選択も変わってくることもあるので,予防投与を行うかの決定にも重要な要素となる.

  • 文献概要を表示

ポイント

●ステロイド投与の際は,プレドニゾロン換算15~20 mg/日以上の投与量で,8週間以上投与する場合はPCP予防投与を考慮する.

●PCP予防に,現在日本で使用可能なもので最も効果と副作用のバランスがとれているのはST合剤.

●結核発症リスクは,プレドニゾロン15 mg/日以上で高まる.

●潜在結核が証明できれば治療したほうがよい.

●ステロイド投与下でのイソニアジドによる結核の発症予防のRCTは存在しないが,有用性を示唆するstudyは散見される

●B型肝炎合併症例では,肝臓内科と相談すべきである.

好中球減少症 松永 直久
  • 文献概要を表示

ポイント

●好中球減少症患者で感染症が疑われる場合の考え方を理解する.

●好中球減少症が感染症の原因なのか,結果なのか,関連性が薄いのかを意識する.

●早急な対応が必要な敗血症が好中球減少症として現れることもある.

  • 文献概要を表示

ポイント

●“DM(糖尿病)なんてエイズと思え.”

●糖尿病患者では,結核罹患率が高い.

●糖尿病患者では,肺炎球菌肺炎は重症化しうる.

●気腫性腎盂腎炎は,糖尿病患者で起こりやすい重症な腎盂腎炎である.

●糖尿病患者の骨髄炎では,切断や血行再建などの外科的処置が必要となることがある.

●糖尿病性の足の感染症(DM foot infection)が骨にまで及んでいるかどうかをみるのに“probe to bone test”がある.

新型インフルエンザ

Editorial 高山 義浩
  • 文献概要を表示

 新型インフルエンザは,毎年流行を繰り返してきたインフルエンザウイルスとは表面の抗原性が全く異なる新型のウイルスが出現することにより,およそ10~40年の周期で発生している.ほとんどの人が新型のウイルスに対する免疫をもっていないため,世界的な大流行(パンデミック)となり,大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらすことが懸念されている.

 20世紀では,1918年に発生したスペインインフルエンザの大流行が最大で,世界中で約4千万人が死亡したと推定されており,わが国でも約39万人が死亡している.また,1957年,1968年にもそれぞれ流行があり,さまざまな混乱が記録されている.

  • 文献概要を表示

ポイント

●新型インフルエンザの流行予測とは,対策を推進してゆくための便宜上の仮説にすぎず,すべての対策は柔軟なものが求められる.

●新型インフルエンザの蔓延期には,すべての事業の縮小が余儀なくされる.これは医療機関も例外ではない.

●発熱外来は流行段階によって役割が異なる.感染拡大期までは早期に発見して入院措置へつなげることが目的であり,蔓延期以降は増大する医療ニーズに対応することが目的である.

●蔓延期における重症者の入院医療には,原則としてすべての入院医療機関が対応するという方針がまずは求められる.

  • 文献概要を表示

ポイント

●流行時には,ほとんどすべての医療機関が患者に対応しなければならない.

●医療機関は,組織として医療従事者を感染や過労から守る.

●医療従事者は,自分の身を守るための感染予防策を十分に実施する.

●自分の顔にあったN95マスク(防じんマスクDS2)を見つけるには,フィットテストが必要.

  • 文献概要を表示

ポイント

●新型インフルエンザは,現在存在しない概念である.

●したがって,現行の知識の範疇を超えた事実が「後で」判明する可能性がある.

●不測の事態があり得ることを想定して,「中腰で」診療する.

●普段の発熱診療がきちんとできて,初めて特殊な発熱診療ができる.

輸入感染症

Editorial 加藤 康幸
  • 文献概要を表示

 それは,年末仕事納めの日であった.5日前に発熱,頭痛を訴えた患者が,意識障害,黄疸,腎不全をきたしており,2週間前にアフリカから帰国したという.「重症マラリア」という診断名が頭をよぎる.このような事例は,日本に限らず,マラリアという疾患が排除された地域では,毎年少なからず繰り返されている悲劇といってよいだろう.竹下論文が強調するように,旅行者において熱帯熱マラリアは内科救急疾患である.

 診療のポイントは何かと聞かれれば,疫学の知識を味方につけるということだろう.なかでも,古宮論文に述べられているように,疾患の地理的分布と潜伏期の知識が重要である.グローバル化の時代とはいっても,有病率の差は世界に厳然と存在し,自然環境や政治,経済,文化などと絡んで複雑な状況を呈している.そもそも,輸入感染症とは,有病率が外国において国内よりずっと高い疾患と考えることができる.例えば,日本で毎年数万人規模の患者が発生している麻疹は,北米からみた場合,輸入感染症ということになる.幸いなことに,インターネットにより,これらの情報が入手しやすくなってきた.

途上国帰りの発熱 古宮 伸洋
  • 文献概要を表示

ポイント

●途上国帰りであっても,発熱患者への基本的なアプローチは同じ.

●マラリアは治療が遅れると致命的.マラリアの可能性を最優先に考える.

●渡航に関しての詳細な問診が重要.地域はどこか? 都市部なのか,農村部なのか? 旅行のスタイルは?

●潜伏期はどの程度と見積られるのか? 潜伏期で鑑別疾患が絞れる.

●診断の助けとなる随伴症状(呼吸器,消化器症状など)は?

途上国帰りの下痢 倉井 華子
  • 文献概要を表示

ポイント

●途上国帰りの下痢起因菌で頻度が高いのは,カンピロバクター,病原性大腸菌,赤痢菌,腸チフス・パラチフスであった.

●細菌性以外では,ランブル鞭毛虫やクリプトスポリジウムなどの寄生虫,ノロウイルス,偽膜性腸炎,薬剤性腸炎や潰瘍性大腸炎などもみられる.

●マラリアも下痢を起こすことがあり,見逃してはならない.

●便培養に加え,寄生虫検査,血液培養,CD毒素なども症例に応じ追加する.

●治療薬はキノロン製剤が一般的であるが,カンピロバクターや腸チフス・パラチフスにおいてはキノロン低感受性菌が増加しており,注意が必要である.

  • 文献概要を表示

ポイント

●発熱患者では,海外渡航歴を確認する必要がある.患者は自分から言わないことも少なくない.

●狂犬病流行地域で動物に咬まれたら,すぐに現地の医療機関を受診し,狂犬病予防,破傷風予防を受ける必要がある.

  • 文献概要を表示

ポイント

●“発熱”を主訴とした患者で,どのような人にマラリアを考えなければならないか?

●マラリアを考えたときに自分の施設でできる検査は?

●Giemsa染色のポイント

●マラリアの治療選択に必要なのは,耐性・重症度・既往の確認.

●困ったときには,専門機関に相談を.

ワクチン

Editorial 菅沼 明彦
  • 文献概要を表示

 予防接種は,感染症診療における重要な領域と認識されているが,内科医が苦手意識をもちやすい分野ではないだろうか.それは,「予防接種は小児科の領域」との先入観や,実感しにくい効果,副作用への懸念,などが原因なのかもしれない.また,接種方法,接種間隔,禁忌などのルールが,さらに煩わしさを感じさせるのかもしれない.自分の経験を振り返っても,学生時代に習った予防接種は,小児科の定期接種の印象が強く,内科で予防接種を習った記憶がほとんどない.筆者も,思いがけず予防接種に携わる立場になって,あわてて勉強し出した,というのが偽らざるところである.

 しかし,実際の診療で,内科医と予防接種のつながりは希薄ではなく,今後,予防接種への知識が要求される場面は増えてくるのでないかと思われる.

  • 文献概要を表示

ポイント

●ワクチンは,抗原物質により生ワクチンと不活化ワクチンに分類される.

●接種部位,接種間隔,禁忌などに関するルールがあり,接種前の確認が重要.

●ワクチンの効果について,国内外の種々の疫学的なデータが示されている.

●ワクチンの副作用は局所反応が多く,重篤な副作用は非常に稀である.

  • 文献概要を表示

ポイント

●定期接種は,1994年に個別接種・勧奨接種へ変更され,近年も改定が行われている.

●海外渡航者には,渡航先,目的など応じたワクチン接種が考慮される.

●病院感染対策の一環として,適切なワクチンプログラムが重要である.

  • 文献概要を表示

Question

Q1 麻疹ワクチンの接種希望者が受診してきたが,抗体検査の結果をみてから,接種を判断したほうがよいのか?

Q2 子どものころに卵アレルギーといわれて,麻疹ワクチンが接種できなかった.今は卵も食べられるが,麻疹ワクチンを接種して大丈夫か?

Q3 B型肝炎ワクチンの接種を行っているが,1回目の接種から3カ月経過してしまった.本日接種しようと思うが,最初から打ち直しとなるのか?

Q4 3年間の東南アジアへの赴任を命ぜられたが,出発まであと1カ月しかない.どうしたらよいか?

Q5 国内で犬にかまれたのですが,狂犬病ワクチンを接種したほうがよいですか?

Q6 海外で猫に引っかかれて,狂犬病ワクチンを2回接種した.このあと,どうしたらよいの?

Q7 生ワクチンを接種した後に妊娠が判明したが,どうしたらよいか?

Q8 生ワクチンの接種後に,ワクチンのウイルスをほかの人に移したりはしないか?

Q9 以前ワクチンを接種した直後に,立ちくらみがしたことがある.ワクチンの副作用か?

Q10 麻疹,風疹などに接触した後にワクチン接種しても,発症を予防できるのか?

  • 文献概要を表示

 一般医家にとって,しばしばある種の感染症は「苦手」とされ,敬遠される.しかし,それらの疾患に,われわれはいつ遭遇してもおかしくなく,見逃しや診断の遅れが命取りになることもある.本号では,苦手感染症の診かたを,第一線の内科医たちにお話しいただいた.

コラム

  • 文献概要を表示

 抗菌薬は一般に,使えば使うほど耐性化し,効かなくなる.適正使用により手持ちの薬の有効期間を少しでも長引かせる努力をすることと,新しい薬剤の開発をバランスよく行う必要がある.しかし,新しい抗菌薬の開発を取り巻く環境は厳しい.一言でいえば,耐性菌は増加しているが,それらを治療するための新しい抗菌薬の開発は枯渇している.抗菌薬は多くの場合2週間程度,骨髄炎などでもせいぜい8週間投与されるのみで,一生投与される糖尿病薬,降圧薬,高脂血症薬などに比べると投資当たりの収益性に劣るため,多くの製薬会社が撤退している分野なのである1)

  • 文献概要を表示

 “Children are not just miniature of adults(小児は単なる大人のミニチュアではない)”という言葉をどこかで耳にされた方は多いのではないだろうか? 小児科医が小児の特殊性をほかの医師に強調するときによく使う言葉であるが,小児科全般では,患児の年齢によって,疾患の病態生理が大きく異なるため,大人とは異なるアプローチが必要であることはいうまでもない.同時に小児は,常に成長の過程にあるため,疾患に罹患した際の適切な診断と治療が遅れると児の発達に大きな影響を与える.Failure to thrive(発育遅延)という病態にどのようにアプローチするかも,小児科医の重要な役割である.

 小児感染症という専門領域においても同様で,年齢という因子が,その患者の診断,起因菌,治療を考えるうえできわめて重要である.なぜなら,患児の年齢は,その免疫能に大きく影響するからである.乳幼児での免疫グロブリンの絶対量は少なく,母体からの移行抗体が生後約6カ月で底をつき,特に生後12カ月までは,液性免疫で防御される感染のリスクが大きくなる.一方で,年齢によって重症細菌感染症の起因菌が大きく変化する.具体例を挙げると,新生児期には,B群溶連菌,リステリア,大腸菌など,乳幼児期には,肺炎球菌,B型インフルエンザ桿菌などが主な起因菌となる.これらの情報は,患者のempiric therapyを決定するうえで重要である.また,起因菌を同定するうえで重要な培養を行う検体量が限られていること,同定された起因菌の解釈が大人とは大きく異なること〔新生児集中治療室(NICU)において表皮ブドウ球菌が血液培養陽性の半分以上を占める〕など,小児科特有のアプローチが必要である.Failure to thriveに対して,感染症の立場からのアプローチも非常に重要で,HIV,結核などの持続的感染症がその原因となることがある.

米国感染症研修事情 本田 仁
  • 文献概要を表示

 米国でひとえに感染症の研修といっても,施設,地域によって受けることのできる研修には実は差があります.裏を返せば,それは各研修施設の長所や短所につながるのです.もちろん,規定された核となるカリキュラムにより一定の質は保たれますが,HIV患者層の多い東海岸,西海岸ではより密度の濃いHIV研修を,巨大な癌センターや移植が盛んな施設では免疫不全患者の治療により従事することができるでしょう.カリキュラムもclinician track(計2年で臨床中心),clinical investigator trackやbasic investigator track(計3~4年で臨床に加え,臨床研究もしくは基礎研究に従事)と臨床,研究,その両方に力を入れているプログラムが存在します.

 病棟のコンサルトチームは,一般感染症チーム,免疫不全(骨髄移植,臓器移植など)チームですが,場所によりHIVチームもあります.また,小さなプログラムでは自施設で足りない研修を近隣の大きなプログラムで補うこともあります.指導医のもち味も,生粋の臨床好きな指導医,自分の研究分野を臨床にうまく反映している指導医,研究中心で臨床から離れた指導医,異文化を許容できる,しない指導医,おしゃべり好きな,寡黙な指導医,共和党,民主党派の指導医,とにかくさまざまです.各指導医間に多少の治療方針の違いがあり,そこに教科書にはない指導医の思考が見え隠れしていて,それを学ぶのも楽しいものです.

連載 手を見て気づく内科疾患・4

  • 文献概要を表示

患 者:57歳,女性

病 歴:4年前から冬に水仕事をすると指先が白くなることに気づいていた.温めると紫色,赤色になって元に戻る.最近,指が白くなる頻度が多くなってきた.

身体所見:指は全体に腫脹しており皮膚はやや固い(図1).さらに,爪上皮出血点(nail fold bleeding:NFB),爪上皮の延長を認める(図2).

連載 内科医のためのせん妄との付き合い方・1【新連載】

  • 文献概要を表示

せん妄は意識障害をベースにした,しばしば興奮や幻覚妄想を伴う精神状態である.その予防には,現在投与されている薬剤の整理,身体的原疾患の治療,疼痛のコントロール,飲酒歴の把握,昼夜逆転の改善,見当識の改善,などが重要となってくる.

連載 研修おたく海を渡る・40

  • 文献概要を表示

 フェローシップを修了し指導医になって,あっという間に半年以上が経ちました.“Baby faculty(ひよっこ指導医)”とか“Super fellow(フェローのように扱われる指導医)”といわれながらもなんとかやっています.もとはといえば「研修おたく」として海を渡った自分です.教育への興味はまだ失ってはいません.これから何回かに分けて,教育システムを含めた指導医の生活を紹介したいと思います.

 今回は,うちの大学で新たな試みとして,ここ数年行われている“Educational value units(EVUs)”という教育ポイント制度をとりあげます.これは,医師の生産性を評価するために1980年代に使われ始めた“Relative value units(RVUs)”にならった方法だそうです.毎月,RVUレポートが,僕も含めて一人ひとりのスタッフ医師に送られてきます.このRVUについては,またどこかで紹介したいと思います.

連載 市中感染症診療の思考プロセス IDATEN感染症セミナーより・13【最終回】

敗血症のマネジメント 大野 博司
  • 文献概要を表示

ケース 発熱,意識障害で来院した82歳男性

現病歴 ADLは杖歩行でどうにか自立しているが,認知症がある82歳男性.3日間続く発熱と1日前からの意識レベルの低下および低血圧にて救急外来に救急車にて搬送された.患者は老人ホームに入所中である.既往歴に高血圧,高脂血症,閉塞性動脈硬化症,コントロール不良の2型糖尿病(内服薬治療のみ),心房細動,70歳時に心筋梗塞にて前下行枝にPCIを行っている.内服薬は降圧薬(ACE阻害薬),高脂血症薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬),利尿薬,アスピリン,ジゴキシン,グリメピリド.薬剤アレルギーはない.

身体所見 体温39.8℃,心拍数130/分,整,呼吸数26/分,血圧90/40 mmHg(ふだんは150/80 mmHg程度),SpO2感知せず.全身状態:かなりきつそうにみえる,頭目耳鼻喉:とくに問題なし,頸部:問題なし,項部強直なし,心臓:Ⅰ・Ⅱ音正常,雑音あり,心尖部に逆流性の収縮期雑音,胸部:両肺野に水泡音あり,腹部:平坦・軟,腫瘤なし,四肢:冷感・チアノーゼ,網状皮疹あり,浮腫はないが両足先が黒色壊死している.腰背部に褥瘡(Shea分類:Ⅳ度)あり,周囲に発赤,腫脹,熱感を伴う.

検査データ 血液所見:ヘマトクリット30%,白血球 22,000/ml(80%好中球,15%桿状球,5%リンパ球),血小板40,000/ml,血清生化学所見:ヘモグロビン7.5 g/dl,BUN/Cre 60/2.1,血糖・電解質に異常なし,CRP 25,髄液所見:白血球なし,蛋白,糖異常所見なし,胸部X線:両肺野浸潤影,尿所見:pH7,蛋白・糖(+),赤血球10~15/HPF,白血球10~20/HPF,細菌+,心エコー上明らかな疣贅はないが僧帽弁閉鎖不全あり(以前から指摘されている),腹部エコー上胆囊壁の腫脹はない,水腎症の所見はないが膀胱緊満している.

  • 文献概要を表示

 『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』が6年ぶりに改訂された.著者である上野征夫氏は,日本人として初めて米国で本場のリウマチ臨床トレーニングを受け,米国リウマチ専門医まで取得した医師である.私は著者から個人的にもご指導いただいているが,著者ほど臨床の「リウマチ」を知り尽くしたリウマチ医はいないと思っている.

 米国ではリウマチ医は全身を診ることのできる真の内科医であるといわれる.本書はこの言葉通り広範囲にわたるリウマチ疾患が,著書が米国ならびに日本で長年にわたって経験した莫大な数の症例の写真や図とともに,一冊に凝縮されたものである.一人の手によってここまでのテキストが書かれたことは驚異である.いや,一人の手によって書かれたからこそ,著者の一貫したリウマチ病へのアプローチが読者に印象強く訴えるのであろう.そういった意味で,リウマチのテキストで,私はこれほど網羅され整理された“頭に残る”テキストを,英語でも日本語でも,この『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』をおいてほかに知らない

  • 文献概要を表示

 ローレンス・ティアニー先生の鑑別診断力のすごさが披瀝されている本書が,好調な売れ行きであると先生自身の口から聞く機会が最近あった.誠に慶賀にたえない.新医師臨床研修制度が開始されて5年近くになるが,研修現場で今も足りないものの一つに「臨床推論・診断推論の訓練」が挙げられる.初期研修医の学習対象が検査や治療手技になりやすく,病歴と身体所見から病気や病態の検査前確率を推定してゆく診断学が,なかなか王道に位置されないのである.

 ティアニー先生の真骨頂は,病歴のみに基づく診断と最終診断との一致率がことのほか高いことにあると思われる.厖大な臨床経験が頭脳の中に質高くまとめられているからであろう.その後に身体所見を加えて検査前確率を上下させるわけだが,先生にとって身体診察の寄与率はあまり高くはなさそうである.しかし,本書の5頁の文言に接すると,そうとばかりもいえないことがわかる.

--------------------

編集室より T
  • 文献概要を表示

●2010年度より医師臨床研修制度が見直される.これまで2年間で研修を義務づけていた内科,救急,産婦人科,地域医療など7の必修科目を内科と救急,地域医療の3診療科に削減し,残る診療科目のうち2つを選択必修にするというものだ.これにより必修科目の研修は実質一年に短縮され,2年目は自分が進もうとする専門科での研修が中心になる.

●「これでは研修が骨抜きになる」,研修病院関係者のこんなコメントが新聞各紙で紹介された.見直しの本当の狙いは,大学病院へ研修医を引き戻すことにあり,医師として具有すべき,基本的な能力を鍛えるという,研修本来の目的が忘れられているのではないかという指摘もある.

基本情報

00257699.46.4.jpg
medicina
46巻4号 (2009年4月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月6日~7月12日
)