今月の主題 苦手感染症の克服
輸入感染症
Editorial
加藤 康幸
1
1国立国際医療センター戸山病院国際疾病センター国際医療支援室
pp.621
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103864
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それは,年末仕事納めの日であった.5日前に発熱,頭痛を訴えた患者が,意識障害,黄疸,腎不全をきたしており,2週間前にアフリカから帰国したという.「重症マラリア」という診断名が頭をよぎる.このような事例は,日本に限らず,マラリアという疾患が排除された地域では,毎年少なからず繰り返されている悲劇といってよいだろう.竹下論文が強調するように,旅行者において熱帯熱マラリアは内科救急疾患である.
診療のポイントは何かと聞かれれば,疫学の知識を味方につけるということだろう.なかでも,古宮論文に述べられているように,疾患の地理的分布と潜伏期の知識が重要である.グローバル化の時代とはいっても,有病率の差は世界に厳然と存在し,自然環境や政治,経済,文化などと絡んで複雑な状況を呈している.そもそも,輸入感染症とは,有病率が外国において国内よりずっと高い疾患と考えることができる.例えば,日本で毎年数万人規模の患者が発生している麻疹は,北米からみた場合,輸入感染症ということになる.幸いなことに,インターネットにより,これらの情報が入手しやすくなってきた.
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