憧鉄雑感
第87回 地方出張の楽しみ
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック,褥瘡・創傷治癒研究所
pp.1171-1171
発行日 2019年6月1日
Published Date 2019/6/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000001465
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筆者のような者にも時に講演依頼をいただく。有益な話はちっとも語らず学術的価値ゼロであるから,当然学術大会での教育講演や特別講演であろう筈もなく,企業からいただく機会が多い。しかし,筆者はこのほうが有難く,タダで列車に乗車でき,本稿のネタが見つかるため感謝の念をもってお引き受けしている。ある時,北海道内の地方都市でのご依頼をいただき即お引き受けした。ところが,後日担当者が申し訳なさそうに切り出した。「実は先日のご依頼の件なのですが……」。言い難そうである。さては中止となったのであろう。しかし次の言葉に耳を疑った。「宿泊先のホテルなのですが……」彼は一旦ここで間を置いた。「お化けが出るのです」。日頃から紳士的で真面目な人である。笑いながらではなく心底困ったような表情だ。からかっているのではないことは明らかであり,第一左様な戯言を言ったところで彼に一分の利もないことは火をみるより明らかである。その後,他に代替ホテルがなく,当日帰宅手段がないことを申し訳なさそうに述べた。狐に摘ままれた様な話である。が,斯様な話は逆に好都合だ。元来,お化けなんぞ全く信じない筆者であるから,是非宿泊させて欲しいと懇願した。
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