BeyondER 2巻1号 (2023年6月発行)

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巻頭対談　歴史に学び，他者に学び，先を読む

将来を見据える力と説明力を養成する【後編】池上　彰 , 園生　智弘 2巻1号 , 2023年6月 , pp.2-7

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救急医療現場は社会の縮図といわれる。しかし，そこで働く医師たちは日々の業務に忙殺され，患者の社会的属性や医療問題の背後に潜む社会的課題にまで目を向ける余裕はない。

そこで，鋭い取材力に基づいたわかりやすいニュース解説に定評がある池上彰氏と，臨床業務の傍ら，救急医療分野におけるデータ収集・活用の課題を解決すべくベンチャー企業を立ち上げた園生智弘医師との対話を通して，日本社会の「今」を読み解くとともに，1人の医師として社会に対して何ができるのか，“あるべき1つの視点”を提供する。

前号に引き続き，今号では後編をお届けする。

特集1　救急医療のリベラルアーツ　ドクターカー＆ヘリ運用の今を問う

扉園生　智弘 2巻1号 , 2023年6月 , pp.9

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ドクターカー・ドクターヘリは各地で運用され，救急医療における迅速な医療介入を行ううえで重要な役割を果たしている。一方，その運用方法は地域によって異なる部分も多く，さらにデータに基づくエビデンスは国際的にも不足している。

　本特集では，プレホスピタルの歴史をふまえたうえで現状と課題を整理し，多角度からのディスカッション，および各地の最新の取り組みを通して本領域の「現在地」から「未来」を考察する。

【Part 1】歴史もふまえて，課題を知る

1．ドクターカー＆ヘリの歴史も押さえたうえで，現在をとらえる本村　友一 2巻1号 , 2023年6月 , pp.10-17

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ドクターカー（とラピッドレスポンスカー），ドクターヘリは迅速な医療介入を目的として導入され，患者の救命や予後改善に重要な役割を果たしている。一方で，地域の実情に合わせた運用形態をとっていることから，その現在地を正確にとらえるのは難しい。

　本稿では，ドクターカー・ヘリをまず知ってもらうための序説として，その定義や車内/機内の様子，携行資器材などを概説する。さらに，それぞれがたどってきた歴史を見ながら現状をおおまかに俯瞰することで，以降の章を読み進めるうえで土台となる知識を提供する。

2．病院前での医療介入に関わるエビデンスの今山内　素直 2巻1号 , 2023年6月 , pp.18-23

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ドクターカーおよびドクターヘリは，病院前救急診療を提供する手段としてすでに広く一般に知れ渡り，市民権を得ている。ドクターカーは，日本では1980年頃から運用が始まり，現在，全国で230以上の施設が保有し，各地でさまざまな方式のもとで運用されている^1）。また2001年4月，正式に日本で運用が開始されたドクターヘリは，現在，全国47都道府県に56機が整備されており^2），テレビドラマやメディアでもその活動が取り上げられ，注目度は高い^＊1。

　ドラマのなかではドクターヘリや救急医の華々しい活躍が描かれているが，病院前医療の現場の実際はどうだろうか。本稿では，ドクターカーやドクターヘリなどによる早期医療介入に関わるエビデンスの現状と，その課題について概説する。

【コラム】ドクターヘリの全国レジストリ：JSAS-R構築のインパクト土谷　飛鳥 2巻1号 , 2023年6月 , pp.24-26

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ドクターヘリ（DH）の全国展開が急速に進み，2022年4月には47都道府県＊1に56機が配備され，全国配備はほぼ完了した。

　年間30,000件を超える要請件数と25,000件以上の出動件数を誇る一方，DHの運航形態は複雑さを増し，全容の把握が困難な状況となった。そこで，DHが要請された全症例とその詳細を把握，検討し，各基地病院へ運航の質的評価をフィードバックすることで，DHの品質管理を行い，国民に成果を還元することを目的として，日本航空医療学会ドクターヘリ全国症例登録システム（JSAS-R）が構築された。

　本稿ではJSAS-Rの現状と課題を整理したうえで，そのポテンシャルと今後のインパクトまで言及する。

【Part 2】運用に関わる論点を知る

3．ドクターヘリは都市部でも運用すべきか？島崎　淳也 , 中川　雄公 , 山内　素直 2巻1号 , 2023年6月 , pp.28-31

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外傷による遠隔地・非遠隔地からのヘリ要請を解析

都市部においても，ドクターヘリシステム自体には意義がある。特に重症外傷では，現場に医師が投入されることで気道確保，胸腔ドレナージ，開胸といった処置をより早期に開始することができる。

　筆者らは，2008年から2021年までに大阪府下においてドクターヘリ要請がなされたすべての外傷症例を解析し，外傷診療におけるドクターヘリの有効性について検討した^＊1。

【コラム】ドクターヘリで県を跨いだミッションを成功させるには板井　純治 2巻1号 , 2023年6月 , pp.32-34

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ドクターヘリは，救急診療に必要な機器および医薬品を装備した救急医療用ヘリコプターであり，救急診療に精通したフライトドクターとフライトナースが搭乗して，交通事故や傷病の発生現場へと出動し，病院前救急医療を展開する^＊1。

　日本では2001年に運航が開始されてから20年以上が経過し，ついに2022年4月にはすべての都道府県でドクターヘリの運用が行われるようになった。これによってほぼ1県1基地以上の体制が確保されたが，年々増加する要請件数への対応，重複要請時の代替手段の構築，運航時間の拡大など，質的課題はまだまだ多い。

　なかでも問題となるのは，ドクターヘリは都道府県単位の体制であり，それぞれの面積や基地病院の位置によっては，必ずしも県全体をカバーできる場所に基地を設置できるわけではないことである。その場合，隣県の基地病院のほうが短距離であれば優先して他県へと出動する取り組みも広がっているが，県境を越えるドクターヘリ出動には課題も多い。

　本稿では，筆者の活動拠点である広島県ドクターヘリを中心とした，中国地方5県および愛媛県とのヘリ広域連携について，運用の実態を紹介する。

4．ドクターカーは24時間運用すべきか？船木　裕 , 本村　友一 , 許　敬高 , 山内　素直 2巻1号 , 2023年6月 , pp.36-39

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多様化・高度化するドクターカー運用

ドクターカーは，病院前への医師派遣を可能とするシステムであり，消防からの要請により出動し，救急車とドッキング後，患者に早期医療介入を開始できる。そして，病院前で患者の生理学的安定化を図り，医療機関での早期の根治術につながる高度な情報を送りつつ，患者を搬送する。近年の報告では，ドクターカーの運用はさらに範囲を広げ，さまざまな用途や目的で用いられている。

　2016年に相模原市で発生した障害者施設での多数傷病者事案では，3施設からドクターカーによって医療チームが現場介入し，トリアージ，安定化処置，受け入れ医療機関への傷病者情報提供，搬送先の選定がなされた^2）。この傷病者45人中19人が心肺停止であった事案では，防ぎ得た死（PTD^＊1）はなかったと報告されており，多数傷病者発生事案での有用性が示された。

5．CPA患者にはドクターカーを出動させるべきか？吉村　有矢 , 平野　洋平 2巻1号 , 2023年6月 , pp.40-44

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救急救命士に可能な特定行為は少ない

現在の日本の救急救命士が心停止に対して可能な特定行為は，胸骨圧迫，除細動（AED），人工呼吸を含む一次救命処置（BLS）に加えて，気管挿管（ビデオ喉頭鏡を含む），声門上デバイスの使用，静脈路確保であり，投与できる薬剤はアドレナリンのみである^＊1。

　日本の救急隊，救急救命士に許可された処置，特定行為は他国と比べて非常に少ない。海外の研究では，院外心停止の蘇生に医師が参加すること，およびドクターカーの有用性を否定する報告があるが，日本とは事情が異なる。ほかの国の臨床研究の結果を鵜呑みにしてはならない。

6．番外編：ヘリとカーをどう使い分けるか小橋　大輔 2巻1号 , 2023年6月 , pp.46-53

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病院前診療の目的は，「早期医療介入」と「早期決定的治療（早期医療搬送）」の2つである。本稿では，病院前診療のツールとして用いられるドクターカー（カー），ドクターヘリ（ヘリ）をどのように活用すればこれらの目的が達成されるのか，について解説する。

【Part 3】さらに視野を広げる

7．ヘリ＆カー運用の極意：こうすれば効果的で人が集まるかも!? 小林　誠人 2巻1号 , 2023年6月 , pp.54-59

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ドクターヘリ（DH），ドクターカー（DC）といった「乗り物」を各地域で目にするようになった。しかしながら運用実態を詳細に把握することは困難であり，医療ツールとしての効果は明らかにされていない^＊1。

　本稿では，筆者が長年関わっている地域の実績，取り組みなどを示しながら，DH/DCを用いた地域救急医療体制がもたらす効果と将来展望を概説する。

8．重症呼吸不全患者を搬送するカー運用の秘訣：ECMO transport 藤田　健亮 2巻1号 , 2023年6月 , pp.60-66

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新型コロナウイルス感染症パンデミックで，局所的に医療の需要と供給のバランスが崩れ（かけ）た。こうした状況下では，本来であれば（＝供給が需要を十分に上回っているノン・パンデミック下であれば）救い得た患者を失うこともある。そのため，需要-供給バランスが崩れた地域から，医療資源に余裕がある地域に患者を運び，そこで治療を行って救命する—そのような取り組みが全国各地で行われた。

　重症患者搬送は，以前から国内いくつかのエキスパート施設で行われていたものの，コロナ禍で一気に脚光を浴びた。そして，重症患者搬送専用車両「通称ECMO car」（後出の図2参照）の全国配備が進み，2023年4月の時点で14台が各地に配備された。本稿では，なぜECMO carが必要か，どのようにECMO carを使用すべきか，その実際の運用方法も含めて紹介する。

9．フランスのSAMUシステムは，なぜ世界で手本とされるのか高橋　耕平 2巻1号 , 2023年6月 , pp.68-72

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日本とは異なり，フランスの病院前診療ではドクターカー運用以外にも医師の関与が大きい。医師が病院前診療に関与するメリットは現場での早期治療だけでなく，診断的評価による医療リソースの有効活用であると筆者は考える。

　本稿では，フランスでの病院前診療体制である公立救急医療支援組織（SAMU）とMobile ICU（MICU）と呼ばれるドクターカーに関する概説を，筆者が2018年にSAMU視察やMICU同乗研修で得た知見も含め紹介する。

10．経済成長の著しいインドネシアの救急医療体制岩元　祐太 2巻1号 , 2023年6月 , pp.74-78

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毎年，数百万人の人口増がみられるインドネシアは近年，経済誌にもよく取り上げられ，その成長加速は目覚ましい。一方で，同国では死亡者の7割は病院にたどり着く前に亡くなっているといわれる。病院前の救急医療システムは確かに黎明期にあるといえるが，行政主導で仕組みが作られ，運用段階に入って7〜8年が経過する。

　本稿では，いよいよ本格的な整備が始まったインドネシアの病院前救急医療体制について，現状を紹介する。ライドシェアサービスの存在など，日本にはなかった発展の仕方も秘めた同国の課題，今後の方向性にも触れたい。

特集2　ERスタンダード　心肺蘇生—まさかの！　ガイドラインが使えないとき，あっても悩むとき

扉佐藤　信宏 , 舩越　拓 2巻1号 , 2023年6月 , pp.79

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普段から院外心停止に対応している救急科専攻医も，そうでない各科当直医も，心肺蘇生については講習会等を通じて，一通りの知識やスキルは学んでいると思われる。そこで本特集では，①蘇生の基本を復習したうえで，②「ガイドライン（JRC 蘇生ガイドライン2020）には答えが載ってないもの」「皆，やってるけど，ホントにそれでよいのか悩ましいこと」に対し，1つの解を提示することを目指す。さらに，③番外編として，蘇生領域の近未来に関わるトピックも紹介する。

【Part 1】基本をおさらい編

1．心肺蘇生アップデート—ガイドラインの改訂ポイントから最新研究まで要点を押さえよう本間　洋輔 2巻1号 , 2023年6月 , pp.80-89

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心肺蘇生については，講習会等を通じて一通りの知識やスキルを学んでいる読者が大半であろう。一方で，『JRC蘇生ガイドライン2020』^1）をアップデートできていない方々のために，本稿では主に成人を対象とした，日常診療で必ず押さえておくべき心肺蘇生について，フローにまとめたうえで改訂点をかいつまんで解説する。エビデンスが弱い部分や将来的に変わりうる部分についても補足し，以降の章の導入としたい。なお，AHA^2）やERC^3）とコンセンサスが得られていない点は適宜触れる。

【コラム】心停止：病院前と病院内の違いとは？—4つの視点から考えるOHCAとIHCA 三池　慧 , 内藤　貴基 2巻1号 , 2023年6月 , pp.90-93

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病院外心停止（OHCA^＊1）と病院内心停止（IHCA^＊2）は，単に心停止の発生場所が異なるだけでなく，原因疾患や予後が異なる。本稿では，これらの違いに加えて，蘇生処置のなかでもECMOの適応や家族対応の側面についても述べる。院内では極力，心停止にならないように努めることも重要であり，IHCAの予防策にも言及する。

2．今さら聞けないMCの仕組み—病院前医療の限界を知り，救急隊との連携を進めよう小林　靖孟 2巻1号 , 2023年6月 , pp.94-101

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メディカルコントロール（MC）とは，医学的な質を保障する取り組みをいう^1）。心停止症例の診療において救急隊と救急医との連携は欠かせず，連携のためにはMCを理解していなければならない。

　本稿では，地域の救急医療に関わる医師が知っておくべきMCの基本を解説する。

【Part 2】コントラバーシャル編

3．最善のプレホスピタルケアとは—救急隊との分業・連携を意識した心停止対応の勘所金畑　圭太 2巻1号 , 2023年6月 , pp.102-108

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ドクターカーやドクターヘリといった病院前救急診療（プレホスピタルケア）で共通するメリットは「早期医療介入」，つまり傷病者が病院に到着する前から診療を開始できることであり^1），心停止傷病者に対するアドレナリン投与で強調されるような「早さ」を最大限に提供しうる点である。本稿では，救急隊のみでの活動との違いを紹介しつつ，医師が救急隊とともに活動するコツも紹介する。

　なお，ドクターカーには車両の種類や待機場所，乗車する医療スタッフの人数や職種，要請基準，さらには運用する母体などさまざまな運用形態がある。本稿ではドクターカーの運用方式^＊1は主旨でないため詳細は割愛し，筆者が勤める前橋赤十字病院（以下，当院）と同じ方式（消防局所有の救急車と救急隊1隊が病院に待機する「ワークステーション方式」で，医師1人，看護師1人が乗車する）を例とする。

4．体温管理療法—どのような患者に対して，どうやって管理するか岡田　遥平 2巻1号 , 2023年6月 , pp.110-115

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蘇生に成功した心停止の患者で最も懸念されるのは，低酸素脳症による不良な神経学的予後である。体温管理療法は，心停止患者の二次的な脳障害を最小限に抑えることを目的として，目標体温を設定し，24〜72時間程度にわたり維持・管理することである。現在，各種の診療ガイドライン^1〜3）で推奨されている唯一の脳保護のための介入法である。

　本稿では，体温管理療法について「どのような患者に対して，どのように管理するべきか」を，これまでの研究と診療ガイドラインでの記載について概説する。

5．アドレナリンは有効なのか？　アミオダロン一択でいいのか？—RCTの限界もふまえて有効性を考える松山　匡 2巻1号 , 2023年6月 , pp.116-125

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心肺蘇生（CPR）を行う際に，早期除細動，質の高い胸骨圧迫などの一次救命処置（BLS）に反応がない場合，二次救命処置（ACLS）の一環として薬物療法が試みられる^1,2）。一方で，現在までに，心停止後の予後改善を示した薬剤は非常に限られている。

　本稿では，心停止に対する現在の各薬剤の治療効果に関するエビデンス，今後の課題（knowledge gap）を解説する。

【コラム】心肺蘇生中の気管挿管—胸骨圧迫の質を落とさずに挿管するには？竹内　慎哉 2巻1号 , 2023年6月 , pp.126-130

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心肺蘇生中の気管挿管は，難易度の問題や胸骨圧迫中断のリスクがある一方で，誤嚥を防ぎうるなどの益もある。本稿では心停止時の気管挿管について，改めてメリット/デメリットを確認したうえで，挿管のコツやタイミング，挿管後の人工呼吸器設定に関してエビデンスを交えつつ解説する。

6．ECPRの導入—プログラム構築/再考のためのエッセンス藤田　健亮 2巻1号 , 2023年6月 , pp.132-143

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体外循環式心肺蘇生（ECPR）は蓄積されたエビデンスによる患者選択の適正化，管理方法の進歩，機器の性能向上などにより，近年，心肺蘇生において重要な武器となってきている。有効性についての検討も進み，日本とは異なるシステムやプログラムにより，良好な予後を得たとする報告もある。

　本稿では，ECPRに関するこれまでのエビデンスをさまざまな観点から見直し，各地域におけるECPRプログラムの構築/再考の一助となることを望む。

7．救急外来での蘇生中止の最適なタイミング—不確実性のなかでの判断は「診断プロセス」に通じる柴橋　慶多 2巻1号 , 2023年6月 , pp.144-150

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院外心停止患者の予後は不良である。とりわけ，病院到着時点で蘇生に至っていない場合には，救命できないケースが大半であり，蘇生チームリーダーには，蘇生行為をどの時点で中止するかの判断が求められる。

　本稿では，救急外来における蘇生中止とその最適なタイミングについて述べる。できるかぎり文献的考察や事実に基づいた記述を心掛けたが，テーマの性質上，私見を述べざるを得ない部分もあった。倫理的に議論のあるテーマも多いがご容赦いただき，批判的考察の材料としてほしい。

【コラム】救急外来での蘇生中止の伝え方，死亡確認時の注意点—FPDRの有効性も視野に野路　咲 , 舩越　拓 2巻1号 , 2023年6月 , pp.152-156

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院外心停止は突然のイベントであり，特に患者家族はその瞬間から長期にわたって強いストレスに曝される。一方で，救急外来でのdifficult communicationについて臨床医がトレーニングを受ける機会は少なく，医療者にとっても心理的負担は大きい。

　本稿では，心肺蘇生中止の際に家族に対していかに対応するかを解説するとともに，蘇生処置時に家族が立ち会うこと（FPDR^＊1）について，その実際や今後の方向性まで考察する。さらに，死亡確認時の対応にも触れる。

【Part 3】番外編

8．蘇生中の超音波検査—PEA患者の救命率向上を目指して舩冨　裕之 2巻1号 , 2023年6月 , pp.158-163

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焦点を絞った蘇生中の超音波検査については多くの研究がなされ，原因検索や短期的予後の予測など，活用範囲は多岐にわたるとされる。一方で，実際には評価自体が難しいものや，胸骨圧迫中断時間の延長といった課題もある。

　本稿では近年のエビデンスを交えながら，蘇生エコーの現実的な活用術を紹介しつつ，現状の課題にも迫っていく。さらには今後の展望にも言及する。

【コラム】一般市民参加を促す社会的工夫—救命意欲を高める教育とスマホ活用で救命率を向上させる西山　知佳 2巻1号 , 2023年6月 , pp.164-168

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心停止は，突然いつでも，どこでも，誰にでも起こる。その場に偶然居合わせた市民（バイスタンダー）には，秒単位での迅速な心肺蘇生（CPR^＊1）と自動体外式除細動器（AED^＊2）を用いた電気ショックといった救命行動をとることが求められるが，市民にとってそれらの実施は容易ではなく^1），十分に実施されているとは言い難い。

　JRC^＊3蘇生ガイドライン2020^1）の第9章「普及・教育のための方策」では，心停止患者の救命率向上には，科学に基づいた取り組みを地域社会へ“普及”させ，医療従事者のみならず市民への“教育”を進めることで，救命の連鎖を機能させる必要があると強調されている。本稿では，市民が救命行動をとる際に生じる障壁，および市民の救命意欲を高め救命行動を促すための戦略や工夫について述べる。

【コラム】蘇生領域のエビデンス創出で日本が生き残るには—“データ量世界一”のレジストリが鍵を握る田上　隆 2巻1号 , 2023年6月 , pp.170-172

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日本には，研究者と総務省消防庁の尽力により，世界的にも早期から心停止症例の大規模レジストリが存在している。これらのデータを使用して，心停止研究領域で多くの重要な観察研究が世界に発信され，国際蘇生ガイドラインにも多く引用されている^1〜4）。

　本稿では，今後も引き続き，心停止領域で日本が世界をリードするエビデンスを創出するにはどのような課題があるのか，そして考えられる解決策について私見を述べていきたい。

連載　いつだってストラテジックにゆこう・第2回

モチベーションを活かす三本柱渡瀬　剛人 2巻1号 , 2023年6月 , pp.175-177

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「やる気しない…」。自分のキャリアで幾度となくつぶやいた一言です。もちろん，一時的な気分の浮き沈みによってやる気が出たり出なかったりしますけど，今回はもっと長いスパンでのやる気，つまり「モチベーション」について触れてみたいと思います。

　自身の年次が上がり，たくさんの若いスタッフと関わることが多くなった今，組織の成長・健全さを保つという意味でも，モチベーションをもつことが大切どころか必要不可欠だと感じています。

連載　中毒事件簿・File 2

ヨガボール殺人事件千葉　拓世 2巻1号 , 2023年6月 , pp.178-181

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「ヨガボール殺人事件」と聞いたら，皆さんは何を思いますか？　なんだか推理小説や，探偵もののアニメやテレビドラマのなかでのお話のような響きです。ヨガボールで人を殺すって一体何なんだろう，と思う方もいらっしゃるでしょう。実はこれ，2015年に香港で実際に起こった事件なのです^1）。

連載　裏庭でソロキャンプ・第2回

ターニングポイント東　秀律 2巻1号 , 2023年6月 , pp.183-185

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　初めての胸腔ドレナージは研修医一年目の七月だった。ガウンの中のスクラブには汗がボトボトと落ち、滅菌手袋も皮膚が透けるくらい内側はじっとり湿っている。

　当日外来から入院した膿胸の患者は、年齢は六十手前だっただろうか。午後のカンファレンス後、呼吸器科の部長先生に外来で呼び止められた。

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目次 2巻1号 , 2023年6月

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掲示板 2巻1号 , 2023年6月 , pp.17

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Book Review　夜の勤務のサバイバル中山　祐次郎 2巻1号 , 2023年6月 , pp.182

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次号予告 2巻1号 , 2023年6月 , pp.189

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編集部だより 2巻1号 , 2023年6月 , pp.190

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基本情報

BeyondER
2巻1号
(2023年6月発行)

電子版ISSN：2758-7053 印刷版ISSN：2758-3597 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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