臨牀消化器内科 34巻3号 (2019年2月)

特集 CT colonography 2019―今日までの進歩と現状,そして大腸がん検診への展開

巻頭言 永田 浩一
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大腸CT検査が発表されたのは1994 年である.それから,すでに20年以上が経過した.この間に大腸精密検査の主流は,注腸X 線検査やS 状結腸鏡検査から全大腸内視鏡検査に移行した.その背景には,内視鏡検査による大腸腫瘍性病変の診断精度と治療技術が飛躍的に進歩したことがある.一方,がんの部位別年齢調整罹患率の年次推移を見ると,1990 年代に第1位であった胃癌は近年までに急激に減少しているのに対して,大腸癌は右肩上がりに増加し2015年のがん統計予測では胃癌を抜き第1位となった.大腸腫瘍性病変の診断・治療技術が進歩しているのに,なぜ大腸癌罹患数・死亡数は増えているのだろうか? Helicobacter pylori菌の感染率の低下に伴う胃癌の減少,あるいは高齢化の進行など要因はさまざまである.しかし,年齢調整においても,大腸癌の罹患率や死亡率は高止まりしているのが現状である.

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大腸CT検査の最初の報告からすでに20年余りが経過した.その間,CT機器は多列化・高速化が進み,現在では,きわめて高精細な3 次元画像の作成が可能となった.タギングを含む腸管前処置や撮影手法の進歩に伴い,大腸CT検査の精度は多数の大規模臨床試験で担保されている.本邦の検診受診率や精検受診率は低迷しており,これが本邦における大腸癌死亡者数が高止まりしている要因と考えられる.2012年には,大腸CT 検査は保険収載されており,今後は大腸CT検査の積極的な活用が望まれる.そのためにも遅れている検査の標準化やガイドラインの整備,不足している読影処理能力の担保が急務である.

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本邦では年間約5万人が大腸癌で命を落としており,大腸CTの有効活用に期待がもたれている.大腸CTはタギング(経口造影剤による標識)を行うなどの標準的方法を行うことにより高い診断精度が得られ,本邦を含め世界各国で行われたいくつかの大規模研究において診断精度が高いことが証明された.平坦病変の診断能力は大腸内視鏡より低い点には留意が必要であるが,大腸内視鏡と比べてすべてが劣るというわけではなく,ひだ裏や肝彎の曲がりなど大腸内視鏡より優れる領域がある.実際に本邦において検診や精密検査に大腸CTを導入している施設から,着実に癌が発見できることが報告されている.

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CT 技術の進歩により検出器が多列化され,短時間で高精細な画像が得られるようになった.これによりCT colonography の画質も担保されるようになった.画像の解析に当たってはワークステーションが必須である.今日のワークステーションは,virtual dissection(仮想展開画像),electronic cleansing(電子洗浄)などを行うさまざまな3D 解析ソフトウエアが搭載されている.CAD( computer aided detection,コンピュータ診断支援)も日常診療で使用可能となっている.新たなソフトウエアは読影時間の短縮や死角となる病変の描出に寄与する可能性がある.しかし,歪みや評価すべき画像の増加,特異度の低下など,悪影響も考慮する必要がある.精度を上げるための開発は続けられているが,まずは標準的な方法での読影が求められる.

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CT colonography (CTC)の前処置および撮影方法はさまざまなエビデンスが報告されているが,エンドポイントは患者の不利益とC‒RADS(CT colonography Reporting And Data System)評価のスコアC0(診断できない)を防ぐことにある.そのためには撮影方法の標準化をはかることが重要で,それは対策型大腸がん検診における精検受診率の向上にも繫がると考える.前処置は患者に応じてコロンフォート® 内用懸濁液,ニフレック® とガストログラフイン® を用いたPEG‒CM 法,マグコロールP® とガストログラフイン® を用いた高張MP‒C 法が代表的であり,鎮痙剤は不利益が利益を上回っているという理由で使用は推奨していない. 撮影は低線量撮影による被ばく低減をはかることと,大腸の1 区分以上が2 体位とも虚脱していないことが重要で,読影精度の向上に繫がる.

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近年,CT コロノグラフィー(CTC)のニーズが高まっている一方,X 線被ばくを伴う検査ゆえ,その適正使用と標準化が課題となっている.放射線診療の大原則は「行為の正当化」と「防護の最適化」であり,X 線を扱う医療従事者すべての共通認識とする必要がある.「適切な検査適応」についてはエビデンスに基づいた明確な検査目的の設定が必要である.「X 線被ばくの最適化」については国際放射線防護委員会が提唱するALARA (as low as reasonablyachievable)の原則に則る必要がある.放射線診療の大原則を遵守して,不必要な被ばくを最小化し,合理的なCTC の実施に努めるべきである.X 線量を下げると画質は劣化し,診断に影響しうる.しかし,求めるべきは「検査目的に必要十分な画質」であって「きれいな画質」ではない.本稿ではCTC の低線量撮影法について概説するとともに,放射線診療にまつわる重要事項(診断参考レベル,偶発所見,value‒based medicine)と将来性のある新技術についても紹介する.

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CT colonography (CTC)は,近年多くの施設で急速に導入されるようになってきている.大腸病変を拾い出す能力は大腸内視鏡検査に劣らないことが多くの大規模臨床研究からわかってきた.対策型大腸がん検診においては便潜血検査が陽性になった患者に対する精密検査として,CTC はすでに確立した地位を得ているといえよう.ただし日本全国のどこの施設で誰が読影しても同等の診断精度を得るためには,すべての読影医がCTC の特徴を理解し標準化した読影法で読影する必要がある.本稿では現時点で標準的とされる読影法および明確なレポートを作成するための方法について述べる.

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CT colonography (CTC)は2012 年1 月に保険適用となって以来,多くの施設で行われ,大腸検査の一端を担うべく拡まりつつある.当院では2003 年5 月よりCTC を開始し,2018 年9 月までに28,950 例実施してきた.精度は,10 mm 以上92.5%,6 mm 以上88.1%と良好な成績を得ている.偶発症は,直腸穿孔が疑われた1 例(0.0035%)のみである.われわれは,①受容性の高いCTC を大腸内視鏡(CS)の前段階に行うことで大腸検査の受診率を上げる,②CTC の画像を見せることで受診者がCS の必要性を納得しやすい,③CTC を行うことでCS を効率よく運用し,検査,治療に内視鏡医が専念できる,と考えている.CTC を便潜血検査とCS との間の検査と位置づけ,便潜血で拾い上げ,CTC で診断し,CS で治療することで,大腸癌の早期発見,早期治療につなげることが可能である.

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大腸癌の精密検査法は全大腸内視鏡(total colonoscopy;TCS)であるが,高齢者は全身状態の低下や併存症により,内視鏡検査を容易に実施できないケースも少なくない.高齢者の多い離島病院においてCT colonography(CTC)を導入したが,6 mm 以上の病変の発見精度は,TCS と比較して感度94%,特異度92%であり,偶発症は0%であった.CTC は,高齢者に対しても,安全にそして有効に活用できる検査法であると考えられた. 85 歳以上の超高齢者に対するTCS 精密検査後の評価では大腸癌関連死はわずか7%であった.CTC は内視鏡検査より検査時間が短く,消化管前処置の負担が少なく,高齢者にも行いやすい.高齢者の大腸癌の予後や身体状況を考慮すると,精密検査として受容性の高いCTC を先行し,トリアージの後,TCS に移行する方法もありうると考えられた.

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わが国は,大腸がん検診の検診受診率50%を,精検受診率は許容値70%以上(目標値90%以上)を達成することを目標としているが,未だ達成には至っていない.最近,精密検査の手法として,全大腸内視鏡検査(TCS)で行うことが困難な場合は,CT colonography( CTC)あるいは,S状結腸内視鏡検査と注腸X線検査の併用法のいずれかを実施することが提言された.精検法としてCTC の本格的導入の機運が年々高くなってきている.CTC には精検受診率を向上させるキャパシティが十分にあり,診断精度はTCS と比べて遜色がなく,苦痛が少なく,安全性が高く,受診者の受容性も良好であることから受診率向上への寄与が期待できる.検診受診率に関しては,便潜血検査免疫法による検診に加えて,画像診断法としてTCS と同様にCTC が検診項目に加えられるようになれば受診率50%達成の推進力となる可能性がある.

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CT colonography(CTC)の病変検出には限界があり,それに伴って診断の限界が存在する.CTC の診断限界の原因と関与する事項は,①前処置に関する因子,②被検者に関する因子,③病変に関する因子,が挙げられる.また低線量かつ非造影検査であることより,腸管外病変の評価に限界がある.それらのことを理解したうえで,CTC を行うことが重要である.

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大腸CT 検査では,仮想内視鏡像,仮想注腸造影像,multi‒planar reconstruction像を駆使することにより,表面型腫瘍の診断精度は向上してきたと考えられるが,隆起型腫瘍と比べ,未だ低い現状にある.大きな表面型腫瘍である側方発育型腫瘍の非顆粒型を対象とした場合でも,同様に低いことが報告されているが,腺腫と比較すると癌の診断精度は高い.表面型の形態を示すことが多いsessile serrated adenoma/polyp (SSA/P)の診断精度も低いが,特有のCT 所見(mucus cap)に着目すれば,その診断精度は向上することが期待される.炭酸ガス自動注入器やfecal tagging などの技術革新,あるいは表面型腫瘍やSSA/P のCT 検査所見の特徴を熟知することにより,診断能はさらに向上すると考えられる.

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わが国における大腸癌死亡数の増加には大腸がん検診の検診受診率や精検受診率の低さが大きく関与している.また,2016 年に日本消化器がん検診学会大腸がん検診精度管理委員会から,大腸がん検診の精密検査について「精密検査を全大腸内視鏡検査で行うことが困難な場合は,大腸CT 検査あるいは,S 状結腸内視鏡検査と注腸X 線検査の併用法のいずれかを実施する」という趣旨への変更が妥当,との報告がなされた.そこで本稿では,大腸がん検診の精密検査としての地位を確保しつつある大腸CT 検査を日本全国どこの医療機関で受けても同じような精度で診断できるように安全性・腸管前処置法・前投薬・送気方法・撮影法・読影法の6 項目の標準化に向けての課題について言及した.

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大腸がん検診における検診・精検法として,大腸CT 検査は大腸内視鏡検査を補完する立場を確立しつつある.それは大腸腫瘍性病変に対する十分な診断精度を有することについて,日米欧から数多くのエビデンスが構築されたためである.学会を中心として大腸CT 検査の標準化に必要な制度作りが進められているが,標準的な読影方法によるトレーニングを積んだ読影医の整備,正しく検査を実施する診療放射線技師の育成,そして曖昧となっている読影範囲などの重要課題もある.大腸CT 検査の標準化に向けた活動を継続してきた日本消化器がん検診学会で大腸CT 検査技師認定委員会が設立されるなど,エビデンスに基づく大腸CT 検査の標準化が急速に展開しつつある.

連載 内視鏡の読み方

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消化管病変の内視鏡観察では拡大観察を行う前に必ず通常観察(非拡大観察)で病変全体の観察を行うことが重要である.その時点で無意識のうちに腫瘍‒非腫瘍性病変の鑑別および粘膜下層(SM)浸潤の有無を考えているはずである.本稿では初学者の内視鏡医を中心に想定し,内視鏡観察における大腸腫瘍性病変の特徴所見につき概要を説明する.より理解を深めていただければ幸いである.

連載 検査値の読み方

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レプトスピラ症は病原性レプトスピラの感染によって引き起こされる人畜共通感染症の総称である.ネズミなどの保菌動物の尿中に排泄された病原性レプトスピラにより汚染された水や土壌から経皮的,経粘膜的あるいは経口的に感染することで発症する.感冒様症状の軽症型から多臓器不全を呈し,時には致死的となる重症型まで多彩な臨床像を呈する.とくに黄疸,出血,腎不全の三主要徴候を伴う重症型レプトスピラ症はワイル病と呼ばれている.わが国では衛生環境の改善により発生数は激減したが,今日でも感染の機会がなくなったわけではない. 東京都23区内で感染,発症したワイル病を経験した.都心部でのワイル病の発症は比較的まれであり,生検にてその肝病理を評価しえたのでここに報告する.

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目次

英文目次

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平成30 年11 月1 日(木)~4 日(日),晴天に恵まれたなか,平成最後のJDDW 2018 の一環として第96 回日本消化器内視鏡学会総会が神戸コンベンションセンターで開催されました.会長は藤田医科大学ばんたね病院消化器内科の乾 和郎教授が務められました.JDDW としては過去最高の22,218 人が参加されたとのことです. JDDW ならではの企画である統合プログラム6 題,女性医師・研究者プログラム,医療セミナー,メディカルスタッフプログラム2 題のほか,日本消化器内視鏡学会としては,特別講演2 題,招待講演3 題,主題としてシンポジウム4 題,パネルディスカッション3 題,ワークショップ6 題(コアセッション3 題を含む)と,いずれも魅力的なプログラムが企画されておりました.私が司会を担当した「小腸内視鏡の新たな展開」というシンポジウムでも多くの先生方にご参加いただきましたが,デジタルポスターセッションも含め,どの会場もたくさんの参加者で溢れており,会場によっては立ち見が出るほどで,素晴らしい発表と活発な討論が行われておりました.

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編集後記

基本情報

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臨牀消化器内科
34巻3号 (2019年2月)
電子版ISSN:2433-2488 印刷版ISSN:0911-601X 日本メディカルセンター

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