臨床雑誌整形外科 64巻5号 (2013年5月)

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2007年1月~2011年6月に人工関節置換術を行った1400関節に対し、肺血栓塞栓症(PTE)を最終的な予防対象として静脈エコー検査を行った。内訳は人工膝関節全置換術(TKA)961関節、人工膝単顆置換術(UKA)111関節、人工股関節全置換術(THA)328関節であり、全術式の下肢深部静脈血栓(DVT)発生率は術前12.9%、術翌日39.1%であった。術翌日の術式別DVT発生率はTKA 44.2%、UKA 36.9%、THA 24.6%で、発生部位はヒラメ静脈が多かったが、無症候性のDVTや症候性のPTEの発生は認めなかった。DVTの多くは術翌日までに形成されると考えられ、術前と離床前のエコー検査にてDVTを検出するとともに、静脈血栓塞栓症予防プロトコルによりDVTの増大と新規発生を抑制することで致死性のPTEの発生を回避できると考えられた。

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関節リウマチ(RA)肘関節(Larsen分類gradeI~II)に対し、近位棚形成術を行った30肘(平均RA罹患期間15.3年、平均手術時年齢53.2歳、平均経過観察期間4.5年)について報告した。術後は肘関節の伸展・屈曲制限、前腕の回内外、Mayo Clinic elbow performance index、疼痛visual analogue scaleが有意に改善した。画像的評価では肘外反角と滑車の高さが減少し、外反変形が有意に進行しており、肘頭の高さが減少傾向を示した。また、Larsen分類は80%が不変であったが、5例はgradeが進行した。低侵襲で簡便に施行できる近位棚形成術は、広範囲の滑膜切除を可能とし、腕橈関節に起因する痛みを抑制するとともに肘関節の安定性をも獲得できる関節温存手術であり、今後広く行われてよい術式と考えられた。

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Kapandji opposition testの評価法を改変したmodified Kapandjiスコアを用いてThompson法による母指手根中手(CM)関節形成術の治療成績を評価した。術後6ヵ月以上経過観察し得た10指の伸展・内転、屈曲・外転方向のmodified Kapandjiスコアは、母指に障害のない正常群より有意に低く、本手術後は伸展・内転が有意に制限されることがわかった。また、その他の項目として疼痛、ピンチ力、disabilities of the arm,shoulder and hand(DASH)スコア、患者満足度を調査した結果、術後は疼痛visual analogue scaleの有意改善とピンチ力の改善傾向が得られ、最終観察時のDASHスコアは良好で患者満足度も高かった。Thompson法による母指CM関節形成術は除痛と日常生活動作の改善に有効な治療法であった。

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回旋蝶番型人工膝関節(Modular RHK)を用いて人工膝関節(TKA)再置換術を行い、術後5年以上経過観察し得た6例の中期成績を評価した。6例は全例変形性膝関節症(膝OA)の女性で手術時平均年齢は76.5歳であり、臨床評価(日本整形外科学会膝OA判定基準、歩行状態、疼痛、膝関節可動域、満足度)と、単純X線評価(放射線透過性線像の有無、皮質骨肥厚の有無、インサートの摩耗の有無、膝蓋大腿関節の適合性)を調査した結果、歩行不能例はなく、弛みを認めた1例を除く5例は歩行時痛もなく、ほぼ良好な成績であった。TKA再置換術におけるModular RHKは、従来の適応以外にも一度の手術で確実に治療効果を得る必要のある高齢者が適応になると考えられ、下肢筋力低下を合併する症例ではADLの向上と維持が期待できると考えられた。

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AO/OTA分類41-C1を呈した不顕性の脛骨近位脆弱性骨折5例(男1例、女4例、平均年齢77.8歳)について報告した。全例軽微な外傷で受傷し、受傷後8日に初診した1例を除く4例は受傷後早期に初診したが、5例とも歩行は可能で、臨床症状から骨折を疑いギプスシーネ固定と免荷が指示されていた。また、全例初診時単純X線像で明らかな骨折を確認できなかったが、3例はMRIで、2例は再診時の単純X線像でそれぞれ診断可能であり、治療は保存的治療が4例、手術的治療は1例であった。脛骨近位不顕性脆弱性骨折はAO/OTA分類41-C1でも歩行可能なことが多く、治療方針に迷いが生じるが、症状から骨折を疑った際には固定と免荷を指示すべきであり、MRIや再診時の単純X線像で骨折を確認できた場合には、骨折線が硬化するまで免荷を継続したほうが安全と考えられた。

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13歳女。脊柱変形を主訴とした。2歳時に脊柱側彎症を指摘されたネコなき症候群患者であり、5歳時に胸椎部主彎曲Cobb角60°であった側彎は急速に進行し、体幹バランス不良による歩行困難を来した。紹介受診時には脊柱立位正面像でTh5~Th13に左凸のCobb角141°、Th13~L5に右凸のCobb角58°の側彎を認め、側面像での胸椎後彎角は45°であり、染色体異常疾患に合併した進行性の症候性側彎と診断した。術中直達牽引下にTh1~L4までの椎弓根スクリューとサブラミナテーピングを併用した後方矯正固定術を行ったところ、Th5~Th13のCobb角は65°に改善し、脊柱の矯正に伴って歩容や上肢動作の改善が得られた。

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62歳男。腰痛、両下肢脱力感を主訴とした。抗血小板薬内服中の患者で、腰痛、両下肢痛としびれ感に対して硬膜外ブロックを2回受けた後に症状が悪化し、受診時には坐位・立位保持とも困難で、両側下肢の深部腱反射低下と不全麻痺、頻尿と残尿感を認めた。腰椎MRIではL2/L3高位の脊柱管内に左背側から硬膜管を圧迫する腫瘤を認め、腫瘤はT1強調画像で等輝度、T2 強調画像で等~高輝度を示し、環状の造影効果は椎間孔にまで及ぶ紡錘状を呈した。服薬歴や治療歴から硬膜外血腫を疑ったが、抗血栓薬中止後も麻痺症状は改善せず、腫瘤摘出術を行ったところ、摘出標本は組織学的に軟骨終板を含んでおり、硬膜管背側脱出型腰椎椎間板ヘルニアと診断した。術後は症状が改善して独歩可能となり、術後1年経過現在ヘルニアの再発は認めていない。

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78歳男。腰部~左臀部痛、右下肢脱力による歩行障害を主訴とした。腰部硬膜外ブロックを受けた翌日より右下肢脱力が出現し、初診時には両下肢の腱反射と筋力の低下、軽度の排尿遅延がみられた。単純X線像ではL2/L3、L4/L5、L5/S1椎間板変性とL2/L3の左側凸の楔状変形を認め、造影MRIではL3椎体レベルの脊柱管内背側にT1強調画像で脊髄液よりやや高信号を示し、T2 強調画像では低信号領域と高信号領域が混在する占拠性病変と、病変周囲の造影効果と馬尾の右側偏位を認めた。硬膜外腫瘍を強く疑い広範椎弓切除術に広範な除圧下での病変摘出を行ったが、L2/L3椎間板腔の狭小化、真空現象と同部位での楔状変形を認め、術後の病理学的所見と併せて椎間板変性が高度なL2/L3からの硬膜管背側脱出椎間板ヘルニアと診断した。術後は下肢痛の消失と筋力の回復を認めた。

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83歳女。腰痛と両下肢痛を主訴とした。腰椎分離すべり症の診断で脊椎インストゥルメンテーション手術が行われたが、術後7日目よりCRP上昇、発熱、創部の発赤が出現した。術後11日目には創部から排膿を認め、膿からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されたため、インストゥルメンテーションを抜去して2週間の持続洗浄を行うとともに、9週間にわたってバンコマイシン塩酸塩やアルベカシン硫酸塩を投与したが、再燃を繰り返した。従来の抗MRSA薬では根治困難と考えてリネゾリド(LZD)を開始し、スルファメロキサゾール/トリメトプリム合剤とクリンダマイシンの3剤併用とした結果、LZDが奏効し、MRSA感染は速やかに鎮静化した。

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57歳女。右手関節痛を主訴とした。転倒時に右手をついて受傷し、単純X線像では転位の少ない橈骨遠位端関節外骨折と尺骨茎状突起骨折、遠位橈尺関節(DRUJ)の開大を認めた。橈尺骨遠位端骨折のほかに掌側あるいは背側橈尺靱帯損傷もあると診断して3週間の上腕ギプス固定を行ったものの、受傷後5週に尺骨頭掌側脱臼(DRUJ掌側脱臼)を生じた。MRIでは三角線維軟骨複合体(TFCC)が尺骨窩から剥離しており、また、DRUJの不安定性を認めたため、尺側手根伸筋の半裁腱を用いてTFCC再建術を行った結果、術後は軽度の可動域制限を認めるものの、日常生活動作に不自由はない。

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74歳女。左手関節痛を主訴とした。約1年前より特に誘因なく主訴を自覚していたが、約5ヵ月前に土手で左手を突っ張った後から痛みが増大し、受診時には左手関節の運動痛と腫脹、月状骨部の圧痛、握力低下、手関節の可動域制限を認め、月状三角骨解離の誘発テストは全て陽性であった。X線像では手根アーチの不整、舟状骨のring sign、舟状骨および月状骨の掌屈、近位手根列掌側回転型手根不安定症(VISI)変形を認め、月状三角骨解離と診断した。VISI変形が不可逆的な慢性例であったが、患者はParkinson病を合併した高齢者であり、手を使う活動性が低いことから、痛みの原因である月状骨摘出のみを行ったところ、術後は手関節の腫脹や痛みは認めず、握力と関節の可動域制限は回復して患者の満足度は高かった。

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80歳男。左手関節の疼痛・腫脹を主訴とした。肺癌治療中の患者であり、初診時には左手関節背側のびまん性の発赤・熱感・腫脹を認め、単純X線像では高度な手根骨の骨萎縮と有頭骨の骨破壊がみられた。CTでは有頭骨の骨破壊と融解像、手背部に膨隆する軟部腫瘍を認め、血管造影では橈骨動脈により栄養される膿瘍濃染像が描出された。有頭骨への転移を疑って生検術を行い、肺癌の転移と診断されたが、経過中に呼吸状態が急激に悪化し、有頭骨への放射線療法とモルヒネ塩酸塩水和物の内服により十分な除痛が得られたものの、肺癌進行のため約3ヵ月後に死亡した。

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35歳女。左手掌刺傷、止血困難を主訴とした。左手掌手根管出口部母指球皮線の尺側に尖刃による刺創(約5mm)を認め、創の部位より示指~小指の神経血管腱損傷を疑い、洗浄・皮膚縫合処置を行ったが、受傷4日後に左母指が屈曲しづらいことに気付いた。左母指指節間関節の自動屈曲は不能であり、左手3-D CTでは長母指屈筋腱(FPL)の途絶と遠位断端の蛇行を認めたため、左FPL断裂と診断して腱縫合術を行った。術中、表面の創から橈側に向かって尖刀が貫通した痕跡を認め、3-D CTによる断裂腱の描出部位と手術所見はほぼ一致していた。術後は早期運動療法を行い、術後5ヵ月の患指の%総自動運動域は94%と改善していた。

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症例1は61歳女で、左外反扁平足変形を主訴とした。症例2は62歳女で、両外反偏平足変形を主訴とした。いずれも関節リウマチ(RA)による高度外反偏平足であり、インストゥルメンテーションを使用した変形矯正三関節固定術を行い、矯正に伴う踵立方関節の間隙には腸骨より採取した自家骨を移植した。また、強固で優れたアライメント保持が期待されるロッキングプレート固定を行い、後療法は4週間の免荷のプロトコールで荷重歩行訓練を行ったが、インプラントの折損や矯正位損失などの合併症は認めなかった。足部のインストゥルメンテーション手術での後療法に関して、まとまった報告や一定のコンセンサスはないが、ギプス固定が不要で免荷期間が短いことは、下肢手術患者における術後早期の生活の質の向上につながると思われた。

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70歳女。右足背の腫瘤を主訴とした。腫瘤は約6年前より徐々に増大し、初診時には右足背中央に骨性硬の腫瘤(約3×3cm)を触知したが、圧痛、熱感、発赤はなく、足趾の可動域(ROM)は正常であった。単純X線像では足背の軟部組織内に楕円形の軟部組織腫瘤陰影と骨化性病変を認め、腰椎麻酔下に腫瘤摘出術を行ったところ、長趾伸筋腱が腫瘤を貫通するかたちで交通しており、摘出した腫瘤は一部骨化を伴う軟部組織で、腫瘤を覆う被膜は滑膜組織であった。本症例は長趾伸筋腱から発生した滑膜性骨軟骨腫症と診断され、その成因については、繰り返されるminer traumaが滑膜の化生を起こした可能性が示唆された。術後1年経過時点で腫瘤の再発や疼痛はなく、関節ROMも正常であった。

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curved periacetabular osteotomy(CPO)術後の恥骨上枝骨切り部癒合例と不連続例における恥骨下枝の応力集中に関し、有限要素解析を用いて調査した。CPO後3ヵ月で恥骨上枝の骨切り部の癒合を認めた38歳女性を解析モデルとして癒合モデルと不連続モデルを設定し、荷重条件は患側全荷重、患側1/2荷重、健側全荷重、坐位とした。癒合モデルと不連続モデルにおける各荷重条件の最大応力値を比較した結果、不連続モデルでは癒合モデルよりも応力値が高かった。また、荷重条件別にみた患側の恥骨下枝にかかる応力は坐位で最も大きく、健側全荷重で最も小さかった。本研究より、CPO術後に患肢非荷重期間を延長すること、全荷重までの期間を遅らせること、術後早期には坐位を控えることにより、CPO術後恥骨下枝骨折の発生を低減できる可能性が示唆された。

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30歳女。スノーボードで転倒し、大結節骨折、解剖頸骨折を伴う脱臼骨折を受傷した。単純X線、3-D CTでは左肩関節脱臼骨折(Neer分類groupVI、3-part骨折)で上腕骨頭のみが前方脱臼位となっており、受傷後28時間で手術を行った。整復固定に際しては上腕を一旦前方脱臼位とし、上腕骨と上腕骨頭を解剖学的に合わせてKirschner鋼線で固定した後、上腕骨と上腕骨頭を一塊として脱臼を整復した。術後の整復位は良好で、術後4ヵ月には骨癒合の進行を認め、画像所見での上腕骨頭の壊死像や日常生活での不便はみられなかった。

整形外科医が知っておくべき非腫瘍性骨関節疾患の組織像

骨髄炎 山口 岳彦

X線診断Q&A

X線診断Q&A 中村 吉秀

卒後研修講座

基本情報

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臨床雑誌整形外科
64巻5号 (2013年5月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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