臨床雑誌外科 67巻13号 (2005年12月)

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食道アカラシアに対する腹腔鏡下手術は1991年にShimiらが筋層切開術をはじめて報告し,現在では腹腔鏡下Heller-Dor法などが広く施行されている.当教室では1999年以降,26例のアカラシア患者に腹腔鏡下手術を施行した.全例で通過障害の改善を認め,内圧検査でも下部食道括約筋静止圧は術前平均48mmHgから術後18mmHgへと低下した.確実な治療効果と低侵襲という利点から,腹腔鏡下手術は今後アカラシア治療の第一選択になりうると思われる

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食道粘膜下腫瘍の大半は平滑筋腫であり,まれに食道GISTも経験される.これらの疾患に対する治療法はリンパ節郭清を伴わない腫瘍の完全な核出で十分であり,video-assisted thoracoscopic surgery(VATS)が第一選択である.食道平滑筋腫はらせん状に発育することが多く,取り残しのない手術操作が必要である.またstay sutureをおいてこれを牽引することによって核出術が容易となる

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食道癌に対する胸腔鏡手術は,低侵襲性・リンパ節郭清精度向上などの点で注目され,限られた施設では積極的に行われているところであるが,解剖上の制限からさまざまな工夫・習熟が必要とされる.われわれは通常開胸手術に胸腔鏡を併用し段階的に開胸創を縮小して現在の術式にいたった.長腕鉤による一括肺圧排,スコープ挿入ポートの工夫など,現在採用している術式のあらましを述べた.通常開胸との比較では,部分的侵襲軽減と同等以上の遠隔成績が得られたと思われる

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われわれは2000年3月より胸部食道癌手術の腹部操作(胃管作製)に対しhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)を導入し,2004年末までに73例施行した.その目的は創の長さを短くするためだけでなく,良好な視野で安全に胃を授動することである.われわれの方法は,正中の小開腹創と2本のトロカールを用い,直視下に小網の切開と大網の切開を行い,反時計回りに胃を遊離し,最後に左胃動脈を切断している.通常開腹と比べ出血量が少なく,有用な方法である

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鏡視下食道切除術は現在多施設で行われるようになってきている.食道手術は限られたスペースで深部の微細な操作を行う必要性があることから本術式は内視鏡による拡大,採光,良視野という大きな利点がある.一方,鏡視下手術は従来の手術と比較して,術者の触診が不十分,視野外で起っていることが認識できない,正確な出血量が把握しづらいことが欠点としてあげられる.鏡視下食道切除術の適応と手技,ポイントについて概説する

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食道癌に対し胸腔鏡下リンパ節郭清を行うにあたっては根治性が低下してはならない.胸腔鏡下手術の適応はT1b~T3,広範囲な胸膜癒着がない,右肺虚脱分離換気が可能な症例で,われわれは抗癌治療施行例は適応外としている.正確な郭清には縦隔の十分な展開と拡大視による微細解剖の確認が不可欠である.また,繊細な操作が可能な器具の工夫も重要である.胸腔鏡手術による胸壁損傷の軽減は呼吸機能温存,肺合併症軽減,QOL向上に寄与した

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1997年より胸部食道癌の腹部操作すなわち胃管作製を用手補助による腹腔鏡下手術で221例に行ってきた.これまでの成績をみると腹腔鏡下胃管作製術では術後の肺炎が減少する傾向が認められた.また,手術時間も平均45分と短く手術手技が比較的容易で,鏡視下手術が広く行われるようになってきた現在では標準手技となっていくと考えられる.臍の右に設けた開腹創から左手を挿入して視野展開を図り通常の開腹術と同様の手順で行う.術式の詳細について述べた

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胃食道逆流症に対する腹腔鏡下逆流防止手術にはNissen手術のような全周性噴門形成術と,Toupet手術などの非全周性噴門形成術がある.少なくとも食道体部運動機能の低下症例には,術後の嚥下障害などを軽減する観点から腹腔鏡下Toupet手術を適応とすることが望ましい.さらに,長期成績でも優れていることから,すべての症例に本法を適応することも可能である.外科医は縫合結紮を含めた手技に十分習熟することが求められるが,今後ますますの普及が期待される

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胃食道逆流症(GERD)に対して,酸分泌抑制薬を中心の薬物療法,腹腔鏡下の逆流防止手術以外の治療法として,なんらかの内視鏡的手技により逆流現象を緩和することを目的に,欧米を中心にすでに1万例以上に実施,普及しつつある経口的内視鏡治療につき紹介した.下部食道括約帯(LES)近傍の縫合法はEndoCinch(Bard社),full thickness plication(Plicator,NDO Surgical社),焼灼法はradiofrequency(Stretta,Curon Medical社),局注法としてEnteryx(Boston Scientific社),Gatekeeper(Medtronic社)などがある.これらの実施状況については,現在までEndoCinch,Stretta,Enteryxの3法が多数を占めていると思われる.問題点として,内服治療の離脱率は初期には良好であるが,術後2年を経過した後はその率が低下することである.今後さらに手技の改善が得られ,臨床的に普及することに期待したい

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横隔膜上食道憩室は比較的まれな疾患であるが,有症状の場合には手術適応がある.本疾患に対する術式は従来の開胸あるいは開腹手術から鏡視下手術へと変化してきている.われわれも本疾患に対し積極的に胸腔鏡下手術を行っており,食道の運動機能異常を伴う例では腹腔鏡下の筋層切開,噴門形成などの手術を付加するべきであると考えている.本稿では,胸腔鏡下憩室切開術についてその手術手技を中心に報告する

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病名告知について患者にアンケート調査を行った.1997年1月~2004年12月に大腸癌の診断で手術を受けた症例を対象とした.術前に本当の病名を知りたいと135名中89%が答え,退院までに52名中90%がショックから立ち直っていた.再発に関しては,短期(術後1年以内:127例),中期(術後1~4年:59例),長期(術後4年以上:40例)とも約60%が不安であると答え,不安の内容はいずれにおいても家族に関するものが最多であった.また,時間の経過と共に死に対する不安は減少し,社会生活に対する不安が増加した.告知されて良かったことは,各期とも「自ら(治療に)参加できる」「治療への理解」「不安が癒える」「家族への責任」が約90%を占めていた.今後の治療困難な再発に対する告知については,家族が告知に反対であっても自己責任で知りたいと各期各々62%,53%,75%が答えた.告知されたことによる不満はみられなかった

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痔核に対する外来保存的治療(ゴム輪結紮法,硬化療法)について検討した.ゴム輪結紮法は,主にI~III度の痔核を対象とし,約40名の患者に約100回施行したところ,ハイリスク患者1例に合併症と考えられる出血が生じた.ゴム輪結紮法を2回以上施行した患者21名に対するアンケートでは,自覚症状の改善を17名(81%)が認め,19名(90.5%)がこの治療を受けて良かったと答えた.硬化療法は,主に出血性内痔核を対象とし,ゴム輪結紮法が不適応な超高齢者,ハイリスク患者にも行った.15名に施行したところ,出血には非常に効果的で,大きな合併症もみられなかった.しかし,施行時の痛みはゴム輪結紮法よりも強く,特に肛門鏡が肛門に接触する部分で強かった.ゴム輪結紮法,あるいは硬化療法施行例のうち,5例では十分な効果や出血等の改善がみられず,手術に移行した.合併症なく安全と考えられる症例にはゴム輪結紮法を,リスクのある症例には硬化療法を選択すべきであると思われた

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49歳女.右乳房腫瘤を主訴とした.右乳房C領域に弾性硬で境界やや不明瞭な約5×5cm大の腫瘤を,また,右腋窩に径約3cmの腫大したリンパ節を触知した.マンモグラフィー,乳腺エコー,MRI所見より右乳癌T2N1M0 Stage IIBと診断し,胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術を行った.腫瘍は最大径35mm,境界は比較的明瞭,弾性硬,充実性で,内部には一部変性壊死を認めた.病理組織所見では,紡錘型および上皮様の異型細胞の増生がみられ,これらは互いに移行像を示した.免疫組織学的には肉腫瘍細胞,上皮様細胞は共にサイトケラチン抗体,EMA抗体,ビメンチン抗体陽性で,紡錘細胞癌と診断した.Ki-67は,200倍視野でランダムに10視野を検索したところ,肉芽様細胞部分33.3%,上皮様細胞部分20.5%に陽性所見がみられた.術後CMF療法を施行したが術後11ヵ月で肺腫瘍を認め,術後13ヵ月で死亡した

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92歳女.右乳房CD領域に弾性軟の腫瘤を触知し,一部皮膚が欠損しており,漿液性の滲出液を認めた.リンパ節は触知しなかった.腫瘍マーカーは正常範囲で,滲出液の細胞診はclass IIであった.乳腺超音波検査では,右乳房CD領域に径5~6cm,境界明瞭,内部に多数のcystic areaを有するmassを認めた.胸部CTでは,右乳腺に6~7cm大の境界明瞭なmassを認めた.Dynamic studyでは腫瘍近縁の壁のみが造影され,壁の所々に小結節状の染まりがみられた.手術を行ったところ,腫瘍の胸筋への浸潤はなく,術中迅速病理診断で悪性所見を認めず,乳房部分切除(Bp)を行った.腫瘤は6.5×5.0×3.3cm大,境界明瞭,弾性軟であり,割面は血性様の内容を持っていた.嚢胞壁は線維性組織からなり,その一部に接着するように,あるいは壁内に乳頭状,篩状に増殖する腫瘍細胞を認めた.間質への浸潤はなく,noninvasive intracystic carcinomaと考えられた.一部,嚢胞壁外に乳管内進展像を認め,切除断端近傍まで癌細胞が及んでいた.本人および家族の希望により追加治療は行わず,術後1年8ヵ月経過現在,再発徴候はない

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上腹壁正中ヘルニアの3例(症例1:82歳男,症例2:76歳男,症例3:72歳女)を経験した.いずれも心窩部・上腹部腫瘤の自覚があり,症例1は腹部MRI CTスライスで腹腔内から腹壁内に連続する脂肪レベルの腫瘤を認め,手術にて白線にピンポン玉大のヘルニア門を認めた.内容物は肝円靱帯の脂肪組織であった.症例2は腹部CTで腹腔内から腹壁内に連続する脂肪レベルの腫瘤を認め,手術にて白線にヘルニア門を認め,内容物は腹膜前脂肪組織であった.症例3は腹部エコーで腹膜に2cmの欠損があり,そこに腫瘤の突出を認めた.手術にてヘルニア嚢を剥離・切開し,内容物は脂肪組織であった.上腹壁正中ヘルニアの術前診断には超音波検査,CT,MRIの画像が有用であると思われた

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51歳男.約11年に及ぶBehcet病(不全型・神経BD病)の加療中,鮮紅色の吐血を認めた.上部消化管内視鏡および上部消化管造影検査では,胃角部小彎前壁に活動期の潰瘍病変を認め,襞の太まり・先細り・融合を伴い,周堤ははっきりしていた.頭部MRIでは神経BDの慢性変化と,T2強調FLAIR像で深部白質に多発する高信号域を認めた.ステロイドを投与し,炎症所見の改善を待って手術を行った.腫瘍は胃角部小彎に触知でき,漿膜面にはひきつれを認めた.また,小彎側に腫大したリンパ節を認め,幽門側胃切除術+D2リンパ節郭清を行った.摘出腫瘍は2×2cmの2型病変で,間質の誘導を伴って浸潤性に増殖する低分化腺癌(por 2)であった.術後はステロイドカバーを行い,良好に経過した.なお,本症例には神経BDに対する約8年間のcolchicine投与があった

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腫瘍の扱いや発症時期により対照的な臨床経過をたどった2例の消化管間質腫瘍(GIST)を報告した.症例1(79歳女)は卵巣腫瘍疑いで婦人科手術中,腫瘍が胃から壁外性に発育していることが判明した.肉眼的にGISTと考えられ,外科チームにより摘出された.腫瘍は17×13×10cmで,紡錘形の腫瘍細胞が柵状配列して増生し,核分裂像も高頻度に認められた.C-kit,CD34陽性であった.術後5ヵ月で腹膜播種を認め,術後7ヵ月目に死亡した.症例2(76歳女)は画像検査により胃壁外性に発育したGISTと術前診断し開腹手術を行い,腫瘍やその被膜を損傷することなく愛護的に腫瘤を摘出した.腫瘍は8.5×7×6.5cmで,紡錘形の腫瘍細胞が柵状配列して増生していた.C-kit,CD34陽性であった.術後2年10ヵ月経過現在,再発の徴候なく生存中である

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63歳女.近医での肝機能障害の精査中,子宮底部の嚢胞性変化を伴う腫瘤を指摘された.MRIで卵巣腫瘍と診断され,手術目的で婦人科入院となった.症例の全身皮膚には多数の結節とカフェオレ斑がみられた.開腹すると,超手掌大の腫瘤がTreitz靱帯より40cmの小腸にあり,S状結腸へ強固に癒着していた.両側卵巣は正常であったため,この時点で外科転科となり,小腸・S状結腸を切除し,腫瘍を摘出した.また,Treitz靱帯より140cmの小腸にウズラ卵大腫瘍を認め,小腸壁全層と共にに切除した.この他,米粒大の腫瘤を小腸漿膜面に散在性に認めた.腫瘍は9×8×8cm大で,空腸間膜側より壁外性に発育していた.細胞分裂像は<10/50HPFであった.免疫組織化学検査ではc-kitが陽性,平滑筋抗体が一部陽性,CD34およびsynaptophysinが陰性で,小腸の消化管間質腫瘍と診断した.小結節は3×2.5×2.5cm大,弾性軟であった.米粒大の散在性腫瘤は残存しているが,術後1年経過時点で再発徴候はみられない

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78歳男.下腹部痛を主訴とした.腹部超音波検査では,右下腹部の腸管にtarget sign,および球型でやや高エコーの腫瘍像を認めた.腹部CTでは回盲部の腸管拡張と多重輪状影を示し,内腔には球形腫瘤像がみられた.腫瘍に起因した回盲部腸重積の診断で開腹したところ,回腸は盲腸部に約20cm嵌入しており,その先端近傍には計5個の1型腫瘍が存在した.腫瘍を含めて回盲部切除術(D3)を行った.いずれの腫瘍もびまん性に増殖するリンパ腫細胞からなり,上行結腸粘膜にはfocal lymphoma nodulesを認め,multiple lymphomatous polyposisと診断した.また,リンパ腫細胞はCD20,CD79α,Bcl-20に陽性を,B細胞型かつCD3,CD5,CD10,cyclin-D1,Bcl-6には陰性を示し,diffuse large B cell lymphomaの性格がみられた

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77歳男.52歳頃から右腰部の腫脹があり,増大傾向がみられたが,無症状のため放置していた.約2ヵ月前から右腰部に疼痛が出現するようになり精査を行なったところ,腹部CTにて第12肋骨尾側で右腰部にヘルニアの脱出を認め,その中には腸管がみられた.上腰ヘルニアと診断し,メッシュプラグ法によるヘルニア根治術を行った.ヘルニア門は直径3cmであった.術後CTでは右腰部のメッシュプラグが腹腔内に認められ,ヘルニアは修復されていた.術後経過は良好で,術後10ヵ月現在,ヘルニアの再発は認められない

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術前診断が困難であった,腸間膜側発生の腹膜炎を合併した虫垂憩室2例(症例1:61歳男,症例2:69歳男)を報告した.症例1は下腹部痛を主訴とし,X線像,CTによりイレウスと診断し開腹したところ,膿性腹水が認められ,虫垂を中心に膿苔が広がっており,虫垂切除を行った.摘出した虫垂の根部には5個の粘膜陥凹部が認められ,更に体部および先端部には4個の粘膜陥凹部が認められた.根部の陥凹部は筋層の内輪および外縦が消失しており,体部および先端部の陥凹部は粘膜固有層で覆われ固有筋層の肥厚が認められた.腹膜炎,虫垂炎を合併していたが,穿孔はなかった.以上より,真性と仮性が混在する多発性憩室炎と診断した.症例2は右下腹部痛を主訴とし,CTで虫垂周囲に膿瘍を認め,急性虫垂炎の診断で手術を行った.回盲部は炎症性に肥厚し腫瘤状であり,膿瘍腔を形成していた.虫垂切除を行い,摘出した虫垂の先端部は嚢胞状に拡張しており,漿膜側は肥厚した線維性組織で覆われていた.先端部の拡張部には粘膜固有層の陥入,内輪筋の肥厚および外縦走筋の走行の乱れを認めた.微小穿孔を伴う腹膜炎を認めたが,虫垂炎の所見はみられなかった.以上より,真性・単発性憩室炎と診断した

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62歳女.腹部膨満感を主訴とした.子宮筋腫の診断で経過観察となっていたが,腫瘤の増大傾向を認め,デスモイド腫瘍を疑われた.腹部CT,MRIでは,骨盤内に,内部に様々な信号強度が混在する境界明瞭な腫瘤を認めた.開腹したところ,腫瘤は直径約25cmで,Treitz靱帯より肛門側約60cmの空腸の腸間膜に存在した.また,小腸間膜から発生しており,25×26cm大,境界明瞭,内部不均一であった.空腸を含めて腫瘤を切除した.病理組織学的には,小腸粘膜下から腸間膜にかけて,膠原線維の強い増生を伴う異型性の乏しい短紡錘形の腫瘍細胞の増殖を認めた.アザン染色,ビメンチン染色では間葉系組織が特異的に染色された.CD34,S-100,ミオグロビン,ケラチン,ALK-1,C-kit,α平滑筋抗体,デスミン免疫染色は陰性であった.腹腔内デスモイド腫瘍と診断した

基本情報

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臨床雑誌外科
67巻13号 (2005年12月)
電子版ISSN:2432-9428 印刷版ISSN:0016-593X 南江堂

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