総合診療 29巻10号 (2019年10月)

特集 教えて!医師のためのビジネス・スキル

藤沼 康樹
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医師の養成過程において,医学部卒前教育,卒後研修を通じて学ぶことの中心は,疾患の診断と治療にある。しかし職業人としての医師の実際の仕事は,そうした教育で学んだ疾患に関する知識と技術を患者に適用することを,遥かに超えている。患者-医師間のコミュニケーション・スキル,チームワーク,さまざまな不確実性のなかでの決断,倫理的諸問題への取り組み,各種教育活動,自分自身のモチベーションの維持など,いわゆる一般能力(Generic Skill)が求められるのがリアルな医療現場である。

本特集では,そうした一般能力のなかでも,現代の医学教育のなかではあまり取り上げられない,「ビジネス・スキル」にフォーカスしてみた。ここで紹介するさまざまなコンセプトはあまり馴染みのないものかもしれないが,医療現場での仕事に必ず役に立つと信じている。

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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

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はじめに:美容師と医師は何が同じで、何が違うか?

 私の実家は病院ではなく美容院であった。私は美容師の子供として幼少時代を過ごし、美容師としての母親の仕事ぶりを見ながら育った。私の実家は従業員が常に5人ほどいる結構規模の大きな美容院で、従業員は基本的に住み込みで働いていた。従業員のお姉さんたちは店長である母のことを「先生」と呼び、またお客さんたちも「先生」と呼んでいた。私は小学生の頃、よく小遣い稼ぎのために店でカットされた髪の毛を掃除したり、ロット(パーマの時に使用するプラスチックの器具)やタオルを洗ったりしながら、お客さんに対する母親の接し方を観察していた。当時の私(今もだが)には、母親のカットやブロウの技術がどれだけ高いか評価するすべを全く持たなかったが、母親は多くのお客さんから信頼されているようだった。

 当時私の眼には、母親の美容師、そして美容院店長としての振る舞いには、反面教師的な部分も一部含めとても学ぶべきものがあった。店が休日の火曜には、毎週のように資生堂の講習会に行っていた。仕事中にお客さんに対して仏頂面になったことは一度もなかった。電話対応では1オクターブ声が高くなる。その一方で、パーマをかけに来たお客さんに対して「あんたにはパーマは似合わんからやめときなさい」とか、とんでもない意見をしていた。子供ながらに心配になった記憶がある。

 自分の目の前のお客さん以外にも、店全体を見渡しながら、滞っているところがあれば的確な指示を出し、円滑な業務の進行を補完していた。閉店してからは、従業員の技術指導のため夜遅くまでマネキン(カットモデル)と格闘していた。従業員の恋愛事情やお金の使い方にもやたら首を突っ込んでいた。その一方で、会計事務はほぼ父親に任せており、経営(マーケティング)には口を出しても、財務(ファイナンス)には口を出さなかった。

 私の「専門家」としてのロールモデルは明らかに母親である。「びよういん」で育ったことは、私の医師人生においてとても重要な意味を持っている。そして、美容師と医師はとても似ているところと、異なっているところがあるのだ。

【組織マネジメント 臨床マネジメントQ&A】

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開業医の立場から

 外来の待ち時間を短縮し、かつ適切な診療を行うことは、すべての医療者の目標である。しかし、「自分はできている」と勘違いしている医師も多く、そしてもっと怖いのは、待ち時間に無関心な態度である。

 職員全体で患者さんを温かく迎え入れ、苦情を伝えやすい雰囲気を作り、その意見を職員で共有することが大切である。職員が医師に忠告しやすい雰囲気作りも大切である。

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 治療方針や退院時期をめぐって医師と看護師が対立することは、その対立が成熟した医師-看護師関係のもと互いに専門職としての意見を明確に表明したうえでのことであれば、すばらしいことである。そしてその対立は患者を中心に考えれば、必ず解決策が導かれる。

 しかし、臨床では解決困難な不健全な対立となることも多いために、このような問いQ2が生まれると考える。対立が表面化した時に、その対立が不健全な対立であるのか、健全な対立なのかを、まず見極める必要がある。

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 良い悪いは別として、医療現場や各職種に対する医師の影響力は大きい。その範囲とパワーは、医師自身が想定している以上であり、知らず知らずのうちに重大な結果を生み出していることを経験する。対して、診療科部長の各医師に対する影響力は、小さいとは言わないが、すべての所属医師に「右向け、右!」ができるほどの影響力は、有していないことが多い。また一方で、本稿のタイトルQ3に示されたような医師が、多くの入院患者を担当しており、往々にして「仕事をさばける医師(やつ)」であることが多いため、頭が痛い。

 そのような苦しい状況のなかで、本稿では、タイトルのQ3と同様の行動をとる医師に対して、どのようなマネジメントを行えばよいのかを考えてみる。

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コミュニケーション

A看護師「どうしていつも、同じ間違いをするの?」

B看護師「……」

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採用における失敗、とは?

 スタッフ採用における「失敗」とは何だろう?ここでは知識や技術といった能力面と、コミュニケーション力の2つの側面から考える。

 能力面において「失敗した」と思えるスタッフは、一般的には仕事の覚えが悪い、ミスが多い、処理能力が遅い、といった知識や技術の統合能力の低さを指す。しかし、たとえ能力が高くても、そのスタッフが得意とする仕事と、与えられた仕事のミスマッチにより能力が生かせない場合もある。よって採用側は、自分がどのような能力を持つ人材を求め、どのように働いてもらいたいのかを明確にしておく必要がある(後述)。

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 1958年の医学科学生において、女子学生の割合は6.6%(206人)であった1)。しかし、2018年に行われた実態調査では、全医師に対する女性医師の割合は、大学附属病院で26.6%、公立病院では24%であり、初期研修医ではその割合はさらに増え、大学附属病院で39.3%、公立病院で36.3%である2)。このような状況のなか、妊娠・出産などライフイベントを自身、職場のスタッフが迎える機会は、ますます増加するだろう。

 岡山大学病院では、「女性医師の離職防止・復職支援」というテーマでプロジェクトが募集された文部科学省医療人GP(good practice)に採択されたことを機に、2007年から女性医師のキャリア支援に取り組んでいる3)。同プロジェクトの運営主体である岡山大学の医療人キャリアセンターには、日々さまざまな「こんな時、どうしましょう?」という相談が舞い込む。女性医師、上司、管理者など、さまざまな立場からの相談は、年間300件近い。今回そのような相談に応じているキャリアセンターのコーディネーター医師の現場の意見も踏まえ、本稿のタイトルQ6への対処を考えてみたい。

【組織マネジメント】

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 本稿では、2015年からの豊田地域医療センターにおける総合診療科の設立を例に挙げながら、総合診療科の立ち上げをどう行ったのか、またそれ以降に考えるべきことについて述べたいと思います(なお、本稿では組織運営を中心に記載します。患者さんファーストで、一人ひとりの患者さんとの関わりを最も大切にしていくことは当然ですので、その点については触れずに執筆させていただきます)。

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 (以下の物語はフィクションである)

 A病院は200X年4月、経営再建と病院存続を条件に自治体より経営委譲され、職員数約70名、常勤医3名からスタートした。総合診療(家庭医)による入院と外来、維持透析やリハビリテーション、また通院困難患者への在宅医療の提供と、切れ目のない地域包括医療・ケアに注力し続け、現在では職員数およそ250名、常勤医18名を抱える病院に成長、経営再建を果たした。また、総合診療専門医(家庭医)育成機関としても進達、卒業生は全国各地で活躍している。

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なぜ「研修医の働き方改革」なのか?

 研修医は「労働者」「学習者」「医療従事者」という3つの側面を持っていますが、近年では自殺やうつなどの労働災害が注目されています。平成28年度に厚生労働省が実施した全国調査において、研修医の時間外労働は平均80時間を超えていると報告されました1)。長時間労働は労働災害だけでなく、医療過誤や教育の質の低下に関連しており、長時間労働を改善することは、研修プログラムの質の改善につながります。

 水戸協同病院は2009年に発足した筑波大学附属水戸地域医療教育センターを有する、ホスピタリストチーム制による病棟管理を特徴とする教育病院です。当院においても研修医の長時間労働が問題となり、「研修医の働き方改革」に取り組み始めています。

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 医師は、どれ程多くの時間を会議に使っているだろうか? 症例カンファレンス、○○委員会、□□会議など、出席しないといけない会議は多くある。また、最近では“1 on 1”という個人面談も増えてきた。これだけ会議に出ているのであれば、会議出席者として経験値も上がり、有意義な会議にできるはずである。しかし、実際には必ずしもそうではなかったりする。

 私もたくさんの会議に出席し、ファシリテーションすることも増えてきた。過去には勤務医や経営コンサルタントとして、現在は医療機関や企業、NPOの理事長・経営者の立場として、また政府の審議会の委員として、さまざまな「会議」の場に居合わせている。振り返ると、会議が終わった後に「方向が見出せた、前進した、得るものがあった」と思える場合と、「何かモヤモヤしている、結論が見出せなかった、参加意義がわからない、多くの人の時間を無駄に費やした」と残念に感じる場合とがあった。これは読者の皆さんも同様ではないだろうか。

【キャリア・マネジメント】

ジェネラリストとキャリア開発 賀來 敦
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 ここ10年間で、医師のキャリア形成の仕組みは大きく変化しようとしている。従来はおよそ8割の医学部卒業生が医局に所属し、組織の一員としてキャリアマネジメントを組織に委ねていた。しかしいま、医学生・医師自身が自らのキャリアを「自己決定」し、切り拓いていく時代へと変化している。なぜ、このような変化が生じているのだろうか?

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 筆者は、卒後10年目にカナダのウェスタン大学の家庭医療学修士(Master of Clinical Science, Family Medicine)に入学した。これは年に2週間のオンサイト(現地での学習)と、その後のオンラインでの学習を組み合わせた3年程のコースで、学費は年間150万円程である。

 まず、「なぜオンライン大学院なのか?」と、「なぜウェスタン大学なのか?」について分けて、Q&A方式で記載してみたい。

医師のためのMBAコース紹介 齋木 啓子
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なぜMBAコースに入ったか?

 私は、医師9年目に院長として新規分院を立ち上げることになり、同時に法人の理事にも就任したことをきっかけとして、自らのクリニックの運営や法人全体の経営に関わるようになった。しかし、医師の卒前・卒後教育において、マネジメントや経営に関して学ぶ機会はほとんどなく、突然管理者サイドに就くことになった多くの若手医師同様、手探りの日々であった。院長業務に限っては、スタッフにも支えられ、手探りでも何とか回せたが、親ほど歳の離れた理事で構成される理事会では、全く存在意義を示せずにいた。

 そこで、「単なる経験則に依るのではなく、学術的根拠をもって、より論理的にマネジメントを行えるようになりたい」という思いから、入学を決意した。

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はじめに 開業医としての立場で

 私は今69歳で、本稿では、現在まで私なり行ってきた「高齢医師のサバイバル・スキル」についてお話します。

 1991年(40歳の時)に、私は呼吸器専門医として片田舎で開業しましたが、恩人と妻の勧めで、今で言う「総合診療」をぼんやりと目指していました。外来には病院勤務時代と同様に、内科全般の患者さんが来院しました。呼吸器疾患だけを診ている訳にはいかず、外傷、外科疾患、整形外科、皮膚科、呼吸器以外の内科疾患などの勉強が必要でした。ちょうどその頃、田坂佳千先生(広島市の開業医)と出会い、インターネットや電子カルテを共に学びました。彼の立ち上げたTFC(Total Family Careの略)を紹介され、メーリングリストで、「総合診療とは何か」を学んだ次第です。その後、2007年に田坂先生は急逝されましたが、彼の遺志を引き継ぐべく、私は“万年研修医”として、「開業医は、どう学べばよいか?」を模索することになりました。

【医師に求められるビジネス・スキル】

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 プレゼンテーションとは、「聞き手がその考えに同意し実行するよう促すこと」であり、学会発表や勉強会以外でも、外来診療やプライベートなどその機会は多いものです。それにもかかわらず、上手くいかないことがあるのはなぜでしょう? その理由を調べていくなかで、「プレゼンテーションの型」の存在に気づきました(図1)1)。「もっと早く知っていたら…」と過去の私への思いも込めて、本稿にて「その型=極意」を解説します。

ライティング・スキル 上田 剛士
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 執筆活動が好きです。執筆する過程で自分の知識を見直し、理解を深めることができるからです。筆者は昨年度は50本の論文執筆をしましたが、本稿では、普段どのように執筆活動を行っているのかを、本特集の企画者・藤沼康樹先生より直接寄せられた以下5つの質問Q1〜Q5に対して、回答型式で述べていきたいと思います。

Web発信スキル—SNS & Blog 藤沼 康樹
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アウトプットは何のために?

 発信することは、明らかにインプットを増やすことにつながる。何かを学んだり経験したら、それをすぐに何らかの形にしてアウトプットすることが望ましい。アウトプットの内容は、事実自体の紹介でもよいし、単なる感想でもよい。さらに他の事実やデータと結びつけて、その意味を考察するのもよい。その場合、インプットしたこと、されたことの、自分にとっての意味や、家族や職場・職業にとっての意味を考えたり、社会全体にとっての意味を考え発信することで、得られるものはきわめて大きい。

 かつて発信は、敷居が高かった。しかし、インターネットの発達により、誰でも気軽に発信できるプラットフォーム(土台となっているもの、環境)が次々と生まれたのが、21世紀である。

【スペシャル・アーティクル】

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 哲学の一部門としての倫理学において、一般的な義務や規則について検討する領域は「規範倫理(学)」と呼ばれ、そこでは、抽象的な哲学的議論が行われています。他方、職業にかかわる領域は「ビジネス倫理(学)」と呼ばれています。ビジネス倫理(学)は、生命倫理(学)、環境倫理(学)、情報倫理(学)、工学倫理と並んで、「応用倫理(学)」に含まれます。

 ビジネス倫理では、利害関係者に対する企業の社会的責任や、雇用者と被雇用者の関係、内部告発やインサイダー取引など、会社とその従業員をめぐる具体的な問題が論じられます。ビジネス倫理の取り扱いの範囲は、私企業だけではなく、公企業や専門職倫理など、ビジネス(あるいは、働くこと一般)にかかわる幅広い事象に及びます。

【コラム 医師と企業/起業】

企業で働く医師はアリかナシか 園田 唯
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 医師としての働き方は、いつ定まるのであろう?ちょっと考えただけでも、学生時代や初期研修医時代、後期研修医時代など、医師が向き合うであろうターニングポイントはいくつも挙げられる。さらに、結婚や出産などのライフイベントも加味すれば、一概には語れないことが見えてくる。

 実際、学生時代に考えていた診療科とは全く違う領域を専門にされている先生方も、少なくないのではなかろうか? 医師人生のなかで「これ!」と思ったものに進んだはずではあるが、その判断軸は複雑で、もしかしたら時を戻すと、「今と違った選択をしているのではないか」、とも感じてしまう。

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◦私がメスを捨て、白衣を脱いだ理由

 10代の頃、“腕一本でメシが食えて”、“ヒトの命を救うことができる”仕事が、カッコよかった。そして私は外科医になり、多くの患者さんとともに歩んできた。しかし、今は起業家であり、病院経営を専門にするコンサルティング会社を経営している。いったんは医師になり夢を叶えた私が、なぜ起業家になったのか?

 1998年、金沢大学医学部を卒業後、北陸地方を中心に外科医としてがむしゃらに働いた。例外にもれず、外科医としての仕事は過酷を極めていたが、直接的に命を救うことの達成感に恵まれ、毎日が満ち足りていた。しかし、外科医として多くの手術に携わっていると、開腹したがすでに腫瘍の転移が進み手遅れになっているなど、医学の限界を目の当たりにする場面も少なくない。そんな思いが募っていくと、「病気をもっと根本から見つめ直したい」との気持ちが芽生え始め、病巣のさらなる理解のため、病理学という選択肢を考えるようになった。キャリアチェンジとしてかなり迷ったが、医師になった以上、「たくさんの人たちを救う」ことにこだわりたく、大学院で病理学講座に入門し、病理専門医を取得。外科病理を極めるべく、医師として病理医キャリアを再スタートさせた。

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 最近ある介護福祉関連のカンファレンスにアドバイザーとして参加した際、「どうしたらよいか困っている」と相談された。それは、某都市部のある高齢男性を担当しているケアマネージャーが抱えている事例であった。患者は妻と中年の息子の3人暮らしで、医学的問題点は、糖尿病、高血圧症、慢性心房細動、慢性心不全、脊柱菅狭窄症、脳梗塞後遺症、血管性認知症であり、直近数カ月で数回の自宅内転倒があるとのことであった。

 患者は、当初随時血糖が500mg/dL前後あり、「これは大変だ」と糖尿病診療の専門施設を受診し、強化インスリン療法が開始された。いわゆる“4回打ち”である。インスリン量は自己測定した血糖値により頻回に投与量が変更され、その連絡とインスリン療法の実施のために、多くの介護リソースがさかれることになった。その診療施設は訪問診療をしていないため、車椅子での定期外来通院が必要で、かなりの手間と時間がかかっていた。担当医は非常に熱心で、HbA1cは当初の12%から8%に低下し、「良くなってきた、頑張った甲斐があったね」「これからも頑張ろう」との言葉をスタッフにかけていた。その後1年にわたって血糖の頻回の報告とインスリン投与量変更指示が続いているとのことであった。

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 2019年2月、第1回チーフレジデントミーティングin Japanにて、筆者らは日本チーフレジデント協会(Japan Chief Resident Association:JACRA)を起ち上げ(p.1163)、私は「日本版 チーフレジデント宣言」と題する基調講演を行った。本稿では、その内容を一部抜粋・改変し、以下の3章に分けて紹介する。

❶日本の卒後医学教育を取り巻く環境変化と課題

❷チーフレジデントとは? その潜在能力

❸チーフレジデントの進化を支える研修施設と全国的取り組みの可能性

GM Group Dynamics・9

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新たな組織が産声をあげた。「JACRA(Japan Chief Resident Association)」である。その名のとおり、“チーフレジデント”(以下CR)の協会であるが、CRとは管理・教育・メンターシップ・カウンセリングなどを担い、若手のリーダー的役割を果たすレジデントを指す(p.1255)。米国では、原則すべての内科研修プログラムにそのポジションが存在し、またCRのノウハウや他施設との交流を得る目的でAPDIM(米国内科プログラム長会議)Chief Residents Meetingが年1回開催され、全米から次期CRが参集する。

 国内にもCR制度は散在しており、たとえば筆者が属する聖路加国際病院では、研修医教育をはじめ、各種委員会への出席、病床管理、研修医の勤務管理や面談などを行い、若手内科医師の代表としてミドルマネジャーの役割を果たしている。しかし施設間の交流はなく、日本にCRに関する組織は存在しなかったが、2016年に野木真将医師(ハワイ大Queen's Medical Center、p.1254)が米国のCRと教育について日本で講演したことをきっかけに、各病院のCRにつながりが生まれた。さらに、ACP Japan(米国内科学会日本支部)でのワークショップや米国Chief Resident meetingへの参加を通じ、関係性が深まった。そこで、小杉俊介医師(麻生飯塚病院、JACRA代表)・長崎一哉医師(水戸協同病院、p.1210) ・野木医師が発起人となり、日本でチーフレジデントミーティングを行う計画が起ち上がり、全国の教育病院から有志のCRが集まってJACRAが設立された。

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病歴

患者:73歳、男性

主訴:全身倦怠感、体重減少、足がつる

現病歴:5カ月程前から食欲が低下し、あまり食べられなくなった。やせようという気持ちもダイエットするつもりもなし。6カ月で6kgの体重減少があった。朝4時になると足がつるため、目覚めてしまう。他の部位に痛みを感じるところはない。自分では最近、疲れやすく、だるさを自覚している。かかりつけ医で肝臓の超音波検査を行ったが、「異常はない」と言われている。原因がよくわからないため、総合内科に紹介受診となった。

ROS(+):全身倦怠感、体重減少、食欲低下、便秘気味、足がつる

ROS(-):発熱、悪寒戦慄、寝汗、嘔気・嘔吐、頭痛、めまい、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、耳鳴、難聴、胸痛、咳、痰、呼吸困難、腹痛、下痢、黒色便、血便、血尿、排尿時痛、残尿感、失禁、頻尿、関節痛、皮疹、浮腫

職業:無職(かつては鉄工所勤務)

生活習慣:家庭菜園をやっている

嗜好品:喫煙20本/日を約40年(20〜60歳)、飲酒 焼酎1合/日をほぼ毎日

旅行歴:海外・温泉ともになし

家族歴:兄が膵臓がんで他界

既往歴:糖尿病・脂質異常症・高血圧あり(かかりつけ医でフォローされている)

薬剤歴:ビルダグリプチン・メトホルミン塩酸塩配合錠1日2回(1回1錠)、カナグリフロジン100mg 1日1回/朝食後、イルベサルタン・トリクロルメチアジド錠1日1錠/朝、ニフェジピン20mg 1日1回/夕、ピタバスタチン1mg 1日1回/夕、スボレキサント15mg 1日1回/眠前、エスゾピクロン2mg 1日1回/眠前、フェルピナク貼付剤

アレルギー:なし

みるトレ Special・34

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患者:20歳、女性

主訴:発熱、咽頭痛、咳、下痢

生活歴:外来勤務の看護師。飲酒・喫煙なし。sick contactは不明確、渡航歴・動物曝露なし。特定のパートナーはおらず、性交渉経験はない。

既往歴:特になし

薬剤歴:定期内服なし。サプリメントや漢方もなし。

現病歴:5日前から、発熱とともに咽頭痛が出現。嚥下時痛も認めたが、食事はなんとかとれる程度であった。手元にあったアセトアミノフェン頓服で経過観察していたが症状の改善を認めず、2日前から咳が強くなり、前日からは軟便も出てきたため受診。

身体所見:体温39.2℃、脈拍94回/分・整、血圧110/64mmHg、呼吸数24回/分、SpO2 96%(室内気)、GCS(Glasgow Coma Scale)E4V5M6。

口腔内湿潤と咽頭発赤、口蓋扁桃にごくわずかなpusあり(図1)。浅頸部リンパ節を触知するが、圧痛なし。心音・呼吸音、腹部・四肢に明らかな異常なし。

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・34

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CASE

患者:81歳、男性。

主訴:意識障害。

現病歴:入院2週間前から意識障害(Japan Coma Scale : JCS 1)、全身倦怠感と便秘が出現した。入院2週間前と10日前に他院脳神経外科医院を受診し、頭部単純MRI等を施行されたが、特に異常はなかった。その後意識障害が進行し(JCS 3)、便秘(5日間)も持続した。入院前日に別の医院で測定した血清カルシウム値が16.8mg/dLであり、精査加療目的に当院を紹介受診した。

Review of System:

+:意識障害、全身倦怠感、便秘、口渇、多飲、多尿。

-:悪心嘔吐、体重減少、筋力低下、発熱、悪寒戦慄、頭痛、胸痛、腹痛、血痰、血尿、喘鳴、呼吸困難、関節痛、筋痛。

既往歴:高血圧症。

内服薬:アムロジピン5mg、カンデサルタン8mg。入院3週間前から海外産カルシウム製剤(ポリカルボフィルカルシウム乾燥物として600mg/日、図1)を内服。

家族歴:特記事項なし。

生活歴/嗜好歴:ADL(actibities of daily living)は自立。息子夫婦と同居。職業は農業。機会飲酒。喫煙は3pack/年(20〜30歳時)。

アレルギー歴:なし。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|胸腹痛をきたす“壁”を克服しよう・7

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Case

患者:中学2年生、男子。

現病歴:体育の授業の前に急に左胸がつかまれるように痛くなり、痛みのため深吸気ができなくなった。30秒ほどで治まったため体育で長距離走を走ったが、その時は痛くならなかった。小学生の時にも同じような痛みが数回起こったことがある。

Q原因として考えられる疾患は、何でしょうか?

指導医はスマホ!?|誰でも使えるIT-based Medicine講座・10

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 時は20XX年、IGSコーポレーションでは、研修医ロボットを開発した! その名も、成長するAI搭載型ロボット「森川くん2号」。

 森川くん2号と一緒に、ITを活用して自分をヴァージョンアップしよう!!

55歳からの家庭医療 Season 2|明日から地域で働く技術とエビデンス・26

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 診療所医療で必ず行う、あるいは必須の注射療法は、ワクチン接種でしょう。ワクチンに関しては、言うまでもなく家庭医療における重要な予防医療コンテンツですが、今回は“それ以外の注射”について考えてみたいと思います。

三銃士共導法・10

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 前回、どのように全国の若手医師に向けて「三銃士レクチャー」を実践しているのか、その取り上げているテーマや時間配分などについて紹介しました。今回は私たちと共に活動している(三銃士と共に行動する心強い仲間として、“ダルタニャン”と呼んでいます)先生方からのコメントも踏まえ、今後のレクチャーの改善点も含めて述べたいと思います。

 ダルタニャンは、主に医師6〜12年目で構成されています。多くの「三銃士レクチャー」は15分×8名で構成しており、毎回5名程度のダルタニャンに協力してもらっています。取り上げるテーマから、「その内容に相応しい」とわれわれが考えるメンバーにそのレクチャーを依頼することもあれば、自身で手を挙げて参加してくれる場合もあります。

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 今年2月15、16日に、大会長の徳田安春先生(群星沖縄臨床研修センター長)、座長の志水太郎先生(獨協医科大学 総合診療科)、久保徳彦先生(別府医療センター 総合診療科)、その他多くの先生方のご協力を受け、第18回日本病院総合診療医学会内(於:沖縄科学技術大学院大学)にて診療看護師(Nurse Practitioner, 以下NP)シンポジウムが開催されました。今回は「クリティカル領域編」、「プライマリー領域編」の2部構成で、演者構成も現役のNPだけでなく、NPの教育者やNPと協働する医師と、多角的な視点でNPを捉えるシンポジウムとなりました。

投稿 GM Clinical Pictures

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CASE

患者:95歳、女性。

現病歴:慢性腎臓病や変形性膝関節症などを基礎疾患にもつ症例。

蜂窩織炎治療目的で入院となり、抗菌薬治療で軽快した。入院を契機に過去の病歴・画像を包括的にレビューしたところ、追加問診で20代に発症した慢性腰痛を聴取し、図のような画像を確認した(図1、図2ⓐⓑともに4カ月前の鈍的外傷後に撮影されたもの)。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

#今月の特集関連本❷

#今月の特集関連本❸

#医学書院の新刊

#参加者募集

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 最近の外国人旅行者の増加、そして今後の外国人労働者の受け入れ拡大が議論されるなか、医療現場における外国人への対応は喫緊の課題になっています。

 筑波大の森島祐子先生らが2006年に発刊された本書の兄貴(姉貴)分である『そのまま使える 病院英語表現5000』は、外来・救急現場・病棟などさまざまな場所で大活躍しており、私もこの本の大ファンの1人です。外国人の患者さんに対して最初のコンタクトをとる際に、受付・外来診察室・手術室など、それぞれの関連ページを開いてそこに記載されている文章を読み上げれば(場合によってはお見せすれば)よいということで、多職種の人たちがあまりちゅうちょせずに外国人の患者さんとのコミュニケーションをとれるようになってきました。

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 仲田和正先生の新刊が出ました。実は15年来ずっと仲田先生のファンです。仲田先生といえば、TFC(Total Family Care)メーリングリストの論文(NEJM、Lancet、JAMA)レビューが有名です。それだけでなく、ベテランの整形外科医であり、しかも院長でいらっしゃるのに、内科や小児科への学びのボーダレスさには憧れと、自分も総合診療医として貪欲に学び続けたいという前進の勇気をいつもいただいています。

 仲田先生のお名前を知ったのは2004年発行の名著『手・足・腰診療スキルアップ』(シービーアール)ですが、あれから15年が経って今年出版された本書は、前述の本のエッセンスを継承しつつもさらに密度の濃い、それにタイトルどおり画像読影のポイントが前景に立つ、非専門医のための整形外科の新たな名著です。とにかく画像が豊富です。仲田先生秘蔵の2,000枚のティーチングファイルからの抜粋とのこと、「日常診療で、この本程度の知識があれば、さほど困らない」という仲田先生のコメントは、整形外科のX線読影を学ぶ者にとって大きな安心を与えてくれます。

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目次

『総合診療』編集方針
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 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

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基本情報

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総合診療
29巻10号 (2019年10月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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