訪問看護と介護 14巻11号 (2009年11月)

特集 口腔ケア 在宅でここまでできる

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高齢者の多くは,口腔に何らかの問題を抱えているのですが,不自由でも我慢できるうちは歯科受診にはいたらず,自分から訪問看護師に相談するということもまずありません。そうしているうちに栄養摂取に支障が出たり,誤嚥から肺炎になったりと,命にかかわる問題に発展することもままあることです。毎日の口腔ケアの大切さについて,さらに在宅ケアのなかでできる口腔ケアの方法を紹介します。

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 私は,東京都新宿区を中心に訪問歯科診療,そして訪問口腔ケアという立場で在宅ケアをサポートしています。そのなかで,いつも大切にしていることがあります。それは,歯(ないしは義歯)を治すことを目標とするのではなく,その方の生活を支えるという姿勢をとるということです。診療室を飛び出し,その方の生活に触れることによりこれまで気づかなかった歯科の可能性も感じられるようになりました。

 脳梗塞で右半身麻痺の男性がいました。胃ろうで栄養摂取し,ベッドから動けない状態でした。数か月前に入院した時,看護師に総入れ歯を外されてしまい,どこにあるかもわからない状態です。そんなある日,一念発起して義歯を作ってほしいと本人から依頼があり,訪問診療で製作しました。上下の総義歯を装着し,最初に要求したのは堅焼きせんべい。周囲が心配するなか,大きな塊をほおばり,「ゴリッ」というせんべいの割れる音が口のなかからもれると同時に,これまで見たこともないような満面の笑み。「俺はこれが食いたかったんだ」と笑顔で語りました。

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終末期の在宅医療と口腔ケア

 がんの終末期の患者を対象とする在宅医療は,終末期の在宅医療(ホスピスケア)とよばれ,訪問看護もすでに大きな役割を果たし始めています。2006年に策定されたがん対策推進基本計画では,がん診療拠点病院を中核とした地域連携パスの策定がノルマ化されましたので,地域診療所やその他の一般病院とのネットワークのなかに終末期在宅医療もしっかりと組み込まれ,今後確実に普及していくでしょう1)

 この終末期の在宅医療の口腔ケアに目を向けてみると,脳血管障害や認知症などの患者を看る慢性期の在宅医療と異なり,介護の期間が非常に短く,平均3か月といわれています。そのため,がん終末期の口腔ケアは,慢性期在宅ケアで普及している肺炎予防や嚥下リハビリを目的とした口腔ケアと共通する部分もありますが,症状緩和を目的としたケアが主体になります。

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 岐阜県多治見市は岐阜県南部に位置する美濃焼の産地です。名古屋市まで電車で30分という利便性からベッドタウンにもなっています。人口約11万人,高齢化が進み,65歳以上の占める割合は2008(平成20)年に20.1%となりました。歯科診療所は47医院,病院口腔外科が2施設あります。

 1994(平成6)年4月,多治見市歯科医師会では訪問歯科診療を開始しました。当時私は保健センターの非常勤歯科衛生士として主に母子を中心に歯科指導を行なっていましたが,ある日訪問歯科診療に同行していた歯科衛生士から「訪問先の患者さんの口腔内がとてもひどい状態」との話を聞きました。

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 「先生,突然歯が3本折れました」

 訪問歯科診療をしていると,度々このような電話が施設からかかってきます。年をとると歯はもろく折れやすくなるのでしょうか。いえ,そんなことはありません。このような場合,気付かないうちに根面ウ蝕(虫歯)が進行しているケースがよくあります。

 本稿では,根面ウ蝕を予防することで歯の喪失を防ぐ取り組みについて,しかも認知症の方やブラッシングが困難な方にも効果的な科学的予防法について紹介します。

連載 マグネットステーション インタビュー・23

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リハビリ職とも連携して

木村 運営方針をお教えいただけますか。

青木 看護職である以上,看護職としての職責が果たせるステーションにしたいという気持ちが大きいですね。また,リハビリ職もその職能を活かせるような運営をしたいと考えています。言い換えるならば,好きな看護・リハビリを思う存分行なうことができる組織づくりです。

 株式会社ですので利潤もあげないといけません。利潤をあげることでステーション,看護・リハビリ部門の必要性をまず会社に理解してもらう。そして会社というツールを使って,看護・リハビリを社会に理解してもらい,広めることが私の基本的な経営方針です。

連載 訪問看護 時事刻々

救急搬送 石田 昌宏
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 夏の政局,そして政権交代の余波でずいぶん遅れたが,ようやく来年度の診療報酬改定の議論が始まった。とはいっても,診療側の任期切れの委員の後任が定まらず,しばらくは様子見をしながらのようだ。年末年明けの突貫工事が目に浮かぶ。プラス改定の方向は決まっているようなので,検討に時間がかかる新規の加算等より,既存の点数のアップを中心に期待したいところだ。

 さて,診療報酬改定に関する最初のテーマは世相を反映して,周産期医療と救急医療。いずれも重点的に評価すべきとの声が大きい分野である。周産期医療では,低体重などのハイリスク新生児の増加,NICUが満床のため母体・新生児搬送の受け入れが困難になっていることが課題として挙げられ,対応が検討される。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・2

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「がん哲学外来」には行ったけれど

 順天堂大学医学部の樋野興夫先生の「がん哲学外来」を受診し,「1時間以上も話を聞いていただいたけれども……実際的な相談にのってほしい」と私のところにまわってきた方の話です。

 緩和ケアが必要で,ストーマケアの専門家も関わる必要があると考えられる,盲腸がん再発の40代男性の奥さんでした。「内容を家族に聞かれたくないから」と,電話は夜10時過ぎの時間指定,90分は優にかかる話をお聞きしました。

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 前回は全国の市区町村を単位とした訪問看護ステーションの相対的な不足数の推計に加えて,単位面積当たりの高齢者人口および高齢世帯割合の状況を表わしたコロプレスマップの援用により,訪問看護にかかわる地域の状況を可視化する手法を紹介した。

 第2回となる今回は,地域の状況に関する解析をさらに進めて,医療施設および訪問看護ステーションを基点とする道路ネットワークを考慮した分析から,訪問看護の空白地域およびサテライト事業所の設置候補地の選定について解説する。

連載 訪問看護師による看取りの検証・2

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 「あなたはどのような死を迎えたいですか」と聞かれて,「痛いのは嫌ですね。痛みだけはとってもらいたい」という言葉をよく聞く。「断末魔の苦しみ」という言葉がある。息を引き取る間際は耐え難いほど痛く,苦しいのではないか,と多くの人が恐れている。

 死と対峙した手記1)を残した精神科医の西川喜作氏さえも,対談で,「死ということよりも,ガンの苦痛に自分がどれだけ耐えられるかという不安が強い」と,死そのものよりも,死の前の苦痛への恐怖を述べられていた。

連載 わたしのことをわたしから・31

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 紹介を受けて手術をすることになったA病院は,乳腺センターが開設したばかりというだけではなく,もともと企業病院だったのをほかの医療法人が買い取ったという事情もあって,病院全体の体制がまだ整っていなかった。患者への対応もマニュアルはあるのだろうが一貫性がなく,ちょっとした混乱が生じることがままあった。

 情報がきちんと伝わらないと,ときに患者は疑心暗鬼に駆られる。たとえば,手術の説明は執刀する医師からなされるのが一般的だと思うが,A病院ではその点でもあいまいだった。私が何度目かの入院中,こんなことが起きた。50代の主婦Nさんは,手術室に入るとストレッチャーに寝かせられたまま,「Aせんせぇー! Aせんせぇー! いらっしゃいますかぁー」と先生の名前を大声で連呼したという。Nさんいわく,「だって,ほんとに執刀するのがA先生かどうかわからないじゃない」

連載 せんねん村村長 老いを地域で活かす・2

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 中澤整形リハビリクリニックの開業は1977年9月でした。開業以来1989年に老健を開設するまで,「地域」をさほど意識しておらず,意識していたのは医師会と保健所くらいのものです。医療法人化にあたり,県との関係性ができましたが,その頃も「地域」は意識の底に潜んだままであったように思います。

 老健開設時,県の担当者から市役所の福祉課に挨拶に行くよう指導を受けて出向きました。国の補助金をもらうときは市長や医師会の承諾書が必要だったためです。さらに介護保険が導入されてからは,介護サービスが地域密着型という類型で整理されるようになり,地域との関係は一層強くなっています。また,地域密着型介護サービス施設を建設する際に支援されるのは,補助金ではなく地域介護・福祉空間整備交付金という名称になり,市を通して国へ提出されるようになりました。市との協力関係が一層重要視されるようになったということです。

連載 精神科医の家族論・8

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山アラシのジレンマ~夫婦の長いつきあいの心づもりに

 S子さんは有名な賢夫人だった。夫のYさんは商社マンで,国内外の出張が頻繁であったから家庭のことはほとんど妻まかせで,老いた両親の介護,子どもたちの育児・受験もS子さんがひとりで成し遂げた。ニューヨーク駐在の際のみYさんは英語のできるS子さんを伴って行き,そこでもS子さんの社交上手と料理の腕前は夫の出世に貢献していると評判だった。その後Yさんは定年を迎え,退職金3000万円余が支給されることになった。その時S子さんは「一度でいいから3000万円という現金をこの手に持ってみたい」と頼み,Yさんも妻への感謝もあって,その願いを受け入れた。

 退職の日,S子さんは手料理にワインを用意して夫の帰りを待ち,帰ってきた夫は退職金の包みをS子さんに渡した。二人はその重さを代わる代わる手に持って味わいつつ盃を重ね,長い年月の歩みをそれぞれ感慨無量の思いで味わった。

連載 広汎性発達障害の理解と援助・8

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前回に続いて

 思春期を迎えた中学生の次男が父親と衝突したことで相談に訪れた親子。双方とも広汎性発達障害との診断を受け,関係者のアドバイスを得て解決に向かった事例である。

 前回での相談員と医師によるアドバイスに引き続き,今回は臨床心理士によるアドバイスを紹介する。

連載 ほんとの出会い・44

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 「戦場のメリークリスマス」の音楽で知られている坂本龍一さんがテレビ番組で爆笑問題の太田光さんと田中裕二さんと対談していた。田中さんが生まれて最初に好きになった曲として,「天使の誘惑」(黛ジュン)をかけた。それを聴いていた坂本さんは,「僕にはわからないなあ」とシャイな表情で言うが,単なる率直な感想であって,下に見る態度はない。この人の音楽への姿勢が感じられた一シーンだった。

 「世界の坂本」さんと私は,実は大学の同期で,しかも同じ授業に出席していた,らしい。というのも,学生のときには全く彼のことを知らなかったから。ところが,卒業後20年もたってからお世話になった。それは,私が大学時代の恩師,民族音楽学者の小泉文夫先生の伝記を書いたときのこと。坂本さんが小泉先生の講義を聴いていたことを何かで読み,不遜にも坂本さんに本の帯を書いていただくことを思いついたのだ。といっても,個人的には何のつながりもないし,坂本さんに原稿料をお支払いするゆとりは私にも出版社にもない。そこで,本の前書きとあとがきを事務所にお送りし,帯を書いていただきたい気持ちを縷々つづった手紙を書いた。すると,簡潔ながら想いの込もった素晴らしい原稿が届いたのだった。「小泉文夫はぼくの音楽に対する態度に決定的に影響を与えた人です。……小泉文夫の授業に参加し,個人的にも知り合えたことはぼくの人生の誇りであり忘れられない思い出です」と。

連載 お母さんといっしょ・11

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 口腔領域のがん患者は,術後,顔貌の変化や,摂食・会話機能など日常生活に障害をきたすことが多いため,退院後,他者との関わりが難しく,孤立しやすい状況にあります。

 私たちは,入院中から日常生活の問題や不安を軽減できるような支援が必要であると考え,治療後の患者の生活実態調査を行ないました。退院後の日常生活において患者がどのようなことで困難を感じ,それにどのように対処しているかについて明らかにし,看護師が行なう支援について検討しました。

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 9月20日(日),21日(月・祝),在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク「第15回全国の集いin群馬2009」がベイシア文化ホール(群馬県民会館)・前橋商工会議所(どちらも前橋市日吉町)において開催され,秋の大型連休のなか約1000名の参加者で盛り上がりを見せた。

 メインテーマは「こころを科学し 暮らしに寄り添い 地域を創る――多職種協働ネットワークがパラダイムを変える」。小笠原一夫副大会長(緩和ケア診療所いっぽ)による開会宣言でも,大澤誠大会長(大井戸診療所)による大会長講演でも,「命」について考える機会という主張が伝わってきた。

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 私たちはどこでどう老いていきたいのでしょうか。「住み慣れた自宅や地域で暮らしたい」。多くの方がそう答えます。この言葉には実に多くの願いが込められていますが,紐解けば3つの願いに収斂されるようです。

 自宅に住み続けること,まちに住み続けること,周囲の人たちとの関係を保ち続けること。

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ノーリフトの理念

 日本ノーリフト協会は,介護・医療関係者の腰痛を予防するためにケア提供時には積極的に福祉用具・機器を使うことを推進しています。しかし,時々「ノーリフトだから……リフトを使わないのかと思いました」というような大きな勘違いや文法的な誤りを指摘されることがあります。それでも,あえて協会の名前にノーリフトを入れたのは,ノーリフト発祥の地,オーストラリアの理念を大切にしたいと思っているからです。

 1998年,オーストラリア看護連盟(メルボルン支部)が介護・看護職の腰痛予防対策指針として“押さない,引かない,持ち上げない,運ばない,ねじらない”という5つのキーワードをもった“ノーリフティングポリシー(持ち上げない指針)”を制定しました。“ノーリフト”は,現場で腰痛予防対策を継続していく上での合言葉となったのです。

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紙芝居の記憶

 おそらく,団塊世代から上の年齢の人たちにとって,紙芝居といえば「街頭紙芝居」のことを指しているといっていいに違いない。

 放課後,学校から家に帰ると,どこからともなく荷台に木の箱を載せた自転車に乗ったおじさんがやってきて街角でカチカチと拍子木を叩いている。紙芝居屋のおじさんだ。子どもらは小銭を手ににぎりしめて家を飛び出していく。水あめ,型抜き,まっ赤に染まったイカの足やスモモを買い求める。それが木戸銭で,これから始まる紙芝居に胸をワクワクさせたなつかしい昭和の記憶がよみがえる。

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自身の現場経験をもとに,訪問看護の普及や制度づくりをリードしてきた山崎摩耶さん。さる8月末の総選挙で民主党から北海道比例区で選出され,衆議院議員に当選しました。医療・介護の現場には課題が山積していますが,代議士となった山崎さんはどのようなビジョンをもって臨まれるのか? さっそく聞かせてもらいました。

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編集後記 伊藤 , 富岡
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●歯科口腔は生活習慣によるところが大ですが,気をつけていてもなかなか大変。特集ではケアの1つひとつが他人事でなく,デスク周りののど飴も遠ざけ,いくつになっても歯は大事にしないと改めて思いました。連載の「広汎性発達障害の理解と援助」は,つまずき,トラブルとなり,誤解されたり,誤解したりの人間関係に悩むとき,連載からよいヒントが得られたとメールをいただいたりもして,多様な人が交差するケアの現場で活かされていることが実感されました。今回でひとまず最終回を迎えます。……伊藤

●保険適用外ではあるものの,虫歯のできやすさを確認できるというお話をうかがいました。できやすくてもできにくくても,しっかりとしたケアが必要なことに変わりはないのですが,気になるところです。さて,学会や研究会を取材させていただくなかで,歯科医師・歯科衛生士の方による発表が増えてきたように感じています。栗木氏をはじめ,各地で「訪問口腔ケアステーション」の取り組みも始まりつつあるようです。また,特別記事では高専賃などの住宅系サービスについて解説していただきました。こちらもぜひご覧ください。……富岡

基本情報

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訪問看護と介護
14巻11号 (2009年11月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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