連載 わたしのことをわたしから・31
乳がんⅣ期を遊泳中―その3
内田 あさみ
pp.962-963
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101475
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紹介を受けて手術をすることになったA病院は,乳腺センターが開設したばかりというだけではなく,もともと企業病院だったのをほかの医療法人が買い取ったという事情もあって,病院全体の体制がまだ整っていなかった。患者への対応もマニュアルはあるのだろうが一貫性がなく,ちょっとした混乱が生じることがままあった。
情報がきちんと伝わらないと,ときに患者は疑心暗鬼に駆られる。たとえば,手術の説明は執刀する医師からなされるのが一般的だと思うが,A病院ではその点でもあいまいだった。私が何度目かの入院中,こんなことが起きた。50代の主婦Nさんは,手術室に入るとストレッチャーに寝かせられたまま,「Aせんせぇー! Aせんせぇー! いらっしゃいますかぁー」と先生の名前を大声で連呼したという。Nさんいわく,「だって,ほんとに執刀するのがA先生かどうかわからないじゃない」
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