特集 気づき、学び、元気になる 事例検討会を開こう
なぜ看護師は「事例」から学ぶのか?—現場で行なう事例検討会の意義と可能性
山本 則子
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1東京大学大学院医学系研究科 高齢者在宅長期ケア看護学分野
pp.160-164
発行日 2019年3月15日
Published Date 2019/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201132
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看護師にとって「事例」とは何か
看護は、看護師の全人格が利用者の全人格に向き合い、利用者が生身の人間として生活機能を果たし、つつがなく日々を過ごせるよう助ける仕事だ。利用者はまるごとの「ひと」として日々を生きているものだから、生きることを支える看護も利用者の一部分だけを切り取ってケアするわけにいかず、看護実践は「トータルパッケージ」にならざるを得ない。褥瘡を治したり、心不全を改善したりするために、一時的に一部の臓器に注目することはあるが、そのような一部分への注目は、その人の生活がどうすればうまく進んでいくかを思案する文脈の中に、常に埋め込まれている。
事例をふり返ることは、そんな看護実践の「トータルパッケージ」を、あまさず可視化してくれる。利用者を全人的に把握するだけでなく、看護師が利用者をどのように見ているか、こちらの視線も大きな枠ですくいとられる。看護においては、時期で部分に分けず把握することで実践の意味がわかったり、時間の経過を追って前に行なったことが(それ自体は、その直後には「失敗」と見えたことが)、後になって意味をもったりするところを学ぶことが大事なように思う。
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