JIM 13巻7号 (2003年7月)

特集 Generalistのための糖尿病診療10カ条

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食事・運動療法とごく少量のSU剤の併用で血糖コントロールできた2型糖尿病の1例

 患 者:53歳,男性.

 家族歴:兄が糖尿病.

 既往歴:43歳で境界型,47歳で発症.1,600 kcalの食事療法を3カ月で中断.

 現病歴:毎年の検診で受診を勧められ,思いきって昨年7月受診.網膜症(-),神経症(±),尿蛋白(±).身長170 cm,体重76 kg(max 92 kg).1,200 kcalの食事療法を教える.

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インスリンの分割投与とインスリン製剤の変更で血糖コントロールが良好となった2型糖尿病の1例

 患 者:60歳,女性.

 現病歴:1年前からインスリン療法が開始され,朝食前に中間型インスリンを26単位注射していた.HbA1cは7.5%前後で,夕食前に月2~3回低血糖が生じていた.中間型インスリンを朝食前16単位,夕食前10単位に変更すると低血糖はほとんどなくなり,HbA1cは7.1%に改善した.しかし,食後血糖が高いため混合型(速効型:中間型=3:7)に変更した.インスリン量は変更せずそのままに据え置いたが,食後血糖は改善し,HbA1cは6.5%となり,低血糖もほとんど消失した.

インスリン療法の適応

 絶対的適応はインスリン依存状態(1型糖尿病のほとんど,2型およびその他の特定の型の糖尿病の一部),糖尿病性ケトアシドーシス,非ケトン性高浸透圧性高血糖状態,過度のストレス状態(重症感染症,重度外傷,外科手術),薬物療法を必要とする妊娠計画時~授乳中の女性,高度な肝臓障害および腎障害患者で,相対的適応は経口血糖降下薬無効,糖毒性解除およびインスリン分泌障害が推測される例である.

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SU薬で血糖コントロールしえた2型糖尿病の1例

 患 者:56歳,男性.

 既往歴:46歳時に脂肪肝.

 家族歴:母が糖尿病.

 現病歴:5年前検診にて高血糖を指摘され,精査の結果糖尿病と診断された.食事・運動療法にて空腹時血糖100 mg/dl,HbA1c 5.6%となったが,2年後には通院を中止し放置.数カ月前より口渇,多尿を自覚し来院.来院時の身長175 cm,体重68 kg,随時血糖値380 mg/dl,HbA1c 8.9%,糖尿病合併症なく,肝・腎機能正常.食事・運動療法3カ月施行後,HbA1c 8.0%であった.グリミクロン40 mg/日を投与.その後低血糖症状なく,HbA1cは5.8から6.3%で経過.グリミクロン20 mg/日に減量するもHbA1c 6.0%前後を保っている.

 近年,作用機序の異なる経口血糖降下薬がいろいろ発売されているが,経口糖尿病治療薬の主軸となっているのは依然としてインスリン分泌薬である.インスリン分泌薬は,スルホニル尿素基を有するスルホニル尿素薬(SU薬)系と,SU基をもたない非スルホニル尿素薬(非SU薬)系に分けられる.非SU薬は速効型インスリン分泌薬とも称されている.

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少量のSU薬とBG薬の併用にて,体重増加をきたさず血糖コントロール良好な2型糖尿病の1例

 患 者:56歳,男性.

 既往歴:44歳より高血圧症にて加療中.

 家族歴:特記事項なし.

 現病歴:約10年前より職場検診にて血糖高値を指摘され,近医にてグリベンクラミド2.5 mgによる内服治療を開始されたが,食事・運動療法は行っていなかった.その後,食事不摂生による体重増加(身長172 cm,体重80 kg,BMI 27)に伴い,空腹時血糖176 mg/dl,HbA1c 8%台と血糖コントロールが悪化,アクトス(R)30 mgを追加されHbA1c 6.1%まで改善した.しかし,体重が82 kgと増加傾向になり,平成13年教育入院目的で当科を紹介された.教育入院へ参加し,アクトス(R)をグリコラン(R)(250 mg)2T 2回へ変更した.その後,外来通院中であるが,グリベンクラミド2.5 mgをグリクラジド20 mgへ変更し,体重は76 kgで維持され,HbA1c 6%以下で経過している.

治療薬としての歴史と背景

 ビグアナイド薬の歴史は古く,中世ヨーロッパで糖尿病の薬として用いられたフレンチライラックに始まる.後にこの植物に含まれるグアニジン(guanidine)が血糖降下作用を有することがわかり,この骨格を2つ有するビグアナイドが開発された.ビグアナイド薬のフェンホルミン,ブホルミン,メトホルミンは,1950年代に2型糖尿病の治療薬として臨床応用された.しかし,1970年代に主にフェンホルミンによる致死的な乳酸アシドーシスの副作用が相次ぎ,多くの国でフェンホルミンの使用が中止された.脂溶性の低いメトホルミンは,乳酸アシドーシスの危険性が比較的低いと考えられ,ヨーロッパなどで細々と使用されていた.

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 近年,厳格な血糖コントロールによって糖尿病性合併症の発症・進展が防止される可能性や,大血管障害(動脈硬化症)と食後血糖の密接な関連性などが明らかになり1),血糖プロフィール全体の正常化が糖尿病患者の血糖コントロール目標となってきている.そこで,空腹時血糖や平均血糖に加えて食後血糖への十分な配慮が求められ,糖尿病患者の特徴である摂食負荷による著明な血糖変動の縮小や,食後一過性の高血糖が特徴の軽症糖尿病への介入法についての関心が高まっている.従来,これら食後の状態へは,単純糖質の制限や食物繊維の摂取をはじめとした食事療法や運動療法の徹底などで対処されてきた.しかしながら,これらの臨床効果は十分でなく,自己規制を強いる患者指導によって治療中断に至ることも少なくなかった.

 α-グルコシダーゼ阻害薬(以下,α-GI)は,インスリン分泌を促進せずに食後状態を改善する薬剤であり,軽症例でも低血糖の危険性は少なく,1型糖尿病の食後過血糖にも有用で,体重増加をきたしにくいことや,脂質代謝の改善さらにはインスリン抵抗性の改善効果なども認められ,動脈硬化症リスクファクターへの好影響が期待されている2).以上のことから,α-GIは幅広い糖尿病患者に対して積極的介入を行う際の基本的薬剤となってきている.

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チアゾリジン誘導体で長期血糖コントロールが良好な代謝症候群の1例

 症 例:67歳,男性.

 既往歴:とくになし.

 家族歴:父親,姉が2型糖尿病.

 現病歴:身長165 cm,BMI 26.4.47歳時に糖尿病,高血圧症,高脂血症,肥満と診断され,SU薬などによる薬物療法が開始された.97年当時,グリベンクラミド2.5 mgにてHbA1c約7%.空腹時血漿インスリン 14.6μU/ml,HOMA-R(J1)5.2とインスリン抵抗性あり.SU薬をトログリタゾンに変更したところ,HbA1c 6.0~6.3%,HOMA-R 1.5とインスリン抵抗性が改善した.トログリタゾンの発売中止に伴いピオグリタゾンに変更したが,現在も良好な血糖コントロールを維持しており,副作用や糖尿病合併症もない.

 2型糖尿病の2大成因であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性のうち,インスリン抵抗性は環境因子の影響をより強く受ける.戦後のライフスタイルの欧米化による高脂肪食,運動不足,肥満などの環境因子がインスリン抵抗性を増大させ,2型糖尿病が増加したと考えられる.このようなインスリン抵抗性を改善させる薬剤にはチアゾリジン系インスリン抵抗性改善薬(以下,チアゾリジン誘導体)とビグアナイド薬があるが,本稿ではチアゾリジン誘導体の作用機序と使い方などについて解説する.

 チアゾリジン誘導体はビグアナイド薬とは全く作用機序の異なる画期的な薬剤であるが,歴史は未だ浅い.1997年に登場した最初のチアゾリジン誘導体のトログリタゾン(ノスカール(R))が肝障害のために発売中止になったため,現在,日本ではピオグリタゾン(アクトス(R))のみが,米国ではピオグリタゾンとロシグリタゾンが発売されている.

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速効型インスリン3回注射からナテグリニド食直前内服に変更しても血糖コントロールが得られた2型糖尿病の1例

 患 者:58歳,男性,身長172 cm,体重67 kg,BMI 22.6.

 既往歴:42歳時に急性虫垂炎にて手術.

 家族歴:母親,姉に糖尿病.

 現病歴:約2カ月前より,口渇感,倦怠感があり,当院糖尿病センターを初診した.初診時,空腹時血糖値289 mg/dl,HbA1c 9.6%にて当日入院した.入院時よりインスリン治療を開始し,2週後には,ノボラピッド(R)(朝-6単位,昼-6単位,夕-5単位)にて一日血糖値は,食前血糖値120~150 mg/dl,食後2時間値150~180 mg/dlにコントロールされた.尿中CPRは64μg/dayであった.経口糖尿病薬への変更はできないかとの患者の希望により,ナテグリニド(スターシス(R)30 mg)6錠(2-2-2)の内服治療に変更したところ,一日血糖はインスリン治療とほぼ同じ血糖値にコントロールされた.

 日本の糖尿病患者数は増加する一方で,2010年には1,080万人に達すると推測されている.糖尿病患者の増加の一方で,糖尿病性細小血管障害・大血管障害を有する患者数も増加しており,新規透析導入患者数は慢性糸球体腎炎を抜いて第1位となった.また,成人における失明の第1の原因疾患であり,年間約4,000人の糖尿病患者が増殖網膜症にて失明している.これらの数字は,糖尿病治療の難しさを物語っている.一方,増加する糖尿病患者に比し,糖尿病専門医の数が少なすぎるのが現在の日本の現状である.このため,今後ますます第一線の臨床医の糖尿病診療における重要性と責任が増していくことが推測される.糖尿病治療の基本をすべての内科医はマスターしておくことが必要になる.

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インフルエンザの合併により,経口摂取不能,高血糖をきたしたインスリン治療中の2型糖尿病の1例

 患 者:68歳,女性.血糖自己測定実施中.

 現病歴:インスリン(一日3回)+経口血糖降下薬併用療法中(HbA1c 6.8%).インフルエンザに罹患,39℃の発熱,全身倦怠感にて摂食不能,空腹時血糖(FPG)が315 mg/dlに上昇し来院.500 mlの輸液を3日間実施,経口薬は中止し,血糖自己測定により通常のインスリンに超速効型インスリンを追加,水,茶の摂取を促した.3日目より徐々に摂食可能,7日目より通常のインスリン治療に戻り,9日目FPG 106 mg/dlに回復した.

シックデイ(sick day)とは

 糖尿病患者が,発熱を伴う感染症,嘔吐・下痢などの消化器症状,外傷などを合併し,血糖コントロールが困難になった状態,または食欲不振のために食事ができない時をシックデイと呼ぶ.シックデイの際には,通常の診療を超えた対応が必要であり,対応を誤ると糖尿病昏睡や重症低血糖をきたす.主治医はシックデイ時の治療・対処法を理解するとともに,あらかじめ,患者と家族にシックデイ指導を行う必要がある.

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諸検査を用いた糖尿病診療の実際

 患 者:35歳,男性.新聞記者.

 現病歴:数年前から2型糖尿病として食事・運動療法と投薬が開始された.血糖管理は不良で,その原因は仕事が不規則で,生活習慣の改変や服薬遵守さらに定期受診もできずにきたことにあるとされた.転勤で紹介転医となった.病態や成因の再検討をしたところ,空腹時血中IRI,CPR値とも低くGAD抗体(+)で,緩徐進行型1型糖尿病を思わせた.インスリン療法を導入しHbA1cは低下しはじめた.経過中の不摂生による治療の乱れとその改善の様子は,1,5AGを用いて説明し助言を加えた.尿微量アルブミンを定期的に測定しているが,(-)を保っている.

 糖尿病罹患者においては症状や症候が乏しいまま経過することも少なくない.ゆえに糖尿病診療ではさまざまな検査が行われ,その結果がマネジメントの参考とされている1).検査を適正に利用するための知識と姿勢(J1)に資するよう,以下に主要な検体検査項目について概説する.

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 糖尿病性自律神経障害は糖尿病の初期からみられる頻度の高い合併症であるが,下痢と勃起障害を除き,無自覚・無症状のまま進行し,高度で非可逆的な状態で発見されることが多い.したがって,糖尿病性自律神経障害の対策は血糖コントロールによる予防が最善であり,次善の策として早期発見,早期治療が望まれる.しかし,自律神経機能検査法は多数あるものの,信頼妥当性のある早期発見法はまだ確立されていない.

 ここでは,一般臨床医が実施可能な自律神経機能検査法について,その目的と条件,方法と解釈を簡明に説明する.

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SU薬で安定していたが,最近コントロールが悪化した2型糖尿病の1例

 患 者:52歳,男性.

 既往歴:44歳から肥満傾向.

 家族歴:叔父が糖尿病.

 現病歴:48歳時に糖尿病と診断.軽度の手足のしびれがあり,眼底には網膜症なく,尿蛋白は陰性.ダオニール(R)の服用でHbA1c値は約7.0~7.5%と安定していたが,半年前からコントロールが不良となった.二次無効が疑われ,食事・運動療法の徹底と同薬の極量10 mg/日を投与したが,改善しない.インスリン導入をするかどうかを検討中である.

 呈示したような例は,generalistが日常診療でしばしば対応に悩むものであろう.あなたなら,この症例をどのようにマネジメントしますか? その場合,判断する基準として,ガイドラインやフローチャートなど,根拠を有するものさしをお持ちだろうか? 本稿では,糖尿病専門医への紹介にかかわる問題について考えてみたい.

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 糖尿病患者が糖尿病昏睡で入院したり,他疾患のために緊急事態(diabetic emergency)に陥った時,インスリン・スライディング・スケール・テクニック(insulin sliding scale technique:以下,インスリンスケールと略)を駆使して,血糖コントロールが非常にうまくできた経験のある人は,その思い出に強烈な印象があるだろう.

 筆者がアメリカで研修医になった1963年頃,ケトアシドーシスの治療成績は病院の水準を示す指標とまでいわれていた.そこで,インスリンスケールという言葉を初めて聞き,見て,習った.看護師が尿糖と尿ケトン体をチェックし,尿糖の+の程度に応じてインスリン用量を決めていた.重症例では検査室からの血糖値の電話報告を待ってインスリン用量を決めて注射し,4時間か6時間後に改善していたら,それはいい気分だった.血糖値に合わせてインスリン用量を増減する,その単純さから,また利用したくなる.それがインスリンスケールの魔物たる所以だ.

One more JIM
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Q1 食後2時間尿を取る30分前に,いったん完全排尿をさせるのはどうしてですか.

 A 糖尿病の人は食後に尿糖が出やすくなりますが,食後の尿でも最初のほうが糖分が濃く,2時間以上たつと薄くなってきます.

 食後2時間で尿糖を調べる時に,いきなり2時間でとらせた尿の糖が(++)でも,食後1時間半で完全に排尿させ,それから30分後に採尿してみると尿糖(±)~(+)となって,食後の血糖を推定するのにより合致します.尿糖と血糖の動きがほぼパラレルならそのとおりですが,もし尿糖がたくさん出ているのに,血糖がそれほど高くない時は,前排尿で完全に出しきれず,残尿の癖のある人と推定され,それから潜在的な膀胱炎(女性に多い),前立腺肥大や癌(50歳以上の男性),神経障害(合併症)をみつける指針になることもしばしば経験します.泌尿器科の医師から「よく早くみつけましたねえ」といわれるのが嬉しくて,私は食後1時間半で完全排尿後,30分して取った尿を食後2時間尿として診ています.(齋藤正淳→本号p580)

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病 歴

 53歳男性が嘔吐と下痢を主訴に,救急車で当院に来院した.

 入院当日(土曜日)の朝まで特に症状を認めず,普段どおり仕事(事務職)に出かけた.午前11時頃より突然腹痛が出現し,頻回(3分に1回程度)の嘔吐と水様性下痢を認めた.症状がひどいため,12時頃,救急車にて来院した.

 既往歴(救急外来で聴取):35歳(18年前)頃より,“膠原病?(奥さん談)”でプレドニゾロン内服中.5年以上前より,おそらくステロイド性と思われる糖尿病あり.

 社会歴:喫煙なし,ビール1缶3回/週.

 家族歴:父が脳卒中,母が大腸癌.

 アレルギー:なし. 海外渡航歴:なし.

 服薬歴:プレドニゾロン(R)15 mg/日(入院前2,3日は服薬をしていなかった)・ベイスン(R)(ボグリボース)・ザンタック(R)(塩酸ラニチジン)・ウルグート(R)(塩酸ベネキサートベータデクス).

患者の論理・医者の論理(第4回)

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 日々診療をしていて心にひっかかることを,この機会に整理したい.Cohen-Coleは,医療面接の3つの機能として,情報を得る,良好な関係を築く,療養指導,を取り上げた.それとはやや異なるコミュニケーションの問題として,shared decision makingを今回は取り上げる.医療面接は医学教育のなかで最近強調されているが,そのなかでもこのことはあまり取り入れられていないようにみえる.しかし,医師の大きな仕事であろう.ここでは医師は,患者に事実や情報を伝え,患者の価値観を確認し,決断に関して合意に達し,同時に不確実な状況下での受容・希望・コントロール感などを伝えたいと思うだろう.それぞれの場面でどのような問題がありうるのか? 系統的ではなく,気ままに随想的に記述したのでご容赦いただきたい.

ヘルスコミュニケーションの時代(第2回)

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 前回はヘルスコミュニケーションとは何かを概説した.今回と次回は,各論として医師-患者間のコミュニケーションをめぐる現状と課題を取り上げる.今回は医師側のコミュニケーションに焦点を当ててみたい.

 より良い医師を育てるためのさまざまな取り組みがなされているなかで,コミュニケーション能力の重要性が注目されはじめている.その動きを概説する.

JIM Report ミシガン州立大学家庭医療学指導医研修プログラムに参加して(7/最終回)

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 2001年11月9日に参加したPrimary Care Teaching Physicians Faculty Development Workshop-Evidence Based Medicine Critical Appraisalは,朝8時から夕方5時まで缶詰で行われたワークショップであった.テーマは,Adolescent Medicine, Woman's Health, Depression in Primary Care, Editor's Choice, Diabetes-TypeⅡ, New Primary Care Drugs, Studies of the 1990's That Have Changed My Practice, Congestive Heart Failureと多岐にわたり,それぞれを担当する講師が,自分の集めた論文要約を紹介するという大講義形式であった.これには,家庭医療の講師が日頃から幅広い内容に関してよく勉強していることを痛感させられた.類似の論文要約が集中的に呈示されており,読み進むうちに次第に頭に入っていくような資料が作られていた.終わってから,資料にあげられた要約の数を数えたら,395個もあり驚いた.

 筆者はこの時,「家庭医療では産婦人科や精神科領域が強調されている」という印象を受けたのであった.

 その後,家庭医療がかかわる,予防医学・スクリーニングに関して学んでいくうちに,日本でわれわれが行っている胃癌検診・肺癌検診というものが,渡米前に聞いてはいたが,本当に存在しないということがわかった.そして,乳癌・子宮癌のスクリーニングは,家庭医によりなされていた.

在宅医療技術の進歩(第7回)

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在宅患者の栄養の問題

 在宅医療の現場で,対象者や介護者から「食欲が最近なくなってきた」という話をよく聞く.脳梗塞患者の嚥下障害の問題,痴呆患者の栄養摂取不足の問題,末期がん患者やCOPD(chronic obstructive pulmonary disease : 慢性閉塞性肺疾患)患者の低栄養,悪疫質の問題など,私たちは日常的にさまざまな栄養の問題と向き合う必要がある.そして,在宅医療の対象者の多くを占める,要介護状態の高齢者の30~40%が蛋白質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition : PEM)にあるといわれ,このPEMの早期発見と予防こそが,在宅医療での栄養管理を考えるうえで最も重要なことである.

 本稿では,高齢者の低栄養をターゲットにして,在宅医療の現場で比較的簡単にできる栄養評価の方法について述べたい.

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喘鳴と意識障害を主訴に来院した78歳女性

 患 者:78歳,女性.

 既往歴:①高血圧,②陳旧性脳梗塞(詳細不明),③右卵巣囊腫,④胆石.

 現病歴:脳梗塞後,明らかな麻痺はみられなかったが,徐々にADLの低下がみられ,数年来,老健施設に入所中であった.入院の約2週間前から全身の浮腫が出現した.1週間前からはさらに浮腫が増悪し,利尿剤にあまり反応せず,喘鳴も聴取されるようになった.入院前日には意識レベルの低下もみられたため,当院紹介となった.

 処 方:スピロノラクトン25 mg/日,フロセミド40 mg/日.

 入院時現症:血圧110/50 mmHg,心拍数56/分,呼吸数20/分,体温 36.2℃.意識状態は傾眠傾向,GCSはE2M5V3.眼瞼浮腫あり,結膜に貧血や黄染所見なし.頸部は全体的に浮腫状である,内頸静脈圧の上昇はみられない.心音は整で雑音なし,肺野全体に連続性ラ音を聴取・両側下肺野に吸気終末に断続性ラ音を聴取.腹部は膨満・腸蠕動音は低下,肝脾腫は明らかでない.両下腿に著明な浮腫あり.

 神経学的所見:深部腱反射はすべて減弱,徒手筋力テストは左右差なく4+,知覚は痛み刺激に反応し左右差なし,脳神経系に明らかな異常はないと思われる(指示に従わず詳細不明).

 入院時検査所見:血算;WBC 5,000/μl,Hb 12.5 g/dl,Hct 38.9%,Plt 21.6万/μl,MCV 98 fl,MCHC 32.1 g/dl,生化学;Na 142 mEq/l,K 2.8 mEq/l,Cl 93 mEq/l,BUN 8 mg/dl,Cre 0.8 mg/dl,GOT 31 IU/l,GPT 14 IU/l,CK 784 IU/l,動脈血液ガス分析;pH 7.32,PaCO2 85 torr,PaO2 66 torr,HCO3- 43 mEq/l(酸素2 l/min投与下).

 胸部単純X線写真:図1

 心電図:図2

 今回の症例は,もともとADLの低下していた患者が比較的急性に発症した意識障害で来院したこともあって,患者本人や施設からの詳細な情報に乏しいものであった.そういった現場での診察の方法やアセスメントの進め方,鑑別疾患について注目したい.

 このケースについて初診医はまず,傾眠をきたす意識レベル低下がみられたため,型通り血糖のチェック,動脈血酸素飽和度のチェックおよびチアミンの投与を行った.低血糖はみられず,血液ガス検査所見では,呼吸性アシドーシスおよび代謝性アルカローシスがみられた.意識障害の原因は,慢性Ⅱ型呼吸不全の急性増悪と考えた.

JIM臨床画像コレクション

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 症例は26歳の女性.数カ月続く嘔気・嘔吐,心窩部痛,腹部膨満を訴え外来を受診した.身長155 cm,体重37 kg.身体所見上,心窩部に軽度の圧痛を認めるほか特記すべき所見を認めず.上部消化管内視鏡でも症状を説明しうる所見を認めなかった.その後,下痢を頻回に認めたため過敏性腸炎を疑い,内服にて経過観察とした.しかし,症状が遷延するため腹部超音波を施行したところ,大動脈と上腸間膜動脈(superior mesenteric artery : 以下SMA)の分枝角に狭小化がみられ(表紙写真・左),SMA症候群と考えられた.

 SMA症候群は,上腸間膜動脈性十二指腸閉塞症ともいわれる.その病態は,十二指腸水平脚が大動脈とSMAに圧迫されて生じる通過障害であり,原因としてるいそうによる腸間膜脂肪の減少,腰椎前彎などがいわれている1).症状は嘔気・嘔吐のほか,仰臥位で増悪する腹痛が特徴的とされるが,本症例では明らかではなかった.

基本情報

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JIM
13巻7号 (2003年7月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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