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Case
喘鳴と意識障害を主訴に来院した78歳女性
患 者:78歳,女性.
既往歴:①高血圧,②陳旧性脳梗塞(詳細不明),③右卵巣囊腫,④胆石.
現病歴:脳梗塞後,明らかな麻痺はみられなかったが,徐々にADLの低下がみられ,数年来,老健施設に入所中であった.入院の約2週間前から全身の浮腫が出現した.1週間前からはさらに浮腫が増悪し,利尿剤にあまり反応せず,喘鳴も聴取されるようになった.入院前日には意識レベルの低下もみられたため,当院紹介となった.
処 方:スピロノラクトン25 mg/日,フロセミド40 mg/日.
入院時現症:血圧110/50 mmHg,心拍数56/分,呼吸数20/分,体温 36.2℃.意識状態は傾眠傾向,GCSはE2M5V3.眼瞼浮腫あり,結膜に貧血や黄染所見なし.頸部は全体的に浮腫状である,内頸静脈圧の上昇はみられない.心音は整で雑音なし,肺野全体に連続性ラ音を聴取・両側下肺野に吸気終末に断続性ラ音を聴取.腹部は膨満・腸蠕動音は低下,肝脾腫は明らかでない.両下腿に著明な浮腫あり.
神経学的所見:深部腱反射はすべて減弱,徒手筋力テストは左右差なく4+,知覚は痛み刺激に反応し左右差なし,脳神経系に明らかな異常はないと思われる(指示に従わず詳細不明).
入院時検査所見:血算;WBC 5,000/μl,Hb 12.5 g/dl,Hct 38.9%,Plt 21.6万/μl,MCV 98 fl,MCHC 32.1 g/dl,生化学;Na 142 mEq/l,K 2.8 mEq/l,Cl 93 mEq/l,BUN 8 mg/dl,Cre 0.8 mg/dl,GOT 31 IU/l,GPT 14 IU/l,CK 784 IU/l,動脈血液ガス分析;pH 7.32,PaCO2 85 torr,PaO2 66 torr,HCO3- 43 mEq/l(酸素2 l/min投与下).
胸部単純X線写真:図1
心電図:図2
今回の症例は,もともとADLの低下していた患者が比較的急性に発症した意識障害で来院したこともあって,患者本人や施設からの詳細な情報に乏しいものであった.そういった現場での診察の方法やアセスメントの進め方,鑑別疾患について注目したい.
このケースについて初診医はまず,傾眠をきたす意識レベル低下がみられたため,型通り血糖のチェック,動脈血酸素飽和度のチェックおよびチアミンの投与を行った.低血糖はみられず,血液ガス検査所見では,呼吸性アシドーシスおよび代謝性アルカローシスがみられた.意識障害の原因は,慢性Ⅱ型呼吸不全の急性増悪と考えた.
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