特集 Generalistのための糖尿病診療10カ条
インスリン注射療法―インスリン・スライディング・スケールは悪魔の誘惑か
松岡 健平
1
1東京都済生会糖尿病臨床研究センター
キーワード:
インスリン・スライディング・スケール
,
prospective algorithm
,
補正的スケール
,
緊急時
,
ソモジー効果
Keyword:
インスリン・スライディング・スケール
,
prospective algorithm
,
補正的スケール
,
緊急時
,
ソモジー効果
pp.627-630
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100659
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糖尿病患者が糖尿病昏睡で入院したり,他疾患のために緊急事態(diabetic emergency)に陥った時,インスリン・スライディング・スケール・テクニック(insulin sliding scale technique:以下,インスリンスケールと略)を駆使して,血糖コントロールが非常にうまくできた経験のある人は,その思い出に強烈な印象があるだろう.
筆者がアメリカで研修医になった1963年頃,ケトアシドーシスの治療成績は病院の水準を示す指標とまでいわれていた.そこで,インスリンスケールという言葉を初めて聞き,見て,習った.看護師が尿糖と尿ケトン体をチェックし,尿糖の+の程度に応じてインスリン用量を決めていた.重症例では検査室からの血糖値の電話報告を待ってインスリン用量を決めて注射し,4時間か6時間後に改善していたら,それはいい気分だった.血糖値に合わせてインスリン用量を増減する,その単純さから,また利用したくなる.それがインスリンスケールの魔物たる所以だ.
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