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Case
チアゾリジン誘導体で長期血糖コントロールが良好な代謝症候群の1例
症 例:67歳,男性.
既往歴:とくになし.
家族歴:父親,姉が2型糖尿病.
現病歴:身長165 cm,BMI 26.4.47歳時に糖尿病,高血圧症,高脂血症,肥満と診断され,SU薬などによる薬物療法が開始された.97年当時,グリベンクラミド2.5 mgにてHbA1c約7%.空腹時血漿インスリン 14.6μU/ml,HOMA-R(J1)5.2とインスリン抵抗性あり.SU薬をトログリタゾンに変更したところ,HbA1c 6.0~6.3%,HOMA-R 1.5とインスリン抵抗性が改善した.トログリタゾンの発売中止に伴いピオグリタゾンに変更したが,現在も良好な血糖コントロールを維持しており,副作用や糖尿病合併症もない.
2型糖尿病の2大成因であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性のうち,インスリン抵抗性は環境因子の影響をより強く受ける.戦後のライフスタイルの欧米化による高脂肪食,運動不足,肥満などの環境因子がインスリン抵抗性を増大させ,2型糖尿病が増加したと考えられる.このようなインスリン抵抗性を改善させる薬剤にはチアゾリジン系インスリン抵抗性改善薬(以下,チアゾリジン誘導体)とビグアナイド薬があるが,本稿ではチアゾリジン誘導体の作用機序と使い方などについて解説する.
チアゾリジン誘導体はビグアナイド薬とは全く作用機序の異なる画期的な薬剤であるが,歴史は未だ浅い.1997年に登場した最初のチアゾリジン誘導体のトログリタゾン(ノスカール(R))が肝障害のために発売中止になったため,現在,日本ではピオグリタゾン(アクトス(R))のみが,米国ではピオグリタゾンとロシグリタゾンが発売されている.
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