特別記事
医療用点字文書の自動翻訳システム―その開発とバリアフリー利用の実際
松浦 正子
1
1神戸大学医学部附属病院
pp.572-575
発行日 2008年7月10日
Published Date 2008/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101245
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はじめに
近年,バリアフリーやユニバーサルデザイン(共有化)の一環として,視覚障害者に対して点字の併記が行なわれるようになってきた。身近な例としては,缶入り酒類への「おさけ」といった表記がある(図1)。
臨床においては,1998(平成10)年,厚生省(現厚生労働省)から各地方医務(支)局長宛に,「視覚障害者等に対する服薬指導」と題し,視覚障害者への服薬指導について,薬袋の記載事項を点字で表示するなどの,個々の障害者の状況に応じた適切な配慮を行なうよう努めることが通知された(平成10年8月19日医政第289号厚生省保健医療局国立病院部政策医療課長)。これを受けて,点字薬袋を作成している医療施設がみられ始めているが,「個々の障害者の状況に応じた適切な配慮」という点では課題も多い。
とりわけ臨床現場においては,視覚障害者が外来受診し,入院,退院する過程に,説明同意文書をはじめとする多くの医療用文書が存在する。そのため,ケアプロセスの各場面で,個々の状況に応じて,点字による適切な情報を提供することができれば,視覚障害者の医療参加に向けた自己決定への支援につながる。
これをふまえ,神戸大学医学部附属病院看護部では,2007(平成19)年より,科学研究費補助金(萌芽研究)「自動点訳プログラムを利用した,視覚障害者向け点字文書提供システム構築の試み」のサポートを受け,点字文書の簡便な作成による視覚障害者への個別医療対応(テイラーメイド)を目指し,看護部とゲノム医療実践講座との共同研究として両部門で取り組んでいる。
そこで,ここでは点字翻訳(以下,点訳)システム開発の経緯と実際について述べる。
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