書評
『ペプロウの生涯―ひとりの女性として,精神科ナースとして』
湯浅 美千代
1
1順天堂大学医療看護学部
pp.598
発行日 2008年7月10日
Published Date 2008/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101253
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波乱万丈の一生が赤裸々に
近代的な看護理論としては初めて書かれた『人間関係の看護論』(原題/International Relation in Nursing. 1952)の著者であり,“精神科看護の母”として知られるヒルデガード・E・ぺプロウの波乱万丈の一生が,本人と関係者への丹念なインタビューと多くの記録物から再構成されている本である。まさに“女の一生”を米国看護界の歴史とともに興味深く読むことができた。
ポーランドからの移民の子であったぺプロウが米国の知識人として認められるまでには相当な努力が必要だった。「女性に学歴はいらない」「長いものには巻かれろ」に類する古い蔑視的な観念。米国も日本と変わらない状況があったことを改めて知らされた。そのなかにあってぺプロウは,どんなときも自身の正義と信念を貫いて行動してきた。大学内部の問題(“長”にふさわしい人を探すのに苦労するとか,明らかに適任の人が落選するとか)やアメリカ看護協会(ANN)の組織の腐敗さえ赤裸々に綴られ,ゴシップを目にするような楽しみさえあった。これは現代の日本でも起こらないとはいえない組織の問題である。自分の所属する組織に置き換えて考えてみてもよいのではないか。
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