作業療法ジャーナル 51巻11号 (2017年10月)

特集 気分障害と作業療法

香山 明美 , 長野 敏宏
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特集にあたって

 「何となく気分が重い」,「何をしても楽しくない,何にも興味がわかない」,「自信がもてず,自分が役に立つ人間だとは思えない」等,うつ病チェック項目にチェックをつける人は多いのではないだろうか.今回は現代の病ともいわれているうつ病をはじめとする気分障害の特集である.

 厚生労働省の「患者調査」によると,1996年(平成8年)には43.3万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は,2008年(平成20年)には104.1万人と,12年間で2.4倍に増加した.うつ病患者の医療機関への受診率は低いことがわかっており,実際にはこれより多くの患者がいることが推測される1).医療機関においては近年ストレスケア病棟を立ち上げ,専門治療の実践が増えてきている.デイケアや就労支援事業所等でのリワークプログラム等,就労支援への取り組みも注目されるようになった.産業保健領域では,労働安全衛生法の一部を改正する法律により,2015年(平成27年)12月からストレスチェック制度の導入が,50名以上の事業所で義務づけられ,「うつ」等のメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みが開始した.

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Key Questions

Q1:多様な精神疾患に対応できる医療連携体制をどう構築するか?

Q2:精神障害にも対応した地域包括システムとは?

Q3:自治体をいかにサポートするか?

基本的な考え方

 精神疾患はすべての人にとって身近な病気であり,精神障害の有無や程度にかかわらず,誰もが安心して自分らしく暮らすことができるような地域づくりを進める必要があります.また,長期の入院が必要となっている精神障害者の地域移行を進めるにあたっては,本人の抱える複合的な悩みに寄り添いながら解決を図ることが重要であり,医療面はもとより,住まいや生活面,就労面等の多様な支援の提供が必要です.このため,精神科病院や地域援助事業者による努力だけでは限界があり,自治体を中心とした地域精神保健医療福祉の一体的な取り組みの推進に加えて,地域住民の協力を得ながら,差別や偏見のない,あらゆる人が共生できる包摂的(インクルーシブ)な社会を構築していかなければなりません.精神障害者が,地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう,精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を進める必要があります(図1).

 具体的には,①本人を中心とした多職種・多施設連携を推進するため,障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて,精神科医療機関,その他の医療機関,地域援助事業者,市町村等との重層的な連携による支援体制を構築する必要があります.

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Key Questions

Q1:気分障害とは?

Q2:気分障害に対する継時的作業療法とは?

Q3:うつ病と双極性障害に対する作業療法の違いとは?

はじめに

 気分障害は2010年(平成22年)以降の精神科医療において最も注目を集めた精神疾患の一つである.これまでの議論を振り返れば,新型うつ病という造語による社会的話題やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の取り扱いに関する議論等は記憶に新しい.これらの中でも2013年(平成25年)に公開された「精神障害の診断と統計マニュアル第5版」(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th Edition)1)における気分障害の分類は,精神科医療において大きな変革となった.これまで定められていた気分障害の分類は解体され,「抑うつ障害群」と「双極性障害および関連障害群」は独立した精神疾患として記載された.一方,「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)2)では,気分障害は分類されたままであり,反復性うつ病性障害と双極性感情障害は気分障害の下位分類とされている.

 気分障害の診断基準については現在も議論されている最中である.本稿ではDSM-5とICD-10の分類を踏まえたうえで,うつ病と双極性障害を中心に,気分障害と作業療法の概念および意義を解説する.

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Key Questions

Q1:うつ病作業療法の構造化とは?

Q2:特化型小グループ活動とは?

Q3:自己洞察を高めるとは?

はじめに

 筆者が勤務する桜が丘病院(以下,当院)のうつ病専用病棟における作業療法では,「新しい生活デザイン構築」と「心と体の体力づくり」に役立てることを主な目的としている.これには,自らの生活ストレスを自覚し,ストレスフルな出来事を乗り越えることができるような対処技能を高めて,健康を維持・増進していくことが重要である.つまり,個別のニーズに合わせた社会的な役割と健康増進活動を調和していくことが必須事項となる.

 2003年(平成15年)のうつ病専用病棟開設時から,「午前7時の水踏みから,朝のミーティング,午前と午後両方の作業療法に主体的に参加し,心と体の体力づくりを行う」という治療方針を入院時に承諾していただいている.組織としては,チーム全員で声かけを行うリハを展開している.

 今回,入院前半(導入期)の症状の軽減と,後半(継続期・集結期)の退院後の生活パターン再構築へ,患者自身の課題への気づきや再発予防を中心に述べる.また,多数ある課題の一つである復職支援についても紹介する.

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Key Questions

Q1:修正型電気けいれん療法(mECT)とは?

Q2:mECT実施患者に対するOTの役割とは?

Q3:mECT実施患者に対するOTの留意点は?

はじめに

 うつ病患者の治療において,不安焦燥感や自殺念慮が強く薬物療法の効果を待てない場合や,薬物治療抵抗性が強い場合に修正型電気けいれん療法(modified electroconvulsive therapy:mECT)が選択されやすい1).mECTは全身麻酔下にて頭部に通電し,人工的に痙攣を誘発する治療法である.通常mECTは1週間に2〜3回の頻度で実施され,5〜6回を1クールとし,重症度によって異なるが,2〜3クール実施される2).かつてはサイン波刺激機器が使用されていたが,サイン波は脳への負担が強く,健忘や頭痛等の副作用が生じやすかった.2002年(平成14年)以降は短パルス矩形波治療器が導入され,少量のエネルギーで効率よく発作を誘発できるようになり,認知障害等の副作用が軽減され安全性が増した3).表1にmECTの適応となる状況4)を,表2にmECTの主要な副作用を示した5)

 副作用の少ない短パルス矩形波治療器を使用した場合でも,記憶障害を中心とする認知機能の障害は起こりやすく6〜8),不安感を訴える患者も多い.われわれは,mECT実施患者に構成的手工芸を用いて“記憶のつながり”を促す個別作業プログラムを導入し,プログラムが患者の主観的回復感を安定させる効果をもつことをランダム化比較試験にて検証した9).しかし,mECT患者に対する作業療法の報告例10〜13)はきわめて少なく,実践例の蓄積が必要である.

 2016年度(平成28年度)に信州大学医学部附属病院(以下,当院)に入院したうつ病患者は33名(男性6名,女性27名,平均年齢64.0歳)で,そのうちmECTを実施した患者は16名(男性2名,女性14名,平均年齢65.8歳)であった.16名のうち11名が精神症状を伴う重症うつ病エピソードと診断され,いずれも妄想や緊張病症状を伴う重症例で,2名は継続・維持ECT註1)が実施された.16名のmECT平均実施回数は15.5回(継続・維持ECT実施者を除く)であった.また,16名のうち12名に作業療法が処方されていた.本稿の目的は,当院の作業療法プログラムと,mECTを実施したうつ病患者に対する実践例を紹介し,作業療法の役割と留意点を考察することである.

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Key Questions

Q1:気分障害の就労に向けたリハの役割は?

Q2:気分障害の就労支援における作業の活用の仕方は?

Q3:気分障害の就労支援における集団の用い方は?

はじめに

 50人以上の企業で働く精神障害者の数は,2016年(平成28年)6月時点で,前年から約20%増え,身体障害者や知的障害者の伸び率よりも高かった1).2018年4月から改正障害者雇用促進法が施行され,法定雇用率の算定基準の対象に新たに精神障害者が追加される.それにより精神障害者の雇用義務化の実現に向けた動きが強まり,雇用拡大につながることが予想される.また,それに先駆けて,厚生労働省は障害者が働きやすい職場環境に改善し,職場定着を図ることを狙い,「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を始める.

 精神障害者雇用に追い風が吹く環境下で,就労にスムーズに移行していけるよう,リハの重要性はますます高まるであろう.本稿では,気分障害の就労支援において,作業療法の果たす役割とOTのかかわりについて述べる.

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排尿自立指導料

 2016年(平成28年)4月に排尿自立指導料が保険収載された.排尿自立指導料とは,保険医療機関にて,排尿に関するケアにかかる専門的知識を有した多職種からなるチーム(排尿ケアチーム)を設置し,患者の診療を担当する医師,看護師等が,排尿ケアチームと連携して,患者の排尿自立の可能性および下部尿路機能を評価し,排尿誘導等の保存療法,リハ,薬物療法等を組み合わせる等,下部尿路機能の回復のための包括的なケアを実施することを評価するものである.

 この排尿自立指導料算定には,さまざまな条件を理解しクリアする必要がある.第1には排尿ケアチームの設置である.当初,医師,看護師,PTの3職種であったが,本年4月に疑義解釈にて「作業療法士」が職名追記された.医師は3年以上の勤務経験のある泌尿器科医または所定の研修を修了した医師であり,看護師は3年以上の下部尿路機能障害を有する患者の看護に従事した経験を有し,所定の研修を修了した者と規定されている.セラピストは,下部尿路機能障害を有する患者のリハ等の経験を有する者とあり,下部尿路機能障害を理解していなければならない.第2にこの指導料の対象は,尿道留置カテーテル抜去後に,尿失禁,尿閉等の下部尿路機能障害の症状を有する者,または尿道留置カテーテル留置中の患者であって,尿道留置カテーテル抜去後に下部尿路機能障害を生ずると見込まれる者と限られていることである.第3には病棟看護師の取り組みが明確に規定されており,対象を抽出して下部尿路機能障害評価のための排尿日誌作成や残尿測定を行うことが必要とされている.第4に排尿ケアチームが関与を行うと同時に,病棟看護師等が直接的な指導・援助を行った場合に週1回計6回まで算定できるもので,どちらか一方の関与では算定できない.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第34回

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無限の可能性を探る協働作業

 私の学生時代にはインターネットもなく,就職ガイドブックにもOTが紹介されることはなく,私はPTと勘違いし迷いながらOTになりました.そんな優柔不断な私でしたが,「上腕切断でも3人の子育てをしているバレエダンサー」,「C5頸髄損傷でも自動車運転や一般就労ができた元暴走族少年」,「失語症で片麻痺があっても版画家となり個展を開催している元小児科患者」等々,私たちの想像をはるかに超える患者との貴重な出会いと付き合いが,私の作業療法の基盤となっています.「たとえ心身に重い障害があったとしても,自分自身を知って動くことができれば,さまざまな可能性があること」,「セラピストが自立予後の限界をつくらない心構えが大切であること」,「セラピストは患者家族に寄り添い,無限の可能性を探る存在であること」等,彼らから多くを教えてもらいました.

 このような臨床経験を与えてくれるわが職場,業務後の勉強会や週末の研修会を一緒に行ってくれる同僚や全国の仲間,活動を支えてくれるOT協会,すべてに感謝しています.今後も,さらに多くの患者家族の役に立てるよう実践して,作業療法のすばらしさや楽しさを伝えていきたいと思います.

講座 リーダー論—組織をつくるOTたち・第2回

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OTと管理・運営

 設立50周年を迎えた日本作業療法士協会は5万5千人以上の協会員を有し,2015年度数値では21〜40歳が全体の81.0%を占めるという若い専門職集団となっている.結果として,OTの一人職場は減少し,複数のOTが在籍する職場が多くなった1)

 このような社会背景の中,国家資格であるOTは,専門性を確立すべく学術技能の研鑽に向けて生涯教育制度を導入し,質を担保している.乱暴な言い方をすると,「自分の腕で稼げる職人」を着々と養成しているのである.

連載 ユーモアと笑い・第2回

ユーモアの働き1 柏木 哲夫
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ユーモアとは

 「これがなければ人間は生きてはいけない」という体液(humores)が語源となり,「ユーモア(humor)」になったことは前回述べた.

 つまり,ユーモアがなければ,人間は生きていけない,そのくらい「ユーモア」や「笑い」は大切なのである.あまり日常生活の中でこのことは意識されていないかもしれないが,たとえば,私たちの1日を考えてみると,朝起きてから夜寝るまで「1回も笑わない」という生活をしている人は,ほとんどいないと思う.どこかで,私たちは笑っている.友人や家族との会話の中で笑ったり,おもしろいテレビの番組を観て笑ったり,とにかくどこかで笑っている.ユーモアや笑いというのは,人間の生活に欠かすことができない,非常に重要な役割をもっているのである.

連載 作業療法を深める ⑫ヘルスコミュニケーション

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はじめに

 今,あらゆる分野や領域で「対話」が必要とされている.SNS等,コミュニケーションツールが発達した反面,現代では対面でお互いの声を聴き合う「対話」の時間は減ってしまっていないだろうか.特に,地域ごとに住民や関係者が協働しながら行う,さまざまな地域課題の解決に向けた実践や,地域包括ケア・健康づくり活動において,「対話」あるいは「ダイアローグ」は重要なプロセスとなる.そこで最も肝要なポイントは,地域住民と専門家が,より対等な立場で対話を行うことができるか,である.本稿では,非医療者と医療者間のヘルスコミュニケーションについて,特に,そうしたコミュニケーション活動において必要となる対話とファシリテーションの技術について解説する.また,フィンランド発の「オープンダイアローグ」等,新しいダイアローグのモデルについても紹介する.

学会・研修会印象記

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 2017年(平成29年)6月8〜10日の期間に,第54回日本リハビリテーション医学会学術集会が,岡山コンベンションセンターを中心に開催されました.この学会は「エビデンスに基づく地域包括ケアシステムの推進」をテーマに,4,500人を超える参加者があり,実に活気のある盛大な学術集会となりました.

 さて,今回,私が参加致しました骨転移ライブカンファレンスでは,リハビリテーション科医,整形外科医,緩和ケア内科医,放射線科医,看護師,PTの各先生が,それぞれの立場でショートレクチャーをされた後,私はOTの立場から,当院での骨転移診療の概略,リハ開始時のリスクの共有と,リハ中の骨関連事象の報告連絡体制等のお話をさせていただきました.その後,模擬症例の提示がなされ,各科の医師だけでなく会場の先生方からも,骨転移に対する治療方針,骨折リスクの評価等についての熱い議論が交わされました.Activities of daily living(ADL)に関する援助や退院に向けての準備等,いかにご本人の意思を尊重しつつ現状に合った支援を提供するのかについては,コ・メディカルや会場の先生方からも活発な意見が出され,1時間のカンファレンスは,とても内容の濃いものとなりました.

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Abstract:作業療法において,作業環境は治療効果や対象者自身に影響する要因である.二者間の距離の違いが,作業時の感情,検査者への印象および作業効率に及ぼす影響について検証した.対象者は健常者33名とした.二者間の距離を45cm,120cm,360cmの3つの距離に設定し,対象者をそれぞれ振り分けた.対象者は検査者と共にペーパーブロックの三角パーツ製作を行った.調査項目は感情,検査者への印象および作業効率とした.感情はPANAS,印象は特性形容詞尺度,作業効率は作業時間内の作業成果とした.その結果,作業前に比べ作業後には,感情では120cm群でPANASネガティブ得点が減少し,印象では45cm群,360cm群で特性形容詞尺度が悪い印象へと推移したが,作業効率では差はなかった.以上より,二者が対面し作業活動を行う際,感情や他者の印象を良好にするには,親密距離や公衆距離を避け,個体距離または社会距離とすべきであることが示唆された.

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Abstract:【目的】末期がん患者に対する緩和的作業療法では,患者の要望に基づいて重要な作業が同定され,それに対する支援が行われる.しかし,言語機能に障害を有した患者の場合,要望を聴取すること自体が困難になる.今回,全失語を呈した終末期がん患者の重要な作業をFace Scaleを使用して探索し,作業療法場面に導入する試みを行ったため,その結果を報告する.【症例】がんに伴う進行性多発性脳梗塞により全失語を呈した60代の男性を対象にした.【方法】作業中の対象者の表情をFace Scaleを用いて評価し,より笑顔の傾向が強かった作業を中心に作業療法を実施した.また作業に対する対象者の反応を妻に伝え,対象者と妻の交流を支援した.【経過・結果】Face Scaleを用いた評価によって,入浴,絵画,妻の訪問,外の散歩,写真撮影の際に対象者の笑顔の傾向が強いことがわかった.そこで作業療法では,外を散歩して写真撮影をした風景の絵を描くという作業を導入した.また対象者が作業療法中に撮影した写真や描いた絵を妻に見せ,対象者と妻の非言語的な交流を支援した.【考察】全失語の終末期患者の重要な作業を見つける一手段としてFace Scaleは有用であった.作業療法での作品づくりがA氏夫妻が時や場を共有できる作業につながった可能性がある.終末期患者の作業療法では患者の死後,家族の悲嘆からの回復等も視野に入れたかかわりが大切であると考えた.

昭和の暮らし・第10回

手触りも懐かしい球・玉 市橋 芳則
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 小さな手のひらに収まるような球体に,子どものころ,心踊らされた思い出がある.原っぱでは,草野球.神社やお寺の境内でビー玉遊び.夜店や温泉地でのスマートボール等.

 そんな懐かしい思いに駆られて,博物館に所蔵している球・玉を集めてみた.

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表紙のことば/今月の作品

次号予告

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 本研究は,第9回作業療法ジャーナル研究助成により実施することができました.まずは研究助成していただいた三輪書店様,そして本研究にご協力していただいたすべての方に感謝申し上げます.

 本研究のテーマは,「食事遂行技能の観察項目の選定に関する調査研究」でした.その内容は,選定した食事遂行技能の評価項目を,OTを対象にアンケート調査を実施し,項目妥当性を検討するものでした.ここから得られた成果は,第50回日本作業療法学会において発表させていただきました.学会発表ではさまざまなディスカッションをすることができ,そこからさらに改良する機会となりました.

研究助成テーマ募集

学会・研修会案内

編集後記 長野 敏宏
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 「精神障害“にも”対応した地域包括ケアシステム」,地域包括ケアがようやく精神障害者に関しても議論・実践の俎上にのせられました.気分障害の特集において,この点を書いてくださっていることは,とても意味があることだと考えています.地域包括ケアの舞台はご本人が選ぶ「生活の場」,私たちは忘れずにいなければなりません.ちなみに,“にも”という若干すっきりしない言い回しには強い想いが込められています.地域包括ケアは高齢者分野から使われはじめた言葉ですが,その考え方は「地域づくり」そのものを指し,分野を超え,障害種別や制度等の縦割りを超え,社会のあり方そのものです.特に分離されがちな精神障害において“にも”という表現が必要だったと考えています.

 また,ようやく精神科医療に統合失調症モデルからの脱却の兆しがみえてきたような印象を受けています.ただ,地域包括ケアの一機能として,全国,どこに住んでも,気分障害の作業療法が受けられる必要があると考え,準備が進められているでしょうか.すべてのOTに関心をもって読んでいただき,さらに現場と照らし合わせながら,生活の場で提供できるものに進化させていっていただきたいと切に願います.考えなければならないことは,まだまだ膨大にありそうです.少し辛口な感じもしますが,全国各地例外なく,とてもたくさんの方々が作業療法を必要としています.

基本情報

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作業療法ジャーナル
51巻11号 (2017年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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