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Key Questions
Q1:修正型電気けいれん療法(mECT)とは?
Q2:mECT実施患者に対するOTの役割とは?
Q3:mECT実施患者に対するOTの留意点は?
はじめに
うつ病患者の治療において,不安焦燥感や自殺念慮が強く薬物療法の効果を待てない場合や,薬物治療抵抗性が強い場合に修正型電気けいれん療法(modified electroconvulsive therapy:mECT)が選択されやすい1).mECTは全身麻酔下にて頭部に通電し,人工的に痙攣を誘発する治療法である.通常mECTは1週間に2〜3回の頻度で実施され,5〜6回を1クールとし,重症度によって異なるが,2〜3クール実施される2).かつてはサイン波刺激機器が使用されていたが,サイン波は脳への負担が強く,健忘や頭痛等の副作用が生じやすかった.2002年(平成14年)以降は短パルス矩形波治療器が導入され,少量のエネルギーで効率よく発作を誘発できるようになり,認知障害等の副作用が軽減され安全性が増した3).表1にmECTの適応となる状況4)を,表2にmECTの主要な副作用を示した5).
副作用の少ない短パルス矩形波治療器を使用した場合でも,記憶障害を中心とする認知機能の障害は起こりやすく6〜8),不安感を訴える患者も多い.われわれは,mECT実施患者に構成的手工芸を用いて“記憶のつながり”を促す個別作業プログラムを導入し,プログラムが患者の主観的回復感を安定させる効果をもつことをランダム化比較試験にて検証した9).しかし,mECT患者に対する作業療法の報告例10〜13)はきわめて少なく,実践例の蓄積が必要である.
2016年度(平成28年度)に信州大学医学部附属病院(以下,当院)に入院したうつ病患者は33名(男性6名,女性27名,平均年齢64.0歳)で,そのうちmECTを実施した患者は16名(男性2名,女性14名,平均年齢65.8歳)であった.16名のうち11名が精神症状を伴う重症うつ病エピソードと診断され,いずれも妄想や緊張病症状を伴う重症例で,2名は継続・維持ECT註1)が実施された.16名のmECT平均実施回数は15.5回(継続・維持ECT実施者を除く)であった.また,16名のうち12名に作業療法が処方されていた.本稿の目的は,当院の作業療法プログラムと,mECTを実施したうつ病患者に対する実践例を紹介し,作業療法の役割と留意点を考察することである.
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