作業療法ジャーナル 49巻5号 (2015年5月)

特集 コミュニケーション能力と作業療法

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特集にあたって

 作業療法において,コミュニケーション能力は重要なものである.精神障害のある方ばかりでなく身体的な障害のある方も,何らかのコミュニケーション能力に障害があることが多い.コミュニケーション能力を考慮した支援を展開していくことが,作業療法として中核的なアプローチとなる場合も多い.

 長い間精神障害のある方を支援してきた筆者は,コミュニケーションが苦手な対象者が多くいらしたため,あり方を考えてきた.またこの30年のOT人生の中で,学生も多く指導してきた.学生の中には,対象者や指導者,職員とコミュニケーションがとれないことで悩む人も多かったと感じる.OTのもつべき技能として,コミュニケーション能力は重要なものである.

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Key Questions

Q1:社会性の発達とコミュニケーションの関係とは?

Q2:作業を共有する中で育まれるコミュニケーションとは?

Q3:作業療法を通じて恢復するとは?

はじめに

 私たちは誕生してから死を迎えるまで,1人で生きることはできない.また,生きるために必要不可欠な作業や自身にとっての重要で大切な作業を人と共有し遂行する.社会とは人がつくり出すもので,誕生と同時に,養育者(以下,主として母親)と赤ちゃんの2者関係という小さな安心した社会が出発する(図1①).その中で授乳,おむつの交換,抱っこ等の重要な作業を通じて,赤ちゃんとの情動的なコミュニケーションが発達する.そして,年月が経ち母親が老いを迎えるときには,その赤ちゃんが成人し母親の老いや病気によりできなくなった作業遂行のお手伝いをする.いわゆる介護のことである.浴室で老いた母親の背中を流しているときにその弱った細胞が自身を愛しんでくれた証のように感じられる一瞬があるかもしれない.母親への愛しみの情動が日々のつらいと感じている介護を支える.

 このような日々の人との作業の共有と情動の通底により互いの絆を強くし,さらに人とかかわるエネルギーを導き,生涯にわたって人の社会化を進めていく.

 本稿では,社会性の発達とコミュニケーション能力の関係を説明したうえで,作業療法が作業を通じて,人の社会化,コミュニケーションの発達や恢復に寄与することができる根拠を発達的視点から以下,論を展開する.

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Key Questions

Q1:コミュニケーション能力とは?

Q2:人間関係を展開する要素とは?

Q3:OTが身につけたいコミュニケーション技術とは?

はじめに

 コミュニケーション能力を定義する考えはいくつかあるので,ここでは,言語的,非言語的なコミュニケーションを含む対人関係を構築するうえで必要な能力ということにして論を進めることにする.

 OTは,自身のコミュニケーション能力を駆使し,コミュニケーション能力に何らかの障害がある対象者と信頼関係を構築し,支援を継続していく.そのためには,対象者のコミュニケーション能力をしっかり評価することと同時に,自分のコミュニケーション能力と特徴をとらえ,関係構築に利用していく必要がある.コミュニケーション能力と作業療法を語るとき,発達心理学と社会心理学等を基盤とした人間理解とコミュニケーション能力を理解しておく必要があると感じている.

 本稿では,人間関係の心理学においていわれている,出会いからの人間関係の展開の特徴を,齊藤の論1)を参考に示し,作業療法を展開するうえでも経験するであろう,人間関係の展開について整理する.この展開を視野に入れて対象者やチームを組む多職種と良好な関係を構築する一助にしていただきたい.

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Key Questions

Q1:ASD,ADHDの特徴とは?

Q2:ASD児に対する作業療法の考え方とは?

Q3:ADHD児に対する作業療法の考え方とは?

はじめに

 花ノ木医療福祉センター(以下,当施設)では,市の発達支援事業との連携により,未就園の幼児(2〜3歳前後)の新規作業療法外来患者が増えている.その保護者の主訴で最も多いのは,コミュニケーションに関する相談である.新規外来患者としてくる幼児はASDに関して確定診断に至ることは少ないが,コミュニケーションの発達に課題をもつことが多い.保護者が子どもとのコミュニケーションの難しさに直面したとき,養育上の困難さを強く抱えてしまうと筆者は感じている.これまで支援を受けることなく,困難さを感じながら日常を過ごし,初めて支援を求めて来た保護者と子どもにOTは何ができるのか? 筆者は保護者と子どもの心を大切にしながら,効果のある支援をしたいと考え,日々悩みながら作業療法を行っている.

 ここでは,日々悩みながらも実践を繰り返した中で,保護者と子どもの変化を実感できた自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder:ASD)のある子ども(以下,ASD児)と,注意欠陥・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)のある子ども(以下,ADHD児)の個別作業療法を紹介したい.

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Key Questions

Q1:social cognitionとコミュニケーションの関連は?

Q2:認知症におけるsocial cognitionとは?

Q3:認知症者と家族のコミュニケーションの問題は?

はじめに

 高次脳機能障害や認知症の人は,社会で生活するために周囲の人から何らかの支援が必要になる場合が多く,住み慣れた地域で在宅生活を継続するには,介護家族や支援者とのコミュニケーションが重要になる.円滑なコミュニケーションには,言語機能のみでなくsocial cognitionや心理社会的側面への配慮も必要であり,神経学的基盤から環境までを幅広く踏まえて支援ができる作業療法が果たす役割は大きい.本稿では,高次脳機能障害と認知症におけるコミュニケーション障害について,言語機能とsocial cognition,心理社会的側面の3視点からまとめる.

 なおsocial cognitionとは,他者の表情や情動の認知,他者の意図理解(こころの理論),比喩皮肉の理解や場面や文脈の情報を手がかりに,言葉の裏にある意図や意味を推測する語用論等,社会で円滑な人間関係を構築しながら生活するために必要な,非常に重要かつ高度でフレキシブルな認知機能を指す.

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Key Questions

Q1:統合失調症の生活上の特性と認知機能の関連は?

Q2:認知機能はコミュニケーションにどのように影響するか?

Q3:特性に着目したコミュニケーション支援の工夫とは?

はじめに

 人が,それぞれの考え・気持ち・思い等を,会話・文字・合図や身振り等を媒介としてお互いに伝達し合うコミュニケーションは,社会生活を営むうえで基礎となる重要な活動である.統合失調症に代表される精神障害をもつ対象者(以下,対象者)は,その障害特性からコミュニケーション上の深刻な悩みをもつ人が少なくない.近年の研究にて,障害特性と認知機能の関連が深いことが明確になってきており,個々の問題に焦点を当てたアプローチも実践されつつある1〜3).一方で,コミュニケーションは送り手,受け手双方がいて成立するものであり,相手のあり方は対象者の行動を左右する4).本論では,統合失調症を中心に,生活上の特性と認知機能の関連や,それがコミュニケーションにどのように影響するかを整理する.また,作業療法場面において,認知機能障害に着目したコミュニケーション支援にはどんな工夫が可能か,筆者の体験を交えて述べてみたい.

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Key Questions

Q1:OTに必要なコミュニケーション能力とは?

Q2:コミュニケーション能力を磨くためには?

Q3:地域ケアにおける連携とコミュニケーションの関係は?

はじめに

 作業療法のプロセスは,ICFの概念に基づき,「心身機能と身体構造」,「活動」,「参加」のそれぞれの要素について,あるいは「人」,「作業」,「環境」の要素について,必要な情報収集や評価およびアセスメントをすることから始まり,その結果から導き出された課題に対して作業療法計画を立案し,プログラムを実行(提供)する.また,プログラムの実行に伴い,効果の検証と必要に応じてプランの修正を繰り返すPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを稼働させながら,クライエントの目標達成に向けて働きかけていく.そして,いずれの過程においても,コミュニケーションスキルは非常に重要であり,その対象はクライエントだけでなく,その家族や支援チームのメンバーも含まれる.今回,地域ケアの領域でのさまざまな場面におけるコミュニケーションスキルについてまとめてみたい.

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物語

 昔から「物語」が好きだった.フィクションであれ,ノンフィクションであれ,誰かが語る言葉を聞きながら,読みながらその世界を味わうことが純粋におもしろかった.語られた言葉と語られないが存在しているだろう言葉の意味を探りながら,自分が体験したことのない世界が開けることを感じる瞬間,胸が高鳴った.

 作業療法をしていると同じような体験があることに気づく.この方は私と出会うまでにどのような人生を送ってきたのだろう.これからどのような人生を送りたいのだろう.私には想像できない経験をくぐり抜けてきた方々がいる.今,目の前にいる穏やかな姿からは思いもよらない話が飛び出す.聞いているのもつらくなるような,だからこそ淡々と語る一言一言が重い話.また,時にはご本人でさえご自身の思いに気づかない,あきらめている,忘れてしまいたい,言い出せない,そんなこともある.でも,「よろしければ聞かせていただけませんか」,そして「もう一度,生活の物語を一緒に描いていきませんか」と思いながら作業療法を行っている.自分の目の前にいる方が語る言葉を頼りに,どのような語られない「物語」が隠されているのかを想像しながら.

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中村 ここまで,脳梗塞に対するt-PA静注治療,吉村先生のご専門である血管内治療について,またその治療を可能とするための地域連携システムの構築や,さらには予防医療,救急医療,慢性期医療をつなぎ,医局の垣根も越えた診療体制づくり等についてのお話をうかがってきました.壮大な計画ですね.

吉村 そうなんです.まだ始まったばかりですが,状況は待ったなしです.血管内治療ができる医師に限りがある状況ですから,一部の施設のみが患者さんを受け入れることになります.治療を行う医師やスタッフは,1晩徹夜ができたとしても,2晩はどうでしょうか? さすがに3日連続は無理ですよね.だったら,みんなで手をつないだほうがいい.ただ,遠方の場合には連携しようがない.そのような場合にはぜひ勉強に来てくださいと言っています.私たちは喜んで血管内治療の技術をお教えします,と.そんな経緯から現在,青森から熊本まで,日本全国からこの技術を身につけるために当院に国内留学してくれています.3月からはインドネシアやエジプトからも留学希望があります.私は青森の方が倒れても救えないし,インドネシアの患者さんも救えませんからね(笑).私たちはライバルではなく,仲間です.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第5回

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みんなが笑顔になれるOT

 発達障害領域の作業療法は0歳の乳児から成人までが対象となり,当然そのご両親,ご家族まで含んで作業療法を提供していく.生まれながらに障害があるということ,一生を障害とともに生きていくということ,想像を絶するような悩みと苦しみがあると思う.が,ご本人とそのご家族が,障害があってもそれが特別なことではなく,普通に未来に向かって努力し,挑戦し,頑張れるよう応援できる作業療法でありたい.

 子育ての中で子どもの笑顔ほどうれしく,元気をもらうものはない.家族の笑顔や優しい声かけもまた子どもの生命に響いていく.笑顔の相互作用は,どんな薬やことばより生きていく力になる.この笑顔を,作業療法の場面でどれだけつくれるだろうか.勝負である.この積み重ねが人生をつくっていく.いつでも,どこでも,作業を使って,その子の作業が成功するよう治療し,生活を支援していきたい.作業療法の知識と技術と知恵と創造力と真心で.

講座 作業療法研究と倫理・第5回

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Key Questions

Q1:倫理審査委員会の役割とは?

Q2:倫理審査委員会は何を審査するのか?

Q3:倫理審査手続の具体例は?

はじめに

 1947年,ナチスの医師たちの非人道的人体実験に対する裁判の結果,臨床研究の研究倫理指針の先駆けとして「ニュルンベルク綱領」10カ条が提示された1)

 その後,1964年に研究および実験の原則として,個人の尊厳の尊重やインフォームド・コンセント等,5カ条から成る「ヘルシンキ宣言」が採択された.「ヘルシンキ宣言」は,その後,世界医師会により9回の修正が行われ2),現在は2013年にブラジルのフォルタレザで改訂されたものが最新版である.

 わが国では2000年代に入り,遺伝子研究,疫学研究に関する倫理指針が厚生労働省より相次いで出されたが,われわれOT等,臨床に携わる職種に関連する倫理指針は,2003年(平成15年)8月に初めて策定された「臨床研究に関する倫理指針」である3,4).これはその後2008年(平成20年)に「全部改正」され,さらに2014年(平成26年)12月にこれまでの倫理指針を統合するものとして「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が文部科学省・厚生労働省の連名で出された.

 2008年の「臨床研究に関する倫理指針」5)では,前文の中で「この指針は,世界医師会によるヘルシンキ宣言に示された倫理規範や我が国の個人情報の保護に係る議論等を踏まえ,また,個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第8条の規定に基づき,臨床研究の実施に当たり,研究者等が遵守すべき事項を定めたものである」と述べ,「臨床研究が,社会の理解と協力を得て,一層社会に貢献するために,すべての臨床研究の関係者が,この指針に従って臨床研究に携わることが求められている」とした.一方,2014年の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」6)では,さらに踏み込んで「研究機関の長は研究実施前に研究責任者が作成した研究計画書の適否を倫理審査委員会の意見を聴いて判断し,研究者等は研究機関の長の許可を受けた研究計画書に基づき研究を適正に実施することを求められる」としており,人を対象とする医学系研究では,研究計画書の倫理審査を受け,それに基づいて研究を実施することが必須であることを規定している.

 日本における倫理審査委員会は,「1982年に徳島大学医学部に設置された委員会が端緒であるが,2000年代以降は,厚生労働省による『臨床研究に関する倫理指針』の策定後,研究機関である医学系大学などで整備が進められ,倫理指針の制定という形で行政指導が行われ,倫理委員会は研究の必要条件となり」7),「日本の全ての大学医学部,医科大学,及び主要な研究機関に倫理審査委員会が自主的に設置されている」8)とされる.

 聖隷クリストファー大学(以下,本学)ではこれらに先駆けて,2003年に倫理委員会規定が制定され,同年4月より倫理委員会が発足した.なお,規定はその後7回改定されている.

 以下,倫理審査委員会の役割,審査内容,手続きについて述べるが,後者の2項目については本学で行われている内容を紹介する.

連載 川モデル・第1回【新連載】

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Q1:川モデルとは何でしょうか?

A1:川モデル1)は,世界中で注目を集めている作業療法の新しい概念実践モデルです.このモデルは5カ国語1〜5)に翻訳され,世界中の学校や臨床場面で教えられています.川モデルの最も独特な特徴は,人や集団の旅(人生)を描くのに用いられる,なじみのある川のメタファーに基づいていることです.患者の川/人生は,時間の流れの中でのさまざまな変化があり,人それぞれです.人生の流れは,病気や予期せぬ惨事による問題や困難によって妨げられる可能性があります.OTは,患者の人生の流れに影響する複雑な心配事や問題を理解し,流れがよくなるために川の構造を変える方法を見つけようと努めます.

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 私が高次脳機能障がい者の自動車運転(以下,運転)にかかわりはじめて約10年が経ちました.10年前に比べると,この分野で飛躍的にOTがかかわる機会が増えてきたように感じます.以前は,医療機関が単独でかかわり完結していた状況にジレンマを感じていましたが,教習所等の他機関と協力し多角的に対象者にかかわることが増えてきた現在の状況は大変うれしく思っています.しかし,一方で教習所を利用して,危険・注意すべき場面を経験したにもかかわらず,発言・対応行動が変化しない対象者の話は依然多く聞かれます.

 今回,教習所を利用したにもかかわらず,対象者・家族の認識改善に至らなかった事例を通じて,その原因を探っていく私の頭の中身を紹介したいと思います.

学会・研修会印象記

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 障害者自動車運転研究会(http://www.reha-drive.jp/)主催による「第6回障害者運転研究会講演会」に参加した.プログラムは一般演題の発表と基調講演,シンポジウムであった.またロビーにて本田技研工業株式会社のドライビングシミュレーターや,有限会社フジオートの運転補助装置の展示があり,実際に体験し学ぶことができた.

 一般演題は6題が発表された.内容は症例報告や運転再開支援のためのシステムの紹介,評価結果の分析等であった.先駆的に自動車運転支援に取り組まれている病院や施設からの発表が続き,臨床に役立つ知識を多く学ぶことができた.また発表者が支援している場所が,静岡,大分,新潟,東京等とさまざまであり,公共交通機関や買い物等ができる商業施設までの距離等,地域の環境によって支援内容が変化することも実感した.

Topics

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奈緒ちゃんの病気

 静岡県富士市在住の吉岡奈緒ちゃん(6歳)は,2015年4月に小学校入学を控えた元気な女の子でした.しかし2014年6月,風邪に似た症状を呈してから数日で劇症型心筋炎を発症し,救急搬送された静岡県立こども病院で緊急開胸手術を受けました.その後拡張型心筋症と診断され,治療を受けてきましたが回復の見込みはなく,残された道は心臓移植しかありません.

 治療のために補助人工心臓を装着しましたが,それは血栓の発生や感染症の危険にさらされることを意味し,右脳梗塞を引き起こしてしまいました.

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Abstract:若年性認知症の男性とその妻に対して,週1回11回の訪問による作業療法を行った.その男性が興味を示す活動や妻のニーズを満たす取り組みを行った結果,無関心,うつ等の認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)が軽減し,男性は拒否的であったデイサービスの利用が可能となり,他者とのコミュニケーションの質が高まった.さらに妻は,介護面でも,夫を褒めることや,夫との生活を楽しむことが重要であることを再認識し,夫との生活の充実を図る方向へと変化した.一方,若年性認知症の人と家族,という同じ境遇の人同士の交流の場の創造,周囲の人々の若年性認知症についての理解を深める取り組みの必要性が課題として浮かび上がった. 

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表紙のことば/今月の作品

編集室から

第10回研究助成選考結果発表

研究助成テーマ募集

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 存在感のある専門書である.そういう書籍は,著者の深い経験に基づく知識やアイデアが積み重なって,存在感を自ずと醸し出していることが多いようである.頁をめくって著者が書かれた「はじめに」を目にしたとき,その理由がわかった.本書は,著者の一人,後藤 昇氏が執筆にかかわった1971年(昭和46年)の『脳・脊髄血管の解剖』から実に40数年の歴史をもつものである.その重みは,さらにページをめくった「歴史」の部分に綴られている.

 本書をさっそく臨床で活用することができた.ある症例の出血部位について,責任血管とその分枝がどのように影響するのかを知りたいと思っていたところ,第Ⅰ部の「脳血管障害の病理学」がまず目に飛び込み,知りたい頁に容易にたどりついた.そして,何より目を引いたのは症例概略があたり前のように記載されていたことである.「そうか,この本は脳血管障害が臨床症状に及ぼす影響を解説しているのだ」と自然に思えたのである.OTも経験を重ねていくと,視床出血や被殻出血等と診断名は同様であるが臨床症状やその後の経過が異なる対象者が少なくないことを知っている.未勉強のころには,それを重症度や個別性という理由で済ませてしまっていたことを反省させられる.丁寧に知識を重ねることが,対象者に無理をさせない,質の高い作業療法を提供することにつながるのだということをあらためて認識させられる.

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 三輪書店から届いた『発達障害の作業療法第2版』基礎編と実践編をレターボックスから取り出したときにズッシリとその重さを感じました.そのときに思わず,鶏の卵を掌にのせて「……地球より重い」と生命の重たさを詠った壺井繁治の詩が頭をかすめました.

 本書からは,岩﨑先生が学び,実践し,試し,修正して創り出した作業療法の生命の重たさを実感しました.急ぎ本書の頁をめくり,思わず「脱帽!」の一言です.初版を大きく超えた発達障害・作業療法の生命力がみなぎり,本の中から文字,表,子どもたちのイラストが踊り出すような躍動感のある内容となっています.

第50巻表紙作品募集

学会・研修会案内

次号予告

編集後記 竹内 さをり
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 今回の特集は「コミュニケーション能力と作業療法」である.企画に携わり,今OTに伝えたい,あるいは自分が知りたいコミュニケーションとは何かと考えた.そこで思いつくことは,自らが相対している「学生のコミュニケーション力に対する改善策」であった.

 今回の特集の中には,養成校教育に関する内容はないが,どの項目も他者とコミュニケーションをとるという基本,そしてそこに介入するうえで必要な視点について学べるものであり,教育場面にも大いに活かせるものであった.

基本情報

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作業療法ジャーナル
49巻5号 (2015年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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