作業療法ジャーナル 49巻6号 (2015年6月)

特集 病院における作業療法

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特集にあたって

 日本における作業療法は,介護予防から急性期・回復期・生活期・終末期と多岐にわたって行われている.医療分野は入院日数の短縮が進んでいるものの,世界の中では比較的優遇されているだろう.回復期リハビリテーション病棟もこの国の特徴であり,勤務しているOT数が非常に多い.しかしながら,すべてのStageへ関与できる体制であることは,世界的にめずらしい.であれば,わが国の作業療法は私たちが創るしかない.すべての国民に作業療法を.これを展開するための情報発信のひとつとして本誌がある.

 近年,機能分化されている医療・介護分野では,OTの役割の明確化が求められている.超高齢化社会を迎えるこの国では,2025年の地域包括ケアシステム構築に向け,「病院」から「地域へ」という流れの中でその仕組みが再編されつつあるだろう.一方,「病院」は急性期から終末期まで,その役目がある.作業療法のあり方も異なるはずだ.

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Key Questions

Q1:患者の尊厳を保障しているか?

Q2:生活をイメージさせる作業療法を提供しているか?

Q3:結果に責任をとっているか?

はじめに

 本稿は2部構成である.一つは作業療法のあり方であり,あと一つはそれを前提とした病院における作業療法の役割である.

 作業療法のあり方については,「地域包括ケアシステム」を前提として私見を述べる.後段については,2025年問題で示された医療モデルを基に踏み込んだ見解を述べる.

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Key Questions

Q1:脳卒中急性期医療における生活行為向上マネジメントとは?

Q2:生活行為向上マネジメントのマネジメント力とは?

Q3:地域包括ケアに資するOTとは?

はじめに

 脳卒中モデルにおける早期作業療法実践の流れは,対象者に適切に提供される医療として確立されている.しかし,対象者の生活を入院前から退院後まで一貫して理解し支援する包括的アプローチが重視される中で,急性期医療の作業療法にも作業の継続性という,個人の活動から地域の社会資源の活用までを幅広くとらえる視点が求められてくる.急性期医療の中で地域包括ケアに資するOTの役割を「生活行為向上マネジメント」1)で表現し実践報告をする.

 なお提示する事例はすべて,日本作業療法士協会の事例登録制度に準じた同意を得ている.

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Key Questions

Q1:回復期リハ病棟に必要なチームアプローチとは?

Q2:回復期リハ病棟チーム内でのOTの役割とは?

Q3:回復期リハ病棟に必要な生活期への連携とは?

はじめに

 2000年(平成12年)に制度化された回復期リハ病棟は急速に全国へ普及し,今後さらなる質の向上が期待されている.井出1)はセラピストの役割として障害の改善を図ることに加え,「回復期リハ病棟では,さらに病棟内での日常生活および自宅復帰後の地域生活までも視野に入れてかかわることが求められている.このため,これまで以上に計画的でかつチーム一体となったアプローチの組み立てが必要であり,チームにおけるセラピストのあり方は重要な課題」と述べている.筆者は高齢者への在宅リハを中心に10年間従事し,現在の回復期リハ病棟に勤務して4年が経過した.病棟専従OTとして,チームで患者にかかわる重要性を実感しているところである.

 本稿では,経験した事例を連携と協働を主軸に振り返り,回復期リハ病棟における作業療法の役割について考察したい.

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Key Questions

Q1:地域包括ケア病棟の評価・施設基準は?

Q2:地域包括ケア病棟におけるOTの役割とは?

Q3:今後の地域包括ケア病棟に求められるシステムとは?

はじめに

 衣笠病院(以下,当院)は,三浦半島にキリストの愛による医療奉仕を行うために設立された地域中核病院であり,三浦半島地域において保健・医療・福祉のサービスをトータルに提供できる社会福祉法人「衣笠病院グループ」の中心を担う一般総合病院である.当院は,ホスピス20床を含む251床の病床,14の診療科を擁する病院であり,2014年(平成26年)8月より,38床を一般急性期病棟から地域包括ケア病棟へ置換した.地域包括ケア病棟とは,2025年問題に向け,地域包括ケアシステムを支える病棟をさらに充実させるため,2014年度診療報酬改定において,亜急性期入院医療管理料を廃止したうえで,新たに導入された評価である.

 本稿では,当院における病棟置換後6カ月間での実績を基に,地域包括ケア病棟におけるOTが担うべき役割と実践について,若干の私見を含め述べたい.

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Key Questions

Q1:療養病棟における作業療法の現状と課題とは?

Q2:「作業」を通した評価と介入とは?

Q3:療養病棟におけるOTの役割とは?

はじめに

 今回,甲府城南病院(以下,当院)の療養病棟における作業療法実践を通して考えていることを症例実践事例とともに述べたい.療養病棟では,抱えている障害も含め,より対象者の個別性が豊かに溢れているのが特徴である.しかしながら,制度上,個別的に対象者に介入できる時間は少ないのが現状であり,重度の障害を抱えた対象者も多く,作業療法を展開していくことに難渋している.

 地域包括ケアシステムの構築が積極的に進められている中で感じることは,人の生活や重要な作業をどのように抽出し,想像するか,またそれを実践するための連携や環境調整をどのようにしていくのかが非常に重要だということである.そう考えた場合,療養病棟における作業療法では(療養病棟だけでなく,機能分化されたさまざまな病棟においても変わらないことであるが),リハにおいて回復という視点も当然であるが,いかにその人らしい作業を実践できるかが重要であり,ここに作業療法の本質が多くあるのではないかと思われる.

 本稿では,療養病棟である当院の特徴(重度の障害をもった対象者が多い)もあり,地域との連携や次の段階としての療養病棟での役割等については述べることはできないが,当院で考えていること・実践していることを軸に,作業療法(士)の役割について,私見を述べたい.

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Key Questions

Q1:緩和ケア病棟におけるOTの役割とは?

Q2:緩和ケア病棟におけるリハの留意点とは?

Q3:緩和ケア病棟におけるOTの課題とは?

はじめに

 近年,日本でもがんの罹患率は増えており,小児から高齢者まで「がん」は身近にある疾患の一つである.その対象者の疼痛コントロールを含む「終の住み処」の選択の一つとして「緩和ケア病棟」がある.

 リハ医学の分野においても,「がん」は今後対応頻度の増加するであろう分野の一つであるが,「緩和ケア病棟」でのリハの認知度はまだ高くない.

 2010年(平成22年)診療報酬改定では,がん患者におけるリハ算定が可能となり,徐々に視野の広がりをみせている「がんリハ」だが,機能回復を目的とするこれまでのリハ概念とは異なり,終末期,緩和ケアのリハは機能回復への期待が難しい時期に直面する機会が多く,複雑に混在する病態と,時に急激に悪化する症状に,リハのかかわり方に悩むセラピストも多いのではないだろうか.

 本稿では,緩和ケア病棟(主にがん患者)のリハについて,筆者の経験からOTとしての役割や課題を考える機会としたい.

提言

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 私は40歳のときにNPO法人を立ち上げました.そのきっかけは35歳の自分にあります.当時大学の教員をしていた私は,大学を卒業した方々で集まる同窓会で講演する機会を与えられました.90分一本勝負.聴いている皆さんは,私のことを知っているし,目の前には私のことを学生時代から知っている先生もいます.そんな講演会で迷った挙句につけた演題が「35歳の地図〜私の作業療法〜」でした.当時10年目になった作業療法の経験を振り返って,作業という言葉を中心に話をしたことを覚えています.そのときにふと感じたのが,5年後には自分の作業療法を自分なりにかたちにしよう,でした.それから5年後の40歳でNPO法人ちゃんくすを立ち上げました.そしてさらに5年が経ち,「提言」を執筆する機会を得ました.ちゃんくすも今年で5歳.法的根拠のない自主事業として活動しています.その中で感じたことを提言としてまとめることにしました.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第6回

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 私は,ホームセンターに出かけることが大好きである.インテリア,エクステリア,ガーデニング,掃除関連,台所関連,整容関連,車の備品や大工道具等,最近ではペットショップまで.その空間は,生活そのもの.客は,それぞれの目当てが違う中であれこれと隅々まで歩き回る.私の場合,商品を見ては「作業療法に使えるな」,「これとこれを組み合わせて治療用具になるぞ」と考えてしまう.しかし,これがワクワクする瞬間.既製品の治療用具だけでは,やはり対象者の個別対応が困難である.心身,そして生活に合わせた作業療法.大切なのは,「一人ひとりの創造」だと思う.

講座 作業療法研究と倫理【最終回】

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Key Questions

Q1:看護研究における倫理指針はどのように発展してきたか?

Q2:看護研究を行う際に求められることとは?

Q3:研究倫理審査に必要な項目例とは?

倫理的取り組みの変遷

 本稿では,日本の看護研究における倫理的取り組みについて,看護と看護倫理の背景を含め概説させていただく.

 看護師の倫理綱領は,1953年に国際看護師協会(International Council of Nurses:ICN)が「看護倫理の国際規律」を採択し,その後1973年に「ICN看護婦の規律—看護に適用される倫理的概念」を公表した.また2012年には,「ICN看護師の倫理綱領」として改訂されている.日本においては,日本看護協会が1988年(昭和63年)に「看護婦の倫理規定」を示し,社会の変化に伴い,2003年(平成15年)に新たに「看護者の倫理綱領」1)として公表している(表).看護を実践するうえでの指針として,看護界で合意されているものであり,これを公表することで看護職の社会への責任を示している.この前文に示されているように,看護は「人々の健康な生活の実現に貢献することを使命」とし,「あらゆる年代の個人,家族,集団,地域社会を対象とし,健康の保持増進,疾病の予防,健康の回復,苦痛の緩和を行い,生涯を通してその最期まで,その人らしく生を全うできるように援助を行う」ことを目的としている.この目的を実現するために,看護職が働く場は,病院,在宅,保健所,助産院,学校,保育園等,多岐にわたっている.

講座 IT機器・ICTとリハビリテーション・第1回【新連載】

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はじめに

 わが国が抱える最大の課題の一つとして急速に進む少子高齢化が挙げられる.総人口は,2030年には11,522万人(高齢化率31.8%),2050年には9,515万人(高齢化率39.6%)と推計1)されており,世界に類をみないピッチで少子高齢化が進んでいる.

 国民医療費は,2012年度(平成24年度)には29兆円を超え,生産人口の減少も加わり,財政面でも逼迫した状況を迎えている.わが国の人口動態中,最大集団である団塊の世代〔1947〜1949年(昭和22〜24年)までの3年間に出生した世代〕の全員が要介護認定率の上昇が始まる75歳以上,つまり後期高齢者となる2025年(いわゆる「医療の2025年問題」)には,国民医療費は52.3兆円に上ると試算2)されている.今後さらに医療費が財政を圧迫するとともに,医療介護等従事者の人材確保の面でも深刻な状況を迎えることが予想される.

 また,地域単位でみると人口の地域偏在化,低密度化がいっそう顕著となり,無医村,無医地区が増加する等,ミクロ面でも課題が山積し,わが国の医療,介護,福祉,保健,ヘルスケア分野(以下,まとめて医療分野と記す)は,いまだかつてない難局を迎えているのである.

 深刻化する超高齢社会において,このような未曾有の難局に立ち向かい,課題解決を図るためにも,医療分野での情報通信(ICT)の利活用は,医療従事者の負荷軽減,患者に対する医療の質の向上を鑑みると必要不可欠である.

 本稿では,「スマート化する社会における医療・ヘルスケアイノベーション」と題し,医療分野にICTがもたらす変化を概観する.

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Q1:川モデルの使い方をケーススタディで教えてください

A1:川モデルを使った包括的な事例を紹介するには誌面が限られます.そのため以下に,川モデルを使うことができる多くの事例のうち,短くまとめたものを一例として示します.

連載 覗いてみたい!? 先輩OTの頭の中【最終回】

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 今回は,〈その2〉の対象者に再度講習を行った際の私の頭の中身を紹介したいと思います.

 対象者・家族と相談後,医師の指示のもと,運転再開に対する課題と目標を具体化させる目的で,当院と6年前より連携しているC教習所にて講習を行う運びとなりました.講習内容としては,構内では「左折時の大回り」,「車体のぶれ」,路上では運転再開時に希望されているルート(通勤路)で,歩行者・他車両等,周辺の状況に合わせて対応ができるか,重点的に評価を行うことになりました.当日,教習指導員からのオリエンテーションがあり,教習車に妻・OTが同乗し,双方向性ドライブレコーダーが取り付けられ,講習が始まりました.

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 よい本に出会うのは難しく,特に仕事上で使える本を探すことはさらに難しい.なぜなら,普段の仕事をしながら継続的に使用し,初めてその本のよさがわかるからです.第7回茨城県作業療法学会(2015年3月1日)では,県内の経験あるOTから「自分にとってためになった1冊」を提示していただき,書店のようにPOPを考えてもらい,本を実際に立ち読みする企画を行いました.企画名は「先輩たちのビブリオ・立ち読み書店」です.紹介された本には,仕事で使いこなせた本,自分の人生を決めた本,悩んだときに救いになった本がありました.ジャンルは専門書,随筆,ノンフィクション,マンガ,絵本等,多岐にわたりました.しかし,どれもがOTというスペシャリストを形づくるうえでバイブルとなった貴重な本でした.ラジオの音と温かい飲み物を用意し,一生ものの本と出会える機会をつくりました.読者の皆様,こんな本の紹介の仕方はいかがでしょうか?

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Abstract:追視課題によるエクスターナルフォーカスが座位バランスの学習能力と姿勢制御戦略に与える影響を検証した.眼球運動なし群(8名)は,両上肢でディスプレイを保持し中心指標を注視させた不安定板上の座位バランス訓練を5回実施した.眼球運動あり群(16名)は,眼球運動なし群と同様の課題を1,2,5回目に行い,3,4回目はディスプレイの文字を探索する追視課題によるエクスターナルフォーカスであった.座位バランス能力は上部体幹(質量中心)に装着した3軸加速度計および不安定板下の重心動揺計にて圧中心(center of pressure:COP)を測定した.結果,眼球運動あり群では,追視課題挿入時に上部体幹の動揺が減少,5回目も効果は持続した.眼球運動なし群はCOP総軌跡長が減少,上部体幹の動揺は増減なく推移した.姿勢の安定は質量中心を制御する能力とされ,追視課題によるエクスターナルフォーカスは座位バランスの安定化を促進し,持続する傾向が示唆された.

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表紙のことば/今月の作品

次号予告

編集室から

研究助成テーマ募集

第50巻表紙作品募集

学会・研修会案内

編集後記 中村 春基
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 「病院における作業療法」.この特集テーマに違和感をもたれたOTがどれくらいいるだろうか? 地域包括ケアシステム,発達障害者への取り組み等,OTの仕事の範囲は広がっている.しかし,2025年問題,社会保障と税の一体改革にみるように,効率化のもと,役立たない職種(職員)は社会的に必要とされない方向性にあることは明らかである.病院や施設で働いているOTの給与は保険制度や公助の中で保障されている.作業療法での「生活の再構築」への対価ではなく,時間を売り,建物と人員,在宅復帰率等で保障されているのである.

 「病院における作業療法」は,これらへの危機感の表れである.執筆いただいた各氏は十分にその意図を汲み,課題と提言を「さらりと」述べている.また,病院機能による役割の違いはあるが,どの時期においても,「作業療法の理念」は一つであることを示している.

基本情報

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作業療法ジャーナル
49巻6号 (2015年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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