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書評 —後藤 潤,後藤 昇(著)—「脳血管障害の解剖学的診断」
宮口 英樹
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1広島大学大学院
pp.434
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200219
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存在感のある専門書である.そういう書籍は,著者の深い経験に基づく知識やアイデアが積み重なって,存在感を自ずと醸し出していることが多いようである.頁をめくって著者が書かれた「はじめに」を目にしたとき,その理由がわかった.本書は,著者の一人,後藤 昇氏が執筆にかかわった1971年(昭和46年)の『脳・脊髄血管の解剖』から実に40数年の歴史をもつものである.その重みは,さらにページをめくった「歴史」の部分に綴られている.
本書をさっそく臨床で活用することができた.ある症例の出血部位について,責任血管とその分枝がどのように影響するのかを知りたいと思っていたところ,第Ⅰ部の「脳血管障害の病理学」がまず目に飛び込み,知りたい頁に容易にたどりついた.そして,何より目を引いたのは症例概略があたり前のように記載されていたことである.「そうか,この本は脳血管障害が臨床症状に及ぼす影響を解説しているのだ」と自然に思えたのである.OTも経験を重ねていくと,視床出血や被殻出血等と診断名は同様であるが臨床症状やその後の経過が異なる対象者が少なくないことを知っている.未勉強のころには,それを重症度や個別性という理由で済ませてしまっていたことを反省させられる.丁寧に知識を重ねることが,対象者に無理をさせない,質の高い作業療法を提供することにつながるのだということをあらためて認識させられる.
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