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Key Questions
Q1:倫理審査委員会の役割とは?
Q2:倫理審査委員会は何を審査するのか?
Q3:倫理審査手続の具体例は?
はじめに
1947年,ナチスの医師たちの非人道的人体実験に対する裁判の結果,臨床研究の研究倫理指針の先駆けとして「ニュルンベルク綱領」10カ条が提示された1).
その後,1964年に研究および実験の原則として,個人の尊厳の尊重やインフォームド・コンセント等,5カ条から成る「ヘルシンキ宣言」が採択された.「ヘルシンキ宣言」は,その後,世界医師会により9回の修正が行われ2),現在は2013年にブラジルのフォルタレザで改訂されたものが最新版である.
わが国では2000年代に入り,遺伝子研究,疫学研究に関する倫理指針が厚生労働省より相次いで出されたが,われわれOT等,臨床に携わる職種に関連する倫理指針は,2003年(平成15年)8月に初めて策定された「臨床研究に関する倫理指針」である3,4).これはその後2008年(平成20年)に「全部改正」され,さらに2014年(平成26年)12月にこれまでの倫理指針を統合するものとして「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が文部科学省・厚生労働省の連名で出された.
2008年の「臨床研究に関する倫理指針」5)では,前文の中で「この指針は,世界医師会によるヘルシンキ宣言に示された倫理規範や我が国の個人情報の保護に係る議論等を踏まえ,また,個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第8条の規定に基づき,臨床研究の実施に当たり,研究者等が遵守すべき事項を定めたものである」と述べ,「臨床研究が,社会の理解と協力を得て,一層社会に貢献するために,すべての臨床研究の関係者が,この指針に従って臨床研究に携わることが求められている」とした.一方,2014年の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」6)では,さらに踏み込んで「研究機関の長は研究実施前に研究責任者が作成した研究計画書の適否を倫理審査委員会の意見を聴いて判断し,研究者等は研究機関の長の許可を受けた研究計画書に基づき研究を適正に実施することを求められる」としており,人を対象とする医学系研究では,研究計画書の倫理審査を受け,それに基づいて研究を実施することが必須であることを規定している.
日本における倫理審査委員会は,「1982年に徳島大学医学部に設置された委員会が端緒であるが,2000年代以降は,厚生労働省による『臨床研究に関する倫理指針』の策定後,研究機関である医学系大学などで整備が進められ,倫理指針の制定という形で行政指導が行われ,倫理委員会は研究の必要条件となり」7),「日本の全ての大学医学部,医科大学,及び主要な研究機関に倫理審査委員会が自主的に設置されている」8)とされる.
聖隷クリストファー大学(以下,本学)ではこれらに先駆けて,2003年に倫理委員会規定が制定され,同年4月より倫理委員会が発足した.なお,規定はその後7回改定されている.
以下,倫理審査委員会の役割,審査内容,手続きについて述べるが,後者の2項目については本学で行われている内容を紹介する.
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