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特集 コミュニケーション能力と作業療法
社会性の発達とコミュニケーション—作業の意味を共有することの大切さ
Development of Sociability and Communication:the Importance of Sharing the Meaning of“Occupation”
辛島 千恵子
1
Chieko Karashima
1
1名古屋大学大学院医学系研究科
pp.384-388
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200205
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Key Questions
Q1:社会性の発達とコミュニケーションの関係とは?
Q2:作業を共有する中で育まれるコミュニケーションとは?
Q3:作業療法を通じて恢復するとは?
はじめに
私たちは誕生してから死を迎えるまで,1人で生きることはできない.また,生きるために必要不可欠な作業や自身にとっての重要で大切な作業を人と共有し遂行する.社会とは人がつくり出すもので,誕生と同時に,養育者(以下,主として母親)と赤ちゃんの2者関係という小さな安心した社会が出発する(図1①).その中で授乳,おむつの交換,抱っこ等の重要な作業を通じて,赤ちゃんとの情動的なコミュニケーションが発達する.そして,年月が経ち母親が老いを迎えるときには,その赤ちゃんが成人し母親の老いや病気によりできなくなった作業遂行のお手伝いをする.いわゆる介護のことである.浴室で老いた母親の背中を流しているときにその弱った細胞が自身を愛しんでくれた証のように感じられる一瞬があるかもしれない.母親への愛しみの情動が日々のつらいと感じている介護を支える.
このような日々の人との作業の共有と情動の通底により互いの絆を強くし,さらに人とかかわるエネルギーを導き,生涯にわたって人の社会化を進めていく.
本稿では,社会性の発達とコミュニケーション能力の関係を説明したうえで,作業療法が作業を通じて,人の社会化,コミュニケーションの発達や恢復に寄与することができる根拠を発達的視点から以下,論を展開する.
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