提言
作業療法士よ,想像力をもって街に出よう
吉田 文
1
Aya Yoshida
1
1大阪保健医療大学
pp.374-375
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200201
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物語
昔から「物語」が好きだった.フィクションであれ,ノンフィクションであれ,誰かが語る言葉を聞きながら,読みながらその世界を味わうことが純粋におもしろかった.語られた言葉と語られないが存在しているだろう言葉の意味を探りながら,自分が体験したことのない世界が開けることを感じる瞬間,胸が高鳴った.
作業療法をしていると同じような体験があることに気づく.この方は私と出会うまでにどのような人生を送ってきたのだろう.これからどのような人生を送りたいのだろう.私には想像できない経験をくぐり抜けてきた方々がいる.今,目の前にいる穏やかな姿からは思いもよらない話が飛び出す.聞いているのもつらくなるような,だからこそ淡々と語る一言一言が重い話.また,時にはご本人でさえご自身の思いに気づかない,あきらめている,忘れてしまいたい,言い出せない,そんなこともある.でも,「よろしければ聞かせていただけませんか」,そして「もう一度,生活の物語を一緒に描いていきませんか」と思いながら作業療法を行っている.自分の目の前にいる方が語る言葉を頼りに,どのような語られない「物語」が隠されているのかを想像しながら.
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