作業療法ジャーナル 49巻1号 (2015年1月)

特集 神経難病を支える作業療法

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特集にあたって

 神経難病のような希少疾患は,臨床現場で経験を積みにくい.しかし,以前に比べ神経難病患者を受け入れリハを実施する病院が増え,入院患者として担当するOTも増えてきた.また,長期慢性の経過をたどることで,訪問リハの対象者として担当するOTも少なからずいる.

 一方専門病院ではOTが中心的な役割を担って,人工呼吸器装着で失われるALS患者等に対し自身の声で発声するコミュニケーションエイド「マイボイス」を開発し,マスメディアに取り上げられるような実績を残している.

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Key Questions

Q1:難病であっても地域でその人らしく生き生きと暮らすにはどうするべきか?

Q2:医療の質の向上,公平な医療費助成,社会参加の施策の充実等を方針とする難病法とはどのようなものか?

Q3:神経難病リハに早期よりチームで取り組む体制づくりとは?

難病とは1)

 最初に難病とは何かについて簡単に説明する.難病はまれな疾患とされ,原因は不明である.さらに,治療では効果的な治療法が確立されておらず,研究段階であるものも少なくはない.特に,脳神経系の難病のことを,神経難病と呼んでいる.

 1972年(昭和47年)に策定された「難病対策要綱」において,難病は次のように定義されている.それは,①原因不明,治療方法未確立であり,かつ,後遺症を残すおそれが少なくない疾病,②経過が慢性にわたり,単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家庭の負担が重く,また精神的にも負担の大きい疾病,である.

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Key Questions

Q1:神経難病患者は自分の生活をどのように否定的に理解しているか?

Q2:神経難病患者の生活の質評価はどのように行うべきか?

Q3:患者報告アウトカムにおけるレスポンスシフトとは?

はじめに

 進行性で治癒を目指せない神経難病患者の生活とは,一般に,連続する多様な身体機能低下による喪失感,不安感と共に生きる時間と考えられている.しかし,リハスタッフを含む多専門職種チーム(multidisciplinary team:MDT)による幅広い支援があると,患者(家族)はその時々に存在する機能を積極的に活かし,生活の質(quality of life:QOL)を高めることができる.人はどんな疾患,どんな状態になっても存在を肯定され,人同士の関係性の中で幸せを得ることができるのである1,2)

 しかし,難病を患う患者(家族)は,病気自体の症状・障害により起きる問題と,文化的・社会的文脈に内在する健康志向的価値観に由来する自己否定感によって,二重の困難に立たせられている1,3).保健医療・福祉従事者でさえ,治癒できない,健康に戻れない難病患者として,その生活を否定的にとらえてしまうのである.

 難病患者・家族へのリハプログラムや支援方法を検討するためには,まず難病患者・家族の生活を理解する必要があり,その際に,何らかのQOL評価法が必要となる.しかし,健康関連QOL評価法は,健康概念を基準にした評価でしかなく,治癒し得ない難病,すなわち健康の定義に向かって改善し得ない病気では,その改善内容を評価できない問題があった.今まで,患者・家族の主体的な適応結果を評価するための主観的で個別的なQOL評価法に視点が向けられることは少なかった.

 近年の患者報告アウトカム(patient reported outcome:PRO)による医療アウトカム評価の動きにより4),ようやく,患者(家族)のQOLはPROの一つとして再定義されるようになった.QOLは,状況や考え方,価値観により変動する患者(家族)の心の中の構成概念(construct)であり,どんな難病であっても適切な支援さえあれば,患者と家族のQOL向上は可能と考えられるのである.

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Key Questions

Q1:ALSとSCDの病期に応じた作業療法介入は?

Q2:神経難病患者に対する一般病院OTの役割は?

Q3:病院での介入を居宅で継続するために必要な事柄は?

はじめに

 2014年(平成26年)10月現在,神経難病患者の診療は,主に大学病院等の難病医療拠点病院と難病医療協力病院および在宅医が連携して行っている.村上華林堂病院(以下,当院)は,福岡県における難病医療協力病院として,神経難病患者の在宅療養を支援する役割を担う.多くの神経難病患者は,疾病の進行により徐々に日常生活動作(ADL)が低下する.しかし,症状や障害は多様で,個人個人に合わせたリハが必要となる.当院のリハ科では,神経難病外来を通じて診断初期段階の患者,日常生活動作が低下している患者,人工呼吸器管理が必要な患者等,さまざまな病期にわたり作業療法が処方される.作業療法は,外来通院,レスパイト入院,訪問リハ,通所リハにより診断初期からターミナルまで,多くの神経難病患者の在宅生活を支援している.今回は,病期を移動手段により歩行期,車いす期,リクライニング車いす期に分類し,特に作業療法が難渋しやすい筋萎縮性側索硬化症(ALS)と脊髄小脳変性症(SCD)の作業療法について述べる.

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Key Questions

Q1:神経・筋疾患在宅人工呼吸療養者に必要な療養支援体制は何か?

Q2:神経・筋疾患在宅人工呼吸療養者と家族に生じている課題は何か?

Q3:在宅人工呼吸におけるインシデント・アクシデント発生の現状と必要な対策は何か?

はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)や進行性筋ジストロフィー等の神経・筋疾患では,病状の進行に伴って日常生活活動に著しい障害が生じるばかりでなく,呼吸障害や嚥下障害,自律神経の障害等,生命維持に危険を及ぼす症状を生じる.そこで人工呼吸療法,経管栄養法等の医療処置管理を生活活動に取り入れながら生活することとなり,継続して,安全に,そしてその人らしい生活が実現できるようにするための医療・生活にかかわる支援体制や環境が必要となる.

 本稿では,長期に人工呼吸療法を実施しながら在宅で生活する「在宅人工呼吸療養」に焦点を当てて,療養の安全を守る支援体制および療養環境等について考えてみたい.

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Key Questions

Q1:一番の前提として,「訪問」とは?

Q2:神経難病患者への訪問作業療法実践における視点とは?

Q3:神経難病患者への訪問作業療法のやりがいとは?

はじめに

 神経難病の作業療法(リハビリテーション)という趣旨の文献や学術書は多々あるが,そのタイトルに,「地域」,「在宅」,「訪問」というキーワードがつくものは少ない.進行性病変ゆえの支援の難しさに加え,何より「在宅」という多様な価値観を対象とするその支援は,系統だった解釈と統合が難しいことがその一因かと考える.

 今回,僭越ながら本稿を担当することになった.上述したように,訪問という業務特性上,エビデンスを示しながらの論とはなりにくいが,筆者の実務経験上得た知見とともに,限られた誌面上において訪問業務の難しさと魅力をお伝えできれば幸甚である.

 なお,神経難病患者への在宅支援を表現するものとして,本稿ではその誌面特性上,訪問作業療法の呼称で統一して記載した.

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Key Questions

Q1:神経難病患者の福祉的就労の実態は?

Q2:福祉サービスを利用した就労支援とは?

Q3:障害者総合支援法により,神経難病患者が利用するサービスにおいて医療専門職に期待されることは?

はじめに

 厚生労働省が1972年(昭和47年)に策定した難病対策要綱において,難病とは,①原因不明,治療方法未確立であり,かつ,後遺症を残すおそれが少なくない疾病,②経過が慢性にわたり,単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く,また精神的にも負担の大きい疾病,と定義されている.

 わが国の難病対策の一つである調査研究の推進の一環として,難治性疾患克服研究事業が130疾患を対象に行われている.このうち診断基準が一応確立し,かつ難治度,重症度が高く,患者数が比較的少ないため,公費負担の方法をとらないと原因の究明,治療方法の開発等に困難をきたす恐れのある56疾患が医療費の助成制度である特定疾患治療研究事業の対象とされている.これらの研究事業に加えて,医療施設等の整備(重症難病患者拠点・協力病院等),地域における保健・医療福祉充実・連携(難病相談・支援センター,難病特別対策推進事業等)等の取り組みの成果として,多くの難病が慢性疾患化している.すなわち難病のある人の多くは,服薬,通院等を続けながら日常の自己管理を行うことで,病気と共存した生活を送ることが可能となってきている.

 こういった背景のもと,最近は難病のある人への就労支援が重要な課題となっている.難病のある人の就労形式は,一般就業,障害者雇用,福祉的就労等がある(表1).これまで企業への就労支援および就労後の雇用管理に関しての調査,研究が進められ,一定の成果を上げている1〜5).しかし福祉的就労については,制度的にも障害者総合支援法の施行により整備されたばかりであり,難病のある人の利用実態に関する調査はほとんど行われていない.

 2013年(平成25年)4月に施行された障害者総合支援法における難病の範囲については,現在も検討が続いているが,現時点〔2014年(平成26年)10月〕では,難治性疾患克服研究事業対象の130疾患および関節リウマチが対象となっている.すなわち対象となる難病のある人は障害者として明確に位置づけられ,これまで障害者手帳を所持しなければ利用できなかった福祉サービスが利用可能となり,福祉的就労支援の利用が増大すると考えられる.われわれは障害者総合支援法施行元年である平成25年度に,難病のある人が就労系福祉サービス機関を利用している実態,およびサービス提供者側がどのような配慮や取り組みを行っているのかを明らかにする目的で,全国の事業所に質問紙による悉皆調査を行った6)ので,難病患者の就労支援の現状を紹介するとともに,今後OTに求められることについて述べる.

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はじめに,日本経済から考える

 来年度の国家予算がついに100兆円を超し,借金は1,000兆円という.この数字をみて,暗澹たる思いを抱くのは,私一人ではないだろう.この支出予算の37%を社会保障費が占める.これは,医療・福祉の分野で働くわれわれの給与や雇用にも直結する数字である.

 病院勤務のときには,年を追うごとに書類の提出や運営会議が増え,また医療法の改正のたびに対象者との治療や指導時間が減少するのを痛感していた.しかし,学校に勤務してわずか数年の間に,同様の体験をしている.さまざまな新制度の通達があり,提出書類の作成に追われている.これは,学校数が多くなりすぎたことに対する補助金の絞り込み策と考える.

 また,行政施策の急激な変化はもちろん,医療や学業を提供する対象者の変化も著しい.病院勤務のときは,高齢者を支える家族数の減少と家族関係の希薄さに驚く日々であったが,学校勤務の今は学生を取り囲む経済力の低下,親子関係の脆弱さや学生自身の生活力の低下に驚いている.子どもの貧困が昨今,よく報道されるが,成人近い学生にも親の経済力が,さまざまなかたちで影響していることを痛感する.社会の変化は一番力のない子どもたちに大きな影響を及ぼしている.先進国の中で一番の借金大国で少子高齢化による税収の減少や社会保障費の増大の中,凄いスピードで今まで体験してこなかった社会へと変貌している.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第1回【新連載】

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 編集室との会話の中で,OT をドラえもんに例えられた先生がいらっしゃいました.そのことがきっかけとなって生まれた企画です.

 「あなたにとって,作業療法とは何ですか?」

講座 作業療法研究と倫理・第1回【新連載】

研究倫理の理解のために 山内 繁
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Key Questions

Q1:研究にかかわる倫理とは?

Q2:人間を対象とする研究のための倫理とは?

Q3:倫理審査の課題は?

研究と倫理

 研究倫理講座の総論をとのお題をいただいた.昨年来,研究にかかわる倫理問題が世間を騒がせ,東京大学分子細胞生物学研究所事件とノバルティス事件とで地に堕ちていた日本の研究の倫理は,STAP細胞事件によって決定的な烙印を押されてしまった.理化学研究所の改革委員会でも,ベル研究所のSchön博士事件,ソウル大学の黄教授事件,STAP細胞事件を並べて,歴史上の三大研究不正と認識しているようである.現在進行中の他の大型プロジェクトにも懸念要素を否定できない.すでに危機にあるわが国学術倫理の国際的地位をさらに下落させるのではないかと心配している.

 ところで,「倫理」とは何であろうか? 一般的には,「実際道徳の規範となる原理」(広辞苑)と考えられている.道徳となると,モーゼの十戒や論語の徳目等を思い浮かべる.しかし,これらが直接研究に関係するわけではない.第二次大戦後の科学の急速な発展と研究競争の激化に伴って増大した影の部分を照らすために,研究にかかわる倫理が問題とされるようになった.

連載 作業療法研究と社会学・障害学【最終回】

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本稿で示す社会学とは?

 連載第1回で田島1)が,社会学とはどのような学問かという問いに対し,「あたり前を疑う学問である」と述べた.この点については後に触れることとして,社会学とは何かと問われれば,「個人と社会」を主題とした学問であると答えることができるであろう.つまり人と社会,人と人との相互作用に注目していく学問である.

 しかしこれまで社会学は,どちらかというと個人と個人の相互作用というよりも,むしろ個人の問題から社会を問う,個人と社会の関係性を問う視点に焦点が当てられてきた.通常,プライベートなトラブルとしてとらえられ,私的に処理される問題が社会の制度や圧力という社会的な問題とつながっていること,「われわれ自身の身近な現実を,全体の社会的現実とのつながりの中で理解すること」を,米国の社会学者Mills2)は「社会学的想像力」と呼び,社会学者の必須の資質であるとした.一見,私たちが自由に選びとっているように思われる行動も,実は社会の目に見えない力に従っているのだということを明らかにすることが社会学の役割であると考えられてきたのである.

連載 コグトレ—みる,きく,想像するための認知機能強化トレーニング・第1回【新連載】

覚える 宮口 幸治
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はじめに

 コグトレ(Neuro-Cognitive Enhancement Training:N-COGET)は認知機能の強化を目的としたトレーニングです.認知機能とは,記憶,知覚,注意,言語理解,判断・推論といった,いくつかの要素が含まれた知的機能を指します.わかりやすくいえば,五感(みる,きく,触れる,匂う,味わう)を通して外部環境から情報を得て整理し,それを基に計画を立て実行し,さまざまな結果をつくり出していく過程で必要な能力であり,人がよりよく生きるための機能であるといえます.認知機能は,受動・能動を問わず,すべての行動の基盤でもあり,教育や支援を受ける土台でもあるのです.

 コグトレはそのような認知機能を強化するために知的なハンディをもつ子どもたち向けに開発しました.コグトレは,それぞれの認知機能の要素に対応させ,「覚える,数える,写す,見つける,想像する」の5つの分野をターゲットとしたトレーニングから成ります.内容からして子どもだけでなく,認知症の予防や神経心理学的リハにも幅広く使用できます.本連載では,5つのトレーニングの一部を順にご紹介していきます.

連載 ご当地作業療法・第9回

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 新米が出回る時季になると,あちらこちらで「たんぽ会さねが〜?」と聞こえてくる.秋田といえば「きりたんぽ鍋」を連想する人が多いと思うが,県南部ではそれほど好んで食べられてはいないようだ.県北部に住むわれわれにとって,「たんぽ」はごく普通の家庭料理(おふくろの味)である.また,お客様をもてなすための料理でもあり,人の集まるところに欠かせない料理でもある.そもそも「きりたんぽ」は秋田県大館・鹿角地方の発祥で,秋田杉伐採のために山籠もりした人々が,残りごはんを練って焼き,甘味噌をつけたり鶏のだし汁に入れたりして食べたのが始まりといわれている.秋田杉の串に巻きつけて焼いたものが「たんぽ」.これを切って鍋に入れたことから「きり・たんぽ」となったわけだ.

 人の集まるデイサービスでも,稲刈りが始まるころになるとソワソワと「たんぽ会」の企画が始まる.たんぽづくりは作業工程の多い活動であり,集団活動として取り入れやすい活動である.

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 障がいのあるお子さんのために工夫を凝らした「スモック」を,考案者の「スタンダード」さんに紹介していただきました.

学会・研修会印象記

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 2014年(平成26年)10月9日〜11日,グランドプリンスホテル新高輪にて開催されました一般社団法人日本脳神経外科学会第73回学術総会に参加しました.会長は,当順天堂大学の脳神経外科教授である新井 一先生で,テーマである「知の継承と創造そして社会への発信」について,先人の「知」を継承し,そこから新しい「知」を創造,これを世界に向けて発信しようという思いを込められたそうです.また,「日本の脳神経外科では外科的・非外科的治療,周術期管理さらには,長期的予後管理まで,一人の患者の診療を一貫して担当する」と,欧米とのシステムの違いを述べられており,学会参加者のほとんどが医師という初めての経験でしたが,参加前から非常に楽しみにしておりました.

 実際に参加してみると,参加者は若い方ばかりでなく,経験豊富なベテランの医師たちがフロアからも多くの質問や討議を投げかけていらっしゃいました.そして,地域(すなわち開業)で働いている方も多く,基礎研究やエビデンスのディスカッションにとどまらず,普段臨床で診ている症例についても多く議論されていました.知の継承にふさわしく,NHKメディアテクノロジーの協力のもと,8K映像,4K-3D映像による「手術のデモンストレーション映像」が公開されており,自由に視聴することができました.ハンズオンセミナーでは,資格と経験のある優れた医師が,若年の医師に対して,人体模型を使用し,各領域の手術手技について,まさに手取り足取り指導されており,知識にとどまらない経験に基づいた叡智の継承が図られていました.また,モーニング,ランチョン,アフタヌーン,イブニングと各セミナーも充実しており,手術手技にとどまらず,パーキンソン病や経管栄養等についても最新の知見が得られるセッションが用意されており,手術とは縁遠い私でも非常に興味深く,勉強になることが多くありました.

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Abstract:本研究は,脳性麻痺の中の痙直型両麻痺児に操作の可能性があるコンピュータ用マウス,トラックボール,タッチパッド,ジョイスティックのポインティングデバイス(pointing device:PD)の操作効率を,上肢の関節運動の視点より比較し,選択の基準とすることを目的とした.方法は,痙直型両麻痺児34名に,4種のPD操作による平仮名の入力を課題とし,操作時の上肢の各関節の運動量を2次元動画分析の移動距離の指標で分析した.その結果,ジョイスティックとマウスの把持する操作は,トラックボールとタッチパッドの手指運動の操作と比較し,上肢の各関節の移動距離が短かく,操作効率が高いことが明らかになった.

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表紙のことば/今月の作品

編集室から

次号予告

研究助成テーマ募集

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 本書は,作業の科学に偏重する傾向から,作業「療法」に振り子を戻すという書き出しで始まり,読者は書名が『作業療法実践の理論』となったゆえんを知る.全体は4部構成であり,初版から各章の流れは受け継がれ,章をまとめた部構成がされている.各部を単純化すると,理論の概観,実践モデルの類型,関連知識,そして理論の利用となる.

 読者は,第1部を読み,臨床例に共感を覚えながら「作業には人々を変える可能性がある」という表現に同意をするであろう.しかし,作業療法の知識の構造を示されると,頭を抱えるかもしれない.本書のポイントは,「作業療法の理論は変化をしてきました.作業療法の理論は,概念と焦点と価値から構成されています.この視点で理論の変化を知り,概念的実践モデルの比較ができるのです」という著者の意図をくみ取ることである.もし,知識の構造の部分で混乱した方は,本文の実践例と実践モデルを読み進めることで,実践に共感できると信じている.

第50巻表紙作品募集

学会・研修会案内

地域の塗り絵

投稿・執筆規定

編集後記 山本 伸一
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 今月の特集は,「神経難病を支える作業療法」である.総説は,神経難病リハの現状と課題.具体的な評価と介入では,QOL評価・地域一般病院における病期別作業療法・療養環境整備・訪問リハ,さらには就労支援まで網羅している.非常に読みごたえがあり,私自身も時間を忘れて拝読させていただいた.執筆してくださった方々に深く感謝申し上げたい.

 ゲストエディターの田中勇次郎先生は,私の恩師でもある.1987年(昭和62年)4月,山梨温泉病院(現山梨リハビリテーション病院)に就職した私は,都立神経病院へ3カ月間,週に1日の研修でお世話になったことがある.その際,面倒をみていただいたのが田中先生であった.そこでは,神経難病の患者に対する最新の作業療法が行われていた.右も左もわからない新人OTの私であったが,田中先生は親切丁寧に教えてくださった.日本の第一人者である.当時,ALS患者が使用するマイクロスイッチの製作にも関与させていただいた.各種自助具等の既製品があるわけではなかった.足りないものがあれば,すべてが手作りの時代である.「はんだごてができない作業療法士は,作業療法士でないぞ!」……この言葉を今でも思い出す.本号のテーマが決まった際は,田中先生の名が真っ先に浮かび,早々に打診させていただいた.そして完成したのが,本特集である.今も変わらず,ご活躍されている田中先生.これからも私たちに神経難病作業療法をご教授いただきたい.

基本情報

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作業療法ジャーナル
49巻1号 (2015年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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