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Key Questions
Q1:神経難病患者は自分の生活をどのように否定的に理解しているか?
Q2:神経難病患者の生活の質評価はどのように行うべきか?
Q3:患者報告アウトカムにおけるレスポンスシフトとは?
はじめに
進行性で治癒を目指せない神経難病患者の生活とは,一般に,連続する多様な身体機能低下による喪失感,不安感と共に生きる時間と考えられている.しかし,リハスタッフを含む多専門職種チーム(multidisciplinary team:MDT)による幅広い支援があると,患者(家族)はその時々に存在する機能を積極的に活かし,生活の質(quality of life:QOL)を高めることができる.人はどんな疾患,どんな状態になっても存在を肯定され,人同士の関係性の中で幸せを得ることができるのである1,2).
しかし,難病を患う患者(家族)は,病気自体の症状・障害により起きる問題と,文化的・社会的文脈に内在する健康志向的価値観に由来する自己否定感によって,二重の困難に立たせられている1,3).保健医療・福祉従事者でさえ,治癒できない,健康に戻れない難病患者として,その生活を否定的にとらえてしまうのである.
難病患者・家族へのリハプログラムや支援方法を検討するためには,まず難病患者・家族の生活を理解する必要があり,その際に,何らかのQOL評価法が必要となる.しかし,健康関連QOL評価法は,健康概念を基準にした評価でしかなく,治癒し得ない難病,すなわち健康の定義に向かって改善し得ない病気では,その改善内容を評価できない問題があった.今まで,患者・家族の主体的な適応結果を評価するための主観的で個別的なQOL評価法に視点が向けられることは少なかった.
近年の患者報告アウトカム(patient reported outcome:PRO)による医療アウトカム評価の動きにより4),ようやく,患者(家族)のQOLはPROの一つとして再定義されるようになった.QOLは,状況や考え方,価値観により変動する患者(家族)の心の中の構成概念(construct)であり,どんな難病であっても適切な支援さえあれば,患者と家族のQOL向上は可能と考えられるのである.
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