講座 作業療法研究と倫理・第1回【新連載】
研究倫理の理解のために
山内 繁
1,2
Shigeru Yamauchi
1,2
1NPO法人 支援技術開発機構
2日本生活支援工学会倫理審査企画調査委員会
pp.45-49
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200102
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Key Questions
Q1:研究にかかわる倫理とは?
Q2:人間を対象とする研究のための倫理とは?
Q3:倫理審査の課題は?
研究と倫理
研究倫理講座の総論をとのお題をいただいた.昨年来,研究にかかわる倫理問題が世間を騒がせ,東京大学分子細胞生物学研究所事件とノバルティス事件とで地に堕ちていた日本の研究の倫理は,STAP細胞事件によって決定的な烙印を押されてしまった.理化学研究所の改革委員会でも,ベル研究所のSchön博士事件,ソウル大学の黄教授事件,STAP細胞事件を並べて,歴史上の三大研究不正と認識しているようである.現在進行中の他の大型プロジェクトにも懸念要素を否定できない.すでに危機にあるわが国学術倫理の国際的地位をさらに下落させるのではないかと心配している.
ところで,「倫理」とは何であろうか? 一般的には,「実際道徳の規範となる原理」(広辞苑)と考えられている.道徳となると,モーゼの十戒や論語の徳目等を思い浮かべる.しかし,これらが直接研究に関係するわけではない.第二次大戦後の科学の急速な発展と研究競争の激化に伴って増大した影の部分を照らすために,研究にかかわる倫理が問題とされるようになった.
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