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Key Questions
Q1:神経難病患者の福祉的就労の実態は?
Q2:福祉サービスを利用した就労支援とは?
Q3:障害者総合支援法により,神経難病患者が利用するサービスにおいて医療専門職に期待されることは?
はじめに
厚生労働省が1972年(昭和47年)に策定した難病対策要綱において,難病とは,①原因不明,治療方法未確立であり,かつ,後遺症を残すおそれが少なくない疾病,②経過が慢性にわたり,単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く,また精神的にも負担の大きい疾病,と定義されている.
わが国の難病対策の一つである調査研究の推進の一環として,難治性疾患克服研究事業が130疾患を対象に行われている.このうち診断基準が一応確立し,かつ難治度,重症度が高く,患者数が比較的少ないため,公費負担の方法をとらないと原因の究明,治療方法の開発等に困難をきたす恐れのある56疾患が医療費の助成制度である特定疾患治療研究事業の対象とされている.これらの研究事業に加えて,医療施設等の整備(重症難病患者拠点・協力病院等),地域における保健・医療福祉充実・連携(難病相談・支援センター,難病特別対策推進事業等)等の取り組みの成果として,多くの難病が慢性疾患化している.すなわち難病のある人の多くは,服薬,通院等を続けながら日常の自己管理を行うことで,病気と共存した生活を送ることが可能となってきている.
こういった背景のもと,最近は難病のある人への就労支援が重要な課題となっている.難病のある人の就労形式は,一般就業,障害者雇用,福祉的就労等がある(表1).これまで企業への就労支援および就労後の雇用管理に関しての調査,研究が進められ,一定の成果を上げている1〜5).しかし福祉的就労については,制度的にも障害者総合支援法の施行により整備されたばかりであり,難病のある人の利用実態に関する調査はほとんど行われていない.
2013年(平成25年)4月に施行された障害者総合支援法における難病の範囲については,現在も検討が続いているが,現時点〔2014年(平成26年)10月〕では,難治性疾患克服研究事業対象の130疾患および関節リウマチが対象となっている.すなわち対象となる難病のある人は障害者として明確に位置づけられ,これまで障害者手帳を所持しなければ利用できなかった福祉サービスが利用可能となり,福祉的就労支援の利用が増大すると考えられる.われわれは障害者総合支援法施行元年である平成25年度に,難病のある人が就労系福祉サービス機関を利用している実態,およびサービス提供者側がどのような配慮や取り組みを行っているのかを明らかにする目的で,全国の事業所に質問紙による悉皆調査を行った6)ので,難病患者の就労支援の現状を紹介するとともに,今後OTに求められることについて述べる.
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