産婦人科の実際 69巻3号 (2020年3月)

特集 子宮頸がん予防—日本はどうする?—

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子宮頸癌をはじめとするヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)関連がんの1次予防に向けて,多くの先進国のアカデミアと行政機関や世界保健機関(World Health Organization;WHO)は,HPVワクチン接種の啓発と普及を強く訴えかけています。現在は,男女の区別のない接種,若年者への3回接種から2回接種への転換,新たな多価HPVワクチンの認可などが国際的な話題となっています。また昨年WHOが,世界中で90%の女性が15歳までにHPVワクチンを接種し,70%の女性が35歳と45歳で確実性の高い子宮頸がん検診を受け,90%の子宮頸部病変を有する女性が適切な治療を受ける目標を2030年までに達成すれば,2085〜2090年に子宮頸癌は,がんの排除の基準とされる女性人口10万人あたり4人未満に達すると公表したことは,世界の子宮頸がん予防の戦略として大きなインパクトがありました。

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子宮頸癌の疫学について世界と日本の現状をまとめた。女性におけるAYA世代のがんのなかでは,乳癌とともに子宮頸癌の疾病負荷は著しく高いといえる。妊孕性の喪失への影響を考慮すると深刻な問題である。子宮頸癌はHPVウイルスに起因するがんであり,感染予防など公衆衛生上の対策により多くの女性をがん罹患の脅威から救うことができる。最近になって先進国のなかでは唯一,罹患率が上昇に転じているわが国では,子宮頸がん予防対策をより強化する必要があるように思われる。

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HPVワクチンが事実上接種中止状態となっているのは日本だけである。それには様々な要因があるが,最も根本的な日本の問題は,予防医学に対する日本人の意識の低さである。予防接種,がん検診はすべて疾病予防の概念に基づき,健康な市民が公衆衛生上,受けるべき医療行為であるが,そのことを学校においてまったくといってよいくらい教育していない。HPVワクチンは予防接種とがん予防の両方が重なったものであり,学校における教育の有無は,HPVワクチン接種の普及に大きく影響する。本稿では,HPVワクチンの事実上の中止について,学校教育の側面からHPVワクチン普及のための一手を探りたい。

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日本での子宮頸がん検診の現状と課題としては,①検診受診率が40%台で低迷している,②諸外国と同様に対象者の年齢に上限を設けるか否かが定まっていない,③精度管理で重要な精検受診率が全体で75%程度しかなく,8都道県では70%の許容値にも達していない,④検診手法(細胞診)では不適正検体の原因となる採取法がいまだに行われている,⑤HPV検査導入の可否と,それに伴い年齢や検診間隔をどうするかがいまだに定まっていない,などが挙げられる。精検受診率の改善と不適正検体の原因となる採取法の禁止は議論の余地のないものであり,早急に改善すべきと考える。

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子宮頸がん検診には,社会的・経済的リソースが乏しい場合に確定診断を行わず治療に直結させる形と,検診検査陽性例に精密検査,確定診断,フォローアップを行い,多くのリソースを必要とする形とがある。後者の形でのHPV検査を含むプログラムの有効性が,欧州のメタ・アナリシスで示された。これに用いられた研究はいずれも良好に精度管理されていた一方,わが国では良好ではない。わが国では,HPV検査と細胞診の同時併用による検診の有効性や実施した場合の課題について,厚生労働省の指示にて研究が開始され進行中である。WHOからの検診プログラム選択の提言や,欧州や上記のわが国の研究を紹介し,リソースの有無や精度管理の充足度を複合的にみたHPV検査導入の考え方を示す。

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子宮頸がん検診におけるHPV検査導入は世界的な流れである。その方法として,細胞診との併用検診とHPV検査で1次検診を行うprimary HPV検診がある。CIN2以上の異常を検出する際に,両検診法の間で検出感度に差はないが,併用検診では不要な検査が増えるという理由から,ヨーロッパやオセアニアの住民健診ではprimary HPV検診が採用されつつあり,米国でも検診の1つとして認可されている。しかし,primary HPV検診を日本で実施する場合に問題がないわけではない。1つは,現行の市販のHPV検査では日本におけるがん誘発HPV型がすべて網羅されていないこと,あるいはHPV検査間の一致率は7割程度しかないため,どの方法を選ぶかという問題,HPV検診陽性例に対し次に実施するtriage法や検診間隔など,アルゴリズムをどうするかという課題が残されている。HPV検査の選別においてのポイントは,これまでの実績から,primary HPV検診を導入するならHC2法であり,併用検診ならcobas®法もよいと思われる。最近の研究成果から,Aptima®法はprimary検診に用いられるかもしれない。BD OnclarityTM法については,まだ実績が少ないため,現時点では併用検診が無難であろう。しかし,cobasとBD Onclarity法はHPV型の部分判別が可能であるため,HPV検査で陽性であった場合,すぐにコルポスコピー検査をするかどうかのtriageに有用と思われる。若い女性の子宮頸癌が増加している現在,検診における見逃しは許されない。検診の精度を高めるために,これらHPV検診をまず導入することは必須であると思われる。HPV検診の導入により検診間隔が延長されれば,検診受診率が上がる可能性もある。

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HPV検査導入に関する動向とともに,鳥取県における子宮頸がん検診の現況について概説した。米国では5年ごとの細胞診HPV検査併用を推奨し,欧州ではHPVプライマリー・スクリーニングが採用されるようになった。わが国ではHPV検査導入に際して統一アルゴリズムの構築が必須条件であり,知見の集積が待たれる。筆者らの検討でも,細胞診/HPV-DNA検査併用検診導入により,若年受診者の増加やLBC採用による不適正検体の減少はみられたが,直接効果に関しては今後のデータ蓄積が必要である。HPV検査の利点を生かしつつ,実情に合致した適切な検診方法の構築が望まれる。

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栃木県小山地区で2012年度から開始している液状化細胞診(LBC)とHPV検査の併用検診の導入経緯と現状を報告する。併用検診導入においては,行政,検査実施施設,検査会社などと実施へ向けての協議を行い,プロトコールや受診者への説明,質問への対応など,細部にわたる事前の準備を行った。併用検診開始後,細胞診単独時と比較してCIN2+の発見率が増加しており,併用検診の効果と考えられた。またHPV検査結果によるトリアージは,受診間隔の検証やASC-US・HPV陽性の精検結果などから,適切に機能していることがわかった。一方,要精検率は増加しており,今後の課題も抽出された。これらの結果は,わが国における至適検診法の確立に向けた重要なデータと考えられる。

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福井県の対策型子宮頸がん検診に導入した臨床研究であるFCCS studyの目的は,細胞診検診の精度(感度・特異度)とHPV検査同時併用検診の精度を比較することである。対象者は,対策型子宮頸がん検診の参加者のなかで,研究に同意した7,585名である。細胞診検診の感度は,世界各国と同様で70%程度であった。HPV検査併用検診では,細胞診単独検診と比較して特異度は低下したが,感度は100%まで上昇した。これは日本の子宮頸がん検診において,HPV検査同時併用検診の必要性を示唆するものであった。

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子宮頸がんは予防可能ながんで,早期発見・治療により高い確率で治癒が可能であるにもかかわらず,世界的には必ずしも根絶の方向に向かっているとはいいがたい。こうした認識のもと,WHOは2019年に子宮頸がん根絶に向けた世界的な戦略を決定した。本稿では,WHO戦略の概要と,子宮頸がんの根絶に向かっている国々の事例を紹介するとともに,HPVワクチン接種へのためらいなどその障壁となる課題にも触れながら,HPVワクチン接種プログラムの国際的な状況について解説する。現状では,子宮頸がんの撲滅からはほど遠い日本においても,効果や安全性について世界的なコンセンサスを得ているHPVワクチン接種の積極的勧奨再開などWHO戦略の実践によりその根絶に向かうことが可能となるだろう。

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わが国においてヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは2009年に認可され,2010年に自治体ごとの公費接種助成が開始し,接種対象年齢の女性は無料でワクチン接種が可能となった。2013年には国が定める定期接種ワクチンの1つとなったが,現在は積極的勧奨が中止されており,新規のワクチン接種者がほぼいない状況が継続している。その一方で,積極的勧奨中止前にワクチンを接種した公費接種対象世代が子宮頸がん検診の対象年齢となっており,諸外国と同様にわが国からも若年女性におけるHPVワクチンによるHPV感染率と前がん病変発症率の減少効果に関するデータが続々と報告されてきた。本稿では,わが国におけるHPVワクチン接種の現状と子宮頸がん予防に対する今後の課題について解説する。

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科学的根拠となるデータが蓄積され,検診とともに子宮頸癌の予防戦略としての効果が世界的に認識されているHPVワクチンは,わが国では2013年6月以降,積極的接種勧奨が中止され,7年が経とうとしている。HPVワクチンの安全性について,海外および国内で多くの大規模調査が行われているが,これまでHPVワクチン接種と有害事象の因果関係を示すような科学的・疫学的根拠は示されていない。本稿では,ワクチン接種勧奨再開に向けて必要条件となるHPVワクチンの安全性についての国内外の調査結果に関して概説する。

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HPVワクチンを安心して接種するためには,接種後に現れる多様な症状の病因と対処法とを提示することが重要である。本稿では,国内外でHPVワクチン接種後の症状との関連性について言及されている体位性頻脈症候群(POTS)の症状とHPVワクチン接種後の症状とを比較して再考するとともに,接種後に身体の活動量が減少した場合に二次的に起こりうるデコンディショニングと痛覚過敏の関与の可能性について述べる。

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子宮頸がんは予防可能ながん種として認識されてきた。HPV感染を予防することで発がんのリスクを抑え,感染後の細胞の変化を検診にて捉えることで,前がん状態もしくはがんであっても早期発見であれば,がん死することは避けられる。世界保健機関は今世紀中に子宮頸がんを撲滅するために,この10年ですべきことのロードマップを示している。一番重要なことはワクチン接種率を上げることにあり,次にすべきことは,費用対効果の点で最も効率のよい年齢で検診受診率を上げることである。ワクチン接種率が上がることにより,相対的に細胞診の検査としての精度は下がるので,HPV検査が検診手法の主流となる。検査としての感度が上がれば,当然受診間隔も延長可能となる。HPV検査キットにも種類があり,管理指針を念頭においたキットの選択も考慮する。オーストラリアではワクチン接種をいち早く国家レベルで導入し,HPV検診も導入されてきた。ワクチン接種とHPV検診プログラムの導入により,浸潤がんは著明に減少すると見込まれる。

世界規模でみてみると超高所得国では9価ワクチンの接種カバー率が80〜100%で,生涯2回の検診が達成できれば,子宮頸がん撲滅は2055〜69年に可能との数字が示された。今や世界の潮流はワクチン接種率を上げ,それに伴いHPV検査を検診として導入することである。さらに費用対効果を考慮に入れると,生涯においてなるべく少ない検診回数で早期発見に努めることが主流となる。

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同時化学放射線療法(CCRT)は,局所進行子宮頸癌の標準治療の1つである。腔内照射での線量分布が不十分な場合は,原発巣の局所制御が困難となり,予後は極めて不良である。組織内照射は,腫瘍のサイズに合わせて柔軟に照射野を設定できる利点がある。初回治療として組織内照射併用CCRTを実施し,4年以上経過した症例について後方視的に検討した。対象は5例で,全例がⅢB期以上,最大腫瘍径5cm以上であった。1例は照射後の再発はなく,4例が再発した。そのうち1例は遠隔転移であり,局所再発は認めなかった。1例が照射野内の側方再発であり,残りの2例は子宮頸部の中央再発であった。局所再発した3例で手術を施行した。側方再発と遠隔転移をきたした症例以外の3例は無病生存中である。組織内照射は,従来の腔内照射では制御困難であった子宮傍組織への伸展が強く,腫瘍径が大きい腫瘍に有効な治療方法になりうると考えられた。

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ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による子宮頸部異形成63例に対して,HPV感染の疣贅治療に用いられるヨクイニンエキス製剤を投与し,細胞診,組織診,HPV消失をもとに,NILMまでに要した期間とHPVの型との関連性および有効または無効な症例のHPVの型を検討した。その結果は,評価症例が38例で,NILMとなった例は27例,NILMまでの期間は平均4.8カ月で短期間にNILMとなり,ハイリスク型,ローリスク型で差は認められなかった。以上より,ヨクイニンエキス製剤はHPVの型によらず子宮頸部異形成を改善し,もしくは進行を抑え,NILMまでの期間を短縮している可能性が示唆された。

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Tolosa-Hunt症候群は,海綿静脈洞に生じた非特異的炎症性肉芽腫により有痛性眼筋麻痺を起こす非常に稀な症候群である。今回,妊娠中に頭痛を初発症状として発症したTolosa-Hunt症候群に対しステロイドパルス療法を施行した1例を経験したので報告する。

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産婦人科の実際
69巻3号 (2020年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0558-4728 金原出版

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