胃と腸 45巻5号 (2010年4月)

特集 早期大腸癌2010

序説

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はじめに

 早期大腸癌が「胃と腸」の増刊号で取り上げられたのは,今から約16年前で「早期大腸癌1994」として発刊されている.当時は著者を含め全国のcolonoscopist達が,特に大腸内視鏡挿入法と平坦陥凹型病変の発見に精力を注いでいた.その後,「胃と腸」では早期大腸癌に関する多くの特集が企画されてきた.それらを内容別に以下にまとめてみる.

 まず,早期大腸癌の発生,発育進展,病態に関するものとして,「表面型大腸癌の発育と経過〔1995, vol.30(2)〕」,「いわゆる表層拡大型大腸腫瘍とは〔1996, vol.31(2)〕」,「Is型大腸sm癌を考える〔1997, vol.32(11)〕」,「Ip・Isp型大腸sm癌〔2002, vol.37(12)〕」,「経過観察からみた大腸癌の発育・進展─sm癌を中心に〔2003, vol.38(8)〕」,「大腸癌の発生・発育進展〔2008, vol.43(13)〕」,などがある.

 同じく,発生,発育進展に関係するが,鋸歯状病変に特化した特集は,「鋸歯状腺腫(serrated adenoma)とその周辺〔1998, vol.33(6)〕」,「大腸鋸歯状病変の発育進展と診断・取り扱い〔2007, vol.42(3)〕」,の2つしかなく,今後さらなる検討が必要な領域であると考えられる.

 肉眼形態分類と診断に関するものは,「Ⅱ型早期大腸癌肉眼分類の問題点〔1999, vol.34(1)〕」,「早期大腸癌肉眼分類─統一をめざして〔2000, vol.35(12)〕」,「微細表面構造からみた大腸腫瘍の診断〔1996, vol.31(11)〕」,「早期大腸癌の組織診断─諸問題は解決されたか〔1998, vol.33(11)〕」,「大腸腫瘍の内視鏡診断は病理診断にどこまで近づくか〔1999, vol.34(13)〕」,「早期大腸癌の深達度診断にEUSと拡大内視鏡は必要か〔2001, vol.36(6)〕」,「大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察─V型pit pattern診断の問題点(2004, vol.39(5)〕」,などがあるが,病変の質的診断と量的(深達度)診断に大別される.

 さらに,早期大腸癌の治療方針決定に特に重要とされるSM癌の深達度診断に関するものは,「大腸sm癌の細分類とその意義・臨床〔1994, vol.29(11)・(12)〕」,「大腸sm癌の深達度診断─垂直浸潤1,000μm〔2004, vol.39(10)〕」,「通常内視鏡による大腸sm癌の深達度診断─垂直浸潤距離1,000μm術前診断の現状〔2006, vol.41(9)〕」,「大腸腫瘍に対する拡大内視鏡診断の最先端〔2006, vol.41(13)〕」,などがある.

 早期大腸癌の内視鏡的治療とその予後に関するものは,「大腸腫瘍内視鏡的切除後の局所再発─腺腫・m癌を中心に〔1999, vol.34(5)〕」,「大腸sm癌の内視鏡的切除をめぐって〔1999, vol.34(6)〕」,「大腸sm癌の内視鏡治療後の長期経過〔2004, vol.39(13)〕」,「いわゆる側方発育型大腸腫瘍の治療法を問う〔2005, vol.40(13)〕」,「大腸ESDの現況と将来展望〔2007, vol.42(7)〕」,「大腸腫瘍内視鏡切除後のサーベイランスに向けて〔2007, vol.42(10)〕」,「大腸SM癌内視鏡治療の根治基準をめぐって─病理診断の問題点と予後〔2009, vol.44(8)〕」,などがある.

 このように類別してみると,早期大腸癌に関する重要な問題点がほぼ余すことなく取り上げられているように思える.しかしながら,これで早期大腸癌の全容が明らかになったわけではなく,解明すべき点がまだ多く残されていることは周知のごとくである.早期大腸癌を理解し診断,治療するうえで,何がどこまでわかって,何が足りないのかを系統だって整理しなければならない時期が来ている.

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要旨 記述疫学データより,日本における大腸癌の増減は(1)主に結腸癌による変化であること,(2)直線的に増加してきた結腸癌は1990年前半にまず罹患率の上昇が止まり,その後,死亡率が減少していること,(3)早期大腸癌の罹患率は増加していないこと,(4)50~60歳代の男性での罹患が減少していること,(5)大腸癌死亡率の高い県では内視鏡専門医が少ない傾向があること,を示した.これらの知見は,大腸癌の前癌病変である腺腫を内視鏡的に摘除したことによる結果と考えて矛盾しない状況証拠である.腺腫の内視鏡的摘除が大腸癌の発生を予防しているか否かを明らかにするため,今後,分析疫学や介入疫学により検証的研究をする必要がある.

主題 2.早期大腸癌の肉眼分類

1)肉眼型分類の基本 多田 正大
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要旨 大腸でも陥凹型病変(IIc)が存在することが注目された折,報告者間でこのような病変に対する認識が一定しておらず,少なからず混乱を生じた.大腸癌に関する組織発生,発育と増殖,診断と治療などに関する討論が行われる場合,共通言語がなければ誤解を生じることが痛感された.そこで,大腸癌研究会では大腸癌,特に表在型腫瘍の肉眼型分類などの定義を作成するために,「表在型大腸腫瘍プロジェクト研究班」を結成して討論した.そのコンセンサスは「大腸癌取扱い規約第7版」に記載された.わが国の研究成果を世界に発信するに当たって,大腸癌研究会における肉眼型分類作成の理念を踏襲して,共通言語を用いた論文作成がなされることを期待する.

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要旨 大腸IIc病変の組織学的定義は,絶対陥凹(周辺正常粘膜の高さより低い陥凹)の浅い陥凹性腫瘍(adenoma,carcinoma)であり,相対陥凹(周辺正常粘膜の高さより高い陥凹)の浅い陥凹性腫瘍(adenoma,carcinoma)と区別する必要がある.内視鏡的には絶対陥凹と推測される境界明瞭な陥凹を有していればIIcまたはIIc+IIa,相対陥凹と推測される陥凹を有していればIIa+IIc病変と表記するのが一般的である.

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要旨 側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)とは,工藤らが提唱した最大径10mm以上の表層拡大型大腸腫瘍の総称である.“LST”は表面平滑な非顆粒型(non-granular type ; LST-NG)と表面顆粒結節状の顆粒型(granular type ; LST-G)に亜分類され,さらにLST-NGは平坦隆起型(flat elevated type)と偽陥凹型(pseudodepressed type)に,LST-Gは顆粒均一型(homogeneous type)と結節混在型(nodular mixed type)に細分類される.発育形態分類としての“LST”の概念は,腫瘍の質的・量的診断や悪性度評価,治療法選択を行ううえで重要である.

主題 3.大腸癌の発生・発育進展

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要旨 大腸癌の二大組織発生説である,adenoma-carcinoma sequence説とde novo発生説について,歴史学的な変遷を病理組織学的観点から概説した.それとともに,自験例の組織学的検討から大腸癌の発生・発育進展について考察した.早期癌347例の検討では腺腫成分が認められる癌が72%であり,その多くはM癌である.一方,進行癌に成りやすいSM癌では腺腫成分が認められない癌が59%と多い.大きさ3cm以下の非有茎性病変で浸潤距離が1,000μm以上のSM癌63例について検討すると,腺腫成分が認められない癌が68%であり,表面型癌由来ととらえられる癌は79%である.組織学的解析からは表面型のde novo癌が進行癌への主経路と成るととらえられた.

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要旨 早期大腸癌の発生・進展に関する最近の分子病理学的文献を紹介した.その中で以下を示した.(1)早期大腸癌をSM浸潤距離と簇出を組み合わせることでリンパ節転移高危険群の抽出が可能なこと,(2)E-cadherinなどの接着関連因子の減弱が転移と相関する,またある種のサイトカインの極性の変化もまた転移と関係する,(3)T. Tn細胞から生まれた転移性細胞株との比較で両者にわずかな遺伝子異常しかないことと種々の細胞膜に存在するサイトカインらが転写活性を上げることなどがわかった,(4)平坦型癌はras遺伝子の関与が少なく,同じ傾向がLST-NGにもみられ,平坦という組織学的な共通性がK-ras遺伝子変異の頻度に反映していると考えられた,(5)大腸癌においてp53の異常はその調整遺伝子の解析からみてほとんどの癌でp53遺伝子システムが異常であることがわかった,(6)動物実験モデルでp53ホモノックアウトにおいて平坦型癌が作製できた,(7)IBD cancerにおいてER遺伝子のメチル化やDNMT-1を解析することで癌化高危険群の検出に有効であることがわかった,(8) 鋸歯状病変の細分類においてSSA/Pの認識が施設によって異なることがわかった,などである.分子病理学的な知識が一般化することで日常医療に役立つ可能性を示した.

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要旨 九州地区30施設の大腸癌のX線学的遡及例110病変,内視鏡学的遡及例44病変を分析し,進行癌の初期形態と発育過程を検討した.進行癌の初期像として,X線学的遡及例ではIsが34.2%,IIaが19.2%を占め,内視鏡学的遡及例ではIsが38.5%,IIaが23.1%を占めた.さらに2型進行癌の初期像はX線,内視鏡学的遡及例ともにIsが最も多かった.2cm以下の小さな進行癌の初期像については,X線学的遡及例では隆起型(Isp,Is)が42.9%,表面型(IIa,IIa+IIc,IIc・IIc+IIa)が57.1%で内視鏡学的遡及例では隆起型(Isp,Is),表面型(IIa,IIc・IIc+IIa)ともに50%だった.肉眼形態別の癌の発育速度は様々だったが,表面陥凹型10病変のdoubling timeを検討したところ,最終M癌の52.8か月に対しSM癌,MP以深癌では14.7か月,6.9か月だった.腺腫からM癌,SM癌,進行癌までの平均観察期間は78.5か月,41.8か月,64.5か月だった.進行癌へ進展した大腸腺腫の初期病変はIsが46.2%,IIaが23.1%,Ispが5.4%だった.以上より進行癌の初期像は隆起型が多く,表面陥凹型は深部浸潤に伴い極めて急速に増大する傾向にあった.また,10mm未満の大腸腺腫の癌化には約6年を要した.

主題 4.早期大腸癌の病理

1)病理診断─診断基準 八尾 隆史
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要旨 大腸上皮性腫瘍は,一般的にはその異型度により低異型度(軽度異型,中等度異型)と高異型度(高度異型)に分類されるが,欧米の基準における高異型度(高度異型)は本邦においては高分化腺癌と診断される.細胞異型は癌相当であっても,粘膜内病変は転移を来さないため過剰治療(外科的腸管切除)を避けるために,欧米では“癌”と診断されない.ただしWHO分類ではこの矛盾の解消のため“carcinoma in situ”という用語を用いるように推奨している.診断基準は,欧米と本邦の間だけでなく,国内の病理医間でも完全には一致しない.診療において最も重要なことは,病理診断名を付けることより治療方針決定に有用な情報を与えることである.すなわち,粘膜内病変に関しては浸潤癌への進展の危険性のある病変かどうかの判定,粘膜下層へ進展した病変では癌性浸潤か偽浸潤かの判定とリンパ節転移の危険性の評価である.そして病理医側の対応としては,診断の違いの幅が臨床的治療方針に対応した幅に収まる程度には一致するよう精度を上げる必要がある.また,生検診断における誤診を避けるためには,病理組織学的に良悪性の誤診の危険性がある病変の存在を,病理医のみならず臨床医も知っておくことも必要である.

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要旨 内視鏡的摘除pSM癌の治療方針決定には,摘除標本の病理診断が重要な役割を担っている.「大腸癌治療ガイドライン(2005年版)」では,内視鏡的治療で根治が期待されるSM浸潤量が1,000μm未満までに拡大された.同ガイドライン2009年版では新たな病理診断項目として,“粘液癌”と“簇出”が追加された.同ガイドライン2009年版では,以下の治療方針が推奨されている.「追加腸切除」 : 垂直切除断端陽性.「追加腸切除を考慮」 : 垂直切除断端陰性でも,(1)低分化腺癌・印環細胞癌・粘液癌,(2)SM浸潤度1,000μm以上,(3)脈管侵襲陽性,(4)簇出Grade 2,3のいずれかが認められた場合.「経過観察」(内視鏡的治療で根治が期待される): 垂直切除断端陰性で,(1)乳頭腺癌・管状腺癌,(2)SM浸潤度1,000μm未満,(3)脈管侵襲陰性,(4)簇出Grade 1,の4項目すべてが満たされた場合.

 各病理診断項目の評価法と問題点および今後の課題について述べた.

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要旨 全大腸内視鏡検査施行の病院受診者1,149例を対象に,Hb・Tf同時測定法とHb単独測定法〔Hb(+)法〕,Tf単独測定法〔Tf(+)法〕との大腸癌スクリーニング精度を比較検討した.Tf(+)法はHb(+)法に比して特異度では上回っていたが,感度においては及ばなかった.Hb・Tf同時測定・組み合せ判定法では,Hb(+)法に比して,HbかTfのいずれか陽性を反応陽性とする判定法〔Hb(+)or Tf(+)法〕で感度が上昇するが,特異度や陽性的中率は低下した.また,HbとTfのいずれも陽性を反応陽性とする判定法〔Hb(+)and Tf(+)法〕で特異度と陽性的中率の上昇を認めたが,感度は低下した.Hb・Tf同時測定・2段階判定法では,パターンAはHb(+)法の感度を維持したまま特異度を上げ,パターンBではHb(+)法の特異度を維持しながら感度を上げるため, Hb(+)法よりも精度の高い検査になる可能性が示された.

2)注腸X線 小林 広幸 , 渕上 忠彦
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要旨 早期大腸癌のスクリーニング検査としての注腸X線検査法について概説した.近年,注腸X線検査は新たなデジタル撮影装置の進歩や前処置法・造影剤の改良などにより,X線画質や表面型腫瘍の示現能が向上してきている.また,腸管のスパスム予防や被検者の苦痛緩和のため,前処置や前投薬に様々な工夫もなされてきている.早期大腸癌の注腸X線での見逃し原因の多くは,前処置不良や腸管のスパスム,不十分な読影によるものであり,大半は見直しにて指摘可能である.これらの点を念頭に置いて,質の高いX線画像の撮影を行い,注意深い読影を心がければ,注腸X線検査は早期大腸癌のスクリーニング検査としての役割を十分に果たしうると考える.

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要旨 大腸癌,特に早期癌を発見するうえで,大腸内視鏡は最も信頼性が高い検査法であることが示されている.しかし,本邦で腺腫を含む腫瘍性病変の見逃しが15%程度にみられ,5mm以下の病変,表面型病変,右側結腸病変で頻度が高いと報告されており,前処置の状態,術者の技術,観察時間,病変数などによっても病変の検出率は影響を受ける.病変の見逃しを減らすためには,観察で盲点となりやすい部位(右側結腸のひだの裏側,屈曲部内側,直腸肛門部など)を熟知して観察することが重要である.体位変換やスコープの反転操作を適宜併用することも有用である.また,微小病変や表面型病変を通常観察で拾い上げるためには,淡い色調変化,反射光の異常,血管透見像の消失,わずかな弧の変形,粘膜不整像,白斑,易出血性などを手掛かりに色素撒布を行うことが重要である.

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要旨 CTC(CT colonography)は,仮想内視鏡(virtual colonoscopy)とも呼ばれ,CTのスライスデータから構成された大腸内腔の三次元表示法である.CTCは,大腸癌のスクリーニング法として欧米を中心に研究され,最近の米国での大規模臨床試験ではポリープの検出能が内視鏡検査に匹敵すると報告されるなど,さらなる臨床活用へと普及している.本邦では大腸癌による死亡率が年々上昇し,FOBT(fecal occult blood test)の早期癌に対する感度の低さ,さらにFOBTで陽性と診断されても大腸内視鏡検査による精密検査への受診率が低いことなどから大腸癌スクリーニング法の改良が求められている.そこで,CTCは術者の技量に関係なく安全かつ簡便に施行可能であり,さらに検査処理能力に優れ,客観性に富む診断画像として大きく期待されている.現在,CTCの大きな方向性として,“いかに被検者のCTCへのコンプライアンスを高めるか”,“いかにCTCの検出精度を高め,かつ読影時間を短縮できるか”である.そこで筆者らは,CTCの基本を概説し,引き続き最近注目されているfecal tagging(残渣マーキング),electronic cleansing(電子洗浄法),CAD(computer-aided detection,コンピュータ支援検出)の現状と将来展望について述べる.

5)PET,PET/CT 村上 康二
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要旨 大腸癌はFDGが良好に集積する腫瘍の1つである.しかし,PETは空間分解能に劣るため,小さい癌の検出には限界がある.早期大腸癌の検出能も十分でなく,特に平坦型の形態をとる早期癌の検出は難しいが,ポリープ状の形態をとるものは時としてFDGの点状集積として描出される.最近の本邦における全国規模の多施設共同研究の結果によると,FDG-PETによるがん検診の有効性が示されている.この報告では,PET検診で最も高頻度に発見されたのが大腸癌であった.いまだにPET検診の有効性に対する疫学的なエビデンスは不十分であるが,FDG-PETががん検診において一定の役割を担うことは確かであろう.

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要旨 過去10年間に,SM癌を疑う早期大腸癌473例に対して術前の精密検査として注腸X線検査を施行した.病変描出率は97.5%(461/473)と良好であった.深達度正診率は全体では72.1%とSM癌を疑う病変を中心に注腸X線検査を行ったため,さほど高い成績は得られなかった.深達度診断に有用なSM-m癌で有意に高頻度に出現する所見として,(1)隆起型では陥凹を認める,皺襞集中を認める,側面変形を認める,であり,(2)表面隆起型では皺襞集中を認める,LST(laterally spreading tumor)では陥凹を認める,側面変形を認める,で(3)表面陥凹型では深い陥凹,陥凹内に凹凸を認める,皺襞集中を認める,側面変形を認める,であった.これらの所見が1つ以上認められる病変ではSM垂直浸潤距離1,000μm以上のSM-m癌の可能性が高く,外科手術を考慮し,1つも認められないときには,内視鏡切除を行って,組織学的にリンパ節転移の危険性を判断して追加手術の是非を決定すると効率がよいと考えられた.

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要旨 通常内視鏡観察において大腸病変を発見した際には,より多くの所見や情報を得るためにインジゴカルミン撒布を行うことが望まれる.まず質診断に関し,腫瘍・非腫瘍の鑑別には病変の色調や表面性状を,腺腫・癌の鑑別に関しては陥凹や二段隆起,色調不均一などの所見に注目して診断を行う.診断が困難な場合には,NBIやpit pattern観察など,他の検査手段を用いて診断を進める.癌が疑われる場合の深達度診断においては,病変表面の性状や病変周囲正常粘膜の所見に着目して診断を行う.しかし,隆起型SM癌をはじめ,深達度診断の確定を迷う病変では,NBIやpit pattern観察などを用いて,より確実な診断を行うことが望まれる.

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要旨 早期大腸癌の精密画像診断法の中で,超音波内視鏡(EUS)は腫瘍を垂直断層像として描出でき,深達度を客観的に評価できる.早期大腸癌の中でpM癌やpSM-slight癌は,内視鏡的摘除の適応である.しかしpSM-massive癌は,リンパ節郭清を伴う外科手術が必要である.自験579病変でのEUSによる鑑別診断正診率は,90%と良好であった.特に通常内視鏡で深達度診断に迷う場合は,EUSを併用することが有用であると考える.しかし腫瘍の存在部位などによっては,EUSにより描出困難な場合がある.そこで3次元EUSが実用化され,診断精度の向上のみならず,描出困難病変の克服にも役立っている.早期大腸癌に対するEUS診断は解決すべき問題点も多いが,客観的な深達度診断法として重要な役割を担っている.

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要旨 1993年の大腸拡大内視鏡の登場により新たに“拡大内視鏡診断”が開かれたが,その礎は固定標本に対する実体顕微鏡観察と病理との対比した過去20年の研究にあった.現在では拡大内視鏡で病理組織像を反映した病変の表面微細構造,腺管開口部(pit pattern)の形態を認識でき,腫瘍・非腫瘍の鑑別,癌と腺腫の鑑別,深達度診断がある程度可能であり,バーチャルバイオプシーの領域に達し,臨床上,大変有益である.その一方で問題点として,VI型の亜分類に対する判断基準の個人差,病理医の判断上の問題も加味されるが拡大所見に対する癌の分化度・異型度の影響,pit pattern分類の活用上の問題などが挙げられる.これらを十分理解したうえで日常臨床に拡大内視鏡診断が用いられることを期待する.

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要旨 NBI(narrow band imaging)拡大観察は,粘膜表層の微小血管構築の詳細な観察を可能にした.大腸腫瘍性病変に対するNBI拡大観察の臨床的意義は,まず病変拾い上げ診断に対する有用性であるが,肯定・否定両報告が複数あり,一定のコンセンサスが得られていない.一方,腫瘍・非腫瘍の鑑別診断における有用性は世界的にコンセンサスが得られている.また,色素を用いず整~軽度不整pit様構造(II,III,IV型,VI軽度不整)を間接的に診断できるというメリットは診療の簡便化に有用である.微小血管構築とpit様構造を総合的に評価することで,早期大腸癌の深達度診断が可能である.しかし,早期癌の深達度診断に用いるNBI拡大観察所見分類が乱立しており,全国的な統一が必要である.

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要旨 画像強調内視鏡の1つであるFICE(flexible spectral imaging color enhancement)は,大腸腫瘍の拾い上げ診断・質的診断における有用性が既に報告されている.FICEは,遠景像が明るく,通常画像からFICE画像への切り替えが速い特長があり,拾い上げ診断における有用性が特に期待される.腫瘍と非腫瘍の鑑別は,病変表層の微小血管模様に注目することにより可能であり,その正診率はpit pattern診断に匹敵する.SM高度以深浸潤癌の診断では,腫瘍表面のpit様模様・無血管野の存在に着目することにより,筆者らの検討では高い正診が得られた.

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要旨 UC関連大腸癌(UC-associated cancer ; UCAC),dysplasia自験例の臨床像と拡大観察を含めた内視鏡所見を解析した.UCACのUC平均罹患年数は14.3年,全大腸炎型および左側大腸炎型が97.7%を占め,病変全体の76.1%が直腸・S状結腸に分布していた.早期癌形態に分類した病変のうち隆起型が76.4%,平坦型・陥凹型が23.6%で,平坦型の全病変が発赤として認識されていた.pit patternの解析ではIVV型が78.1%と最も多く,早期癌形態に分類した隆起型の88.2%に認めた.平坦型病変ではIIIL型が66.7%,IVV型が58.3%,IVB型が25.0%にみられた.IVB型は全病変がVI型を伴っていた.UC関連腫瘍のpit patternは隆起型を中心にIVV型が多いが,平坦型ではIVV型主体とIIIL型・IVB型主体の病変に分けられた.今回の検討で通常観察では直腸・S状結腸において絨毛状構造,発赤に注意する必要性と,拡大観察ではIV型pit亜分類の有用性,平坦型病変における範囲診断の可能性が示唆された.

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要旨 EMR/EPMRは,単なる手技のみの問題ではなく,治療前の診断から治療後の病理診断まですべてを含めた一連の処置として理解する必要がある.SM深部浸潤癌は,リンパ節郭清を含めた外科手術が必要であり,安易に内視鏡治療をすべきでない.深達度予測のためには病変の慎重な観察が重要で,拡大内視鏡を用いたpit pattern診断やNBIは有用である.適切な病理組織学的診断を得るためには,最深部と思われる部位の組織切片が必要であり,切除標本の適切な張り付けや,実体顕微鏡を用いての割入れなどが重要である.

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要旨 大腸ESDの適応病変は,内視鏡的一括切除の適応であるが,スネアによる一括切除が困難な病変である.具体的には,LST-NG,特にpseudo-depressed type,VI型pit patternを呈する病変,SM軽度浸潤癌,大きな陥凹型腫瘍,癌が疑われる大きな隆起性病変〔全体が丈高の結節集簇病変(LST-G)も含む〕である.他にも,biopsyや病変の蠕動によって粘膜下層に線維化を伴う粘膜内病変,潰瘍性大腸炎などの慢性炎症を背景としたsporadicな局在腫瘍,内視鏡的切除後の局所遺残早期癌も適応となる.これらの適応判断のためには,術前の正確な内視鏡診断が必須で,特に拡大観察が有用である.大腸ESDの現状での問題点は,高度線維化例に対する手技の困難性,内視鏡の操作性不良部位の存在,そして,保険適用されていないことである.しかし,デバイスや内視鏡の改良・開発による手技の簡便化が進み,一般化(標準化)は少しずつ確実に進んでいる.

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要旨 経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)を施行した早期直腸癌は116例であった.肛門縁から病変の距離は5~19cm,病変径は最大140mm(平均42.1mm)であった.手術時間は25~300分(平均90.8分)であった.標本径は最大150mm(平均59.0mm)であった.一括切除率は96.6%であった.術中術式変更は1例のみであった.術合併症は篤なものは経験しなかった.深達度はM~SM1 108例,SM2 4例,SM3 4例であった.5例(4.3%)に追加切除を行った.2007年までの104例において直腸癌再発死亡例は3例(2.9%)であった.

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要旨 早期直腸癌の治療においては,内視鏡的な切除に固執せず局所の完全切除と全生検が可能な適切な切除法を選択することが,種々の機能温存の点でも特に重要である.MITAS(minimally invasive transanal surgery)は肛門縁より20cmまでの遠位S状結腸の腫瘍にも到達可能な新しい経肛門的局所切除法である.MITASは直視下で,TEMと同等の高さや大きさの腫瘍も切除できるとともに,TEMと異なり切除深度は全層まで切除可能で手術時間も短く,合併症もほとんどないという利点がある.これらは種々の手技の工夫と新しく開発された開肛器や自動縫合器の使用による.

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要旨 腹腔鏡手術は低侵襲手術として急速に普及した.大腸癌手術においても腹腔鏡手術が年々増加している.2009年版の「大腸癌治療ガイドライン」では腹腔鏡手術は結腸癌および直腸S状部癌のcStage 0,Iがよい適応とされている.腹腔鏡手術の短期成績は,海外でのRCTやメタアナリシスの結果で腹腔鏡下手術の有用性が示された.当院での成績は腹腔鏡下手術は開腹手術と比べて手術時間は有意に長かったが,出血量は有意に少なく,術後在院日数も有意に短かった.術後合併症は開腹手術と比べて有意に少なかった.腹腔鏡手術の長期予後は,厚生労働省の多施設共同研究ではStage I大腸癌の予後に腹腔鏡手術と開腹手術との差はなかった.当院での早期大腸癌の長期予後も5年全生存率は腹腔鏡手術と開腹手術で有意差はなかった.本邦では結腸進行癌についてのRCTや直腸癌についての第1,2相試験が進行中である.腹腔鏡手術の現状は施設間で適応や手術手技にばらつきがあり,今後は手術手技や適応の均てん化が求められる.さらに,本邦独自のRCTや前向き第1,2相試験の結果が待たれる.

主題 8.早期大腸癌に対する内視鏡治療後サーベイランス

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要旨 早期大腸癌に対するサーベイランス法について,内視鏡治療後の遺残・再発病変に焦点を絞り,その臨床病理学的特徴および至適サーベイランス間隔について検討した.対象は,遺残・再発病変に対して治療を行った67症例で,初回治療後,遺残・再発病変が指摘されるまでの期間中央値は9か月であった.さらに,同病変の病理組織像は,94%が腺腫または粘膜内癌であり,小病変のうちに発見できれば,内視鏡的粘膜切除術(焼灼法を含む)にて対応が可能であった.以上より,遺残・再発の比較的高リスクとされる分割切除後の初回サーベイランスは,治療後1年以内に行うことが望ましいと考えられた.

ノート 3.大腸癌の発生・発育進展

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要旨 代表的な遺伝性大腸癌に家族性大腸腺腫症(FAP)と遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)がある.FAPはほぼ全例に大腸癌を生じるが,大腸病変に対する治療のみならず,主な死亡原因であるデスモイド腫瘍や十二指腸癌に対する治療・サーベイランスを含めた生涯にわたる診療が必要となる.HNPCCでは大腸癌だけでなく子宮,卵巣,胃などにおける発癌リスクも高く,症例を正しく識別しサーベイランスを行うことが重要である.

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要旨 大腸腺腫症以外の消化管ポリポーシスの臨床的特徴と癌化について述べた.遺伝性過誤腫性ポリポーシスは,いずれも全身諸臓器の悪性腫瘍を合併することがある.なかでも,Peutz-Jeghers症候群では消化管,膵臓,乳腺,および婦人科領域が,Cowden病では甲状腺,乳腺,子宮が悪性腫瘍の好発部位である.これに対し,若年性ポリポーシスにおける悪性腫瘍は消化管に好発し,ポリープの密度が高い部位に発生する傾向がある.一方,非遺伝性ポリポーシスのうち,Cronkhite-Canada症候群では大腸腺腫や大腸癌の合併例が多い.以上のように,大腸腺腫症のみならず,そのほかの消化管ポリポーシスも悪性腫瘍の高危険群であり,全身諸臓器のサーベイランスが重要と考えられる.

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要旨 検体の取り扱いには,検体の伸展に始まり固定,写真撮影,切り出し,そして組織切片が包埋・薄切・染色されるまでの各段階が包含されている.不適切な取り扱いは組織学的検索のみならず,その後の治療方針決定にも支障を来す.それゆえに検体の取り扱いには正確さ,きめ細かさが要求され,十分な経験と知識をもった医師の指導下で速やかに行われる必要がある.加えて組織標本を作製する技師と連携を緊密にすることも欠かせない.

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要旨 「大腸癌取扱い規約(第7版補訂版)」では,主として大腸生検組織診断分類(Group分類)に変更が加えられた.新 Group分類では,従来の異型度分類から診断分類へと概念が変化し,生検診断の際には診断名に併記される付加的なものとなった.Group 2は,第6,7版では“非腫瘍性”であったが,補訂版では“腫瘍性か非腫瘍性か判断の困難な病変”と定義された.Group 2の定義が変更されたことで,状況によってはGroup2と判定される病変に癌が含まれることが起こりうる.これは補訂版において最も留意すべき点の1つであり,病理医・臨床医ともに十分な理解と相互確認のうえで診療に望む必要があると思われる.

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要旨 大腸腫瘍の病理診断において免疫染色を含む特殊染色が用いられてきた.静脈侵襲とリンパ管侵襲を調べるために,それぞれElastica van GiesonまたはVictoria blue-HE染色とD2-40免疫染色が最近しばしば用いられている.腫瘍の粘膜下層浸潤距離の測定にはDesmin免疫染色が用いられる.腺腫や鋸歯状病変といった前癌病変と腺癌,あるいは潰瘍性大腸炎関連腫瘍の鑑別診断には,Ki-67やp53蛋白に対する免疫染色が有用である.内分泌細胞腫瘍の形質判定や悪性度の推定,あるいは転移性と原発性の鑑別にも免疫染色が用いられる.病理診断には肉眼診断とHE切片による組織診断が重要であるが,特殊染色を用いてより客観的で再現性のある病理診断を提供したい.

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要旨 大腸癌は,胃腺窩上皮(MUC5AC/HGM),腸杯細胞(MUC2),小腸刷子縁(CD10)に対するマーカーを用いて大腸型,小腸型,胃型,混合型,分類不能型に分類可能である.そして,小腸型は高悪性度(静脈浸潤・肝転移が高頻度),大腸型は比較的低悪性度,混合型は粘液癌・絨毛腫瘍由来の癌・腸炎関連癌に高頻度,胃型は高度の浸潤性や低分化傾向を示し鋸歯状病変との関連のある癌,などの特徴があり,形質発現は組織像と対応して生物学的態度とも関連している.また,大腸腺腫においては組織型(管状,絨毛,鋸歯状)の違いにより形質発現は異なる.さらに管状腺腫においては隆起型と非隆起型でも異なる傾向があり,非隆起型管状腺腫は高率にCD10を発現することにより,高悪性度小腸型形質癌の前駆病変として注目すべきである.このように大腸上皮性腫瘍において,粘液形質発現の解析が今後の研究に応用されることが期待される.

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要旨 大腸癌(散発性)の遺伝子異常は,(1)LOHとMSI,(2)遺伝子変異,(3)メチル化,(4)micro RNAの異常,が主である.LOHは大腸癌の多くにみられるが,大腸腺腫ではまれである.一方MSIは大腸癌の約10%にみられ,LOHとMSIの臨床病理学的所見は対照的である.大腸腫瘍に関与する変異は,APC,KRAS,p53,DPC4,PIK3CAの遺伝子にみられる.APC変異は腺腫の発生に関与し,KRAS変異は腺腫の大きさと関連する.一方,p53変異は腺腫から癌になる際に関与するとされている.DPC4変異とPIK3CA変異は進行癌で主にみられる.CIMPは大腸癌では10~20%にみられる.MSIと関連するCIMP1とKRAS変異に関連するCIMP2がある.micro RNAはRNA転写産物の抑制機構として注目されており,大腸癌の新たな発癌機序として注目されている.

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要旨 大腸粘膜下層浸潤癌(SM癌)をPG(polypoid growth),NPG(non polypoid growth)分類を用いて分類し,早期大腸癌の発育様式について解析した.また,本分類の適用法についても概説した.

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要旨 大腸鋸歯状病変は,鋸歯状構造を呈する腺管からなる非腫瘍性あるいは腫瘍性の限局性病変で,以下に示す4種類のカテゴリーに分類される.(1)hyperplastic polyp,(2)sessile serrated polyp/sessile serrated adenoma,(3)traditional serrated adenoma,(4)serrated adenocarcinoma.serrated pathwayは従来のadenoma-carcinoma sequenceとは異なる,大腸鋸歯状病変を経由した発癌経路である.serrated pathwayが大腸癌発癌経路に占める割合は10~15%と考えられており,鋸歯状病変は大腸癌の前癌病変として,通常型の腺腫に次いで注目すべき疾患群である.しかしながら,大腸鋸歯状病変は用語の統一や診断基準の確立などの解決されていない問題点を残しており,今後さらなる検証が必要である.

ノート 5.早期大腸癌のスクリーニング

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要旨 小腸カプセル内視鏡の技術を応用したGiven Imagingの大腸カプセル内視鏡(PillCam(R) COLON)が2006年から臨床使用された.PillCam(R) COLONと通常大腸内視鏡との欧州共同比較研究の結果が2009年夏に発表されたが,感度・特異度ともに通常大腸内視鏡に劣り,よい評価は得られなかった.前処置も非常に強力で厳しいものがあり,大腸内視鏡に優れた日本ではまだ汎用できる段階とは言えない.しかし,2009年秋に新型大腸カプセル内視鏡(PillCam(R) COLON 2)が発表され,今後の進歩が期待される.

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要旨 自家蛍光内視鏡(AFI)は,消化管粘膜への励起光の照射により内因性の蛍光物質から生じる自家蛍光をとらえて画像化する装置である.現行のAFI systemは,白色光観察からボタン1つでAFI観察に切り替え可能である.AFI観察では大腸腫瘍は緑色の背景に紫色に描出され,特に平坦な病変の拾い上げ診断能の向上が期待されている.現在までの検討では,右半結腸において白色光観察に比べて見逃し割合の低下が示されたものの,S状結腸においてはその有用性が示されなかった.管腔が狭く屈曲の多いS状結腸ではAFIの機能を十分に発揮できない可能性があるため,筆者らは先端に透明フードを装着した観察法を用い,その有用性について検討している.

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要旨 NBI(narrow band imaging)の特徴は,内視鏡の観察光の分光特性を狭帯域特性へ変更し(短波長側にシフト),病変の視認性や表面微細構造,微細血管観察の向上を可能にしたことにある.現時点でNBIが大腸内視鏡スクリーニング検査における有用性が検討されているのは以下の3項目である.(1)発見率の向上(報告がcontroversialでありさらなる検討が必要).(2)腫瘍/非腫瘍の鑑別(optical/digital chromoendoscopyとして色素を使用せずに可能).(3)大腸腫瘍の腺腫/癌の質的診断(深達度に関する量的診断に関しては今後の課題).今後は微細血管(構造)分類のvalidation study,inter-intra observer variability,learning curveなどの関係を明らかにする必要があろう.

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要旨 一体型超拡大内視鏡(XCF-Q260EC1,prototype)は,通常観察,拡大観察,超拡大観察が可能となっており,超拡大観察の拡大レベルは450倍で,画像の取得深度は50μmとされている.生体内で病理診断に極めて近い診断ができ,赤血球をはじめとする血流の流れや種々の細胞の動きを観察することができる超拡大内視鏡を,筆者らは次世代の内視鏡として位置づけている.大腸上皮性病変において超拡大内視鏡EC(endocytoscopy)分類は病理組織診断とよく相関しており,超拡大内視鏡診断の有用性が示唆される.超拡大内視鏡により,現行の内視鏡では診断困難とされる様々な問題が解決されることを期待する.

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要旨 共焦点内視鏡は消化管粘膜を細胞レベルで観察可能であり,内視鏡検査中にmacroの内視鏡画像とmicroの共焦点画像を並行して同時に見ることができる.蛍光剤のアクリフラビンの局所撒布やフルオレセインの静注で粘膜細胞や血管構築画像が得られる.大腸粘膜では杯細胞と円柱上皮細胞が区別でき,腺窩と周囲の毛細血管構築も250μmほどの深さまで観察できる.正常粘膜から,腺腫,癌へと変化するにつれて細胞や組織の異型度が増し,腺窩が消失して歪な血管新生を生じる.macroで異常所見を認めた部位を拡大観察して組織学的鑑別もつくようになり,実用化が進めば内視鏡で観察したその場で治療に移行できる可能性を含んでいる.

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欧文目次

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新たな情報を盛り込みさらに使いやすくなったuser-friendlyなマニュアル

 平成16(2004)年に新臨床研修制度が導入され,卒後研修先が大学から市中病院に大幅にシフトしてきているのは周知のとおりである.当院でも臨床研修医のみならず,大学病院での外科修練を経ない後期研修医が勤務する事態となっている.第一線病院における医師養成の比重は増大しているが,指導する側は勤務医としての過剰な業務量のため,研修医教育に時間的制約を受けている.このような状況では当然知識や経験は不足,偏りがちとなる.そのため外科をめざす若手医師にはその分野を網羅する知識を集約したマニュアルが不可欠となる.さらにそのマニュアルが診療現場で直ちに役に立つものであれば理想的である.『消化器外科レジデントマニュアル』初版の販売部数は予想をはるかに凌駕したと聞いている.この事実は本書が時代のニーズに見事にマッチしたことを示している.今般,最新の知見を取り入れて改訂され,第2版が出版された.

 本書の特徴は,①医療安全にも配慮され,修練すべき事項を広範囲に網羅していること,②研修医が経験すべき重要な疾患,診療手技が重点的に詳述されていること,③現場で役に立つ具体的内容であることであろう.

編集後記 鶴田 修
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 「早期大腸癌1994」発刊以降16年経過したが,この間に分子生物学,病理学,臨床診断学,治療学の各分野においてかなりの進歩が得られている.具体的に大腸癌の組織発生においては,散在性発癌以外に炎症性発癌や鋸歯状病変からの癌化に関する知見が集積され,画像診断においては,従来のX線,通常内視鏡,超音波内視鏡検査に加えpit pattern,画像強調観察などが一般的に使用されるようになった.また,治療においてはEMR(endoscopic mucosal resection)/EPMR(endoscopic piecemeal mucosal resection)や腹腔鏡下治療はほぼ日常的手技となりESD(endoscopic submucosal dissection)も試みられている.また,pSM癌内視鏡治療後の病理学的根治基準も変化している.

 本号では従来の基本的事項に加え,この16年間に進んだ発癌,病理診断,臨床画像診断,治療法などにおける新しい知見についても触れるような企画を立て,多数の先生に原稿を依頼した.

基本情報

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胃と腸
45巻5号 (2010年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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