臨床婦人科産科 52巻2号 (1998年2月)

今月の臨床 腫瘍マーカーは何を語るか

Overview

  • 文献概要を表示

 悪性腫瘍の診断は病理学的診断がその基盤となることは論を待たない.これに対して,その多くが血清学的あるいは免疫学的また生化学的に検出される腫瘍マーカーは,血液をはじめとする生体から得られた試料を使って低侵襲で迅速に診断できることを目標に開発されてきた.悪性腫瘍はその細胞生物学的挙動,さらに形態学的特徴が正常組織とは大きく異なっていることから,癌細胞やその組織には正常と異なる物質が産生されていると考えることは当然であり,この観点で種々の腫瘍マーカーが開発され実用化されてきた.その結果,悪性腫瘍の診断にとどまらず,その部位,進行度,治療効果の判定,腫瘍のモニタリングといった形態学的診断法とは異なる観点から数々の情報を得ることができるようになった.一方で,正常では皆無であるのに対して,癌でのみその存在が認められるといった厳密な意味での癌特異物質は見いだされておらず,腫瘍マーカーを用いた実際の臨床的な評価は癌関連物質の質的・量的変化に基づいて行われることが多い.その際にはcut—off値という概念に基づく感度や特異度をつねに念頭に置く必要がある.

 腫瘍マーカーの歴史は,1848年の骨髄腫におけるBence Jones1)蛋白の発見に始まる.その後1960年代にはAbelevら2)によってAFPが見いだされるとともに腫瘍マーカーとしての概念が導入され,さらにGoldら3)によるCEAの発見へと続く.

  • 文献概要を表示

 一般に自然界の物事をきれいに分類するのは難しい.いまだにカメを爬虫類から外したり,戻したりしているくらいである.盲人が象を撫でるごとく,物質の一面だけから分類しても,新しい性質がわかると見直さざるをえないし,いずれの種類にも分類できないものやいくつかの分類項目の条件を兼ね備えたものがある.もっとも,何事も整理したほうが安心できるし,例えば,食用になるものと食べれば死ぬもの,あるいは空を飛べるものと飛べないものなど,何らかの目的に沿って分類されていると便利である.腫瘍マーカーも自然界の物質であるだけに分類するのは難しいが,ここでは実用的な面を中心にいくつかの分類法を述べる.

腫瘍マーカーの特性

  • 文献概要を表示

 細胞はDNAを複製する過程を経て分裂・増殖する.したがって,DNA合成に関与する物質が細胞増殖能に関連するマーカーとして使用される.これを細胞周期からみると,増殖刺激をうけた細胞は細胞周期を進行し,DNA合成期(S期)へと移動し,分裂期(M期)を経て増殖する.この観点からみると,DNAを合成している細胞の割合,あるいは細胞周期を回転している細胞がどれだけあるかを示す物質もマーカーとして重要になる.

 本稿では,まず細胞増殖の調節機構について最近の知見を簡単に述べ,次に頻用されるマーカーを解説し,最後に新しいマーカーを紹介する.

  • 文献概要を表示

 “癌”が悪性腫瘍たるゆえんは,その転移能にあるといえる.それゆえ癌の治療において原発巣の制御はもちろんのこと,転移をいかに制御するかは重要な課題である.癌転移,とくに血行性転移は,癌細胞の原発巣からの遊離,脈管内への侵入,脈管内移動,脈管への接着,脈管外への脱出,遠隔臓器での増殖といった多くの複雑なステップを経て成立する現象である.各ステップにはさまざまな分子が関与しており,現在,それらの分子の血中濃度や腫瘍組織内での発現を検討することにより,腫瘍の転移能,ひいては悪性度を推測しようとする多くの試みがなされている.そういった意味においてこれらの分子は,“腫瘍マーカー”としての性格を有していると考えられよう.つまり転移の各ステップにおいては,増殖因子,接着因子、細胞運動促進因子,細胞外基質分解酵素,血管新生誘導因子などが複雑に関与している.それら因子ごとに,現在注目されている転移関連分子を表にまとめた.以下,これらの分子の一部について,最近の筆者らの研究を中心に述べる.

  • 文献概要を表示

 実際の臨床に携わっていると,同じ原発臓器の同じ組織型の癌であっても症例によってその性格の違いに驚かされることが少なくない.浸潤のごく浅い時期から転移を認める症例もあれば,原発巣は巨大に腫大しているにもかかわらず転移もなく再発もしない症例も見受けられる.あるいは月単位で進行し短期間で死亡する症例もあれば,腹腔内に腫瘤を形成したまま数年間生存する症例もある.このように同じ癌といってもその悪性度にはかなり幅があるわけであるが,癌の悪性度は何によって規定されるのであろうか.

  • 文献概要を表示

 癌遺伝子は遺伝子機能が活性化される遺伝子変異が生じることによって,細胞の異常増殖や転移・浸潤能獲得といった癌細胞としての形質の変化をもたらす.それに対して癌抑制遺伝子(tumorsuppressor gene)は正常細胞においては細胞の増殖抑制・分化の制御に関与しているが,その遺伝子機能の不活化によって細胞形質の悪性化が引き起こされる.癌遺伝子は自動車のアクセル,癌抑制遺伝子はブレーキにたとえられる.そのブレーキの故障が遺伝することにより悪性腫瘍の家族性発症をみることがある.

  • 文献概要を表示

細胞骨格蛋白の分類と組織局在

 細胞骨格cytoskeletonとは,細胞内の小器官,限界膜などの構造物以外の線維成分を示す語であり,microfilaments, microtubules, intermediatefilamentsに分類される.これらの組織局在を表1に示した.microfilamentsは直径約6nmのF—アクチン(いわゆるアクチンフィラメント)を中心とするシステムであり,ミオシンなどアクチンと関連の深い蛋白群が含まれる.microtubulesは直径約22〜24nmの管状構造を形成するシステムであり,チュブリンなどがこれに属する.inter—mediate filamentsは線維の太さがアクチンとミオシンとの中間であることより命名された蛋白群で,keratin, desminなどが含まれる1)

 cytoskeletal proteinsのうち,現在,腫瘍の血清診断に応用されているのはcytokeratin(CK)の一部のみである.その他は病理学的診断に応用されているが,その有用性は,分類不能例,希少例など通常の染色では鑑別が困難な場合に著明であり,またリンパ節や骨髄生検材料を用いてのmicrometastasisやoccult metastasisの検索の試みも報告されている2,3)

  • 文献概要を表示

 GAT(癌関連ガラクトース転移酵素)は正常のガラクトース転移酵素(以下,GalTと略す)とは異なり,自己会合しやすい性質を持つことを特徴とした癌関連イソ酵素である.GATは正常のGalTと同一の遺伝子産物ではあるが,細胞内GalTが可溶型GalTとして体液中に放出される過程において,なんらかの癌性変化に伴い通常とは異なった部位で切断を受け,正常のGalTより長いN末端を残したままで体液中に放出されたものであると考えられている.また,GATは癌特異性が高いことを特徴とした腫瘍マーカーであり,卵巣腫瘍の良・悪性の鑑別診断において有用なマーカーとなりうることが報告されてきた1-3)

 内膜症性嚢胞患者の増加などにより,初診時に内膜症性嚢胞と診断された症例から発見される卵巣癌症例が無視できない割合で存在すると言われているが,最近,GATがこの診断において有用なマーカーとなりうるのではないかと考えられている4)

診断への実践的応用

  • 文献概要を表示

 卵巣癌は米国では婦人科悪性腫瘍の死亡原因の第1位であり,治療診断に関して,多くの報告がある.本邦での現状は子宮頸癌より少ないが,2015年には婦人科癌のなかでの死亡率は子宮頸癌のそれを上回ると予想されている1).卵巣癌の多くは発見されたときには悪性細胞が卵巣にとどまらず,腹腔内に播種していることが多い.超音波,CTなど画像診断の普及,腫瘍マーカーの普及にもかかわらず,数十年の間,診断時の進行期の分布の割合は変化していない2)(図1).また,卵巣癌の予後は進行期に最も影響される.卵巣に限局しているいわゆるI期の症例は5年生存率も90〜95%と良好であるが,III,IV期の進行癌では30%にも満たない成績が一般的である.本邦の成績は須川ら3)が多施設共同研究により1,185例の生存率を報告している(表1).III,IV期の進行癌に対しては,化学療法の工夫,neoadjuvant療法の試み,second look operation, second cyto—reductive surgery,幹細胞移植の導入によるhighdose chemotherapyなど種々の試みがなされているが,予後の改善はまだ不十分である.早期癌の予後と進行癌の予後に大きく差があること,進行癌でも卵巣癌の発見時には自覚症状が少なく,またあっても腹満感,膨隆感など不定の症状であることが多い.

  • 文献概要を表示

 最近の診断学の進歩における腫瘍マーカーの役割はきわめて大きい.しかし,実地臨床において手術を行うかどうか迷うような症例は,かならず画像診断においても描出されるものである.また,画像で描出されるにもかかわらず腫瘍マーカーが検出されない症例も多々認められる.このような場合,腫瘍マーカーの役割をどこにおいて考えるべきなのかを含めて解説する.

  • 文献概要を表示

 わが国における死亡原因は1981年以降,癌が第1位となり,その後も癌死亡は増加している.このなかで全子宮癌の死亡数および率は1950年以降一貫して減少しており,これは子宮頸癌検診の普及によるものと考えられる.その一方で,子宮体癌の発生頻度は近年増加傾向がみられ,子宮癌全体の15〜20%,あるいは30%を超えたとの報告もあり(教室39.2%:1992〜1996年平均),欧米化の傾向が窺われる.この体癌に対する腫瘍マーカーの応用は,早期診断,良性内膜疾患との鑑別診断,術後免疫組織化学的病理組織診断,薬物治療効果判定および再発早期診断などが考えられるが,このためには,体癌に特異的な産生物質が検出するのに十分な量があり,しかもその物質の半減期が短いことが求められる.

 今日,腫瘍マーカーとして用いられているものは,ほとんどが正常細胞からも産生されている癌関連物質である.しかし,少しでも特異性のある抗原に対する抗体を求める努力は行われており,摘出癌組織や培養細胞株を免疫原として作成されたモノクローナル抗体から,有望な抗体が選別されつつある.体癌に対する特異的な腫瘍マーカーはいまだ乏しいのが現状であるが,本稿では,これまで比較的関連性があるとされてきたマーカーや現在開発中の新しいマーカーについて,コンビネーションアッセイの有用性を含めて概説したい.

  • 文献概要を表示

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は現在までに70種類以上の型が同定されており,婦人科領域に関連の深い型として,6,11型は尖圭コンジローマの,16,18,31,33,35,45,52,56,58型など約10の型は子宮頸部前癌病変や子宮頸癌の原因ウイルスと考えられている.子宮頸癌においては,約90%にHPV DNAが検出され1),検出されるHPVの型により子宮頸癌の予後に差が認められることなども報告されている2).現在,HPVに対する免疫応答(ワクチン)を利用したHPV感染に対する予防的ワクチンや,子宮頸癌に対する治療的ワクチンについて研究が開始されており,これまでに明らかとなった抗HPV抗体の検出に関する研究結果などをもとに,盛んに研究が行われている.

 ここでは,抗HPV抗体およびワクチン開発に関する研究について紹介する.

  • 文献概要を表示

 腫瘍マーカーが組織診で利用される際は免疫組織化学的染色(免疫染色)として用いられる1-3).組織学的診断はヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)標本での所見を基準として行われるが,その診断を補助するためには種々の染色法が考察され実用化されている.免疫染色はこれらの特殊染色とよばれるものの1つと捉えることができる.

 本稿では免疫染色のもつ意義と限界性について一般的な事項について述べる.次いで子宮および卵巣の病変を中心に免疫染色が実地の組織診に有効な事例に限定して各論的に概説する.研究段階にあるがまだ実用化していない多くの抗体が報告されているが,これらについては割愛する.

  • 文献概要を表示

 卵巣癌はその半数以上がIII〜IV期の進行癌でみつかるため,女性性器癌のなかでは予後の悪い癌のひとつである.シスプラチンを中心とした多剤併用療法により,卵巣癌の予後は改善されたとはいえ依然として進行癌の予後は悪く,頭うちの感がある.本稿ではこのような現状をふまえ,腫瘍マーカーが治療計画を立てるうえで果たしうる役割について述べるとともに,治療効果判定を行う際にマーカーがいかに関与しうるかを述べる.

2.卵巣癌の術後管理 木村 英三
  • 文献概要を表示

 腫瘍マーカーの有効な利用法としては,癌の早期診断,鑑別診断,予後の推定,治療の効果判定,再発の早期診断,転移巣の経過観察などがある.これらは,結果的にはすべて患者の予後に関連する事項であるが,乳癌のHER−2/neu1)のようにその物質の発現そのものが予後を左右する場合と,血清中に存在するマーカーのように,その物質を測定することにより病態の状況判断を容易にし適切な治療の開始を可能にするなど間接的に予後に関与するものとがある.本稿では,主に後者の面から卵巣癌の術後管理におけるCA125の意義と問題点に焦点をしぼって述べる.

  • 文献概要を表示

 子宮体癌は,発症数・死亡数ともに増加しつつあり,子宮外進展を伴う進行症例も全体の20%以上にのぼる.これらの進行例では,術後補充療法として従来より行われてきた放射線療法に加え,病変の進展度に応じ,化学療法も施行してその成績を検討する試みが行われてきている1,2).このような集学的治療を行う場合,治療効果の判定の客観的基準があれば,治療計画はより的確なものとなるであろう.測定可能残存病変のないハイリスク例の多い予宮体癌の場合,手術と術後追加治療を含めた治療効果の判定指標として,血中腫瘍マーカーの推移に期待が寄せられる.本稿では卵巣癌との対比をしながら,子宮体癌の治療効果判定における腫瘍マーカーの役割について述べる.

  • 文献概要を表示

 子宮頸癌は病変部位より直接組織診や細胞診を施行することが可能であり,そのため集団検診の普及が進み,早期診断が可能となった.一方,進行癌においてはCT,MRI,超音波断層法など近年の画像診断の進歩により術前病巣の広がり,リンパ節転移の有無など,かなり詳細に観察できるようになった.したがって子宮頸癌における腫瘍マーカー診断は,早期診断のためではなく,画像診断とともに病巣の広がり程度の術前診断や治療後の再発のチェックおよび治療のモニタリングに臨床応用されており,子宮頸癌の治療計画と術後管理に重要な情報を提供することになる.今回,筆者らは子宮頸癌の治療前後における腫瘍マーカーの変動を自験例および諸家らの報告より検索し,腫瘍マーカーの臨床的有用性について検討した.なお子宮頸癌は発生部位および組織型によって扁平上皮癌と腺癌とに区別されるため,この二つを分けて概説するとともに,新しい子宮頸癌の補助化学療法であるneoadjuvant動注化学療法について報告する.

  • 文献概要を表示

 理想的な腫瘍マーカーとは癌の発生に伴って体液中に出現し,腫瘍量をよく反映し,再発に際しても臨床所見に先立って増加を認めるものである.絨毛性ゴナドトロピン(HCG)は,絨毛性疾患の病態把握のためには,ほぼ理想的な腫瘍マーカーである.

 絨毛性疾患は若年者に多いため患者は子宮摘出療法を望まないこと,さらに発症早期より血行性転移(肺・頭蓋内転移など)がみられるため,化学療法が第一次的療法に選択されることが多い.したがって,その病態把握にはHCG測定はきわめて重要である.本稿では,絨毛癌および存続絨毛症である臨床的絨毛癌治療におけるHCG測定の意義とその留意点について解説する1)

  • 文献概要を表示

 腫瘍マーカーは「悪性腫瘍によって産生される物質で,正常ないし良性疾患の場合には産生されないもの」,すなわち腫瘍特異抗原であることが理想的である.しかし,現在,臨床の場で広く用いられている腫瘍マーカーの多くは腫瘍関連抗原である.つまり,悪性腫瘍のみならず正常組織でも作られる物質であり,良性腫瘍,炎症,妊娠などにより上昇を認め,その差は量的なものである.したがって,妊娠に合併した腫瘍の診断・管理に腫瘍マーカーを用いる場合には,その測定値の解釈に注意を要する.つまり陽性の結果が得られた場合,それが腫瘍によるためか,妊娠によるためか,あるいはその両者によるためなのかの鑑別が求められるからである.絨毛性疾患の腫瘍マーカーに関しては他稿に譲り,本稿では産婦人科領域で用いる機会の多い腫瘍マーカーについて妊娠・分娩が与える影響を教室の成績を交えて概説する.

  • 文献概要を表示

 腫瘍マーカーとは,悪性腫瘍が産生する物質を主として血液中で検出することにより,悪性腫瘍の存在の有無を推定したり生体内における腫瘍の活動性を評価することができる物質のことである.しかし,臨床の場では悪性腫瘍が存在しないのにもかかわらず腫瘍マーカーの上昇が認められる場合があり,これを腫瘍マーカーのfalse posi—tive(偽陽性)と呼ぶ.これは現在用いられている腫瘍マーカーの多くが悪性腫瘍に特異的な物質ではないため,正常な組織でも少なからず産生されているものが,何らかの要因によりその産生の増加や血中への移行が促されて血中で上昇してくるために生じている.したがって臨床において腫瘍マーカーの評価を適正に行うためには,腫瘍マーカーと言われる物質の持つそれぞれの特性を理解し,正常組織や悪性腫瘍以外の腫瘍における発現形態についての知識も必要となる.ここでは,良性腫瘍の存在によって生ずる腫瘍マーカーのfalse positiveについて代表的なものを述べる.

  • 文献概要を表示

腫瘍マーカーと「まるめ」

 現在,臨床で汎用されている腫瘍マーカー(以下,マーカー)には多種多様なものがあるが,毎年多数の新しいマーカーが開発され報告されている.しかし,今後もそれぞれの症例の病態を的確に反映するような信頼度の高いマーカーが現れない限り,この現象はなお続くものと思われる.これまで汎用されているマーカーは臓器癌で陽性率が高率に出現するというものが大部分である.

 マーカーの診断的価値は感度と特異度とであり,それらから得られた正診率で評価することになる1)が,単一のマーカーの使用だけでは診断上で納得できる成績の得られるものが少ない.そこで,現在広く行われているような複数のマーカーの組み合わせで測定を行って診断効率を上昇させようという試みがなされている.そこで従来から多くのマーカーを使用して,そのうちのどれかがマーカーとして利用できるのではないかという考えで多数の検査項目が提出されていた.しかし,マーカーは診療報酬の改正後,とくに過剰検査を抑制するターゲットとなった.そして現状では癌の特異性マーカーとして評価できるものは少なく,複数の癌にも共通して高値を示したり,癌以外の疾患に対しても高値を示すことがある.

  • 文献概要を表示

 本稿では,各種子宮外妊娠や出血を伴った急性腹症の症例を呈示する.

 次回は,「腹腔鏡下手術における人工造腟術:I—骨盤腹膜利用法から—」を報告する.

  • 文献概要を表示

 切迫早産の治療に多くの薬剤が使用されているが,どの薬剤を使用しても,現時点では妊娠期間の短期間の延長は期待できるものの,長期間の延長は不可能であることが多くの研究で明らかになっている.とくに,切迫流産例に非経口的に陣痛抑制剤を使用し,その後経口的に陣痛抑制剤を使用するいわゆる維持療法も無効という研究結果が多く(AJOG:175:834,1996),とくに第一選択に陣痛抑制剤の経口療法を行い,早産率を有意に下げられたという研究結果は,英語圏の論文ではほとんどみられない.まったく同じ効果を有するterbutalineが安価であることも原因の一つかも知れないが,塩酸リトドリンの経口投与の効果に疑問が持たれた(Dialog(R) File 187:FDCReports, November 2,1992)ことなどから,米国市場からは塩酸リトドリンの経口剤は姿を消し,米国医療関係者が薬剤使用に際し参考にしているPhysician�s Desk Reference(PDR)1997年版からは,塩酸リトドリン経口剤の項目は削除されてしまった.副作用が少なく,長期間,陣痛抑制できる薬剤が待たれるところである.

 切迫早産の診断は困難な例が多いが,未破水例で妊娠20〜37週未満,子宮収縮と頸管の変化がともに確認された場合というのが一般的である.

連載 Estrogen Series・24

経口避妊薬と肝臓癌 矢沢 珪二郎
  • 文献概要を表示

 経口避妊薬の使用により肝臓癌が増加するという報告がある1-3).その相対的な危険度[経口避妊薬(OC)を使用しない場合の危険度を1.0とした場合]は2.64)〜20.13)と報告されている.過去30年間にわたってOCは欧米を中心とする先進国で広範囲に使用されてきた.米国でのOC使用率は1973年:25%,1976年:23%,1982年:13%,1988年:17%である.スウェーデンでは,1981年の調査では23%であった.それとは対象的にOCが許可されていない日本ではOC使用者は2%以下にすぎない.

 カリフォルニア大学(SF)の著者らは,これら先進3か国での肝臓癌の死亡率を調べ,1960年代に導入されたOCの使用がなんらかの影響を与えているかを調べてみた.肝臓癌は死亡率が高いので,もし肝臓癌が実際に増加していれば死亡者数の増加として反映される,と想定できる.これはOCと肝臓癌の関連を間接的にみようとしたものである.

連載 産婦人科キーワード・3

  • 文献概要を表示

語源

 エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)とは,赤血球(erythrocyte)を作る(poies)物質という意味である.“erythro”は「赤」を意味する接頭語で、erythrophobia(赤面恐怖症,“phob”は恐れの意,因みに反対語は“phil”で親和,嗜好の意),erythema(皮膚の上の赤らみ=紅斑)などの言葉がある.

連載 産婦人科キーワード・4

  • 文献概要を表示

語源

 活性酸素(active oxygen)とは,酸素(oxygen)が電子の受容体として還元されていく過程で発生する酸素よりも反応性が大きい(active)ものの総称である.

連載 産婦人科クリニカルテクニック

ワンポイントレッスン—私のノウハウ

  • 文献概要を表示

 血流が豊富な子宮や腟壁の手術での術中出血量を少なくするための工夫として,筆者らは従来のエピネフリン希釈液に代えてピトレッシン希釈液を多用している.手術室に常備することにより緊急手術の際にも簡単に使用が可能であり,即効性もあるので,とても重宝している.通常はピトレッシン1A(=20IU)を50mlの生理食塩水で希釈して(0.4IU/ml)使用するが,使用部位や術式によっては多少薄めの溶液を使用する場合もある.局注の際は子宮壁や腟粘膜が蒼白になる程度の量をめどとし,操作中適宜追加注入する.現在,以下の各手術で使用している.

 (1)子宮筋腫核出術

  • 文献概要を表示

 妊娠中期の胎胞脱出は,後期流産や超早期産の主な原因の一つである.その周産期管理として,ウリナスタチン腟洗浄をメインとした保存的治療を唱える一派や,絨毛膜羊膜炎が原因なので子宮頸管縫縮術は無効であると唱える一派もある.しかし,筆者は過去の保存的治療での苦く惨憺たる結果から,この10年間は緊急子宮頸管縫縮術を行うポリシーを選択,推進してきた1).筆者の経験では妊娠中期胎胞脱出のうち,おおむね1/3は純粋な子宮頸管無力症,1/3は胎胞脱出から絨毛膜羊膜炎を併発した子宮頸管無力症,そして残る1/3が絨毛膜羊膜炎が基本病態と推測される.結果,前二者約2/3の妊娠中期胎胞脱出で,臨床的に緊急子宮頸管縫縮術は有効との成績を筆者は得ている.ここでは,これ以上の「保存的治療か緊急子宮頸管縫縮術か」の議論は他の機会に譲ることとし,臨床現場で今この瞬間にも胎胞脱出に対峙している産科医の一助になればと,胎胞脱出の緊急子宮頸管縫縮術のコツを,筆者の過去10年間40例の経験を基に紹介したい.

 コツ1:子宮頸管縫縮術は可及的に早く行うべきである.往々にして,胎胞脱出は休日の母体搬送が多い.週明けまで待機せず,また少々の子宮収縮があっても強行すべきである.胎胞の腟腔内への露出は,上行性感染を勘案すれば,なるだけ短時間がベターである.

連載 病院めぐり

社会保険田川病院 元島 成信
  • 文献概要を表示

 福岡の田川といえば,その昔,炭坑の盛んだったところ,そうです,あの「月が出た出た,月が出た……」の唄で有名な「炭坑節」,それに五木寛之原作「青春の門」の舞台となり,何度か映画化された筑豊は田川です.南北の2つの国定公園(耶馬日田英彦山国定公園,北九州国定公園)に挟まれた盆地にあり,気候は温帯モンスーン帯に属する自然に恵まれた地域です.

 炭坑の盛んなときは人口もかなり多かったのですが,昭和36年頃に炭坑は閉山となり,人口も徐々に減少し,現在,田川郡と田川市を合わせて約15万4千人(市5万5千人,郡9万8千人)です.それにともなって,市,郡の分娩数も徐々に減少し,約3年前より平均して月150例前後(市50例,郡100例)と,人口のわりに少産化のようです.その田川地区に国立病院,市立病院,町立病院,それに当院を入れて8病院あり,そのうち産婦人科を持つ病院は3病院あります.因みに,開業医は99か所(産婦人科6)となっています.

神鋼病院 川口 惠子
  • 文献概要を表示

 神鋼病院は,神戸市の中央にあるベッド数330床の総合病院です.あのラグビーで有名な神戸製鋼所の企業病院で,昭和18年に設立されました.その後何度かの移転,建て直しを経て,現在の病院は3年前に新設されました.テレビ局が病院ドラマのロケに訪れるほどきれいな建物で,とても気分よく働いています.企業病院といっても,患者さんのほとんどは会社とは関係のない一般の市民の方々で,明るく家庭的な病院として親しまれています.

 さて産婦人科ですが,常勤医2名,非常勤医数名とも全員女性であるところがちょっと珍しく,またセールスポイントにもなっています.おまけに,当院では麻酔科も全員女性なので,手術室は患者さんも含めて皆女性ばかり,人呼んでこれを“宝塚手術団”といいます.

CURRENT CLINIC

腹腔鏡下手術の現況 堤 治
  • 文献概要を表示

 腹腔鏡下手術は患者への肉体的負担はもとより,短期間の入院,早期の社会復帰など21世紀の医療として普及しつつある.私と腹腔鏡下手術の出会いは,1992年新任の教室主任武谷雄二教授に病棟医長を命ぜられ病棟に専念するにあたり思い当たったのがきっかけである.時折白黒化するモニターや竹槍のようなトラカールの状態から最新の機器を関連会社へお願いして借り出すのがスタートであった.その後手探りで手術の適用範囲を広げ,本文に述べるように良性疾患では80%を腹腔鏡下手術で実施するに至った.導入期には臓器損傷や開腹移行など多少のトラブルもあったが,現在では教育とトレーニングのシステムも整い.より安全な腹腔鏡下手術が可能となった.さらに細径化などによる外来腹腔鏡も夢でなくなりつつある.これは熱意ある同僚医師との努力の成果ではあるが,それ以上に手術部・看護部・機器など関連会社のご協力ご鞭撻の賜である.ここにすべての皆様に謝意を表すことをお許しいただきたい.

  • 文献概要を表示

 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の合併症である血栓症の病態と治療法に関して,血液凝固線溶能の変化を把握することが臨床上重要である.体外受精施行例71例(予備群36例,OHSS群35例)について,各種凝固線溶系検査の変化とD—ダイマーの臨床的有用性について検討を行った.予備群が正常域を呈するのに対し,OHSS発症患者はAPTTの短縮,フィブリノゲンの増加と血液濃縮およびD—ダイマーの顕著な増加を認め,すでに凝固線溶系が活性化されていることを示唆していた.D—ダイマーは予備群とOHSS群において明らかに有意差(p<0.001)を認め,FDPよりも優れた線溶系マーカーとして有用性が高いと考えられた.また,今回の症例の重度OHSS患者は,D—ダイマーが3,000ng/ml以上を示す場合には微少血栓の発生を考慮し,DIC発生に留意すべきと考えられた.

  • 文献概要を表示

 妊娠36週で前期破水を来たして入院した患者53例に対しcefdinirの100mgを経口投与し,母体血および臍帯血中濃度を測定した.単回投与時の母体血中濃度は0.084〜2.41μg/ml,臍帯血中濃度は0.043〜1.13μg/mlに対し,連続投与時のそれはそれぞれ0.082〜2.35μg/mlおよび0.04〜1.09μg/mlであった.なお,連続投与による蓄積性は認められなかった.羊水中濃度を測定した4例では2例に0.477および0.558μg/mlが検出された.本剤の単回および連続投与した53例のうち5例に子宮感染を認めたため,有効率は90.5%であった.

基本情報

03869865.52.2.jpg
臨床婦人科産科
52巻2号 (1998年2月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月21日~9月27日
)