今月の臨床 腫瘍マーカーは何を語るか
腫瘍マーカーの特性
2.転移能に関連する腫瘍マーカー
我妻 理重
1
,
佐藤 信二
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.136-138
発行日 1998年2月10日
Published Date 1998/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903163
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“癌”が悪性腫瘍たるゆえんは,その転移能にあるといえる.それゆえ癌の治療において原発巣の制御はもちろんのこと,転移をいかに制御するかは重要な課題である.癌転移,とくに血行性転移は,癌細胞の原発巣からの遊離,脈管内への侵入,脈管内移動,脈管への接着,脈管外への脱出,遠隔臓器での増殖といった多くの複雑なステップを経て成立する現象である.各ステップにはさまざまな分子が関与しており,現在,それらの分子の血中濃度や腫瘍組織内での発現を検討することにより,腫瘍の転移能,ひいては悪性度を推測しようとする多くの試みがなされている.そういった意味においてこれらの分子は,“腫瘍マーカー”としての性格を有していると考えられよう.つまり転移の各ステップにおいては,増殖因子,接着因子、細胞運動促進因子,細胞外基質分解酵素,血管新生誘導因子などが複雑に関与している.それら因子ごとに,現在注目されている転移関連分子を表にまとめた.以下,これらの分子の一部について,最近の筆者らの研究を中心に述べる.
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