今月の臨床 腫瘍マーカーは何を語るか
診断への実践的応用
1.卵巣癌のスクリーニングは可能か
大西 義孝
1
,
波多江 正紀
1
1鹿児島市立病院産婦人科
pp.158-161
発行日 1998年2月10日
Published Date 1998/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903168
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卵巣癌は米国では婦人科悪性腫瘍の死亡原因の第1位であり,治療診断に関して,多くの報告がある.本邦での現状は子宮頸癌より少ないが,2015年には婦人科癌のなかでの死亡率は子宮頸癌のそれを上回ると予想されている1).卵巣癌の多くは発見されたときには悪性細胞が卵巣にとどまらず,腹腔内に播種していることが多い.超音波,CTなど画像診断の普及,腫瘍マーカーの普及にもかかわらず,数十年の間,診断時の進行期の分布の割合は変化していない2)(図1).また,卵巣癌の予後は進行期に最も影響される.卵巣に限局しているいわゆるI期の症例は5年生存率も90〜95%と良好であるが,III,IV期の進行癌では30%にも満たない成績が一般的である.本邦の成績は須川ら3)が多施設共同研究により1,185例の生存率を報告している(表1).III,IV期の進行癌に対しては,化学療法の工夫,neoadjuvant療法の試み,second look operation, second cyto—reductive surgery,幹細胞移植の導入によるhighdose chemotherapyなど種々の試みがなされているが,予後の改善はまだ不十分である.早期癌の予後と進行癌の予後に大きく差があること,進行癌でも卵巣癌の発見時には自覚症状が少なく,またあっても腹満感,膨隆感など不定の症状であることが多い.
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