今月の臨床 腫瘍マーカーは何を語るか
診断への実践的応用
3.子宮体癌の診断へのアプローチ
植田 政嗣
1
,
植木 實
1
1大阪医科大学産婦人科
pp.166-168
発行日 1998年2月10日
Published Date 1998/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903170
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わが国における死亡原因は1981年以降,癌が第1位となり,その後も癌死亡は増加している.このなかで全子宮癌の死亡数および率は1950年以降一貫して減少しており,これは子宮頸癌検診の普及によるものと考えられる.その一方で,子宮体癌の発生頻度は近年増加傾向がみられ,子宮癌全体の15〜20%,あるいは30%を超えたとの報告もあり(教室39.2%:1992〜1996年平均),欧米化の傾向が窺われる.この体癌に対する腫瘍マーカーの応用は,早期診断,良性内膜疾患との鑑別診断,術後免疫組織化学的病理組織診断,薬物治療効果判定および再発早期診断などが考えられるが,このためには,体癌に特異的な産生物質が検出するのに十分な量があり,しかもその物質の半減期が短いことが求められる.
今日,腫瘍マーカーとして用いられているものは,ほとんどが正常細胞からも産生されている癌関連物質である.しかし,少しでも特異性のある抗原に対する抗体を求める努力は行われており,摘出癌組織や培養細胞株を免疫原として作成されたモノクローナル抗体から,有望な抗体が選別されつつある.体癌に対する特異的な腫瘍マーカーはいまだ乏しいのが現状であるが,本稿では,これまで比較的関連性があるとされてきたマーカーや現在開発中の新しいマーカーについて,コンビネーションアッセイの有用性を含めて概説したい.
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