理学療法と作業療法 22巻12号 (1988年12月)

特集 リウマチ

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 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチは原因が判然としない慢性の全身性の,消耗性の炎症性の疾患である.全身性であるが,局所つまり関節が優位に侵襲され,特徴的な関節病変を呈する.全身性炎症が持続する限り,進行性の関節破壊が起こり,関節は変形し,関節機能障害が発生する.全身性疾患である慢性関節リウマチは関節機能障害ばかりでなく,関節外病変としてリウマチ結節,リンパ節腫大,血管炎,肺臓炎などが進行した症例に多く認められる.

 慢性関節リウマチ(リウマチ)は寒冷地を中心に世界中に分布し,全人口に対する有病率は日本では欧米とほぼ同様で0.4%で約40万人の患者が存在する.患者は圧倒的に女性に多く女性:男性=3~4:1の割合である.女性における好発年齢は30~50歳である.

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 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチ(以下,RA)は病気自体が進行性であるという性格から,抗リウマチ剤などによる全身管理を十分に行いながら,早い時期よりリハビリテーションを開始して,拘縮,変形をできるだけ予防していくことはたいせつであるが,いったん骨破壊が進行してしまうと,恒久的な機能障害をきたす.そこにRA総合治療の一環として,手術療法が重要な位置を占める理由があり,進行を阻止しようとする手術(滑膜切除術など),機能を改善する目的の手術(人工関節置換術など)があるが,いつそのような手術を行うかのタイミングがもっとも重要な問題であり,その時期が手術の効果の成否に大きな影響を及ぼす.その意味で,RA手術の現状とそのタイミング,さらに手術計画の立てかたなどについて述べてみたい.

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 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチ(以下,RA)は,何らかの原因により免疫異常が生じ滑膜組織内で,炎症を起こし関節の痛み・腫れを主症状として発症する全身性疾患である.

 関節の腫れ・痛みを主症状とする初期から,高度に関節破壊が生じ機能障害が主となる重度機能障害期まで,RAの長い経過の中でわれわれセラピストはリハビリテーション全般においていろいろなアプローチを必要とする.

 RA運動療法の基本となる関節可動域訓練,筋力増強訓練についてもRAの経過,時期により目的・方法が異なってくる.以下,RAのリハビリテーションにおける特色,各時期における関節可動域訓練・筋力増強訓練,また人工関節置換術後における訓練方法について当院における方針・留意点などについて述べる.

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 Ⅰ.初めに

 当科における慢性関節リウマチ(Rhumatoid Arthritis,以下RA)患者への作業療法の内容としてもっとも多いものは,関節保護に関する知識と方法の伝達を主軸としたADL指導である.その実践は,上下肢動作のくふうおよび,時間・空間的視点の転換を含む新しい日常生活法の遂行を促す流れであり,その際,自助具は有用な手段の一つとなる.

 ただし,その導入場面における患者の反応は,「まだ何も特別な器具を使わずに,普通の方法で何とかできている.もう少し状態が変化して必要になったら使いたい.」というものが多いようである.つまり,筆者は,『患者が自助具の目的と有用性を実感して受け入れるための準備段階への働きかけ』は,自助具を作製するのと同様もしくはそれ以上に,重要な作業療法士の業務だと痛感している.

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 Ⅰ.初めに

 さまざまな関節拘縮・痛みに悩むリウマチ患者さんに喜んでもらえる自助具にはいったいどういうものがあるのでしょうか? 患者さんの多様な症状・障害・生活背景・家族・本人のモチベーションなどにより,そのニードは変わってきます.ある一人の人にとって便利なものが,他の人にとってはまったく役にたたなかったり,かえって有害だったりします.

 これまでいろいろな本を参考にいくつか自助具やスプリントといったものを作ってきましたが,なかなかいっぺんでは良いものができないな,というのが私の実感です.(もちろん私自身の無器用さにも起因しているとは思いますが….)何回かの試行錯誤の後,何とか使ってもらえるものができれば良いほうで,ひどいときには,こちらの努力に同情(?)して受け取ってはもらえたものの,家族の介助のほうが楽とばかりにお蔵入りになるケースも少なくありません.仕事の多忙さ・退院後の患者のフォローが充分できない場合などいろいろ原因もあって,作った自助具をついそのまま渡しっぱなしになっていることも多く反省させられます.しかし,その後のチェックの中にこそいろいろ勉強させられることがあり,おろそかにしたくないものだと思います.またそれだけに重宝して長年だいじに使ってくださっていることを見たり聞いたりしたときにはほんとうに嬉しくなってしまいます.ほんとうはそれが日常茶飯事で当たり前のことにならなければいけないのでしょうが….

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 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチ(RA)は慢性,進行性の経過をとる多発性関節炎症状を示す結合組織の疾患であり,その経過のなかで,関節可動域(ROM)の制限,痛み,筋力や耐久性の低下が生じ,それらが日常生活動作(ADL)にさまざまな影響を及ぼしてくる.RAリハビリテーションのなかで,作業療法の役割の一つに自助具の紹介によるADLへの援助があり,適した自助具の紹介はADL能力を向上させるだけでなく,ともすると他者に依存的になりやすいRA患者に自立心をもたせるための手助けともなる.

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 1.初めに

 日本リウマチ友の会では1985年(昭和61年)より事業計画に,「リハビリテーション(以下リハビリ)の充実,障害をひどくしないために―」を目標として掲げている.それというのは,前年に会員の実態調査をした結果,「リハビリをしていない」と答えた会員が46.7%いたこと,そのうえ,その約30%が「する必要が無い」,約28%が「指導してくれる先生がいない」と答えたからである.(『'85リウマチ白書』)

 当会では機関誌『流』,小冊子『リウマチ110番なんでも相談室』などで,正しいリハビリの啓発のため,特集を重ねてきた.しかし,前記の調査結果であり,またリハビリとは手術を受けた人とか,重度の障害が出た人が運動着を着て訓練を受けることという過った考えが,意外に強いことを知って,私たちはリハビリの正しい理解,実行を会の目標にしたのである.

 その年の全国大会では東京大学の上田敏先生に,講演をお願いした.先生はリハビリの定義について「人間らしく生きる権利の回復,すなわち全人間的復権だ」と,感動的なお話をしてくださった.

 そうした人間性をふまえた理想的なリハビリを期待するのは,まだまだ難しい現状ではある.ここでは理学療法,作業療法にかかわる専門の方々に,リウマチ患者すべてにとって,リハビリがどんな時期にもたいせつな基礎療法であることを,指導して欲しいという願いを述べてみたい.

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 1.始まりのとき

 1962年は私の節目の年でした.その春,新卒教諭として母校の中・高校に赴任しました.すぐに手指が腫れてきて,そのときが(後でわかったのですが)リウマチの始まりでした.関節痛や発熱などの症状がばらばらに出ては消えていくので,異常に気付いたのは1年後でした.同じ春に摘み画(つまみえ.布で描くレリーフ)を習い始めました.そしてリウマチと摘み画とは,以来26年の長い付き合いたなってしまいました.

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 今月号で雑誌『理学療法と作業療法』は22年にわたる長い歴史の幕を閉じ,代わって来春からは『理学療法ジャーナル』と『作業療法ジャーナル』という双生児の新雑誌がその後を継いで登場することとなる.

 新卒の理学療法士・作業療法士の中にはこの雑誌が発刊されたころにはまだ生まれてさえいなかった人もいるような遠い昔の話にいつの間にかなってしまったが,発刊の準備のころからかかわってきた者の1人として,この22年を振り返ってみるといろいろな感慨が湧いてくる.

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 理学療法にとって「運動学習」とはどのようなものであろうか.一般に「学習」と呼ばれる経験主義的な学習観がある.それは学習が経験によってある行動がより賢明になることを意味する.この経験とは同じ刺激に対する同じ行動の繰り返しであったりあるいは同種の環境の下での試行錯誤であったりする.より賢明になるとは試みているうちに正解に至ればその行動が繰り返し出現しやすくなるが,失敗した場合は少なくともその行動は出現しにくくなることである.したがって,なかなかできない行動でも何度も同じことを繰り返して練習すればその内に行動が出現しやすくなる.この経験主義的な素朴な学習観は,理学療法の中でもそのまま残っているようである.そして,この学習観は充分に検討されているわけではない.ちなみに,『理学療法と作業療法』誌の索引を引くと,過去20年間に“運動学習”というテーマを直接に取り上げた論文は見当たらない.

 運動の学習においても,単に機械的に運動を繰り返しさえすればよいというものではないことは経験的に知っている.例えば,目隠しをして10cmの線分を引くことを何百回も反復しても上達しないように,練習回数だけで進歩が規定されるわけではなく,必要な情報が入らぬ状態では繰り返して練習しても進歩はみられない.練習するということは,反復の間に熱練した技能行動が生じやすくなるように学習経験をいかに統合するかという問題になる.

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 1.初めに

 講座で「運動学習」を要望した一人である.要望するに当たって,当然ながら思惑はあった.一つは教師としてのかなり個人的なものであるが,セラピストの学校教育の中に運動学習の内容を含むべきと考えたことである.二つ目はセラピストの臨床業務での必要性である.運動障害があって動作を獲得させる場合,セラピストに要求される能力は大きく言って運動の異常を分析して対処できることと,運動を(再)学習させることの二つである.重要性からみると運動学習はその半分を占めると思われるが,セラピストの自己研鑚の努力はほとんど前者に向けられているように思う.三つ目は,運動学習の理論を治療体系の中にはっきり位置づけることができれば,理学療法がより学問的,かつより完成の域に近付くかもしれないという期待感である.

 これらの思惑に沿って本講座を読みながら感じ考えたことを述べてみたい.

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 今年の本誌1月号から11号までに掲載された「講座:運動学習」を読んで感想を書くことになった.リハビリテーションの中に"学習=教育"の視点を持ち込むことの重要性は,私自身かなり以前から認識していたが,11篇の論文を読み終えた今,その感をますます強くしているところである.

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 今から15ないし20年前,片麻痺の運動回復は,残った脳細胞による新たなる学習にほかならないのだと気付いたときから,そして患者に上肢の基本動作練習をさせるとき,患者が好ましくない運動パターンで行うのを,即座に修正すべきなのか,しばらくなすがままにまかせてもよいのかわからず迷っていたときから,そして,子どもにまったくしつけをせず,放任したら良い子に育つのではないかと考え,実行しているという人の話を聞いて疑問を感じたときなど,学習ないし運動学習が行われると,中枢神経系内部にどのような変化が起こるのか,中枢神経系がどのように変化したとき,学習が成立したということになるのか,ということは,私の最大の関心事の一つでした.

 これに最初の回答を与えてくれたのは,engramという概念です.あることがらを行うために必要な神経回路を繰り返し繰り返し使うことによってengramが形成されること.繰り返しある神経回路を使うことにより,その回路の中のシナプスはノブが肥大したり多くの枝分かれを作って,伝達物質の流れがよくなり,ついには反響回路を形成して,われわれがそのことがらをしていないときにもその回路はつねに活動しており,その結果スイッチをいれるだけで,即座に以前覚えた運動を行えるという状態になるということ.例えば,何年も自転車に乗っていなくても,すぐに乗れる,ということです(Eccles,1973).ただし,この反響回路説は最近は否定されているようで,少なくとも長期記憶は反響回路のようなダイナミックなものによるのではなく,物理的なplasticな変化によると考えられているようです2)

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 Ⅰ.初めに

 雇用を通じての障害者の社会統合の促進を使命とする国連の専門機関である国際労働機関(ILO)では,宗教の影響および性差に基づく役割文化の特性から,「アジアの女性障害者は,障害者であるということと,女性であるということで,二重の障害に苦しんでいる人間集団ではないか」という問題意識をもつようになった.

 ILOアジァ太平洋委員会は,そこでアジア6か国,すなわちフィジー,インド,日本,パキスタン,フィリピン,タイを調査対象国として選び,各国1人ずつの調査コーディネーターを委嘱し,1986年から1987年にかけて,共通項目の調査票による調査に臨んだ.ILOが求めた身体障害者に限定しての日本独自の報告書は,英文ですでに出版されているが1),本論文では,精神薄弱者その他を含めた184人につき,本誌に関係のある労働と生活の側面に限定して,原資料を活用しながら,我が国の女性障害者がいかなる生活に支えられて働いているかを明らかにしてみたい.

クリニカル・ヒント

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 作業療法の専門性をどのように明確にしていくかについての議論が高まっている.治療技術の確立にも多大な努力がなされているが,治療計画の立案は職種の性格を明確にするもっとも重要な過程である.プランとしての基本要素を明確にすることによって治療計画の妥当性を高め,またADLからQOLへのニードの変化に対してどのように方略をたてるべきかについて検討を行っている.その一端を紹介し何らかのヒントとなることを期待する.

プログレス

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 (社)日本作業療法士協会は協会発足20周年を経過して新たな飛躍を迎えようとしている.この機にその20年の歩みと今後の課題をまとめる.

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 最初に,先生の御経歴を教えてください.

 私は現在41歳です.理学療法士の資格取得が1974年ですから,14年間この仕事に携わっています.

 イギリス,スイスで働いたことがあります.整形外科や救急外科では臨床治療も行い,またリハビリテーションセンターに勤務したこともあります.

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 我が国の医師国家試験は1946年に始まり,試験内容についてはたびたび,改善の努力が払われてきた.特に,1982年に国家試験改善委員会が発足して以来,活発な議論が交され,その報告書に基づいて,1985年の試験より内容が大きく変化した.一つは,それまで年2回実施されてきた試験を1回にしたことであり,もう一つは試験の内容から難問奇問を減らし,臨床実地に役だつ,プライマリ・ケア的なものを増したことである.試験内容に関しては,出題基準が非常にばらばらであったものが,かなり整理され,さらに出題委員が国家試験の作成に慣れ,また出題基準を充分に理解するためのワークショップが行われるようになり,かなり均質化されてきた.一方,医学教育の改善に関する議論も,単に卒前教育にとどまらず,卒後教育,各専門分科の専門医養生システム,生涯教育に拡大している.その中で,21世紀の医療の質を高めるために,その中核を担う医師すべてに必要とされる最少限の非常に基本的で重要な技能と知識を評価する医師国家試験に改めて注目されてきたわけである.すでに一般新聞紙上でも報道され,ご存じの方も多いことと思われるが,昨年10月発足した医師国家試験出題基準検討委員会(委員長=高久史磨東大教授)の報告書に基づいて,1989年の試験より出題基準が大幅に変化する見通しである.

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 『理学療法と作業療法』賞の選考委員会を代表して今回の準入賞および奨励賞の諸論文について講評のことばを述べることとなった.

 従来はこのようなことは無かったし,今後も必ずしも行うとは限らないので,今回どうして講評を行うことになったのかについてまず述べておきたい.

第13回「理学療法と作業療法」賞・受賞論文

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 Ⅰ.初めに

 最近,従来のリハビリテーション・プログラムでは,体力低下を予防しえないという深刻な反省から,体力を増進させるプログラムの重要性が強調されるようになってきた1).そして,その実証的な研究が脳卒中患者を中心に行われてきており,歩行可能な,あるいは相当活動性の高い患者に対する全身持久力の維持・増進のための科学的なプログラムが,現在,精力的に検討されている2-6)

 これに対して,積極的な運動負荷を課すことのできない,寝たきりに近い重症の患者や障害老人の体力増進のプログラムについては,「座っているだけでも体力低下は防げる」7)として,目標とすべき離床時間の目安が示されないまま,臥床時間の短縮が強調されるにとどまっているのが現状である.

 筆者はこの点に注目し,活動性の低い重度の障害老人の全身持久力に対して,離床がどのような影響をおよぼしているかを検討したので,その結果を報告する.

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 Ⅰ.序論

 リハビリテーション医療の分野でADLのもつ意義は重要である.リハビリテーション医療,特にリハビリテーション訓練の目標は,ADLの自立にある.すなわち,ADL評価は,患者の重症度の把握,訓練方針の決定,予後の予測において最適なテスト法である.大川1)は,ADLとその総合的な評価を中心に,主としてアメリカにおける最近の評価に対する考えかたを紹介している.我が国においても,安藤2),長尾3,4),堂前5,6)らによって,ADL評価成績について,多変量解析を含む種々の統計的解析による結果が報告されている.しかし,ADLを構成する所作活動の範囲は広く,即臨床に応用しうるものは少ない.ADL評価の検査項目は,疾患別・療法別にその内容は限定される.特に理学療法の分野では,杉元7),武政8),によって指摘されたように,ADLテストでは基本動作群の動作分析が重要である.一般に,病院・施設で使用している評価用紙は,該当欄への記入のみで患者の障害像をイメージ的にとらえ難い感がする.一昨年より,当院では汎用パーソナルコンピューターを用いて,患者データの集積およびリハビリテーション回診用の報告書作成を行い,単にデータが机上に山積みされるのではなく,種々の統計処理を行うことで多方面に活用している.脳卒中患者におけるADL評価管理プログラムを作成し,患者のADL変化を多変量グラフ解析法(折れ線グラフ,レーダーチャート,Chernoffの顔形グラフ)を用いて視覚的にとらえ,さらに時系列分析にて個々の症例のADL機能の予後予測を行ってきた.今回,160症例の回復パターンより,任意に10本の回復曲線を算出し,ADL評価・予測図を作成したので報告する.なお,使用言語はBASICであり,機種はPC-9801VM,VXである.

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 Ⅰ.初めに

 近年,急速な人口の高齢化が進み老人問題,特に痴呆が社会問題となってきている.長谷川ら1)によれば,65歳以上の老人の4.8%にみられ,その有病率は加齢に伴って急速に増加している.また在宅の65歳以上の老人のうち痴呆と身体疾患とを合併する者を81.3%認めたという報告がある2).しかし老年痴呆,あるいは脳血管性痴呆の原因の発症機序は現在なお不明であり有効な治療方法も今のところ見いだされていない3).これは,痴呆が非可逆的変化であるためとされる2).このような状況下において,病院,施設などにも入院患者の高齢化,入院期間の長期化が認められる.入院患者の多くは,前述の報告同様脳血管障害による身体障害と痴呆を合併する症例が多い.

 当院においても理学療法や作業療法による身体的,精神的アプローチを行うに際して,理解力の低下,意欲低下,集中力低下,反応が遅いなどの痴呆症状を認め,アプローチが困難となる場合がある.この結果,現状維持さえも困難な場面に出会うことがある.このような問題に対して,治療の一つとしてゲームを中心にグループワークを取り入れる傾向が認められる4~7).諸施設では意欲,集中度,理解力,判断力など数項目でグループワークを評価している5,8).グループワークの効果は諸家の報告のように4,5,8),痴呆の主症状である知的機能の改善はあまり認められないが,随伴精神症状である活動性の低下や意欲低下などは改善の余地があったとされている8).ゲームの中で風船バレーボールは,前庭感覚,視覚,聴覚,固有感覚などの感覚入力を計る活動とされ4),また知的要素はあまり含まれず導入が容易である.

 われわれは風船バレーボールを,身体障害と痴呆を合併する患者に対して,随伴精神症状の改善を目的として行っている.今回,風船バレーボールを行うことにより,風船に対する集中度と反応の速さが改善することに着目した.そして,反応速度を定量評価することを目的として,光刺激に対する反応時間測定装置を作り,反応時間を測定した.この結果,風船バレーボールを一定期間行った後に,反応時間の有意な減少を認めたので報告する.

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 Ⅰ.初めに

 足部,特に距腿・距骨下・距踵舟関節では,底背屈,内外転,回内外の運動が複雑に行われ1),立位,歩行,走行など,人間としてもっとも基本的な移動において直接地面と接して体重を受けている.その中で,他の感覚受容器とともに重心移動,体重支持などの細かい動きを調節する役目をもっている.

 脳卒中片麻痺症例では,共同運動・連合反応の影響で足部に内反尖足が出現することが多い.Brunnstrom stageⅢで共同運動がもっとも強く出現するため,訓練場面では,痙性筋の抑制や正常運動の促通が急務となる.内反尖足は,体幹,骨盤帯,上下肢の各関節肢位,姿勢などと密接にかかわって,下肢への体重負荷量を左右し,訓練上阻害因子として働くことが多い.

 しかし,この内反尖足の程度は,現在ROMテストにより評価されているが2,3),これはあくまで静的場面の可動域についての評価であり,軸の設定など不明確な面が多く,検査者による測定誤差も出やすい.また動的場面における足部変形の程度を客観的に評価することは難しく,経時的変化を捉えるとなるとさらに困難となる.

 訓練による足部矯正が不十分であるとき,装具処方,手術の検討が必要となる.この際の判断は,臨床場面での観察にゆだねるところが多く,特に後足部内反は踵骨回外を伴うため,体重負荷に際し前足部の内反に比べて矯正が難しいことが臨床上経験される.言い換えると,動的場面での後足部内反の客観的評価が可能となれば,装具処方・手術適応判断の一指標となると考えられる.

 近年,姿勢・歩行分析技術が進歩し,さまざまな角度からの検討が加えられているが,測定機器が高価であることや,分析装置の複雑化などの問題点も多い.そこで今回,後足部の簡便な内反評価法(後足部三点計測法)を考案し,「健常成人」,臨床観察評価により判断された「装具処方群」「手術適応群」の内反の程度を数量化し,それらを比較することにより若干の知見が得られたので報告する.

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 この書は,「アキコ」という特殊教育の教員が作業療法士ということば自体が日本に存在しなかったころに,一作業療法士となるため渡米し,その後も作業療法の社会的発展を考え修士,博士へと次々に挑んだ計7年間にわたる留学記である.

 1960年ころ,「留学」ということばはまだたいへんな重さと特別な響きをもっていた時代であった.そのころにコロンビア大学院にフルブライト全額支給大学院留学生として留学したのである.

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 ひとつ,気が楽になったことがある.

 常日ごろ,心がちくちく痛むように悩んでも解決の糸口が見つからなかった.「同じ国に住んでいて,どうしてこんなに違うのだろうか.同じ日本語で考えて,話し行動しているのに」,「同じ職種なのに…」,「同じ世代なのに…」などである.類似点を元にして,そこから発展させた期待は,残念ながら,がっかりさせられる結果になりやすい.

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文献抄録

編集後記 荻島 秀男
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 『理学療法と作業療法』もこの第22巻第12号で終わり,新たに『理学療法ジャーナル』と『作業療法ジャーナル』とに難産分離することとなった.必ずしも明朗な結末ではないが歴史の一ページであることにまちがいはない.その最終号の編集責任にたまたま当たったことは光栄であり『理学療法と作業療法』賞最終回の受賞論文の発表号であるが,特集の内容が充実していて久しぶりにマンネリでないレベルの高いものにでき上がったことに責任を果たした喜びを感じている.リウマチの特集に関して力作揃いであり,御多忙中御執筆くださった先生方に深謝申し上げる次第である.

 「リウマチに対する診断,検査および治療の現状」,「手術の現状とタイミング」,「運動療法―ROMと筋力増強」,さらにリウマチ患者の役にたった自助具など臨床,教育の場に居られる方と,学生で実習に出られる方とすべてに何か得る点のある内容となっている.

基本情報

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理学療法と作業療法
22巻12号 (1988年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9849 医学書院

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