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Ⅰ.初めに
足部,特に距腿・距骨下・距踵舟関節では,底背屈,内外転,回内外の運動が複雑に行われ1),立位,歩行,走行など,人間としてもっとも基本的な移動において直接地面と接して体重を受けている.その中で,他の感覚受容器とともに重心移動,体重支持などの細かい動きを調節する役目をもっている.
脳卒中片麻痺症例では,共同運動・連合反応の影響で足部に内反尖足が出現することが多い.Brunnstrom stageⅢで共同運動がもっとも強く出現するため,訓練場面では,痙性筋の抑制や正常運動の促通が急務となる.内反尖足は,体幹,骨盤帯,上下肢の各関節肢位,姿勢などと密接にかかわって,下肢への体重負荷量を左右し,訓練上阻害因子として働くことが多い.
しかし,この内反尖足の程度は,現在ROMテストにより評価されているが2,3),これはあくまで静的場面の可動域についての評価であり,軸の設定など不明確な面が多く,検査者による測定誤差も出やすい.また動的場面における足部変形の程度を客観的に評価することは難しく,経時的変化を捉えるとなるとさらに困難となる.
訓練による足部矯正が不十分であるとき,装具処方,手術の検討が必要となる.この際の判断は,臨床場面での観察にゆだねるところが多く,特に後足部内反は踵骨回外を伴うため,体重負荷に際し前足部の内反に比べて矯正が難しいことが臨床上経験される.言い換えると,動的場面での後足部内反の客観的評価が可能となれば,装具処方・手術適応判断の一指標となると考えられる.
近年,姿勢・歩行分析技術が進歩し,さまざまな角度からの検討が加えられているが,測定機器が高価であることや,分析装置の複雑化などの問題点も多い.そこで今回,後足部の簡便な内反評価法(後足部三点計測法)を考案し,「健常成人」,臨床観察評価により判断された「装具処方群」「手術適応群」の内反の程度を数量化し,それらを比較することにより若干の知見が得られたので報告する.
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