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Ⅰ.初めに
近年,急速な人口の高齢化が進み老人問題,特に痴呆が社会問題となってきている.長谷川ら1)によれば,65歳以上の老人の4.8%にみられ,その有病率は加齢に伴って急速に増加している.また在宅の65歳以上の老人のうち痴呆と身体疾患とを合併する者を81.3%認めたという報告がある2).しかし老年痴呆,あるいは脳血管性痴呆の原因の発症機序は現在なお不明であり有効な治療方法も今のところ見いだされていない3).これは,痴呆が非可逆的変化であるためとされる2).このような状況下において,病院,施設などにも入院患者の高齢化,入院期間の長期化が認められる.入院患者の多くは,前述の報告同様脳血管障害による身体障害と痴呆を合併する症例が多い.
当院においても理学療法や作業療法による身体的,精神的アプローチを行うに際して,理解力の低下,意欲低下,集中力低下,反応が遅いなどの痴呆症状を認め,アプローチが困難となる場合がある.この結果,現状維持さえも困難な場面に出会うことがある.このような問題に対して,治療の一つとしてゲームを中心にグループワークを取り入れる傾向が認められる4~7).諸施設では意欲,集中度,理解力,判断力など数項目でグループワークを評価している5,8).グループワークの効果は諸家の報告のように4,5,8),痴呆の主症状である知的機能の改善はあまり認められないが,随伴精神症状である活動性の低下や意欲低下などは改善の余地があったとされている8).ゲームの中で風船バレーボールは,前庭感覚,視覚,聴覚,固有感覚などの感覚入力を計る活動とされ4),また知的要素はあまり含まれず導入が容易である.
われわれは風船バレーボールを,身体障害と痴呆を合併する患者に対して,随伴精神症状の改善を目的として行っている.今回,風船バレーボールを行うことにより,風船に対する集中度と反応の速さが改善することに着目した.そして,反応速度を定量評価することを目的として,光刺激に対する反応時間測定装置を作り,反応時間を測定した.この結果,風船バレーボールを一定期間行った後に,反応時間の有意な減少を認めたので報告する.
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