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講座
運動学習・12 講座「運動学習」を読んで
Motor Learning. 12: Some Comments on the Articles of Motor Learning
伊東 元
1
Hajime ITO
1
1東京都老人総合研究所
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology.
pp.803-804
発行日 1988年12月15日
Published Date 1988/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518104156
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- Abstract 文献概要
理学療法にとって「運動学習」とはどのようなものであろうか.一般に「学習」と呼ばれる経験主義的な学習観がある.それは学習が経験によってある行動がより賢明になることを意味する.この経験とは同じ刺激に対する同じ行動の繰り返しであったりあるいは同種の環境の下での試行錯誤であったりする.より賢明になるとは試みているうちに正解に至ればその行動が繰り返し出現しやすくなるが,失敗した場合は少なくともその行動は出現しにくくなることである.したがって,なかなかできない行動でも何度も同じことを繰り返して練習すればその内に行動が出現しやすくなる.この経験主義的な素朴な学習観は,理学療法の中でもそのまま残っているようである.そして,この学習観は充分に検討されているわけではない.ちなみに,『理学療法と作業療法』誌の索引を引くと,過去20年間に“運動学習”というテーマを直接に取り上げた論文は見当たらない.
運動の学習においても,単に機械的に運動を繰り返しさえすればよいというものではないことは経験的に知っている.例えば,目隠しをして10cmの線分を引くことを何百回も反復しても上達しないように,練習回数だけで進歩が規定されるわけではなく,必要な情報が入らぬ状態では繰り返して練習しても進歩はみられない.練習するということは,反復の間に熱練した技能行動が生じやすくなるように学習経験をいかに統合するかという問題になる.
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