総合リハビリテーション 43巻8号 (2015年8月)

特集 リハビリテーション工学と福祉用具開発

今月のハイライト
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 リハビリテーションの臨床場面では,医療機関に限らず,在宅や介護施設などでも種々の福祉用具が利用されています。その目的は,治療の補助や移動支援,介護負担の軽減などさまざまです。最近は,ロボット技術を利用した用具や機器が注目を集めており,今後の日本の成長戦略の一環としても位置付けられ,多くの企業などで積極的な研究・開発が行われています。今回の特集では,各種用具の進歩や今後の開発の方向性を述べていただくとともに,明日からの臨床利用が可能な,有用な福祉用具の紹介もしていただきました。

現状と課題 井上 剛伸
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はじめに

 2006年に国連総会において採択され,昨年わが国が批准した,「障害者の権利に関する条約(Convention on the Right of Persons with DisAbilities)1)」は,障害のあるすべての人によるすべての人権および基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し,保護しおよび確保すること,並びに障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とした国際条約である.この条約は,50条の条文から構成されているが,そのなかにはリハビリテーション工学関連の用語が21か所も記載されている.例えば,ユニバーサルデザイン,支援機器,情報通信システムなどである.このことからもわかるように,リハビリテーション工学や福祉用具は障害のある方々の生活に,深くかかわっており,その認識は国際社会で当たり前となっている.

 一方,本邦における福祉用具開発の1つの契機として,1993年に施行された,「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」2)を挙げることができる.この法律に基づき,新エネルギー・産業技術総合研究機構(New Energy and Industrial Technology Development Organization;NEDO)およびテクノエイド協会にて,福祉用具の開発助成事業がスタートした.当初併せて年間4億円程度の予算規模であり,最高では年間6億円程度(1999年度)まで増加したが,その後予算は減少し,現状ではNEDOのみで助成が行われ,その予算規模は1億円程度となっている.

 福祉用具の市場規模は,日本福祉用具・生活支援用具協会の調べによると,図1のようになっている3).福祉用具法が施行された1993年度以降,介護保険が始まる2000年度までは順調に拡大傾向がみられたが,その後1兆2,000億円程度で横ばいになっている.介護保険で軽度者の利用制限がスタートした2006年度を契機にいったん落ち込みをみせたが,2009年度以降,やや回復がみられている.大まかにみると,ここ10年あまり,ほぼ横ばいといってよい.すなわち,市場はほぼ飽和しているとみて取れる.

 ここ数年で注目を浴びているのが,ロボット介護機器である.これには,年間数十億円の予算が投入され,ロボット技術を活用した福祉用具の開発,実用化,導入促進にかかわるプログラムが実施されている.かかわっている企業は50社を超え,新たな技術開発が積極的に行われ,市場拡大に期待がもたれている.一方,厚生労働省では,障害者自立支援機器等開発促進事業を実施しており,市場規模が小さい福祉用具の開発促進を図っている.

 本稿では,上記の動向について概説するとともに,日本全体でこれらの課題に取り組むためのプラットフォーム構築に向けた取り組みと,利用現場を重視した技術開発(フィールド・ベースト・イノベーション)について紹介することで,当該分野の現状と課題およびその解決策について解説することとする.

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はじめに

 1970年代ごろより世界各国で工学がリハビリテーションの分野に積極的に活用することが試みられた.しかし,当時は,筋電義手や装具の動力化,機能的電気刺激などを除き,自立支援のため機器開発が主であった.近年のセンサーやバッテリーの小型化・コストダウン,制御技術の進歩は,リハビリテーション訓練機器を技術的に高度で複雑なものとし,特にロボットなどの新しい技術を導入できるようになった.本稿では,工学を生かした多くの訓練機器のなかでも,近年,話題が多い,電気刺激,先進的装具,リハビリテーション訓練ロボット,ブレイン・マシン・インターフェース(brain machine interface;BMI)について紹介する.

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はじめに

 本稿では,明日から臨床利用が可能な有用な機種を中心に,現在開発中の機器を含めて紹介する.特に電動車椅子については誌面の都合上,あえてコンセプトモデルや最高級機種を取り上げず,障害者総合支援法の公費支給対象の基準額から大きく逸脱しない,入手しやすい機種を紹介する.

 ここでは,障害者総合支援法の補装具支給基準(以下,支給基準)に準拠した名称を用いた.

コミュニケーション機器 井村 保
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はじめに

 人間が社会で生活していくうえで,他者との協調は不可欠であり,そのためには自己の意思を相手に伝え理解してもらい,また相手の意思を受け取り理解することが必要である.この相互理解,すなわち双方向性の意思疎通がコミュニケーションである.コミュニケーションが成立することで,人は日々の生活において生き甲斐や,社会を構成する一員としての「参加」の機会と自己の役割を見出すことができ,社会で暮らすことにおいて重要な意味をもつことになるといえる.そのため,コミュニケーション自体が社会参加につながる「活動」行為に相当する.

 一般的なコミュニケーションは,まずは,一方からの意思伝達(意思表出)から始まる.つまり,意思表出はコミュニケーションを構成する要素の中で,最も大切な要素の1つとして考え,すべての人にとって,その自由が保障(確保)される必要がある問題として考えなければならない課題である.このとき,音声言語や文字などを介してのバーバルコミュニケーションが一般的である.音声言語や上肢の運動機能の障害により発語や筆記の制限がある場合には,残存する身体機能の残存機能のみでの意思表出は極めて困難であり,テクノロジー(支援技術)の活用により,拡大・代替コミュニケーション(augmentative and alternative communication;AAC)として実現が可能になる1)

 本稿では,意思表出のためのために用いられる支援技術・機器,すなわちコミュニケーション機器(communication aids;CA機器)を対象に,障害の程度に応じた有効な支援機器の特徴と適用例,さらには制度利用の留意点等を解説する.

住宅用支援用具 橋本 美芽
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はじめに

 日本の住宅政策におけるバリアフリー化の取り組みは,高齢化社会の到来とその後のさらなる未曾有の高齢者人口の増加予測を背景に,1995(平成7)年の建設省による「長寿社会対応設計指針」策定と設計マニュアル1)公開から始まった.これは,初めて移動方法・移動能力別に新築住宅で整備するべきバリアフリー仕様が規格化されたもので,住宅において多様な身体状況を想定した住環境の整備と,福祉機器の活用に配慮した仕様の必要性が示された.この指針に示すバリアフリー化の誘導基準を用いて,基準を満たす新築住宅に対して当時の住宅金融公庫融資で割増融資を行い,民間住宅のバリアフリー化を誘導した.

 その後,1999(平成11)年の「住宅の品質確保の促進等に関する法律」制定により,国土交通省は「住宅性能表示基準」2)を示した.この基準は,構造の安定,火災時の安全,高齢者等への配慮等10分野29項目(2005年改訂後)について住宅性能を消費者にわかりやすく示すことを目的とする.高齢者等への配慮に関する住宅性能をバリアフリーの整備程度に応じて5段階で評価,表示を義務付けるものである.この制度の整備により各企業がばらばらに解釈していたバリアフリーの基準が統一された.

 これら政策による住宅のバリアフリー化に伴い,住宅設備機器のバリアフリー仕様,高齢者配慮仕様の開発と製品化が促進された.住宅設備機器については,同居家族との共用が前提であり福祉機器というよりは共用,高齢者配慮といったコンセプトで開発されてきた.従来は特定使用者を想定したタッチパネル文字表示と操作誘導,音声案内などの機能は,今日では住宅用設備機器の標準的な機能・仕様となっている.

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 理学療法士としての臨床現場を離れ,2年あまりが過ぎた.リハビリテーション装置開発という職に就いてからも,病院や施設の訪問を通してリハビリテーション職を中心とした臨床現場の方と接する機会に恵まれている.それらを通じて,改めて現場の方々のコミュニケーション能力の高さに気づかされることが多い.

 まずは挨拶がすばらしい.訪問の際,温かみのある積極的な挨拶が交わされる場面に多く出会う.その挨拶を受けると,緊張がほぐれ,私自身がとてもすがすがしい気持ちになる.そのような挨拶は,不安を抱え込みやすい患者さんにとって大きな安心感を与えるきっかけになると思う.

入門講座 最近の臨床神経生理学・4

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はじめに

 臨床神経生理学の分野で扱われる治療的介入のうち,直接的に中枢神経に働きかけるものとしては,経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;TMS)と経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS)が挙げられる.本稿では,非侵襲的脳刺激(non-invasive brain stimulation;NBS)とも称されるこれら2つを用いた治療的介入について,その現況をふまえて概説する.

入門講座 緩和ケアとリハビリテーション・1【新連載】

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はじめに

 Dietz1)は,「がんのリハビリテーションの分類」として,予防的,回復的,維持的,緩和的リハビリテーションを提示し,すべての病期においてリハビリテーションが果たすべき役割を説いた.しかし,日本リハビリテーション学会から出版された「がんのリハビリテーションガイドライン」2)を含めて,予防・回復・維持の研究・著述に比べ,緩和的リハビリテーションの研究・著述はいまだ少ないのが現状である.予防・回復・維持については先のガイドラインに譲り,本稿では進行期・終末期のがん患者を対象とした緩和的リハビリテーションに相当する部分を中心に述べる.

実践講座 論文に多用される多変量解析法・3

群間で比較する 奥田 千恵子
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群間比較とは

 群間でデータを比較するという研究デザインはシンプルでわかりやすい.実験条件が十分にコントロールされ,均質な遺伝的要件を備えた小動物による基礎実験では,動物の群分けに注意が払われることはほとんどない.群間比較にはt検定やχ2検定が用いられる.人間を対象とする研究も,その延長線上で群間比較ができると考えてしまいがちであるが,対象の多様な背景因子が交絡するなかで特定の因子の効果のみを取り出して比較するのは簡単ではない.

 第1回(総論)で述べたように,何らかの介入を行った群と行わない群でアウトカムを比較するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)では,測定されていない因子や機序がわからない未知の因子も含めてすべての交絡因子を,理論上,群間で均一化することができる.あたかも個々の対象が同じ背景因子をもっているかのように扱うことができる.

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要旨 【目的】本邦における回復期病院では,実施時間の確保や対象者とセラピストへのストレスなどの問題により,constraint-induced movement therapy(CI療法)は積極的に行われていない.そこで,回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者に対して導入しやすいように,麻痺側上肢の集中訓練を1日3時間に短縮して実施するmodified CI療法(mCI療法)のプロトコルを作成し,その効果を検討した.【対象】対象は回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中患者20例である.【方法】1日3時間のmCI療法を10日間実施したmCI群と,従来のリハビリテーションを実施した従来群を,介入前と介入後で麻痺側上肢機能と麻痺側上肢の日常生活における使用頻度について比較検討した.【結果】mCI群は従来群よりも麻痺側上肢機能と麻痺側上肢の日常生活における使用頻度において,それぞれ介入前から介入後にかけて有意な改善が認められた.【結語】今回作成したmCI療法の3時間プロトコルは,回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者に対する訓練法として有用であることが示唆された.

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要旨 リハビリテーション領域のクライエントは,目標を達成するために動機づけられた活動を通して,社会参加や健康関連QOL(quality of life)を向上していくことに重点を置いている.本研究は,達成動機が社会参加や健康関連QOLにどのような影響を与えるか明らかにすることを目的に,先行研究を踏まえた4つの仮説を設定した.地域在住高齢者221名を対象に横断的調査を行い,達成動機,社会参加,健康関連QOLの相関関係と,構造方程式モデリングを用いた因果関係の推定を行った.その結果,達成動機は社会参加や一部の健康関連QOLと正の相関関係にあり,社会参加と健康関連QOLに正の相関が認められた.因果関係の推定では,達成動機から健康関連QOLへの直接効果より,達成動機から社会参加を介した健康関連QOLへの間接効果に高い値が認められた.したがって,4つの仮説に基づく相関や影響が検証され,リハビリテーションではクライエントの達成動機と併せて社会参加へも介入することで,より健康関連QOLを高める支援が行えると考えられた.

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はじめに

 視神経脊髄炎(neuromyelitis optica;NMO)は,1894年にDevicが報告した両側の視神経炎と横断性脊髄炎を主徴とする中枢神経系の脱髄疾患である1).再発性のNMOは女性に多く,しばしば発作的に症状が進行する.NMOの病変部位は,大脳や脊髄,視神経など広範に生じるため,その症状も多彩である.上肢に関係する主な機能障害としては,運動麻痺,痙縮(筋緊張異常),感覚障害,疼痛,有痛性強直性痙攣(painful tonic seizure;PTS)が挙げられる.なかでも運動麻痺や痙縮は,患者の上肢機能に多大な影響を及ぼす.

 上記のような病態に対する治療の1つとして,ボツリヌス(botulinum toxin;BTX)療法が挙げられる.日本神経治療学会の標準的神経治療シリーズでNMOの慢性期後遺症の重度痙縮にBTXは有効であるが,脱力も高度なため適応となる症例が少ないと記載されている2).近年,脳卒中患者へのBTX投与の報告は散見するが,NMO患者へのBTX投与とリハビリテーションは今までに報告されていない.BTX療法は,中枢神経系の障害による異常筋緊張およびそれに伴う受動的機能の低下に対する治療法として,高いエビデンスを有している3)

 しかしながら,BTX療法単独では,麻痺手の運動機能や日常生活における麻痺手の使用頻度の改善は得られにくく4),何らかの運動療法を併用する必要性が示唆されている5)

 今回,NMOの再発で入院となった患者を担当した.患者は急性期の免疫吸着療法,ステロイドパルス療法で軽快したが左上肢の痙縮とPTSは残存したためにその治療目的でBTXを投与された.作業療法ではBTX投与後に能動的機能の向上を目的としてconstraint-induced movement therapy(CI療法)6)のコンセプトを利用した上肢の集中的訓練を実施し,上肢機能と日常生活動作(activities of daily living;ADL)に改善を認めたので以下に報告する.

集中講座 臨床研究倫理ことはじめ・第20回

実践編(その8) 神山 圭介
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 新年度に入り,読者の皆さんの所属施設でも,すでに新たな「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(以下,指針)に基づく倫理審査が始まっていることと思います.今回の指針改訂では,公開から施行までの周知期間がわずか3か月強だったため,倫理審査を申請する側の研究者もさることながら,審査する側の倫理審査委員会や研究機関も,厳しいスケジュールで相当な苦労があったのではないでしょうか.モニタリングと監査に関する規定の施行は,半年遅れて今年10月からですが,これを控えた準備も待ったなしの状況で,関係者は気の休まらない日々が続きそうです.

 今回はインフォームド・コンセント(IC)に関する発展編として,代諾や,これを補完するインフォームド・アセント(IA)の質問を取り上げます.

連載 身体障害者診断書Q&A

パーキンソン病の診断書 高岡 徹
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Q1 発症からどの程度経過をみてから診断すべきですか.また,再認定はつけるべきですか.

A1 脳血管障害などの障害認定の時期は,麻痺の回復や歩行能力の改善などを考慮して,発症から認定までに一定の観察期間が必要です.一方,パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症,脊髄小脳変性症などのいわゆる難病は,病状が進行することはあっても,回復することは難しいです.したがって,確定診断がつけば,早期に認定することが可能ではないかとも考えられます.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和41年に大江健三郎が発表した『作家自身にとって文学とはなにか?』(『大江健三郎全作品6』,新潮社)は,大江が自らの病理と創作の関係を語った病跡学的な論考として,注目に価する作品である.

 この作品の中で,大江は「作家自身にとっての小説の有効性」に触れて,この2年間,1つの長編小説を書く過程で,「しぶとく根深い,憂鬱症のごときもの」が生じたが,「自分がいま,なにごとか狂気めいたものの蹂躙から自分をまもることができているとすれば,やはりそれは僕が,この小説を書きつづけているからだ」として,小説を書くことで狂気が予防できるという考えを示している.

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 「LUCY/ルーシー」(監督/リュック・ベッソン)に依拠するなら,高い能力をもちながらも社会性の障害あり,とみなされる自閉症スペクトラムの人々は,人類が希求する進化の姿であると解釈できる.本作によれば,現代人は脳機能の10%程度しか使っていない.ちなみに他の動物は3〜5%,イルカは20%である.

 ヒロインのルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は,台北のホテルでマフィアの闇取引に巻き込まれ,運び屋として腹部に袋詰めにされたCPH4と称する薬物を埋め込まれる.ところが,粗暴な連中に腹部を蹴られ,薬物が袋から漏れ出し,体内に飛散.これによって脳機能の使用率が上昇することになる.

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1.電動ベッド上での褥瘡予防

 神奈川リハビリテーション病院作業療法科

  佐々木 貴

 電動ベッドの背上げ機能使用時における臀部の前方へのズレと骨盤の傾斜角度に着目し,クッションの有効性や臥位のポジションについて検討した.〔目的〕電動ベッドの背上げ使用時により生じる臀部の前方ズレと骨盤傾斜角度を比較し,適切な背上げ方法を明らかにすること.〔被験者〕健常者の150(♀),159(♀),170(♂),179(♂)cmの4名.〔計測方法〕① ズレ距離,② 骨盤傾斜角度.〔背上げ前の条件〕各身長で膝上げ機能やクッションの使用・臥位の位置など,共通する4つの条件で実施.〔考察および結論〕今回の実験から,背上げ時に臀部の前方ズレを軽減し,骨盤がより起きるためには,① 臥位のポジションはヘッドボードに近い位置,② クッションの使用が重要であることが明らかになった.病棟や在宅において能動的に活動できる機会を増大させるために,電動ベッドの背上げ使用に対して十分に配慮することが必要である.

障害者白書2015年版決定

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 本書は,「障害児の教育権保障」を論考の柱として,研究者や教師(退職者を含む),保護者など18名が執筆し,他に3名がコラムを寄せている.教育権保障において歴史的な転換点となった養護学校義務制と周縁部の運動や実践を考察するとともに,今日の特別支援教育における実践上の課題を明らかにしながら,障害のある子どもたちの教育の将来展望を示した労作である.

 2014年2月,本邦は障害者権利条約を批准し,文部科学省は新たに「インクルーシブ教育システム」の推進を打ち出している.この「システム」は教育全体の変革を促すものであるが,その道筋はまだ不明である.本書には,今後の教育において何を大切にし,何に取り組むべきかが示唆されている.

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文献抄録

次号予告

編集後記
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 わが家のお墓があるのは小さな漁師町.陸の孤島のようなところ(実際に昔は船でしか行けなかったとか……)です.その町並みは昔から全然変わっていません.海と山に挟まれた狭い斜面に集落がひしめき,人がすれ違うのがやっとの細い迷路のような路地.足元を横切る弁慶蟹をよけながら石畳の階段を登っていった頂上にお寺があり,そのさらに上に墓地が広がっています.長い階段をふーふー言いながらたどりついたお寺の境内から見る景色……集落の屋根屋根とその先の青い海……本当に絶景です.

 懐かしい町並みを眺めながらふと思いました.足腰の弱ったお年寄りはどうしているのだろう…….この石畳と階段を車椅子が通るのはまず不可能でしょう.足の悪いお年寄りはお墓参りどころか家から出ることも難しいのが現実です.町のホームページによると,車椅子や担架の方を,3〜4人で抱えて,車までの移動をお手伝いする有償ボランティアを募集しているようでした.しかし,若い人が少ない過疎の町,十分な人数を集めるのはなかなか難しいのでは?という気がします.車椅子,介護ロボットのますますの進歩を切に願います.

基本情報

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総合リハビリテーション
43巻8号 (2015年8月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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