Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
大江健三郎の『作家自身にとって文学とはなにか?』—創作の発症予防作用
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.782
発行日 2015年8月10日
Published Date 2015/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200336
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昭和41年に大江健三郎が発表した『作家自身にとって文学とはなにか?』(『大江健三郎全作品6』,新潮社)は,大江が自らの病理と創作の関係を語った病跡学的な論考として,注目に価する作品である.
この作品の中で,大江は「作家自身にとっての小説の有効性」に触れて,この2年間,1つの長編小説を書く過程で,「しぶとく根深い,憂鬱症のごときもの」が生じたが,「自分がいま,なにごとか狂気めいたものの蹂躙から自分をまもることができているとすれば,やはりそれは僕が,この小説を書きつづけているからだ」として,小説を書くことで狂気が予防できるという考えを示している.
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