Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
視神経脊髄炎(neuromyelitis optica;NMO)は,1894年にDevicが報告した両側の視神経炎と横断性脊髄炎を主徴とする中枢神経系の脱髄疾患である1).再発性のNMOは女性に多く,しばしば発作的に症状が進行する.NMOの病変部位は,大脳や脊髄,視神経など広範に生じるため,その症状も多彩である.上肢に関係する主な機能障害としては,運動麻痺,痙縮(筋緊張異常),感覚障害,疼痛,有痛性強直性痙攣(painful tonic seizure;PTS)が挙げられる.なかでも運動麻痺や痙縮は,患者の上肢機能に多大な影響を及ぼす.
上記のような病態に対する治療の1つとして,ボツリヌス(botulinum toxin;BTX)療法が挙げられる.日本神経治療学会の標準的神経治療シリーズでNMOの慢性期後遺症の重度痙縮にBTXは有効であるが,脱力も高度なため適応となる症例が少ないと記載されている2).近年,脳卒中患者へのBTX投与の報告は散見するが,NMO患者へのBTX投与とリハビリテーションは今までに報告されていない.BTX療法は,中枢神経系の障害による異常筋緊張およびそれに伴う受動的機能の低下に対する治療法として,高いエビデンスを有している3).
しかしながら,BTX療法単独では,麻痺手の運動機能や日常生活における麻痺手の使用頻度の改善は得られにくく4),何らかの運動療法を併用する必要性が示唆されている5).
今回,NMOの再発で入院となった患者を担当した.患者は急性期の免疫吸着療法,ステロイドパルス療法で軽快したが左上肢の痙縮とPTSは残存したためにその治療目的でBTXを投与された.作業療法ではBTX投与後に能動的機能の向上を目的としてconstraint-induced movement therapy(CI療法)6)のコンセプトを利用した上肢の集中的訓練を実施し,上肢機能と日常生活動作(activities of daily living;ADL)に改善を認めたので以下に報告する.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.