総合リハビリテーション 39巻2号 (2011年2月)

特集 転倒予防とリハビリテーション

今月のハイライト
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 高齢化社会を迎えているわが国において,リスクマネージメントの観点から,転倒予防はきわめて重要なテーマです.本特集では,リハビリテーションに関する転倒予防に実際に取り組んでいる,もしくは研究なさっている各分野の先生方に,それぞれの概要や実績,今後の課題,展望などについて,ご解説いただきました.

現状と課題 猪飼 哲夫
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はじめに

 転倒は人類が二足歩行になったときからみられる現象であるが,転倒への関心や予防について取り上げられるようになったのは,ごく最近のことである.転倒には多くの定義が存在するが,一般には,本人の意思からではなく地面(同一平面)または低い面に体が倒れるとするGibsonの定義が用いられている.わが国では20%前後の地域高齢者が1年間に転倒する.女性のほうが男性よりもやや転倒率は高く,老人ホームなどの施設入所高齢者では,転倒発生率は10~40%と高い.転倒の5~10%に骨折が生じ,大腿骨頸部骨折は全転倒のうち1~2%である.日本整形外科学会の全国調査では,大腿骨頸部骨折の受傷原因の74%は立った高さからの転倒であった1).転倒後,外傷を伴わなくても転倒恐怖などの転倒後症候群となり,家に引きこもって活動範囲を狭めてしまうことがあり問題となっている.

 平成19年度の国民生活基礎調査によると,介護が必要となる原因として,転倒・骨折は脳血管障害,認知症,高齢による衰弱,関節疾患についで第5位であった.転倒による社会的・経済的損失は大きく,1年間の転倒による医療・介護費用は7,200億円と推定される2).本稿では,高齢者の転倒要因について説明した後,欧米およびわが国における転倒予防の介入法と効果検証について概説する.

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はじめに

 厚生労働省は2001年を「患者安全推進年」と位置づけ,総合的な医療安全対策を推し進めることを表明した.これにより,各医療機関における安全対策の推進や医療安全に関する研究の推進(インシデント事例の分析,改善方策の策定など)が広がり,産業医科大学病院(以下,当院)においても医療事故防止の対策が図られている1)

 当院におけるインシデント報告のなかでも,転倒・転落(以下,転倒)に関するインシデント件数は,投薬に関するインシデント件数とならんで上位を占めており,転倒予防のための対策強化が転倒予防ワーキンググループ(WG)を中心に行われている.本稿では,転倒予防の取り組みについて,当院の組織とシステム,対策および転倒事故発生時の対応について紹介する.

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はじめに

 回復期リハビリテーション病棟には,脳血管疾患,整形外科疾患,廃用症候群などの高齢患者が多く入院している.入院中のリスクとしては,全身状態の悪化,感染症,転倒・転落,誤嚥・窒息,患者の取り違え,離院・離棟などが挙げられる1).転倒・転落は重篤な結果を引き起こす可能性があり,リハビリテーション医療における主要なリスクである2).なかでも,回復期リハビリテーション病棟に入院中は,意識障害,身体機能障害,高次脳機能障害の改善に伴い活動が高まり,activities of daily living(ADL)が大きく変化する時期である.そのため,特に転倒が起こりやすい.転倒による受傷としては大腿骨などの骨折が多いが,回復期リハビリテーション病棟には抗血小板薬や抗凝固薬を服用している脳梗塞患者が多数入院しているため,頭部打撲による頭蓋内出血にも注意が必要である.

 このような重大なアクシデントでは患者が不利益を被るため,事故防止・安全管理の取り組みが日本全国の医療現場で行われている3).この背景には,「患者に安全な医療を提供する」という目的がある一方,「増加する医療訴訟に対応する」という目的があるのも否めない.医療事故が起きた場合,医療側としては対話で解決に導きたいが,その結果によっては医療訴訟になる可能性がある.連日のようにマスメディアで報道される医療事故や医療訴訟のニュースを見聞きすると,医療者はとても他人事とは思えず,身を固くしてしまう.

 動けるようになることが目的の回復期では,当然,転倒リスクが高まる4).「行動制限をできるだけ行わず,転倒事故なく安全に入院生活を過ごす」という難しい課題が,回復期リハビリテーション病棟の安全管理に突き付けられている.本稿では,まず転倒事故に関する医療訴訟例を紹介し,その次に西広島リハビリテーション病院(以下,当院)の転倒の現状と対策を述べる.なお,本稿で用いる「転倒」には,転倒と転落の両者を含んでいる.

地域における取り組み 山田 実
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はじめに

 65歳以上の高齢者の3人に1人は,1年間に1回以上転倒することが報告されている1).移動能力が低下すれば,転倒頻度は高まり,Timed Up and Go Test(TUG)15秒以上の高齢者になると,2人に1人は1年間に1回以上転倒する.このように「転倒」というと,非常に虚弱な高齢者を思い描くが,一方でわれわれが行った調査では,TUGを8.3秒以内に遂行するような,高い移動能力を有している高齢者であっても,5人に1人は1年間に1回以上転倒することがわかった.表1に2001年にアメリカ老年医学会が報告した転倒のリスク要因を示す2).これをみれば,虚弱な高齢者で転倒リスクが高まるという印象を受ける.しかし,このような疫学調査には落とし穴があり,前述のような移動能力別や年代別の調査ではないため,どうしても高齢者の身体能力がリスク要因であると捉えられがちである.つまり,表1のようなリスク要因は,身体機能が低下した高齢者の転倒は予測できても,身体機能が比較的維持されている高齢者の転倒予測には適していない.しかし,介護予防等を念頭に置いた場合,虚弱高齢者のみならず,比較的身体機能の高い高齢者の転倒予防も重要な取り組みになる.

 われわれは,地域で高齢者の転倒を予防するに当たり,まずは身体機能レベルに応じた転倒リスク要因の検証,そして,各機能レベルに応じた有用な運動介入方法の開発を目指している.本稿では,このような取り組みを紹介しながら,地域における転倒予防のあり方を考えてみたい.

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はじめに

 転倒や転倒による損傷は,患者の生活機能を後退させ,リハビリテーションへの意欲を低下させる原因となる.そのため,予防が重要であり,さまざまな職種が転倒予防に携わっている.看護師は「傷病者や褥婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者」(昭和23年法律第203号)であり,療養上の世話は,「療養中の患者または褥婦に対して,その症状に応じて行う医学的知識および技術を必要とする世話」1)のことである.看護師にとって転倒予防は,患者が安全に療養できるための看護援助と位置づけられている.

 最近は,施設内に医療安全委員会が設置されたり,医療安全対策マニュアルが作成されている.転倒予防もそのなかに含まれており,障害物を置かないといった標準的な予防方法が示されている.しかし,患者の転倒リスクはさまざまであり,それらは,周囲の環境と患者の行動の相互関係により,絶えず変化する.療養生活のなかにおいては,そのリスクを見極め,リスクに応じた看護介入をする必要がある.

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 私の専門は社会学で,医療系の資格は何一つもっていないが,これまでに医療や福祉に関心をもって,主にインタビューや参与観察を合わせたフィールドワーク調査をもとに文章を書いてきた.この過程で実にさまざまな文脈において「リハビリテーション」との出会いがあったので,今回,改めてそれらを思いだしつつ記してみたい.

 まず最初の「リハビリテーション」との出会いは,「チーム医療」という文脈においてである.従来の社会学において医療者同士の関係性は,権力論や組織論で論じられることが多く,医師とその他の職種は支配―被支配の構図で捉えられてきた.したがって,医療界でチーム医療に関心が高まってきている時,この構図とは別の医療者同士の関係性が描けるのではないかと思い,それを検証すべく調査を行った.そして医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などの多職種が協働するリハビリテーションこそ,まさにチーム医療の場であるという認識が現場で共有されていることを知ったのである.

講座 加齢とアンチエイジング・第2回

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はじめに

 加齢による脳機能の低下は,避けることのできない生物学的現象である.とりわけ,高次の認知機能を司る前頭前野はその影響を受けやすく,前頭前野を中枢とする実行機能は,加齢により低下しやすい.運動が加齢に伴う身体・心肺機能の低下を抑制することは周知の事実であるが,近年,運動条件によっては認知機能の維持・改善にも有効であることがわかってきた.本稿では,運動が脳機能に与える影響を,実行機能を中心に概説し,そのメカニズム,そして認知機能を向上させる運動条件に対して,現在まで明らかになっている知見を述べる.

実践講座 地域連携パス・第2回

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はじめに

 千葉県は,1960年代から1970年代の高度経済成長期以降,東京都と隣接する地域を中心に人口が急増し,現在の人口は約620万人,全国第6位である.一方,県内に医学部を有する大学は1つしかなく,これも1987年に定員が削減され,結果として,県の人口急増に医師数が追いつかない状況が続いている.本県の人口10万人に対する医療施設従事医師数は161.0人で,全国第45位である1)

 1985年の第一次医療法改正に伴い,都道府県は「地域医療計画」を導入し,公的病院に加えて私的病院にも病床規制が行われることとなり,基準病床数を超える増床は認められなくなった2).そのため現状では,人口10万人に対する病院病床数は922.7床で,医師数と同様に全国第45位である3).本県は,医師数,病床数ともに全国平均を大きく下回っている.

 一方,県の総人口に対する65歳以上人口の割合である高齢化率は,2005年に17.5%と全国で5番目に若い県であったが,団塊の世代が高齢期を迎える2015年には26.2%と,約4人に1人が高齢者となる見込みである4).この10年間の高齢者人口の増加率は50.6%と予想され,埼玉県に次いで,全国第2位である4)

 今後の急速な人口の高齢化に伴い,医療需要が増加することは十分に予想されるが,対応すべき医師数,病床数が共に全国ワースト3位という医療状況では,医療機関の役割分担と相互の連携を図ることが喫緊の課題と考えている.

 医師不足による医療提供体制の弱体化は全国各地でみられ,医療機関の役割分担と連携の重要性が医療関係者の共通認識となり,連携のツールとして「地域医療連携パス」が地域の病院を中心に導入されている5)

 本県では,千葉県医師会,関係病院などとの協働により,全国に先駆けて,がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病(以下,4疾病)に係る全県共用型の地域医療連携パスとして「千葉県共用地域医療連携パス(例示モデル)」6)(以下,千葉県共用パス)を作成し,2009年4月から運用を開始した.

 本稿では,千葉県共用パスの作成に至る経緯および現状と今後の課題などについて述べる.

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要旨:〔目的〕本研究の目的は,脳卒中患者の障害物跨ぎ動作が認知課題の同時付加により受ける影響を調査し,その影響の大きさを地域高齢者と比較することである.〔対象〕対象は,歩行可能な脳卒中患者20例,および地域高齢者20例であった.〔方法〕課題は歩行路に設置した障害物を跨ぐこととし,動作の失敗数,空間的・時間的指標について,跨ぎ動作単独課題(single-task)と認知課題を同時付加した二重課題(dual-task)の2条件にて群内・群間比較を行った.〔結果〕dual-task下では脳卒中患者6例,地域高齢者3例が動作に失敗した.空間的指標では跨ぎ後の障害物-踵間距離の減少が両群共に認められた.時間的指標では踵接地から障害物クリアランスまでの時間およびストライド時間の増加が両群で認められた.dual-taskによる変化量は,すべての時間的指標において脳卒中患者のほうが大きかった.〔結語〕脳卒中患者の障害物回避動作はクリアランス後に障害物を踵で踏みつける危険性が高く,dual-task下でその傾向が強くなることが示唆された.

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要旨:〔目的〕加齢に伴って骨格筋にはさまざまな変化が生じるが,今回,持久性トレーニングが老齢期の骨格筋に与える影響を機能的特性と形態学的特性の両面から比較し検討した.〔対象・方法〕老齢期ラットのヒラメ筋と長趾伸筋を対象筋として,トレッドミル走後に筋張力測定と組織化学分析,生化学分析を実施した.〔結果〕運動群の両筋で単位断面積当たりの単収縮張力が低下していた.筋線維横断面積はヒラメ筋のfast-twitch oxidative glycolytic線維でのみ有意に増大し,中心核線維出現率もヒラメ筋で有意に増加していた.また,ミオシン重鎖アイソフォーム構成比においてはトレーニングによる有意な変化は認められなかった.〔結語〕このことから,トレーニングにより引き起こされた筋損傷の回復が足関節の底屈に作用するヒラメ筋での形態学的特性の一部に限定されたことから,両筋ともに機能的特性での減退を招いたものと示唆された.

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要旨:〔目的〕転倒による大腿骨頸部骨折症例の膝伸展筋力から,杖歩行自立を判別する精度と,そのカットオフ値を明らかにする.〔対象〕転倒による大腿骨頸部骨折の女性39例(平均年齢75.2±9.7歳)であった.〔方法〕ROC曲線で,杖歩行自立を判別する膝伸展筋力のカットオフ値を求めた.膝伸展筋力はCYBEX社製Cybex Ⅱ+®を用い,60deg/secで測定した.歩行能力は,院内移動(約300m)を杖で自立した症例を杖歩行自立とした.〔結果〕健側膝伸展筋力は曲線下面積0.91(漸次有意確立p<0.01),カットオフ値0.83Nm/kg(感度90%,特異度79.3%,正診率82.1%,陽性適中率60%,陰性適中率95.8%)であった.患側膝伸展筋力は曲線下面積0.95(漸次有意確立p<0.01),カットオフ値0.54Nm/kg(感度100%,特異度85.7%,正診率89.5%,陽性適中率71.4%,陰性適中率100%)であった.〔結語〕転倒による大腿骨頸部骨折症例の膝伸展筋力は杖歩行自立の判別に有用で,運動療法プログラム作成の指標になると思われた.

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はじめに

 ギランバレー症候群(GBS)は,自己免疫機序により急性発症する多ニューロパチーであり,その障害は,四肢・体幹の筋力低下,感覚障害,呼吸障害,嚥下障害,自律神経障害と多岐にわたる1).従来,予後良好と考えられていたが,オランダの調査では,発症後1年で著明な回復を示し,33%が完治する一方,49%が深刻な障害を残すとされた2).また,スウェーデンの調査では,2年経過しても50%以上の患者で運動・感覚障害が残存する,と報告されている3)

 GBSにおける急性期リハビリテーションの意義は廃用症候群の予防にある.回復後の機能阻害因子のなかで関節拘縮,特に手指の拘縮が問題となることから,早期より拘縮の予防には重点を置くべきであるとされている.回復期,慢性期には,重症度や経過,病期を把握し,身体機能の的確な評価のもとに機能回復を促し,日常生活活動(ADL)を獲得させ,社会復帰につなげることが重要である.

 GBSの手指機能障害に対する装具療法については,渉猟し得た範囲では,発症8か月後より良肢位保持や母指対立位保持を目的とした装具を使用し,発症後2年頃より母指の対立位保持と軽量物の把持が可能となった症例の報告があるのみである1).手指機能が障害されると,食事,整容においても介助を要する状況になり,著しくQOL(quality of life)を低下させる.そのため,装具を使用して,手指の機能低下を最小限にとどめることや,機能を代償して作業能力を高めることが求められる.

 GBSは多ニューロパチーであるが,単ニューロパチーである橈骨神経麻痺障害にはカックアップスプリント,正中神経障害には対立装具の使用,また良肢位保持目的のスプリントの有用性が報告されている4)

 今回,従来からの関節可動域訓練,筋力訓練に加えて,症例の機能に応じた目的の異なる3種類の装具の併用により,一定の効果が得られた2例を経験したので,考察を加えて報告する.

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要旨:地域リハビリテーション体制の一端を明らかにするために,大阪府内における身体障害者福祉センターB型等の30施設について,郵送によるアンケートを行い,人員配置,施設概要などについて調査した.〔結果〕管内施設のセラピストの配置人数は全国と比較して少なめで,広く薄く配置されているという実態がみられた.大半の施設は,地域活動支援,創作活動,機能訓練を中心とした身体障害者支援の流れを汲む総合的なサービス実施体制を継続していた.訓練に傾注した体制の施設群もある一方で,介護員配置により生活介護にシフトする施設群も少数ながらみられた.施設の理学療法士数は機能訓練の実施状況と,また看護師数は生活介護の実施状況との関連が大きかった.〔結語〕施設体制に専門職種の配置(数)が与える影響は少なくなく,地域リハビリテーション体制整備にあたっては専門職種の配置の工夫が重要であると考えられた.

連載 症例による座位保持装置の紹介

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 脳性麻痺(CP)を対象とした座位保持装置は1980年代前半から急速に進歩し,特に1990年に施行された補装具の制度によってモジュラー型のように症状や成長に合わせて調整できる製品や,身体の形状に合わせて成型したモールド型などの製作技術を取り入れた座位保持装置が普及していった.CPの症状は多様であり,同じ痙直型であっても使用者の体型,筋緊張,関節可動域などの条件によって全く違った構成の座位保持装置が適用される.本稿では,痙直型CP児に座位保持装置を適合させるためのポイントを整理し,実際の適合例を紹介したい.

連載 リハビリテーション関連のHP紹介

福祉機器関連 加藤 徳明
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 福祉機器(福祉用具)とは,「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう」(福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律,1993年5月).本稿では,福祉機器関連のホームページ(HP)について紹介する.

連載 印象に残ったリハビリテーション事例

永遠なるもの 内 昌之
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灯が消えるとき

 深見草の咲き乱れる季節に一通の訃報が届き,私の一人の恩人が闘病生活の末,帰らぬ人となったことを知らされた.数日後,千葉県の木更津市で執り行われた通夜には,故人を惜しみたくさんの方々が悲痛な面持ちで焼香され,志半ばの余りにも早い旅立ちに,言葉にならぬ遣り切れぬ気持ちを抱いているのが痛々しく伝わった.

 通夜の席を後にして東京湾横断道路を西に走り,羽田空港に降りる旅客機の灯が列をなして上空の低いところで車を追い抜いてゆくなか,私はその方が亡くなったということがどうにも理解できず,今も間近にいらっしゃるようなたいへん不思議な気持ちであった.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 1866年に発表されたドストエフスキーの『罪と罰』(米川正夫訳,河出書房新社)は,主人公の青年ラスコーリニコフが,金貸しの老婆を殺害するという話だが,この犯罪には主人公の自己特別視という問題が含まれている.

 ラスコーリニコフが自首する直前,恋人のソーニャに打ち明けた話によれば,彼は「自分も皆と同じようなし(・)ら(・)み(・)か,それとも人間か」を確かめるために人を殺したのだという.ラスコーリニコフは,「ぼくが殺人を犯したときに,必要だったのは金じゃない」として,「おれはふるえおののく一介の虫けらか,それとも権(・)利(・)を持つものか」を知るために人を殺したのだと語る.人類を二分して,法を犯す権利をもつ少数のエリートと,それに従う大多数の群衆とに分けて考えていたラスコーリニコフは,自分がエリートであることを証明するために,人を殺したと主張するのである.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 反社会性人格障害者が権力の座につけば,当然ながら暴君になる.「十三人の刺客」(監督/三池崇史)の敵役である明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)がこれに該当する.

 思い余ってその非道を切腹という手段で告発した者がいれば,穏便に処理するという方針を聞き入れず,自ら弓を引いて,その者の5歳の孫も含めて一族郎党を容赦なく殺すし,厳しい年貢の取り立てに困り果てた農民が一揆を起こせば,やはり,首謀者の家族を娘一人除いて皆殺しにする.娘は,両手足と舌を切り落とされ,性の玩具となる.参勤交代の際,他藩領内で泊をとれば,手伝いに動員されていた若妻を強姦.その夫も刺し殺す.

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文献抄録

投稿規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

次号予告

編集後記
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 1月号から講座「加齢とアンチエイジング」の連載が始まりました.高齢社会では興味のつきないテーマです.本号までに,「老化と寿命のしくみ」,「運動とアンチエイジング」について掲載してきました.今後は脳神経,血管のアンチエイジングに関する論文を予定していますので,ぜひご一読ください.

 ところで「ウィズエイジング」という言葉もありますが,さまざまな文脈から推察すると,「アンチ~」は身体機能,「ウィズ~」は生活スタイルを指すときに使われることが多いようです.これが生活スタイルまでアンチエイジングになってしまうと,無理な若作りになってしまいます.昨今「大人かわいい」ファッションスタイルが流行っていますが,たまに中高年で娘世代と同じような格好をしている人をみかけます.見た目で判断するわけではありませんが,「この人,ピーターパン症候群なのか」とか「かわいい文化もここまで進化したか…」と考えてしまいます.個人的にはある程度の年齢になったら若さより貫録があるほうがいいと思うのですが.

基本情報

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総合リハビリテーション
39巻2号 (2011年2月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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