Japanese
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特集 転倒予防とリハビリテーション
現状と課題
Strategy for fall prevention:the present state and problems.
猪飼 哲夫
1
Tetsuo Ikai
1
1東京女子医科大学リハビリテーション科
1Department of Rehabilitation Medicine, Tokyo Women's Medical University
キーワード:
転倒予防
,
バランス訓練
,
運動介入
Keyword:
転倒予防
,
バランス訓練
,
運動介入
pp.109-114
発行日 2011年2月10日
Published Date 2011/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101961
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はじめに
転倒は人類が二足歩行になったときからみられる現象であるが,転倒への関心や予防について取り上げられるようになったのは,ごく最近のことである.転倒には多くの定義が存在するが,一般には,本人の意思からではなく地面(同一平面)または低い面に体が倒れるとするGibsonの定義が用いられている.わが国では20%前後の地域高齢者が1年間に転倒する.女性のほうが男性よりもやや転倒率は高く,老人ホームなどの施設入所高齢者では,転倒発生率は10~40%と高い.転倒の5~10%に骨折が生じ,大腿骨頸部骨折は全転倒のうち1~2%である.日本整形外科学会の全国調査では,大腿骨頸部骨折の受傷原因の74%は立った高さからの転倒であった1).転倒後,外傷を伴わなくても転倒恐怖などの転倒後症候群となり,家に引きこもって活動範囲を狭めてしまうことがあり問題となっている.
平成19年度の国民生活基礎調査によると,介護が必要となる原因として,転倒・骨折は脳血管障害,認知症,高齢による衰弱,関節疾患についで第5位であった.転倒による社会的・経済的損失は大きく,1年間の転倒による医療・介護費用は7,200億円と推定される2).本稿では,高齢者の転倒要因について説明した後,欧米およびわが国における転倒予防の介入法と効果検証について概説する.
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