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はじめに
ギランバレー症候群(GBS)は,自己免疫機序により急性発症する多ニューロパチーであり,その障害は,四肢・体幹の筋力低下,感覚障害,呼吸障害,嚥下障害,自律神経障害と多岐にわたる1).従来,予後良好と考えられていたが,オランダの調査では,発症後1年で著明な回復を示し,33%が完治する一方,49%が深刻な障害を残すとされた2).また,スウェーデンの調査では,2年経過しても50%以上の患者で運動・感覚障害が残存する,と報告されている3).
GBSにおける急性期リハビリテーションの意義は廃用症候群の予防にある.回復後の機能阻害因子のなかで関節拘縮,特に手指の拘縮が問題となることから,早期より拘縮の予防には重点を置くべきであるとされている.回復期,慢性期には,重症度や経過,病期を把握し,身体機能の的確な評価のもとに機能回復を促し,日常生活活動(ADL)を獲得させ,社会復帰につなげることが重要である.
GBSの手指機能障害に対する装具療法については,渉猟し得た範囲では,発症8か月後より良肢位保持や母指対立位保持を目的とした装具を使用し,発症後2年頃より母指の対立位保持と軽量物の把持が可能となった症例の報告があるのみである1).手指機能が障害されると,食事,整容においても介助を要する状況になり,著しくQOL(quality of life)を低下させる.そのため,装具を使用して,手指の機能低下を最小限にとどめることや,機能を代償して作業能力を高めることが求められる.
GBSは多ニューロパチーであるが,単ニューロパチーである橈骨神経麻痺障害にはカックアップスプリント,正中神経障害には対立装具の使用,また良肢位保持目的のスプリントの有用性が報告されている4).
今回,従来からの関節可動域訓練,筋力訓練に加えて,症例の機能に応じた目的の異なる3種類の装具の併用により,一定の効果が得られた2例を経験したので,考察を加えて報告する.
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