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はじめに
回復期リハビリテーション病棟には,脳血管疾患,整形外科疾患,廃用症候群などの高齢患者が多く入院している.入院中のリスクとしては,全身状態の悪化,感染症,転倒・転落,誤嚥・窒息,患者の取り違え,離院・離棟などが挙げられる1).転倒・転落は重篤な結果を引き起こす可能性があり,リハビリテーション医療における主要なリスクである2).なかでも,回復期リハビリテーション病棟に入院中は,意識障害,身体機能障害,高次脳機能障害の改善に伴い活動が高まり,activities of daily living(ADL)が大きく変化する時期である.そのため,特に転倒が起こりやすい.転倒による受傷としては大腿骨などの骨折が多いが,回復期リハビリテーション病棟には抗血小板薬や抗凝固薬を服用している脳梗塞患者が多数入院しているため,頭部打撲による頭蓋内出血にも注意が必要である.
このような重大なアクシデントでは患者が不利益を被るため,事故防止・安全管理の取り組みが日本全国の医療現場で行われている3).この背景には,「患者に安全な医療を提供する」という目的がある一方,「増加する医療訴訟に対応する」という目的があるのも否めない.医療事故が起きた場合,医療側としては対話で解決に導きたいが,その結果によっては医療訴訟になる可能性がある.連日のようにマスメディアで報道される医療事故や医療訴訟のニュースを見聞きすると,医療者はとても他人事とは思えず,身を固くしてしまう.
動けるようになることが目的の回復期では,当然,転倒リスクが高まる4).「行動制限をできるだけ行わず,転倒事故なく安全に入院生活を過ごす」という難しい課題が,回復期リハビリテーション病棟の安全管理に突き付けられている.本稿では,まず転倒事故に関する医療訴訟例を紹介し,その次に西広島リハビリテーション病院(以下,当院)の転倒の現状と対策を述べる.なお,本稿で用いる「転倒」には,転倒と転落の両者を含んでいる.
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