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連載 つけよう! 神経眼科力・40
眼位・眼球運動障害の手術治療
Surgical strategy for eye movement disorders
三村 治
1
Osamu Mimura
1
1兵庫医科大学眼科学教室
pp.1070-1076
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410104803
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はじめに
神経眼科学といえば,以前は疾患の診断中心の分野であった。現在でも私たち神経眼科医にとって,さまざまな徴候から画像検査や自己抗体検査,遺伝子検査などを駆使して診断をつけるのが重要な仕事であることには間違いない。しかし,患者側にとっては単に診断がついただけで満足できるわけではない。治療によって患者の悩む原因が解消されて,はじめて満足できる。
神経眼科疾患に悩む患者のなかでは,頻度としては視神経疾患に罹る患者より眼位・眼球運動障害の患者,すなわち複視や異常頭位に悩む患者のほうが圧倒的に多い。そのなかでも最も多い眼運動神経麻痺では,薬物治療や経過観察のみでも80%以上の患者は平均3か月で回復する1,2)。しかし,回復しない20%弱の患者はプリズム眼鏡装用あるいは外眼筋手術を行わなければ,満足できる結果とはならない。ただし,プリズム眼鏡は装用するには限界があり,またどの視線方向でも同一度数のプリズムしか入らない欠点がある。さらに眼運動神経麻痺以外にも甲状腺眼症,重症筋無力症,側方注視麻痺,垂直注視麻痺,慢性進行性外眼筋麻痺,外眼筋線維症などでは,薬物治療後あるいは当初から手術が選択される(図1)。さらに先天眼振,後天眼振では事実上外眼筋手術しか治療法がない。
本稿では,どのような疾患にどのような手術が適応となるのか,どの時期に手術を行えばよいのか,どの程度の複視消失率があるのかなどを兵庫医科大学病院眼科(以下,当科)の自験例での結果をもとに解説する。
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